国による公共工事、着工後の契約変更時の事業費増額を発注者と受注者以外の視点でチェックをする仕組みを作るべき 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

2024年4月24日衆議院国土交通委員会

○長坂委員長
次に、城井崇君。

○城井委員
立憲民主党の城井崇です。
斉藤国土交通大臣、今日もよろしくお願いいたします。
まず、国が発注する公共工事の事業費チェック体制について改めて伺います。
国が発注する公共工事で、人件費単価や物価の伸びを上回って、工事の着工後に事業費が増額する事例が生じています。
日本経済新聞によりますと、計画から10年以上が経過した公共工事382件のうち42%もの公共工事において、合計5.2兆円も事業費が増額したとのことでした。
先日の質疑で一例を紹介し、国の計画や見通しが甘かったのではないかとの質問をいたしましたが、大臣からは、認めない趣旨の答弁でした。
本当にそうでしょうか。
先日の質疑で挙げた例のほかにも事業費を増額した事例があります。
例えば、2001年度に事業化した国道横浜湘南道路では、掘削発生土の処理方法やトンネルの安全対策の変更で、2019年度に何と当初の2.1倍となる4,600億円に増えたとのことです。
具体的には、地元住民や行政間の調整不足が要因とのことでした。
2022年度には、1,110億円も増えたとの報道です。
国土交通省横浜国道事務所は、日本経済新聞の取材に対し、事業が進み、よりよくするために事業費が増えていると説明したそうであります。
指摘されている公共事業費の増額は事実でしょうか。
どのような理由から生ずるのか。
やはり国による計画に問題があった、あるいは国による見通しが甘かったのではないか。
大臣の認識をお示しください。

○斉藤(鉄)国務大臣
お尋ねのありました横浜湘南道路につきましては、当初の全体事業費は約2,140億円でしたが、発生土の再利用のための土砂の改良作業の追加、トンネル地中接合部の可燃性ガス対策の追加、地元や関係機関協議を踏まえた遮音壁や調整池の追加などの理由により、当初計画から約3,560億円増額し、現在の全体事業費は約5,700億円となっております。
そういう意味では、その増額は事実でございます。
横浜湘南道路については、当初の計画段階において、地質情報など、その時点で判明していた現場条件を基に事業費を算出しておりましたが、事業実施段階において、不確定要素のある地下のトンネル工事であり、調査や工事の進展に伴い、予期しなかった地中の可燃性ガス対策などの技術的課題が確認されたこと、地元や関係機関と随時調整していく中で地域の生活環境に配慮しながら周辺への影響を最小限にする形で工事を進める必要が生じたことなどの理由により、事業費が増額したものと認識しております。
なお、これらの事業費の増額に当たっては、有識者委員会での審議などの事業再評価の手続を実施し、事業費増加や事業継続の妥当性について御審議いただいた上で、了承されているところでございます。

○城井委員
地元住民ですとか行政間の調整不足という部分もあり、増額した点を先ほども御説明いただきましたが、これらは着工前に想定すべきだし、対応できたのではないかというふうに考えます。
先ほどの再評価委員会についても触れていただきましたが、計画変更段階で、さて、発注者、受注者以外の目が、国民そして国会に対しての説明も含めて届いていたんだろうか、この点は問題だというふうに考えています。
別の公共工事での事業費増額についても確認をいたしたいと思います。
北海道三笠市の幾春別川総合開発事業では、二つのダムを建設しています。
2004年度完成予定であったところを2030年度完成予定に延長。
災害の影響などもあったとのことですが、事前に把握することができなかった地盤などの影響もあり、事業費は2.4倍の1,667億円となったとのことであります。
ここで指摘されている公共事業費の増額や完成予定の延長は事実でしょうか。
追加工事や工期延期などはどのような理由から生ずるのか。
国による計画に問題があった、あるいは、国による見通しが甘かったのではないかというふうに考えますが、大臣の認識をお示しください。

○斉藤(鉄)国務大臣
お尋ねのありました幾春別川総合開発事業につきましては、1994年度に策定した当初の全体事業費は約700億円、完成予定は2004年度でしたが、直近の2021年度の変更後の計画では全体事業費が約1,667億円、完成予定が2030年度となっております。
こういう意味でも、これも事実でございます。
幾春別川総合開発事業については、当初の計画段階において、地質情報など、その時点で判明していた現場条件や、類似のダムでの実績を基に事業費や工期を設定しておりましたが、事業実施段階におきまして、ダムの基礎となる岩盤が想定より深かったことにより掘削量が増加したこと、2018 年北海道胆振東部地震など、工事現場の被災に伴う追加対策が発生したことなどの理由により、変更の必要が生じたものと認識しております。
なお、これらの変更に当たりましては、有識者委員会での審議などの事業再評価の手続を実施し、事業費や工期、事業継続の妥当性について御審議いただき、了承されているところでございます。

