生成AIの出力結果に関して、特に既存のクリエーターの権利を国としてどのように守るか 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2023年5月19日衆議院文部科学委員会
○城井委員
続きまして、クリエーターの権利擁護についてお伺いしたいと思います。
生成AIの研究開発、活用を促進していく中で、出力結果に伴うクリエーター、特に既存のクリエーターの権利を国としてどのように守りますか。
特に難しいと私が考えますのは、作品そのものとともに、クリエーターの画風ですとか作風に関する権利をどのように守るか、これが難しいと思っています。
一方で、現存する芸術作品などでも、既存の優れた作品にインスパイア、ある意味で感化、影響された作品は過去にもたくさんあります。
生成AIの出力結果に関して、クリエーターの権利を守る具体的な方策を大臣からお示しください。
○永岡国務大臣
クリエーターの権利を守る具体的方策につきまして、作風ですとか画風はアイデアに当たりまして、これは著作権法上、著作物には当たりませんが、AIの生成物との関係において、クリエーターの著作物に当たるものが許諾なく利用されていれば著作権の侵害に当たります。
この侵害の判断については、最終的には個別の司法判断によりますけれども、AIの生成物の既存の著作物との類似性や、それからあと依拠性が認められる場合には著作権侵害となりまして、著作権者は損害賠償請求や差止め請求が可能となるほか、刑事罰の対象ともなります。
文部科学省といたしましては、このような著作権法の考え方を理解していただけるように、セミナー等を開催いたしまして、速やかに普及啓発をしてまいります。
また、AIと著作権に関する論点を整理するため、文化庁におきまして、知的財産法に詳しい専門家や弁護士などを交えまして検討を進め、その成果を踏まえた周知啓発も行ってまいりたい、そう考えております。
○城井委員
今の大臣のお答えは、基本的には、著作権法、現行法の解釈に基づいての対応、それを踏まえて、新たに持ち上がってきた論点について整理をして、また周知啓発をする、こういう御答弁だったかと存じますが、関連する著作権法の改正を議論いたしましたときに、過去にですね、生成AIのここまでの技術革新は想定していなかったんじゃないかというふうに考えます。
図らずも、現在の状況を見ると、日本の著作権法は、国際的に見ても最も生成AIに有利な法制になっております。
AIの利用を完全に排除することは現実的には難しいことも考慮しますと、技術的な革新を促しながら、著作権者の意向に反する著作物利用から権利者を守る仕組みづくり、例えばということで、法規制の強化も一つの方法かもしれませんが、そのほかにも、権利者側の技術的な防衛、いわゆるクローリング、自動プログラムなどによる情報収集の防止ですとか、権利侵害を発見する技術開発への支援ですとか、また、権利者たるクリエーターにも恩恵が還元される仕組みづくり、こうした幾つかの方法を組み合わせながら行っていくべきだというふうに考えますが、大臣、先ほどの現行法の趣旨周知に加えて、こうした新たな権利者を守る手法についての検討を是非文部科学省、政府においても指示をいただいて、取組をいただけないでしょうか。
○永岡国務大臣
生成AIと著作権との関係に関する議論は、AIに関する平成30年の著作権法
改正を検討する際にも行われております。
具体的に申し上げますと、平成27年から平成29年に開かれました知的財産戦略本部の検討会議におきまして、AI生成物が既存の著作物の著作権を侵害するおそれといった点を含めまして、著作権法上の取扱いに関する議論が行われております。
また、文化審議会におけます検討につきましても、知的財産戦略本部における議論を踏まえて検討いただきまして、その中では、AIによるコンテンツの生成とその後の利用についての議論や説明も行われていたと承知をしております。
今後の仕組みづくりについてのお尋ねでございますけれども、AIと著作権の関係に関する著作権法第30条の4を含めて、著作権法は、著作物の利用実態や技術の進展などの社会の状況の変化を踏まえて、権利者を含む関係者の意見を伺いながら、著作物の保護と利用のバランスを取った規定となっているところでございます。
文部科学省といたしましては、クリエーターを含め、現行の著作権制度の分かりやすい説明に努めるとともに、AIですね、AIと著作権に関する論点、これを整理をするために、文化庁におきまして、知的財産法に詳しい専門家また弁護士などを交えて検討を進めて、その成果を踏まえた周知啓発というのもやはり行ってまいりたい、そう思っております。
○城井委員
大臣、バランスというふうにおっしゃるんですが、先ほどおっしゃった平成30年の著作権法の改正の折には、やはり、ここまでの技術革新のスピードになるというのは想定外だったんじゃないか、つまり、その点については検討が不十分だったというふうに私は考えます。
更に申しますと、現在の機械学習での大量のデータの学習、収集が進んでいく段階で、本当にクリエーターの権利が守られる形になるか。
先日も、決算行政監視委員会の分科会で大臣に伺いましたときにも、例えば、違法コンテンツ、本来だったら止めなきゃいけないところなんですが、大量だとなかなか区別がしづらい、こうした趣旨の答弁もいただいたところでありました。
クリエーターを守るためにはやはり具体的な手段が必要だ、しかも、それは複数あった方がいいということで私からは提案しています。
是非、提案した部分を御検討いただきたいということをお願いしたいと思います。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)