高市総理の言う「責任ある積極財政」の財源は何か 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

2025年11月4日 衆議院本会議

○副議長(玄葉光一郎君)
国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。城井崇君。

〔城井崇君登壇〕

○城井崇君
立憲民主党の城井崇です。
私は、会派を代表して、高市早苗内閣総理大臣に質問します。(拍手)
全ての質問について、高市早苗内閣総理大臣からの答弁を求めます。
所信表明演説を拝聴しました。
内閣総理大臣から、国会を通じて、国民へ、今後高市政権がやることを高らかに演説をいただきました。
その内容を精査するとともに、自民党、日本維新の会の連立政権合意書、一部報道された全大臣への指示書と比較してみました。

所信表明演説で総理が言及され、連立合意、大臣指示のいずれでも言及があったのは、物価高対策、給付つき税額控除、教育無償化、エネルギー、経済安保、AI、宇宙技術などでした。
短期的政策又は国際競争に対応する政策を中心に進めていくのだと受け止めました。

一方、所信表明演説では一般論しか国民に語られなかった分野が2つあります。
大臣指示書でも記載が薄かったのに、連立合意では4つの大項目、社会保障改革項目に関する具体的な骨子に至っては13項目にもわたり詳しく言及された社会保障、医療改革と、そして政府効率化局(仮称)の設置であります。

社会保障、医療改革は、応能負担や全世代型社会保障といった言葉で抽象的に語られています。
高市政権は保険料率引下げをうたっていますが、保険料引下げの原資は何ですか。
実際には、応能負担の拡大や高齢者の定義見直し等により、国民の負担が増えるのではないか。
高市総理から、以上の問いにお答えいただくとともに、社会保障に関わる国民負担の増減の見込みを具体的に示してください。

行財政改革推進の色合いが薄かった高市総理の所信表明演説において、政府効率化局の設置は曖昧にされています。
政府効率化局については、租税特別措置及び高額補助金を総点検するのが役割とのことですが、いつまでに総点検を行って、どのように改善結果を出すのか。
そもそも総点検対象が狭いのではないか。
これまで立憲民主党からも、本気の歳出改革作業チームや予算委員会省庁別審査など、行政監視の上で改善提案を繰り返してきた政府基金や特別会計、政府資産なども含めて、総点検の対象を拡大すべきです。
また、あわせて、政府効率化局と既存の行政改革の部署との役割分担はどうなるのか、教えてください。

所信表明演説で高市総理から国会や国民に語られていない政策項目もありました。
それはインテリジェンス政策です。
大臣指示書には全閣僚共通指示としてインテリジェンス機能の強化と一言書かれているだけですが、連立合意には6項目にわたり詳細に政策項目が盛り込まれています。
所信表明演説で国民に向かって具体的に方針を示していない上に、担当大臣への曖昧な指示で進められるような軽い話ではありません。
国民の生活や権利に重大な影響を及ぼすものです。
インテリジェンス政策について、いつまでに、どのような内容をどなたの責任で取りまとめ、実行していく考えか。
その政策財源をどこに求めるのか。
連立合意で令和9年度末までに独立した対外情報庁を創設するとうたっていますが、既存の情報組織とはどのような関係を取るのか、高市総理のお考えを具体的に述べてください。

高市総理は所信表明で、物価高を上回る賃上げが必要、継続的に賃上げできる環境を整えることこそが政府の役割と述べましたが、この点は私たちも同じ考えです。
大臣への指示でも賃上げ方針を示しており、早期の具体化を期待します。
一方、賃上げ方針に実質賃金や労働分配率のKPI、すなわちゴールへ向かう中間目標が見当たりません。
長らく上がっていない実質賃金をどこまで上げるのか、労働分配率をどこまで回復するのか、具体的な目標値を国民に向かって分かる形ではっきりとお示しをいただきたい。
あわせて、いつまでに達成する計画かも高市総理から具体的に示してください。
最低賃金について、全国平均1,500円を2020年代にとの石破前総理が示した方針を高市総理は引き継ぐのか。
明確に答弁をお願いします。

