マンション共有部分の損害賠償請求、法改正で困る方が少なくなるよう、政府の検討義務を実質化する具体的な取り組みが重要だ 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

2025年5月22日参議院国土交通委員会
○杉尾秀哉君
それでは、先ほど、これも森屋委員聞かれた損害賠償請求権の行使の件ですけれども、いわゆる区分所有法の26条の関連ですが、これも紹介がありました。
衆議院段階では修正決議が行われております。
そこで、修正案の提案者に伺います。
この修正案の趣旨と目的について、簡潔に御説明ください。
○衆議院議員(城井崇君)
お答え申し上げます。
まず、今回の政府案におきましては、現在、実際にマンションに居住している区分所有者による管理を容易にする内容が含まれており、その前提となる問題意識や改正の方向性についてはおおむね同感であります。
しかし、法案の新区分所有法26条2項には、共用部分の不具合に関する損害賠償請求について、旧区分所有者に独自の権利行使に関する意思表示を求める規定が含まれており、これにより、かえってマンション管理上のトラブルが増えるのではないかとの懸念があります。
他方、こうしたトラブルを未然に防止するため、共用部分の不具合に関する損害賠償請求は、当然に現在の区分所有者に承継されるようにすべきであるとの提案もあります。
しかし、この案についても、新旧の区分所有者の間の不公平、また財産権の制約などの懸念が指摘されているところであります。
そこで、本修正案においては、新区分所有法26条二項に基づく旧区分所有者による独自の権利行使に対処するための規約の設定状況やマンションの管理者による損害賠償請求の状況、賠償金の受領の状況などをしっかり見て、この問題について困る方が一人でも少なくなるように、こぼれる方がないようにするために検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるよう、法律をもって政府に義務付けようとするものであります。
○杉尾秀哉君
先ほどから何度か出ております当然承継という考え方が取れるかどうかという、これは確かに難しい問題なんですが、ただ、衆議院での質疑におきましても、この条文と修正案について、まあ平たい言い方になりますが、区分所有者の財産権に配慮し過ぎではないかと、こういう趣旨の質疑がありました。
かなり批判的な質疑でございました。
これについてはどういうふうに考えていますか。
○衆議院議員(城井崇君)
だからこその今回の修正案の提起だということであります。
政府案の新区分所有法26条2項には、共用部分の不具合に関する損害賠償請求の場面で、旧区分所有者に独自の権利行使に関する意思表示を認める内容が含まれているため、これにより、マンションの管理者による損害賠償請求が難しくなったり賠償金の受領が十分にできなくなったりするのではないかという懸念が実際にございます。
その一方で、旧区分所有者の財産権の制約も、またないがしろにしてよい問題ではないという状況でもございます。
こうした問題を解決するためには、本修正案で定めたように、政府に対し、旧区分所有者による独自の権利行使や、これに対処するための規約の設定の状況、マンションの管理者による損害賠償請求や賠償金の受領の状況などをしっかり見定めた上で、この問題について困る方がなくなるように検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずることを義務付ける必要があるというふうに考えています。
なお、この附則の修正部分について、この検討義務を実質化するための政府による具体的な取組が重要であるというふうにも考えています。
すなわち、標準管理規約改定の進捗評価、規約改定が困難な管理組合への技術、財政支援などの政府の不断の取組のほか、検討の結果を踏まえた問題予防や解決の方策の一つとして、法改正が必要になった場合の迅速な改正案の立案と国会への提出などの政府による具体的な取組が重要であり、これらを促すのが、修正部分を作成した提出者としても、この修正に込めた意図であることも強調しておきたいと思います。
○杉尾秀哉君
現実的な財産権とそれから現実の問題という中で、そのバランスを取りながらこういう修正をさせていただいたということなんですが、この問題をめぐりまして、衆議院での質疑において、旧区分所有者による賠償の個別請求は管理規約で禁じればいいんだと、こういうふうな説明がありました。
しかし、それだけで法が担保をする個人の財産権を奪うことが果たして可能なのか、また、その標準管理規約で問題が解決するというのならば、この標準管理規約の具体的な改正案ですね、これ、具体的な改正案がありましたら示してもらえないでしょうか。
○政府参考人(内野宗揮君)
お答え申し上げます。
区分所有法におきましては、共用部分の管理に関する事項は規約で定め、また集会の決議で決することができることとされており、区分所有者は、そのような規約の定めや集会の決議に拘束をされます。
共用部分について生じた損害賠償金について、個別的受領を制限し、共用部分の修繕に用いるとしてその使途を定める、又は議論に出ておりますその別段の意思表示を制約する、こういったようなことは共用部分の管理に関する事項に当たると考えられるため、規約で定めることができる事項であると考えております。
これは、法律が私的自治に委ねている事柄につきまして、区分所有者の団体的意思決定という手続を経た上での私的自治、この局面では団体自治と表現する方が適切かもしれませんが、これに基づく制約をするものでありまして、許されるものと考えております。
したがいまして、このような規約を定めることが個人の財産権を不当に奪うものであるということは考えておりません。
法務省といたしましては、国土交通省との緊密な連携を図りながら、標準管理規約につきましてこのような損害賠償金の使途の制限等の定めを含むものに速やかに改定をいたしまして、その周知徹底を図るなどしてまいりたいと考えているところでありますが、この標準管理規約の具体的な案文につきましては、今後、国土交通省の検討会において検討されていくものと承知しておりまして、法務省としてはその検討にしっかりと協力してまいりたいと考えております。
○杉尾秀哉君
法務省と国交省がしっかりと協議をして早くこの案文を示していただきたい、これは管理組合の方でも強く求めていることであります。