○城井委員
災害の影響は致し方なかったというふうに考えましても、例えば、着工後に見つかった想定外の地盤への対応、着工前の事業費の内数でやはり行うことができなかったということ。
しかも、完成予定を大きく後ろ倒しをした上で、当初事業費の2.4倍にも事業費が膨れ上がっている事実、この辺りからしても、やはり国による見通しは甘かったということは指摘せざるを得ないというふうに考えます。
そもそも、公共工事の発注は競争入札で決まります。
しかし、変更契約は競争入札ではなく事実上の随意契約となることから、値決めやコスト管理が十分に行き届かない場合があるとの指摘があります。
日本経済新聞によりますと、2021年度時点で継続中のダム、道路、河川、港湾の工事について、計画当初と2021年度の事業費が分かる資料を国土交通省から入手して、計画から10年以上のいわゆる大型案件を抽出して分析したところ、公共工事の事業費が増額していたのが全体の77%に当たる294件で、増額幅は6.5兆円にもなっていたとのことでした。
さらに、382件全体の費用は、当初計画比26%増の31兆2,091億円にまで膨らんでいたということです。
人件費単価や資材費の上昇の範囲に収まる物価高を要因とする増額が、このうち135件とのことでした。
このような事業費増額の実情がある一方、事業費の増額に伴う変更契約は受注者と発注者の交渉で決まることから、外部からの検証を十分に行うことができません。
先ほどお話しのように、事業費全体、大きな視点の部分では再評価委員会が動くケースもありますが、さて、個別の契約まで一つ一つ目が届いているかといえば、そこは不十分だ、現在の仕組みの下では契約変更はいわばブラックボックスとなっています。
国会の行政監視も届きにくいことに加えまして、メディアが契約変更された公共事業の事業費を追いかける際には、現地を見に行って取材をかけるか、時間をかけて情報公開請求を行うかといった形を取るほかなく、当初予算や補正予算案、新しい政策の説明とは異なりまして、政府からの情報提供や説明を詳しくお聞きできないとのことでした。
事ほどさように、発注者と受注者以外のチェックの視点が届かないんです。
大型案件だけでも着工後に6.5兆円もの事業費増額となっていた事実、発注者と受注者以外での視点のチェックが届いてこなかった現状について、大臣の受け止めをお聞かせください。

○斉藤(鉄)国務大臣
公共事業の実施に当たりましては、事業着手後に実施した地質調査の結果や、地元や関係機関との協議を踏まえた追加対応などにより、事業費の増額や工期延長が生じることがございます。
国土交通省では、事業着手後、5年に一度、都道府県の意見を聞くとともに、学識経験者などの第三者から構成される委員会において事業の妥当性を御審議いただき、費用の増加要因や最新データに基づく費用便益分析なども示した上で評価を行い、この評価結果を公表しているところでございます。
事業費が大幅に増加する場合などは5年を待たずにこの評価を行っている、こういう場合もございます。
また、個別工事の契約変更に当たっては、変更する工事の内容を発注者と受注者の間で協議して決めることとなりますが、その際には、発注者である国において、公表されている積算基準などに基づき予定価格を作成し、これを踏まえて適切な価格で契約変更を行っていると認識しております。加えて、契約変更の内容は、本年4月以降、原則インターネットで公表することとしております。
現地に行かなくても、また役所に来なくても分かるようにいたしました。
こうした取組によりまして、事業費などについては適切に見直されていると考えておりますが、引き続き、計画や契約における透明性を確保しつつ、公共事業を実施していきたい、このように考えております。

○城井委員
私も事前に、国土交通省での事業費全体や個別契約における事業費増額時の実態、そしてそのチェックの仕組みの現状については説明を受けました。
資料を御覧ください。
遺跡が出たり、想定した地層と異なる地層だったりなど、事前の想定が難しい理由により着工後の計画変更を行っている。
一方で、着工後に計画変更する場合、先ほど再評価委員会なども含めて見ているということでしたが、結果的には、既に動いている工事を完全に止めるわけにはいかず、計画変更時には随意契約での対応等を行っている、こういう説明でした。
発注者と受注者以外で、着工後の事業費増額時における契約変更が本当に適正だったかどうかというチェックする役割の存在が個別の契約も含めていないのではないか、その積み重なりが雪だるま的な事業費増額を防げていない一因となっているのではないかというふうに考えます。
国土交通省の説明では、着工後の事業費増額のチェックについては設計変更審査会が活用可能とのことでした。
そこで、伺います。
この設計変更審査会はどのくらいの開催実績がありますか。
それは事業費を増額した国発注の公共事業数のどのくらいの割合で開催されていますか。
大臣、お答えください。