この間、私は、公定価格や行政規制の影響を受ける職場の声を地元北九州市で多く聞いてきました。
介護や保育の職場では、介護保険料や保育料など定められた価格の中で経営せざるを得ず、賃上げの原資を得るためでも値上げはできません。
公共交通の職場では、赤字が続かなければ値上げ申請できず、3年も赤字が続けば会社がもたないとの声もあります。
運輸業も同様で、荷主の影響が大きく、運賃値上げの要請は難しいと陸運、港湾、海運の現場から聞いています。
公共事業に関わる建設業も同じです。
資材高騰の中で予算を絞り続ければ、国や自治体が設計労務単価を幾ら上げても、建設、土木などの関連事業者は賃金や労務費を上げる原資を確保するのは極めて難しい状況にあります。
こうした現場の悲痛な声を今年6月の衆議院予算委員会で私から石破前総理に直接訴え、結果として、骨太の方針2025に、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しの項に、本基本方針第二章及び第三章に記載している、公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ、働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底を省庁横断的に推進すると盛り込まれました。
第二章と第三章にも詳しく書かれています。
高市総理、公定価格や行政の規制の影響を強く受ける職場で働く方々の賃上げの元手確保に必要な政策、特に、医療、介護、保育、福祉等の公定価格の引上げ、働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底を高市内閣で実現すると、是非ここで明言してください。

介護、障害福祉従事者の処遇改善と事業所支援について総理に伺います。
介護、障害福祉事業所は、物価高や人件費上昇により厳しい経営を強いられ、従事者の賃金も全産業平均より約8.3万円低い状況です。
このままでは、事業所経営が立ち行かず、人材流出が進みます。
処遇改善と事業所支援は喫緊の課題です。
立憲民主党は、通常国会で、衆議院の医療法等改正案審議の際に、介護・障害福祉従事者処遇改善法案と訪問介護緊急支援法案の並行審議を求めましたが、自民党は、閣法審議を拒否してまで、私たちの法案を拒みました。
処遇改善と支援の遅れは自民党の責任です。
なぜ審議を拒んだのか、高市総理の見解を伺います。
その後、中央最低賃金審議会が全国加重平均で時給63円の引上げを答申し、賃上げが期待される一方で、負担増で事業継続が困難な事業所も懸念されます。
立憲民主党は、八月、介護、障害福祉事業所全職員の月1万円以上の処遇改善、最低賃金引上げへの対応支援、来年4月の介護報酬期中改定を求め、厚労省に要請しました。
高市総理は、所信表明演説で、「報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しします。」と述べました。
総理が想定する支援と処遇改善の金額を伺います。

保育士の処遇改善は急務です。
政府は2024年度に公定価格を10.7%引き上げ人件費に充てるとしましたが、処遇改善加算の効果を検証しているんでしょうか。
実際には全額が保育士の給与に反映されず、賃金は全産業平均と比べ依然低い水準です。
希望を持って就職した保育士が離職する要因の一つでもあります。
立憲民主党は、保育所や幼稚園、放課後児童クラブや児童養護施設等で働く全ての職員一人当たり月額5万円の賃金引上げが必要であると考えており、まずは、緊急的な措置として、月額1万円加算する保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案を実現すべく、あらゆる会派の皆様への賛同を呼びかけます。
まずは、総理に、この法案の内容に関する見解を伺います。

総理から大臣への指示にある就職氷河期支援の充実は、寄る辺なく歯を食いしばってきた就職氷河期の当事者の苦労に思いを致しながら、対応を急がねばなりません。
立憲民主党からは、就職氷河期支援政策として、夏の参院選公約を始め、具体的に提案を重ねています。
就職氷河期世代のリスタート支援として、現役世代の雇用形態や所得保障を強化して経済的安心を確立すること、安定した居住環境を確保することで就職氷河期世代の生活の安心、再出発を支えること、就職氷河期世代が、学び直し、キャリア転換、ライフスタイルを再設計できる時間的余裕を支援することなど、お金、家、時間の観点から支援を充実する内容です。
こうした手段も明確にしながら、支援による目標を具体化すべきです。
就職氷河期世代の正社員採用がどのくらい進んだか、賃金がどのくらい上がったかなど、定量目標を示すべきです。
総理、取り組んでいただけますか。

