きめ細やかな研究者支援やアカデミックポストの拡充、基礎研究のような「実用化」が出口ではない研究への支援を充実すべき 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

 

 

2020年12月2日 衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会

 

(若手研究者支援について)

 

○田嶋委員長

次に、城井崇君。

 

○城井委員

立憲民主党の城井崇です。

質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

きょうは、井上内閣府特命担当大臣と政治家としての議論ということでお願いしたいと思います。

よろしくお願いします。

まず、若手研究者支援についてお伺いをいたします。

先日、全国大学院生協議会の皆さんから、大学院生の研究環境の改善に関する要請を受けました。

約750名のアンケートに基づきまして、高等教育の漸進的無償化、研究生活の基盤となる経済的支援の抜本的拡充、国立大学運営費交付金と私学助成の拡充、大学院生のライフプラン実現支援の強化、コロナ禍における大学院生を対象とした支援の強化など、主に文部科学省や厚生労働省などに改善を求める内容が多くございましたけれども、この中から、科学技術、イノベーションを担当する井上大臣と、その中から幾つか要請内容をお伝えしながら改善をお願いしたく、以下、質問したいと思います。

 

一つは、若手研究者支援の改善についてです。

本日の議論でも、大臣から博士後期課程の支援の重要性については言及をいただきました。

政府は、これまでにも、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの実行など、研究者支援をやってきたというふうに説明をされるというふうに思います。

この点は重要だというふうに思っています。

ただ、きょう、わざわざここで質問を申し上げるのは、それらを踏まえてもなお研究現場は苦しい状況にあるということを多くの大学院生から聞き取りをさせていただいたものですから、ぜひお伝えしたい。

例えば、実際には業績主義が強過ぎて、博士論文を早く出せと言われて長期的な研究をやりにくいというお声ですとか、ティーチングアシスタントやリサーチアシスタントにつきまして、新型コロナの影響で、これまでとは異なってオンラインでの取組が多い、毎週レポート提出の課題が課されることで、そのTAやRAの方々が、例えば約500名のレポートを毎週チェックをするような業務を与えられるといった形で負担がふえているということ。

また、学会や研究会の運営など、研究者の卵としての業務や自分の研究以外の仕事もある一方、週10時間以上のアルバイトに従事する大学院生は2人に1人という状況になっているというふうに聞きました。

コロナ禍での学費減免は焼け石に水で、スピーディーに生活支援のための現金給付を実現してほしい、こうした切実な声を届けていただいたところでございました。

大臣、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの着実な実行は大事だというふうに私も思っています。

大変重要です。

ただ、そのときに、修士課程にしても博士課程にしてもポストドクターにしても、それぞれにきめ細やかに支援が届いているかどうか、人数を確保した中で、それが何割に届いたか、こうしたきめ細やかなところが重要だというふうに思っておりますし、現場のニーズにかなうというふうに考えています。

この研究者支援の現状と研究現場の悲痛な声とのギャップをいかに埋めていくか、大臣の考えをお聞かせいただけますか。

 

○井上国務大臣

科学技術立国日本の未来は、これからの若い力にかかっていると言っても過言ではありません。

しかしながら、博士後期課程への入学者数は平成15年をピークとして減少傾向にあり、その主な原因は、在学中の経済面や卒業後のキャリアパスの不安であると考えております。

特に、博士後期課程学生は、学生であると同時に専攻分野について主体的に研究活動を行っており、将来自立した研究者としての地位を確立するという観点も重要であります。

委員からも御紹介いただいた研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ、これに基づきまして、今、関係省庁とも連携をしながら、大学院生が授業科目や研究指導をできる限り充実した形で受けられるよう、学内奨学金や特別研究員、DCの充実、多様な財源による優秀な博士後期課程学生のリサーチアシスタント、RAとしての採用の促進等による処遇の向上に努めてまいりたいと思っております。

その上で、また、関係省庁と連携して、世界に伍する規模のファンドの創設に向けて検討しておりますので、そのファンドの創設などを通じても、博士後期課程学生を含む若手研究者の支援など、研究現場の改善にしっかり取り組んでまいります。

 

○城井委員

ありがとうございます。

そうした施策が一つ一つきちんと現場に届いていくところまで確認をいただくということで、着実な実行をお願いしたいと思います。

世界に伍するファンドについては、後ほど質問をいたします。

 

 

(大学院生及び博士課程修了者の就職状況の改善について)

 

