憲法改正の手続としての国民投票法の改正、ネット規制は必要かつ可能だ 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2023年5月11日衆議院憲法審査会
○城井委員
立憲民主党の城井崇です。
私からは、憲法改正の手続としての国民投票におけるネット広告の課題について発言をします。
国民投票法の制定から15年以上がたちましたが、この間、インターネットを取り巻く環境は大きく変化し、国民投票法にも大きな課題を突きつけています。
一昔前と比べ、現在では、インターネットの発展、普及、SNS利用の一般化によって流通する情報が過剰となり、アテンションエコノミーと呼ばれる状況が生まれています。
また、AIなどを駆使したマイクロターゲティングが広がり、フィルターバブルやエコーチェンバーが生じた結果、内心の自由が知らぬ間に侵されるのではないかと懸念されています。
さらに、フェイクニュースの流通などを踏まえると、言論の自由市場が機能するという考え方は、残念ながら再考すべきです。
フェイクニュースや外国からの不当な干渉といった問題の解決が民主主義の強化にとって極めて重要であることは、今や世界各国の共通認識です。
立憲民主党は、これらの課題に対処するため、これまでも国民投票法の改正を提案してきました。
これまでの憲法審査会での議論では、ネット規制は困難であるという立場の会派もありますが、立憲民主党は、ネット規制は必要かつ可能であるとの立場です。
実際、外国の例を見ると、ネット規制を導入しているケースが多くございました。
これに関連して、国立国会図書館から3月に刊行された「諸外国の国民投票運動におけるオンライン広告規制」という報告書が大変労作でありまして、非常に参考になります。
諸外国それぞれに異なる背景や事情があると思われますが、ネット広告等について、透明性や公平性の確保、フェイクニュース対策といった目的から検討が行われ、一定のルールが設けられている国もあるようです。
先日も中川幹事から提案しましたが、改めて、この審査会の場で国立国会図書館から説明を聴取することを提案します。
森会長に、幹事会で協議することを求めます。
その上で、立憲案の趣旨と内容について、諸外国の例と対比しつつ、改めて説明します。
まず第一に、放送CMについて、勧誘広告を全面的に禁止するとともに、政党等による意見広告を禁止すべきです。
また、ネットCMについて、政党等によるネットCMの禁止、ネット事業者等による掲載基準の策定の努力義務、広報協によるガイドラインの策定などの規定を盛り込むべきです。
国民投票における放送CM及びネットCMの規制は、フランスでも行われています。
具体的には、国民投票の投票日の六か月前から放送CM及びネットCMの利用が禁止されています。
第二に、資金力の大小によってCM量に格差が生じることを防ぐため、支出金額の上限を設定するとともに、収支報告書の提出義務を課すべきです。
英国、ニュージーランドでも、国民投票運動の公平性を確保する観点から、支出金額の上限が設定されています。
また、外国人等からの資金援助を禁止すべきです。
外国人等に対する規制は、英国、フランス、アイルランド、ニュージーランドにも見られます。
第三に、ネット等の適正利用の確保を図るための表示義務を課すべきです。
英国、アイルランド、ニュージーランドでも、国ごとに義務の対象や内容に差異は見られますが、何らかの表示義務が課されています。
第四に、情報アクセス権を保障する観点から、広報協が全国各地で説明会を開催したり、オンラインで広報することを可能とする規定を設けるべきです。
オンラインによる広報は、アイルランドでも行われています。
第五に、フェイクニュースなどを防ぎ、情報環境権を保障する観点から、ネット等の適正利用や民間のファクトチェック機関と広報協との連携について規定を設けるべきです。
フェイクニュースなどの拡散を規制する措置は、フランス、アイルランドでも取られています。
これらのほかにも、ネット広告に関与する特定デジタルプラットフォーム提供者の責務の明確化、バンパー広告やインストリーム広告などの動画広告の取扱い、フェイク広告対策としてのオリジネータープロファイル技術の開発、動画配信サイトの位置づけなど、新たに対処すべき論点も出てきています。
以上の各項目は、国民投票法改正法の附則4条に掲げられた検討項目にも合致するものであります。
これらに対処しないまま、万が一、憲法改正の国民投票に突き進めば、国民の間に取り返しのつかない分断を招くおそれがあることを指摘して、私の発言を終わります。
○森会長
御提案の件につきましては、幹事会等で協議をいたします。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)