そもそも、中小企業の人手不足は深刻で、人材確保競争でも、大企業の経営体力と比べると、厳しい状況に置かれています。
一方、正社員になることを希望するけれども、かなっていない非正規雇用の労働者が相当数おられるのも事実です。
立憲民主党は、新たに正規労働者を雇用した中小事業者には、長期間に社会保険料の事業主負担の一定部分を助成することで負担軽減を図る議員立法を提案しています。
中小企業が新たに雇う人の社会保険料の事業主負担を軽減して経営と雇用を支えて人材を確保するのとともに、正規労働を希望する非正規やフリーランスの方が正規労働となる機会を拡大して安定した雇用と生活を確保することで、年収増による個人消費の増加や中小企業の発展と相まって、地域経済社会の活性化につなげていくべきと考えますが、総理の御見解をお聞きします。

高市総理の言う積極財政と財源の整合性について伺います。
責任ある積極財政の財源は何か。
積極財政で民需を喚起する狙いと理解していますが、裏づけとなる財源は示されていません。
数字のない積極財政は希望的観測にすぎません。
政策財源に何を想定していますか。

税収増の見込みについて伺います。
所信表明演説で総理は、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益を上げ、税率を上げずとも税収を増やすと述べました。
成長による税収増をどの程度見込むのか、具体的数字を示してください。

国債の増発方針についても伺います。
片山財務大臣は10月24日、報道各社のインタビューで、2025年度補正予算の財源について、足りなければ国債増発になる、やむを得ないと述べました。
国債増発なら債務残高は伸び、財政負担は増します。総理は所信表明で、成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑え、対GDP比を引き下げると述べましたが、国債を増発しますか。
増発すると、成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑え、対GDP比を引き下げるということが難しいと考えます。
この国債の増発方針について、総理から具体的にお答えください。

加えて、増税の取扱いです。
防衛増税を実施しますか。来年度の防衛費もGDP比2%を維持又は増額しますか。
その財源は何ですか。
いわゆる一億円の壁の是正を行いますか。
金融所得課税の強化を行いますか。
高市総理は増税を行うのか否か、明確にお答えください。
以上、積極財政の財源と金額規模、国債増発、税収増、増税の方針を具体的に伺います。

私たち立憲民主党からは、政策提案に当たって具体的な財源についても示すよう努力を重ねてきました。
例えば、政府基金の積み過ぎの是正です。
政府基金は、複数年度にわたる予算執行可能という特徴がある一方で、一度歳出として国会の議決を経ながら、その後は執行、運用の実態が見えず、政策効果の検証も不十分なまま積み上がっています。
いわば第二の予算と化しています。
私たち立憲民主党は、政府基金を見直し、政府方針の3年ルールを踏まえ、今後3年間の事業に必要な額を確保してもなお残る、積み過ぎ基金について、令和6年基金シートに基づく試算で約7.8兆円を物価高対策等に活用すべきと提起してきました。
石破政権の官僚とも議論を重ねてまいりましたが、事業に使うから積み過ぎではないとの強弁ばかりでした。
これでは、補正予算のたびに不要な国債発行が積み重なり、基金残高の膨張が続きます。
総理、当面3年間の事業に使わないお金を基金残高に見せ金のように積みっ放しにしている基金残高は、積み過ぎ基金だとお考えになりませんか。
政府において積み過ぎ基金を精査して、物価高対策など政策財源として国民生活のために活用すべきと考えますが、総理のお考えを聞かせてください。