○斉藤(鉄)国務大臣
個別工事の契約変更に当たりましては、追加すべき工事の内容を発注者と受注者の間で協議して決めることとなりますが、必要に応じて迅速に協議を行うため、受注者、発注者が一堂に会して協議を行う設計変更審査会を開催しております。今委員御指摘のあったとおりでございます。
設計変更審査会の開催実績につきましては、網羅的に把握してはおりませんけれども、例えば、令和3年度に契約し、完了した関東地方整備局の道路、河川の改築工事など334件のうち、増額変更した工事は252件で、そのうち約5割に当たる132件で設計変更審査会を開催しております。

○城井委員
今の大臣からの御説明によりますと、関東の事例で約半数では開催されたということでした。
つまり、残りのもう半分については、そうした、ある意味で違う、外部での視点を含めてチェックをする場というのが、目が届いていない、こういう状況だというふうに受け止めました。
この契約変更時の事業費増額は、発注者と受注者以外の視点で常にチェックをすべきだと考えます。
なぜならば、先ほどの事例のほかにも、これまでにチェックが行き届かなかった事例、例えば、競争入札も随意契約も経ることなく既存の事業に予算を上乗せし、施工した事例があるからであります。
例えば、東北の復興工事では、競争入札も随意契約も経ることなく既存の事業に予算を上乗せし、施工した事例が5件もあったと本年2月19日に日本経済新聞が報じています。
大臣、この5件の事例は事実でしょうか。
これらの工事の取扱いは会計法などの法律違反ではないですか。
このような問題をどのように取り扱う考えか、大臣から明確にお示しください。

○斉藤(鉄)国務大臣
東北地方整備局が発注した復興工事におきまして、報道がありました5件で工事内容の変更を行ったことは事実でございます。
例えば、このうち、東北中央自動車道掛田トンネル工事については、調整の結果、トンネル工事に伴い発生した土砂の運搬先を、より近傍の工事現場へ変更可能となったこと等を踏まえ、施工中の工事との一体性の観点から、土砂運搬に関する工事等を追加したものでございます。
工事で出た土砂を、遠くに運ぶ計画だったんですが、近くの、それも同じ東北中央自動車道の工事の現場に使って、そこでその土を使った工事を行うということで、同じ工事というようなこともございまして、一体という観点からこの工事等を追加したということでございます。
このように、これら5件はいずれも施工中の工事との一体性の観点から契約変更により工事を追加したものであり、会計法令の趣旨に反するものではないと考えております。
いずれにいたしましても、契約手続の透明性を確保することは大変重要でございます。

委員御指摘のとおりです。

引き続き、より適切な仕組みづくりに努めてまいりたいと考えております。

○城井委員
同じ工事であっても、適切かどうかということは、きちんと外部の目からチェックをすることが必要だというふうに考えます。
こうした事例だけでも、着工後の契約変更時の事業費増額は、やはり発注者と受注者以外の視点で常にチェックすべきだという理由になるというふうに考えます。
事業費全体にしても、そして個別の契約にしても、事業費の増額を行う場合のルールの見直しと、そして検証の仕組みが必要です。
大臣、着工後の契約変更時の事業費増額を発注者と受注者以外の視点で常にチェックをする仕組みを国土交通大臣のリーダーシップでつくっていただけませんか。
大臣から明確にお答えください。

○斉藤(鉄)国務大臣
繰り返しになりますけれども、事業費全体につきましては、事業着手後、5年に一度、都道府県の意見を聞くとともに、学識経験者などの第三者から構成される委員会におきまして事業の妥当性を御審議いただき、事業再評価の結果を公表しているところでございます。
また、事業費が大幅に増加する場合などは、5年を待たずにこの評価を行っております。
個別工事の契約変更においても透明性の確保は重要と認識しており、例えば、本年4月より、契約変更の内容を原則インターネット公開とするなどの取組を実施しております。
今後、更に透明性の確保を図るため、委員の御指摘も踏まえまして、新たに、契約変更前に発注者と受注者以外の第三者からの意見聴取を行うことを含め、具体的な取組について検討してまいりたいと思います。

○城井委員
今大臣から大事な答弁をいただけたと思います。
発注者、受注者以外の第三者から意見を聴取するという仕組みの創設について言及いただけたかと思います。
この検討、いつまでに行っていただけますか。

○斉藤(鉄)国務大臣
第三者の視点を入れるという新たな仕組みの具体化に当たりましては、進行中の工事等への影響、対象工事の選定方法、対発注者以外の第三者の選定の考え方などを整理するとともに、現場への周知徹底を行うため、一定の期間が必要と考えておりますけれども、早ければ来年度にも実施できるよう検討してまいりたいと思います。

○城井委員
是非速やかなお取組をお願いしたいと思います。
次に参ります。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)