文化審議会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」はクリエーターにどのような影響があるか 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2024年5月13日 衆議院決算行政監視委員会第2分科会
○城井分科員
続きまして、生成AIと著作権について文部科学大臣に伺います。
2024年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、AIと著作権に関する考え方を取りまとめました。この考え方には次のようなただし書がございました。
簡略に申しますと、生成AIと著作権に関する考え方を整理し、周知すべく取りまとめたもの、そして、公表時点における本小委員会としての一定の考え方を示すもの、加えて、本考え方自体が法的な拘束力を有するものではなく、また、現時点で存在する特定の生成AIやこれに関する技術について確定的な法的評価を行うものではないこと、こうした内容でございました。
ただ、このただし書を考慮したとしても、日本国内だけでなく、諸外国にも一定の影響を与え得る注目すべき論点の整理だと考えています。
そこで伺います。
この度示されたこの考え方によって、これまでのルールから変更となるところは具体的にどこか、大臣からお答えください。
○盛山国務大臣
委員御指摘のとおり、この考え方は、法的拘束力を有するものではなく、生成AIと著作権に関する判例等の蓄積がないという現状を踏まえ、現時点における審議会としての一定の考え方を示したものであります。
特に、AIと著作権に関するクリエーターなどの権利者の懸念を払拭する観点から、AI学習のための著作物の利用であっても、著作権法第30条の4の要件を満たさず、権利者から許諾を得ることが必要な場合があり得ることなどをお示ししているところです。
今後は、この考え方についての正確な理解の促進に向けて、分かりやすい形で周知啓発することに努めてまいりたいと考えております。
○城井分科員
著作権法30条の4については、後ほどお伺いをというふうに思います。
理解促進は重要だというふうに思います。
その観点から、次に伺います。
現行の著作権法では、情報解析などの目的であればAIによる記事や画像の学習には原則として著作権者の許諾は必要ないこととされています。
ただ、この点、クリエーターからは懸念が示されています。
この度示されたこの考え方では、クリエーターに対する著作権侵害となる事例についてどのように整理をされておるでしょうか。
また、クリエーターにはどのような影響があるか、大臣からお答えください。
○盛山国務大臣
委員御指摘のとおり、クリエーターなどの権利者からは、自らが時間をかけて創作した著作物等が生成AIにより学習され、侵害物が大量に生成されることへの懸念等が示されていたところであります。
この点、著作権法上では、第30条の4により、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、著作権者等の許諾なく生成AIの学習に著作物等を利用できることとしております。
今回の考え方におきましては、生成AIの学習に著作物等を利用するもののうち、意図的に学習データに含まれる著作物の創作物の表現の全部又は一部を出力させることを目的とした追加的な学習など、この要件を満たさず、著作権者の許諾が必要となる場合などについて例示をしております。
法30条の4の適用がないにもかかわらず、著作物が無断で学習に使われた場合には、クリエーターは著作権侵害として差止め請求等を行うことが可能であると考えております。
○城井分科員
同様に、内閣府についても確認をさせてください。
2024年4月22日、内閣府知的財産戦略本部のAI時代の知的財産権検討会は、AI時代の知的財産権検討会中間取りまとめを示しました。
この中間取りまとめによって、これまでのルールから変更のあるところは具体的にどこか、著作権以外の知的財産権について、AIに学習させる段階は原則として権利侵害を発生しないと確認したという報道がございましたが、これは事実でしょうか、内閣府副大臣からお答え願います。
○古賀副大臣
城井委員御指摘のように、この検討会、4月の22日に、知的財産権の各所管省庁のオブザーバー参加をいただきまして、中間取りまとめ案について議論を行ったところであります。
この検討会におきましては、AI学習段階における著作権以外の知的財産権については現行法の考え方から変更はなく、意匠権、商標権等のデータをAIに学習させたとしましても、その権利の実施又は使用に当たらず、権利侵害は発生しないと考えられることを確認したところでございます。
○城井分科員
もう一つ伺います。
この度示されたこの中間取りまとめでは、クリエーターに対する著作権など権利侵害となる事例についてどのように整理をいたしているでしょうか。
また、今回の中間取りまとめがクリエーターにはどのような影響があるか、内閣府副大臣からお答えください。
○古賀副大臣
この検討会における検討では、著作権に関する法的整理というのは、著作権法の所管省庁であります文化庁における、先ほど来出ております文化審議会の小員会での「AIと著作権に関する考え方について」の検討を前提としているわけであります。