本年成立した給特法の改正法は、教職調整額の段階的引上げ、働き方改革計画の策定、公表義務、主務教諭の新設を内容としています。
教員の過重労働是正や処遇改善を求める声の中で一定の前進と受け止めますが、課題は依然山積です。
文部科学省の調査では、公立小中学校の教員不足は1,701人、約20校に1校で不足が発生しています。
学級担任における臨時的任用教員は小学校で11.49%、特別支援学級で23.69%を占め、定数確保だけでは安心して働ける環境にはほど遠い状況です。
総理は、この深刻な人材不足をどう認識していますか。
改正法では、2029年度に時間外在校等時間の月平均30時間を目標としました。
しかし、2024年の国際教員指導環境調査で、日本の教員の勤務時間は参加国・地域で最も長い。
月80時間超えの残業を行う教員は小学校で14.2%、中学校で36.6%に上ります。
教職調整額を10%に引き上げても、時間に応じた残業代が出ない、定額働かせ放題の構造は残ります。
総理は、これで真に処遇改善につながるとお考えか。
更なる見直しの意思はあるか、お答えください。

特に、働き方改革の鍵である部活動の地域展開は進んでいません。
ガイドラインの実態を調査、検証し、必要な改善をすべきと考えますが、見解を伺います。

また、主務教諭制度は、役割分担の明確化が期待される一方で、中間管理業務が増え、現場負担が懸念されます。
働き方改革計画が導入されても、校務分掌、部活動、保護者対応などの業務削減は具体化していません。
改正法をどう実効的に運用し、業務削減をどう進めるのか、明確な方針を示すべきです。
総理の見解を伺います。
教員が子供と向き合い、教育に専念できる環境整備こそ改革の目的です。
現場実態に即した更なる改善を求めます。

来年4月に実施を所信表明演説でも高市総理が言及された学校給食無償化について、今後の取組への総理の考えを確認させてください。
これまで、私たち立憲民主党からも学校給食無償化法案を国会提出するなど、実現を後押ししてきました。
その検討の際にも課題として挙がりましたのが、物価高騰分を補填する、学校給食の質を向上させるということを満たした国の取組とすべきと考えます。
また、全額確実に市町村に届くよう、地方交付税ではなく、補助金や交付金で行うべきではないですか。
総理、物価高騰分の補填と給食の質の向上、補助金、交付金での給食無償化を実行していただけますか。

高校無償化の拡充も来年4月から実施と所信表明演説で高市総理が言及されました。
私たち立憲民主党からは、しわ寄せを受ける公立高校支援の充実が必要ということを、議員立法も提起をしながら訴えてきました。
所信表明演説では、公教育の強化の意欲を示された点は評価をできますが、内容を是非充実させていただきたい。
また、日本の高校教育の在り方についての見直しに言及があり、また、自民、維新の連立合意には、高校教育改革のグランドデザインの策定による全国での教育機会確保と教育の質の向上を実現するとあります。
公教育の強化、高校教育の在り方見直しに関し、我々立憲民主党が提案してきた老朽化対策等を含む公立高校支援の充実は含まれるのか。
いつまでに、どのような具体的な成果を目指して、誰の責任で実現する考えか。
その際の政策財源をどこに求める考えか。
総理から具体的にお答えください。

日本における2024年度のデジタル赤字は6兆7,722億円に上るとされています。
また、経済産業省大臣官房若手新政策プロジェクト、PIVOTが発表したデジタル経済レポートでは、2035年には、ベースシナリオで約18兆円、悲観シナリオでは約28兆円のデジタル赤字が見込まれると示されています。
この将来予測について、日本政府として同様の見解を持っているのかどうか。
仮に政府として異なる見解がある場合には、その根拠、前提条件、試算方法等について、総理から御説明を伺いたい。