○城井委員

続きまして、大学院生及び博士課程修了者の就職状況の改善について大臣に伺います。

全国大学院生協議会の調査によりますと、大学院生全体の76.1%が就職への不安や不満があるという回答でした。

博士課程卒で研究職を希望する大学院生に対して就職の不安を聞いたところ、87.8%が不安だという回答でした。

このうち、84.3%が正規職につけるか不安というふうに答えています。

テニュアトラックや卓越研究員制度など、これまでの対策がございますが、これをもってしても十分な改善に至っていないというのが現場側からの認識でした。

むしろ大学や研究所では、正規ポストから非正規ポストへの置きかえが進んでいる、任期つきの常勤研究者や非常勤研究者といった不安定な雇用形態は三十代の割合が最も高くなっているというのが現状であります。

政府の取組と現場のニーズのミスマッチがあるのではないか、もしかしたら大きくなっていないか、ここを心配しています。

アカデミックポストの拡充ということも含めて、これが助成金なのか研究予算なのか、入り口は幾つかあると思いますが、大臣、ここは科学技術の担当大臣としても投資、応援をすべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

 

○井上国務大臣

我が国の研究力強化には、若手を中心とする研究者がじっくり腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが重要である。

ポストの不安定な状況など、近年、研究者を取り巻く状況が特に厳しくなっていると認識もしております。

このため、先ほどのパッケージに基づいて、関係省庁とも連携をしながら、例えば、競争的研究費、企業との共同研究費等の外部資金を含めた多様な財源による若手研究者のポスト確保、国立大学においては、人事給与マネジメント改革の実施状況に応じた運営費交付金の配分、若手研究者を中心に、最長10年間、挑戦的な研究を支援する創発的研究支援事業、こういった施策にしっかりと取り組んでまいります。

さらに、これらを次期科学技術・イノベーション基本計画の検討に反映して、科学技術予算の充実を図ることによって、我が国の研究力の抜本的強化も図ってまいります。

 

○城井委員

大臣、ぜひ、非正規ポストでなおかつ任期が短期のポストの動きについては今後注視をいただいて、その部分がふえてくるようだと今の施策が届いていないとなろうかというふうに思いますので、息長い研究を続けられる環境整備、ぜひお願いしたいと思います。

 

 

(国が支援する研究の出口のあり方について)

 

○城井委員

続きまして、国が支援する研究の出口のあり方について伺います。

科学技術・イノベーション基本法の第2条2項で、成果の実用化によるイノベーションの創出と規定することで研究成果の実用化を強調しており、大学院生を含めた全ての研究者の研究内容に実用化という成果が求められておるというふうに認識しています。

このように、研究の出口を決めることは、研究者の研究の自由を狭め、研究の新規性を脅かすことにつながるとの意見が大学院生たちから上がっています。

きょうの、先ほどの委員からの議論にもございましたが、もちろん、息長い研究であっても最終結果のチェックは必要だというふうに認識をしているんですが、ただ、基礎研究のように実用化がゴールではない研究も、我が国の科学技術基盤を担う大切な研究としてしっかり支援をすべきだというふうに考えています。

こうした実用化がゴールではない研究者の声をいかに科学技術イノベーション政策に反映をしていくか、基礎研究などの現場の声の反映方法と支援の充実について、大臣の見解をお聞かせください。

 

○井上国務大臣

基礎研究は、多様で卓越した知を生み出すイノベーションの源としても重要であり、本年6月に改正された科学技術・イノベーション基本法において、基礎研究の推進において国が果たす役割の重要性も規定をしております。

そのため、関係省庁と連携をしながら、科研費等を通じた継続的な支援、大学等における研究活動を支える基盤的経費の確保などに取り組んでまいりました。

また、科学技術イノベーション政策の検討においては、我が国の研究を担う研究者の方々の声をしっかり聞くことも大変重要であります。

このため、本年策定されたパッケージの検討に際しましては、若手研究者から直接いただいた御意見、また、関係省庁における各種調査研究の結果等を踏まえて施策を取りまとめました。

さらに、現在検討中の科学技術・イノベーション基本計画についても、全国キャラバンなどを通して研究者の意見を伺っているところであり、引き続き、現場の声もしっかりと踏まえて、基礎研究の支援を図りながら科学技術イノベーション政策を進めてまいります。

 

○城井委員

そうした取組を一つ一つ着実に進めていきたいというふうに思いますが、先ほどの、いわゆる実用化という成果の部分のところで、実際に基礎研究などの部分が壁になるのではないかという心配が現場であるということはぜひ留意をいただきたいということをこの機会にお願いしたいと思います。

よろしくお願いします。

 

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)