つまり、著作権法の第30条の4により、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、著作権者等の許諾なく生成AIの学習に著作物等を利用できると考えられるとしたところであります。
また、生成AIの学習に著作物等を利用するもののうち、意図的に学習データに含まれる著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させることを目的とした追加的な学習など、この要件を満たさず、著作権者の許諾が必要になる場合等について、著作物が無断で学習に使われた場合には、クリエーターは著作権の侵害として差止め請求等を行うことが可能であると考えられるとしたところでございます。
○城井分科員
今の副大臣の答弁、そして盛山文科大臣からの答弁、足並みをそろえての対応をいただいているということを今確認をさせていただきました。
少し細かな点を確認したいと思います。先ほどからの著作権法の第30条の4の件であります。
クリエーターからも様々な懸念がありますが、特に、特定のクリエーターを狙い撃ちしてAI学習する、こうしたケースがありますが、この全ての場合に著作権法第30条の4が適用されなくなるわけではないとの理解でよいかを確認をさせてください。
著作権の制限のかかる有名画家はたくさんおられますが、例えば、今年いっぱいは著作権の制限がかかるピカソの作品の真贋判定、本物か偽物かを判定するAIを仮に作成しようとする場合、ピカソの作品を集中して学習させる必要があります。この場合の著作権の利用について、この30条の4が適用されるか、大臣の認識をお聞かせください。
○盛山国務大臣
著作権法第30条の4は、当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、著作権者等の許諾なくAI学習等のために著作物等を利用できることとしております。
この要件を満たす限りにおいては、特定のクリエーターの作品のみから成る作品群を学習データとしてAI学習を行うために著作物等の複製を行う場合にも同条は適用され得ると考えます。
しかしながら、同条の適用の有無につきましては、最終的には個別具体的な事案に応じた司法判断となります。
例えば、今、城井委員が御指摘をされたピカソの作品の真贋判定AIを開発する場合、当該AIは、学習データとして用いられたピカソの作品と創作的表現が共通したものを生成させるものではなく、ピカソの作品を享受する目的があるとは言えず、同条が適用されるものと考えられます。
○城井分科員
非享受目的という点が重要だというところを、今大臣の答弁からも確認させていただいたと思います。
続いて、伺います。
ピカソの作品と創作的表現が共通する作品を生成するAIを開発する場合、この30条の4は適用されますか。
大臣、いかがでしょうか。
○盛山国務大臣
著作権法30条の4については、もう繰り返しになりますので申し上げませんが、最終的に個別具体的な事案に応じた司法判断となるということを前提といたしまして、AIの開発に当たりまして、委員が御指摘されているように、ピカソの作品と創作的表現が共通する作品を生成することを目的としてAI学習を行う場合には、享受を目的としていないとは言えず、同条は適用されないものであると考えます。
○城井分科員
享受目的も併存するので適用されない、こういう理解ということで確認をさせていただきました。
続きまして、ピカソの作品の画風やアイデアと共通した作品を生成するAIを開発する場合は、30条の4は適用されますか。
大臣、いかがですか。
○盛山国務大臣
著作権法第30条の4の適用ということでございますが、AI開発に当たり、ピカソの作品と表現に至らないアイデアのレベルで画風などが共通する作品を生成するAIを開発する場合には、既存の著作物の表現を享受する目的ではないため、同条が適用され得ると考えられますが、繰り返しになりますけれども、最終的には個別具体的な事案に応じた司法判断となりますので、そこは御理解いただきたいと思います。
○城井分科員
個別判断という点は理解しながらですが、享受目的が併存するとは言えないという点が今の話では重要だったかというふうに思います。
ありがとうございます。
ここまで細かに確認させていただきました。
文部科学省と内閣府におかれましては、この生成AIについては、開発の促進に目が向きがちなんですが、クリエーターを始めとした権利保護との両立について、具体的な取組を是非お願いしたいというふうに思います。
よろしくお願いします。
古賀副大臣はここまでで、御退席、大丈夫です。
ありがとうございました。
(中略)
○盛山国務大臣
申し訳ありません、今の答弁の前に、先ほどの答弁でちょっと一言、忘れましたので、追加をさせてください。
先ほど、同条が適用され得る、著作権法30条の4ですね、と申し上げたところでございますが、アイデアにとどまらず創作的表現が共通する作品を生成することを目的とするような場合には、享受を目的としない場合には当たらず、同条は適用されないということでございますので、併せて御理解賜りたいと思います。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)