次に、デジタル赤字を解消し、将来的にデジタル黒字を実現するための方策について伺います。
デジタル赤字を解消するためには、大きく2つの方向性があると考えます。
第一に、海外製品の輸入に極力頼らず、日本製のシステムやサービスが国内で広く利用される環境を整備すること。
第二に、日本製品やサービスが海外で利用されるようにし、輸出を拡大すること。
この2点を実現して初めて構造的なデジタル赤字からの脱却、そして黒字転換が可能になると考えます。
政府としては、そもそも、このデジタル黒字を目指す方針をお持ちなのか、また、もしそうであるならば、短期的、中期的、長期的にどのような構想の下で、どのような具体的施策を講じてデジタル赤字を解消していくのか、総理からお答えください。

国内のICT産業が国際競争で劣勢に立たされている現状についても伺います。
ビッグテックの主な競争力の源泉としては、利用者が増えるほどサービスの価値が高まるネットワーク効果、追加サービス提供時の限界費用の低さ、そして、ユーザーが使い慣れたサービスからほかのサービスに乗り換えることが難しくなる囲い込み効果などが挙げられます。
こうした特性により、グローバル市場で事業を急拡大させたビッグテックが世界的なシェアを握り、日本企業のプレゼンスが低下する結果となっています。
また、ビッグテック5社の研究開発投資額は約34兆円に達し、日経225構成銘柄の合計約15兆円を上回る現状にあります。
こうした状況を踏まえ、国内のICT産業がグローバルなデジタル市場で再び競争力を高め、逆転を図るためには、どのような打開策を講じていくべきと考えているか、総理の見解を伺います。
AIの研究開発や生成AIの社会実装を推進する一方で、国内のクリエーター、作家、写真家、音楽家などの著作物や肖像の無断利用への懸念が高まっています。
AIの進展と人間の創作を両立させるため、権利保護と補償の新たな仕組みを検討していく考えはありますか。
文化と産業の共生をどう実現するのか、総理からお答えください。

円安や国際情勢を背景に、電気、ガス、燃料などのエネルギー価格が高騰しています。
企業の生産コスト上昇と家庭の光熱費負担は限界に達しています。
再エネや省エネ等の促進と同時に、電力、ガス等の公共料金の抑制、中小企業支援の即効策を講じるべきと考えますが、総理のお考えはいかがですか。
ある場合には、具体的な時期と財源をお示しください。
また、燃料価格の軽減については、ガソリンや軽油のほかに、重油、灯油、航空機燃料など、他の油種についてもこれまでに燃油補助金の対象としてきていますが、これらも継続すべきと考えます。
対応時の政策財源を含め、高市総理の具体的な対応方針を示していただきたい。

我が国の公共インフラは、戦後の高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が急速に進んでいます。
橋梁、道路、上下水道、港湾、鉄道など各分野で更新需要が集中し、特に地方では、維持管理費や人材の確保が深刻です。
能登半島地震では、生活道路やライフラインが寸断され、復旧復興の妨げとなりました。
災害のたびに復旧の遅れ、人手不足が繰り返される現状は看過できません。
地震や豪雨災害が頻発する中、老朽化インフラの更新、維持管理は喫緊の課題です。
政府は、国土強靱化基本計画に基づき、今後5年間で20兆円規模の第一次中期計画を掲げていますが、内訳や優先順位、財源見通しは不透明です。
高市総理は、この計画をどのような理念と戦略で推進をし、地方財政をどう支える考えがあるか、伺います。

また、建設業の担い手不足は全国的課題で、地方では世代交代が進まず、技能継承が困難です。
地域の建設業を、単なる請負業でなく、防災、復旧の最前線を担う公共インフラ人材として育成、支援する仕組みを政府として検討すべきです。
総理の見解を伺います。

公共インフラ整備は、地域の安全と経済を支える未来への投資です。
立憲民主党は、予防保全型維持管理、グリーンインフラ、防災DX、地域雇用と技術継承を重視し、国民の命と暮らしを守る強靱な国土づくりを政府に求めます。

この国と国民を守る。
世界が振り返る教育、科学技術立国日本を実現する。
子どもたちに誇れる日本を引き継ぐ。
私はこの思いを貫いて、引き続き実行可能な政策提案と厳しい行政監視を両立して国民の負託に応えることをお誓いし、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕

○内閣総理大臣(高市早苗君)
城井崇議員の御質問にお答えいたします。
社会保障に関する国民負担についてお尋ねがございました。
社会保障制度を持続可能なものにしていくため、全ての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障を構築することが重要です。
そのため、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化を通じた効率的で質の高い医療の実現などについて、迅速に検討を進め、社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑えてまいります。
少子高齢化の進行などにより、社会保障給付費は今後も増加が見込まれますが、様々な改革を進めることを通じて、現役世代の保険料負担をできる限り抑制できるよう議論を進めてまいります。

租税特別措置や補助金の総点検についてお尋ねがありました。
今般の自民党、日本維新の会の連立合意において、租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止すると盛り込まれていますので、政府としても適正化を進めるよう関係大臣に指示をいたしました。
いずれにしましても、検討スケジュール、総点検の対象範囲を含めた検討方法、政府内の体制など、今後の具体的な対応については、与党ともよく連携しながら速やかに検討をしてまいります。

インテリジェンス政策の取りまとめと対外情報庁についてお尋ねがありました。
今般、自民党と日本維新の会との間で締結した連立政権合意書においては、国家情報局等の創設や対外情報庁の創設といった様々なインテリジェンス政策が盛り込まれました。
政府としては、与党と緊密に連携し、情報機関の組織の在り方等について、お尋ねの事項も含め、早急に論点を整理し、検討を進めてまいります。

最低賃金を含む賃上げ方針についてお尋ねがございました。
この内閣が優先で取り組むことは、国民の皆様が直面している物価高への対応でございます。
物価上昇を上回る賃上げが必要ですが、それを事業者に丸投げしてしまっては、事業者の経営が苦しくなるだけです。
継続的に賃上げできる環境を整えることこそが政府の役割です。
そのため、生産性向上支援や更なる取引適正化等を通じ、中小企業、小規模事業者の皆様を強力に後押ししてまいります。

本日設置した日本成長戦略本部において、賃上げ環境整備担当大臣に対し、物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向けた戦略策定を指示しました。
この戦略の中で、最低賃金を含むこれまでの政府決定への対応や、物価上昇を上回る賃上げ実現に向けた道筋を含めて、経済動向等を踏まえて、今後、具体的に検討してまいります。

賃上げのための公定価格の引上げ等についてお尋ねがありました。
国民の皆様が安心して必要なサービスを受けていただくために、医療、介護、保育、福祉等の公定価格の分野において、賃上げ、経営の安定、人材確保が図られるよう取り組むことが重要です。
このため、診療報酬等の公定価格について、賃上げや物価高を適切に反映させるとともに、報酬改定の時期を待たず、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる措置を行い、効果を前倒しいたします。
まずは、経済対策、補正予算に必要な施策を盛り込むべく、施策の具体化に取り組み、スピード感を持って対応していきます。
また、物価高から中小企業、小規模事業者を守り、持続的な賃上げを行えるよう、官公需も含めた取引適正化の徹底や、生産性向上支援、伴走支援の徹底など、企業の稼ぐ力の強化に向けた取組を強力に後押ししていきます。

介護、障害福祉分野の処遇改善や事業所支援についてお尋ねがありました。
御党提出の法案の取扱いは、国会で御判断いただくものと承知しております。
介護、障害福祉分野の処遇改善や事業者支援を早急に行えるよう、補助金の措置に向けて、経済対策、補正予算に盛り込むべき必要な施策の検討を指示したところでございます。
施策の具体化を進めるなど、スピード感を持って対応してまいります。

保育士等の処遇改善についてお尋ねがございました。
令和6年度において保育士等について10%を上回る処遇改善を行っており、その支払い状況や賃金の状況については、現場への実態調査や統計調査により確認することとしています。
御党の提出法案の取扱いは、これは国会で御判断いただくものと承知しておりますが、保育士等の処遇改善については、こども未来戦略などに基づき、民間給与動向を踏まえた更なる処遇改善に取り組んでまいります。