今説明がありましたが、政府は標準管理規約を改正して周知徹底を図るということなんですが、実際にこの標準管理規約には強制力がなくて、準拠率もそう高くはないと、こういうふうに言われております。
とりわけ新築のマンションでは、管理組合が理事会を置かず、管理会社が管理を担ういわゆる第三者管理が増えているということでもあります。
しかし、瑕疵を生み出す可能性のある側が、最初に原始規約を制定する際に標準管理規約に準拠させることが、まず一番最初に作るその規約自体が、これが重要なんだと管理組合の方も主張されています。
これについて政府はどういうふうに推進していくつもりでしょうか。
○政府参考人(楠田幹人君)
お答えいたします。
マンションの分譲時には、分譲事業者がマンション管理業者の協力も得ながら管理規約の案でありますいわゆる原始規約を作成し、管理組合への引継ぎを行っているものというふうに承知をいたしております。
委員御指摘のとおり、既存マンションの管理組合に対して管理規約への反映を働きかけるだけではなく、新築マンションにおいて管理規約案を作成する分譲事業者などに対しましても、御指摘の共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容が盛り込まれた管理規約案の作成が行われますように働きかけを行うことが重要であるというふうに認識をいたしております。
様々な媒体、リーフレットの作成などで丁寧な周知を図ることと併せまして、分譲事業者やマンション管理事業者などの関係団体と連携をし、一層の協力を得て、新築のマンションにつきましても管理規約への反映をしっかり徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
○杉尾秀哉君
徹底の方をお願いいたします。
それからもう一つ、26条の通知義務なんですけれども、管理者が原告あるいは被告となった場合に損害賠償請求権を持つ旧区分所有者に対して遅滞なく通知する義務というのが、これが書かれております。
ところが、転売が重ねられていて旧区分所有者がいっぱいいて、その人が今どこにいるか分からない、それから外国人だったり、それからその旧区分所有者の方が亡くなっていわゆる相続をする人が何人も出て、その相続人が分からない、いろんなケースが考えられると思うんですね。
その代替策として公示通達というのがあるというふうに言われておりますが、これも弁護士を雇ったり、簡単じゃないというふうに管理組合の連合会の方でも言っております。
こうした管理組合の金銭的、精神的な負担をどういうふうに考えるのか、具体的な負担軽減策と併せてお答えください。
○政府参考人(内野宗揮君)
お答え申し上げます。
まさに委員御指摘のとおり、本改正法案におきましては、管理者が規約又は集会の決議により共用部分に生じた損害賠償請求権につき旧区分所有者のために原告等となった場合、いわゆる訴訟通告する場合、こういう場合には通知をするということになっております。
これは、一言で申し上げれば、旧区分所有者の手続保障の観点から規定されたものであるというわけであります。
旧区分所有者と連絡が取れない、またその所在が不明である、またその方がどなたか分からないといったような場面では、民法第98条によります公示の方法によって通知をすることが可能であります。
法務省といたしましては、この御指摘のような御懸念にお応えするという観点からも、この通知がどういった意義を有しているのか、また、どういった場合にこの公示の方法による意思表示が可能と考えられるのか。
こういった、管理組合が実際に感じておられる負担軽減ですね、こういった
ものに資するような情報も含めて、この制度の周知と併せて適切かつ十分な周知、これをやっていきたいと考えております。
○杉尾秀哉君
これ組合側の意見もよく聞いていただいて、その負担がなるべく少ないように、なくなるように、これも最大限の配慮をいただきたい。
この項はもう一問だけ伺いたいのですが、先ほど紹介しましたその附則に盛り込まれた、改正案のですね、5年後見直し案なんですけれども、この5年の間に、紛争処理とか相談に係る体制とか、いろいろな、先ほど城井さんの方から説明がありました。
こうしたことを行った上で、必要がある場合は所要の措置を講じる、こういうふうにされています。
言ってはなんですけれども、これまではグレーだったと思うんですね、旧区分所有者の損害賠償請求権というのは。
ところが、今回の法改正で、別段の意思表示という表現で、私も、私も、私も権利ありますよね、そういうふうなことを、言葉悪いですけれども、寝た子を起こすようなことにならないかという、そういう心配もあります。
そうした場合は、混乱が生じた、実際に、そういう場合は、今後の見直しにおいて、先ほど御紹介しました当然承継説に基づいた再改正の検討、これも可能性としてあり得るという、そういうニュアンスでしょうか。
○衆議院議員(城井崇君)
お答え申し上げます。
御指摘の当然承継説は、紛争の予防のためのより根本的な方策の一つとして提案されているものと承知をいたしております。
したがって、本修正による検討の内容の一つとして区分所有法に当然承継説の考え方を取り入れることが適切かどうかについて、その遡及適用の是非も含めて、政府において緻密な検討がなされることも想定をしています。
したがって、この検討の結果、区分所有法の再改正が必要ということになれば、当然そのための措置が講じられることとなると考えます。
○杉尾秀哉君
じゃ、国交大臣、それを受けて、検討する可能性があるかどうか、それだけちゃんと答えてください。
○国務大臣(中野洋昌君)
お答え申し上げます。
改正法の施行後、各管理組合における管理規約への反映状況などを把握をさせていただくということが重要であると考えております。
マンション総合調査などを活用して実態把握に取り組むとともに、取り残されるマンションがないよう、法務省との緊密な連携の下、関係者による支援体制も構築しながら、まずはしっかりと施行に取り組んでまいりたいということ。
その上で、管理規約への反映の状況や損害賠償請求の状況等を勘案をいたしまして、制度の見直しの必要があると認められる場合には、政府として適切に対応をしていくべきものというふうに認識をしております。
○杉尾秀哉君
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
じゃ、城井さんは退席していただいて結構です。
○委員長(小西洋之君)
城井議員は御退席いただいて結構でございます。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)