「北九州2043」、方向性は分かるけど、1兆円の中身は何ですか。

2026年7月22日、北九州市は、小倉駅と黒崎駅の周辺を中心に、2043年までに民間を中心として約1兆円の投資を目指す「北九州2043」のたたき台を公表しました。

北九州2043 次世代まちづくり・投資に向けた戦略(たたき台)を発表しました(北九州市ウェブサイト)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/081_00052.html

人口が減る中で、市内全体に少しずつ投資するのではなく、小倉と黒崎に重点を置く。この方向性自体は、理解できます。

小倉は、人が集まり、働き、楽しむ拠点にする。黒崎は、住まい、医療・介護、移動など、これからの暮らしを支える拠点にする。それぞれの役割を分けている点も評価できます。

ただ、今の段階では「こんな街にしたい」という将来像が中心です。市民が効果や負担を判断できる計画にするには、もう少し具体的な説明が必要です。

まず明らかにしてほしいのは、「1兆円」に何を含めるのかです。

土地の取得、建物の解体や建設、企業の設備投資、市が行う道路や公園の整備など、どこまでを数えるのでしょうか。すでに予定されている投資や、古くなった建物・設備の更新も含むのでしょうか。

また、企業が「投資します」と決めた段階の金額なのか、実際に工事や設備に使われた金額なのかも、現時点でははっきりしていません。
この基準が曖昧なままでは、将来1兆円に達しても、この戦略によって新しい投資が生まれたのか、もともと予定されていた投資を合計しただけなのか判断できません。

次に必要なのは、人口が減っていくことを前提にした計画です。

今年5月に公表された国勢調査の速報値では、北九州市の人口は90万4,289人でした。2020年からの5年間で約3万5千人減り、減少数は全国の市町村で最も大きくなりました。

さらに、国の研究機関(国立社会保障・人口問題研究所)の推計をもとに単純計算すると、2043年の人口は約78万人となり、今より約12万人少なくなる可能性があります。これは市の正式な推計ではなく、将来を考えるための一つの目安です。

人口が減るから投資をやめるべきだ、ということではありません。むしろ人口が減るからこそ、住宅、オフィス、ホテル、商業施設を、誰が、どのくらい利用するのかを慎重に見通す必要があります。

黒崎駅周辺では人口が増えています。これは前向きな動きです。ただ、その増加が市外からの転入によるものなのか、市内の別の地域からの移動なのかによって意味は変わります。

駅周辺がにぎわっても、周辺地域から人が移っただけであれば、市全体の人口減少対策としては十分ではありません。

もう一つ大切なのが、市民の負担がどこまで生じるのかです。

「民間主導」とされていますが、新しい市役所庁舎、道路、公園、駅前広場、市有地の活用、税の優遇など、市が関わる事業も含まれています。
市が直接支出するお金だけでなく、税を優遇して入ってこなくなる分、土地を安く貸した場合の負担、将来の維持管理費、事業が途中で止まった場合の負担まで、全体像を示す必要があります。

北九州市の市債残高は、令和8年度末の見込みで、臨時財政対策債を含めて1兆1,826億円です。

必要な投資は行うべきです。しかし、将来世代の負担も含め、どこまで公費を使うのか、その上限をあらかじめ決めておくことが欠かせません。

市が2025年度の投資実績として示した7,777億円についても、分かりやすい説明が必要です。

この中には、日本製鉄の電炉への転換と、日本触媒の新工場への投資が含まれると説明されています。

企業が公表している投資額と同額が計上されていると仮定すると、この2件で全体の約85.9%になります。(ただし、案件ごとの計上額は公表されていないため、この割合はあくまで推計です)

日本製鉄や日本触媒の投資は、北九州市の産業や雇用、脱炭素にとって大変重要です。その価値を否定するものではありません。

一方で、臨海部の工場への大型投資と、小倉・黒崎駅周辺の住宅、商業施設、ホテル、オフィスへの投資は、場所も目的も異なります。

北九州市全体の産業投資と、小倉・黒崎のまちづくりへの投資は、分けて示すべきです。

そして、成功したかどうかを投資額だけで判断してはいけません。

市内企業の仕事が増えたのか。働く人の賃金が上がったのか。若い人や女性が働きたいと思える仕事が増えたのか。公共交通が便利になったのか。今住んでいる人や営業している店が、家賃や賃料の上昇で立ち退かざるを得なくなっていないか。災害への備えは十分か。

こうした市民の暮らしに関わる変化も、毎年確かめる必要があります。

私が、今年度中の正式な計画づくりに向けて、まず求めたいのは三つです。

一つ目は、1兆円に何を含めるのかを明らかにすること。

二つ目は、2043年の人口と、住宅、オフィス、ホテル、商業施設の需要を、複数の見通しで示すこと。

三つ目は、今後設置される会議の議事録や資料を、原則として公開することです。

私は「北九州2043」をやめるべきだと言っているのではありません。

人口が減る中で、小倉と黒崎に重点を置いて街を立て直す考え方は理解できます。
だからこそ、「1兆円」という大きな数字だけが先に歩くのではなく、誰の暮らしがどう良くなるのか、市民の負担はいくらになるのか、うまくいかなかったときにどう見直すのかを、最初に決めておく必要があります。

北九州2043の評価は、2043年になって初めて分かるものではありません。

何を造るかだけでなく、何を確かめ、何を記録し、どの段階で見直すのか。今年度中の計画づくりで、その仕組みをつくれるかどうかが重要です。

前衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

※画像はAIで作成しました。