就職氷河期世代への支援についてお尋ねがございました。
今年6月に取りまとめた新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組みにおいて、従来からの就労、処遇改善に向けた支援や社会参加に向けた段階的支援に加えて、新たに、家計改善、資産形成や住宅確保等の高齢期を見据えた支援を盛り込んでいます。
これに基づき、具体的な目標であるKPIを含む新たな支援プログラムを今年度内を目途に取りまとめる予定としております。
就職氷河期世代等への支援の強化に向けて検討を進めてまいります。

社会保険料の事業主負担の軽減による安定雇用と生活の確保についてお尋ねがございました。
公費によって社会保険料の事業主負担を軽減すべきとの御提案につきましては、社会保険料が医療や年金の給付に充てられ、また、労働者を支えるための事業主の責任であることなどから、慎重な検討が必要だと考えています。
その上で、働く人の安定した雇用や生活を確保するため、正社員転換を行う事業主に対するキャリアアップ助成金による支援や、フリーランスの方などに対する求職者支援制度による支援などの施策に取り組んでまいります。
責任ある積極財政の財源、国債発行、税収増、増税の方針についてお尋ねがありました。
この内閣におきましては、強い経済を構築するため、責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。
お尋ねの責任ある積極財政に係る財源、国債発行、税収増につきましては、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信頼を確保しつつ、経済あっての財政の基本的な考え方の下、今後、取組を進める中で具体化していくものと考えております。

来年度の安全保障関連経費につきましては、現在、令和8年度予算の編成作業中であります。
予断を持ってお答えすることは差し控えますが、防衛力の抜本的強化に係る事業につきましては、現行の防衛力整備計画等に基づき編成していく方針です。
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置につきましては、これまでの与党税制改正大綱等の趣旨も踏まえ、引き続き検討してまいります。

金融所得課税につきましては、税負担の公平性のほか、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすること、これも重要でございます。
こうした観点を総合的に検討する必要があると考えております。

基金についてお尋ねがございました。
基金については不断の見直しが必要と考えますが、いわゆる3年ルールの策定前に措置されたものも含め、基金ごとに、事業の性質や執行状況など、置かれた状況が異なっています。
そうした状況を踏まえて見直しを行ってまいりますが、見た目の残高を一律に積み過ぎと考えて政策の財源として活用することには課題があると考えております。

教員の処遇改善、働き方改革、業務削減を始めとする教職の魅力回復についてお尋ねがありました。
教師不足については、改善すべき課題であり、徹底した働き方改革の実施など教職の魅力を高める取組を進めていく必要があると考えています。
先般成立した改正給特法等を踏まえ、業務の仕分を行った学校と教師の業務の三分類を文部科学大臣が定める指針に位置づけており、教育委員会による学校の業務量管理を徹底してまいります。

学校部活動の地域展開については、各自治体の取組状況を把握しながら、円滑な移行に向けた国のガイドラインの見直しを進めてまいります。

給特法につきましては、様々な議論があることは承知しております。
まずは、時間外在校等時間が月20時間程度に達するまでに幅広い観点から諸課題の整理を行ってまいります。

給食無償化についてお尋ねがありました。
いわゆる給食無償化については、これまでの政党間の御議論において、給食の質の向上や国と地方との関係などの論点について十分な検討を行うこととされています。
政府としては、今後の政府間の議論を踏まえ、制度設計の議論を進め、安定財源の確保と併せて、来年4月から小学校段階で実施してまいります。

公教育の強化、公立高校支援の充実についてお尋ねがありました。
公教育の強化は、我が国の未来を見据え、イノベーションを起こすことのできる人材の育成のために重要であると考えます。
高校教育については、老朽化対策に関し、引き続き都道府県において適切に取り組むとともに、政党間の議論を踏まえて、国として高校教育改革のグランドデザインを今年度中に提示し、各都道府県が策定する計画に基づく取組を支援する交付金等の仕組みの構築について、税制による対応も含め、安定財源の確保と併せて検討し、公立高校が地域の人材育成といった役割を果たすことができるように取り組んでまいります。

いわゆるデジタル赤字についてお尋ねがありました。
いわゆるデジタル赤字の将来予測については政府全体で統一的な見解はありませんが、足下で、デジタル関連収支の赤字、これは年々拡大しております。
デジタル赤字が拡大し続けることは、我が国の経済成長や経済安全保障の観点からも好ましくはなく、まずはデジタル赤字の拡大抑止、さらにはその改善を進めてまいります。
このため、本日設置した日本成長戦略本部の下、AIを始めとする新しいデジタル技術の研究開発や産業化を加速化させるとともに、コンテンツ産業を含めたデジタル関連産業の海外展開を支援してまいります。

国内ICT産業の国際競争力強化についてお尋ねがありました。
ICT産業は、社会経済活動を支え、災害、安全保障面でも重要な産業です。
本日開催した日本成長戦略本部において、戦略分野である情報通信として、総務大臣を担当大臣に指名し、強力に取組を進めることといたしました。
具体的には、進展するAI社会を支えるオール光ネットワークや海底ケーブルなどのデジタルインフラについて、グローバル市場を先読みした、研究開発から社会実装、市場獲得の一気通貫での支援により、国際競争力を強化してまいります。

AIの進展とクリエーター等の権利保護と補償の両立についてお尋ねがありました。
AIの進展により、クリエーターや権利者から、知的財産権の侵害に対する懸念の声があるものと認識しています。
政府においては、法、技術、契約の各手段を適切に組み合わせて対応することが重要であることをこれまでも示してきたところです。
その上で、イノベーションの促進とリスク対応の両立を理念とするAI法の施行も踏まえ、AI技術の進歩と知的財産権の適切な保護の両立が達成されるよう、検討を進めてまいります。

電気、ガス等公共料金の抑制、中小企業支援の即効策についてお尋ねがありました。
国民の皆様が直面している物価高に対応するため、既に、経済対策の策定に着手するよう指示を行っています。
電気・ガス料金については、寒さの厳しい冬の間、支援を行います。
また、再エネの活用や中小企業等への省エネ支援を進めてまいります。
このほか、賃上げ税制を活用できない中小企業、小規模事業者などを支援する推奨メニューを設け、重点支援地方交付金により、地域のニーズにきめ細やかに対応をしてまいります。
これらについて、財源を含め、早急に検討を進めてまいります。
野党の皆様との真摯な対話と合意を積み重ねながら、速やかに経済対策を取りまとめ、必要な補正予算を今国会に提出いたします。

燃料油価格支援についてお尋ねがありました。
燃料油の価格高騰対策としての定額引下げ措置の支援については、いわゆる暫定税率について結論を得て実施するまでの間、行うこととしています。
暫定税率については、10月31日、与野党六党の実務者間で、ガソリンは令和7年12月31日に、軽油は令和8年4月1日に廃止すること等について一致したところです。
灯油等の油種につきましては、経済対策において拡充することとしております自治体向けの重点支援地方交付金も活用し、地域の実情に合った的確な支援をお届けするなど、必要な対応を講じていく考えです。
政府は、このような取組を通じて、内閣の最優先課題として、国民の皆様が直面している物価高に対応し、暮らしの安心を確実かつ迅速に届けてまいります。

国土強靱化実施中期計画、建設業の担い手不足についてお尋ねがありました。
激甚化、頻発化する自然災害から国民の皆様の生命、財産、暮らしを守るため、国土強靱化の取組を切れ目なく推進する必要があります。
第一次国土強靱化実施中期計画では、計画期間内における各施策の目標を設定し、その達成に向けて重点的に取り組むこととしております。
この取組に係る地方負担につきましては、地方の財政運営に支障が生じないよう、適切に地方財政措置を講じてまいります。
また、地域の守り手としてインフラ整備や災害時の応急対策等を担う建設業について、その担い手の確保、育成に向け、処遇改善、働き方改革、生産性向上等に引き続き取り組んでまいります。

以上でございます。(拍手)

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)