憲法改正の議論を言う前に、大前提として憲法を守り憲法の要請に応える取組みを 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2023年3月9日衆議院憲法審査会
○城井委員
立憲民主党の城井崇です。
憲法を論じるに当たって、大前提として憲法をしっかり守れているかとの観点で二点申し上げます。
まず、岸田総理の施政方針演説での、政治、特に政府と国会の関係に関する発言が、憲法の国民主権、議院内閣制による行政監視を否定しているのではとの憲法違反の疑義を指摘します。
岸田総理は、施政方針演説において、政治とは、政府における議論と検討によって政府が決断した方針や予算案、法律案について、国会の場で議論をし、実行に移す、そうした営みであると発言をしました。
これは、憲法の定める議会制民主主義の認識が間違っています。
なぜなら、憲法にある国民主権に基づき、内閣法第一条二項には、内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員から成る国会に対して連帯して責任を負うとあり、行政権の行使に対する民主的統制の重要性を強調している趣旨に反するからです。
国会審議を経ることなく、政府が非公開の場で議論、検討し、勝手に決議することを容認すると、議院内閣制の下での国会による行政監視が機能しなくなります。
決断をした方針や予算案、法律案を、決定後、国会で議論をするからよいのだと強弁するかもしれませんが、特に、安全保障など国の大方針の変更に関わる議論について、論点を整理する段階から、事前に国会による行政監視の機能が発揮されるべきです。
もう一つの憲法違反の疑いは、憲法五十三条にある臨時会の召集義務についてです。
これまでも、憲法に基づく召集の要求が出されても召集がなされない、あるいは長期にわたって召集されない事例が相次いでいます。
条件を満たした要求であれば、内閣は、その召集を決定しなければならないと憲法五十三条にあります。
政府は、召集時期は憲法で触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねている、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない、合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えていないと答弁しています。
この臨時会の召集義務について、政府の対応を憲法に照らすと、二つの問題があります。
一つは、召集期限が明確でない問題です。
合理的な期間内と言う一方、翌年には必ず召集される常会が開かれるまで待てば召集義務は果たされたと解するならば、この五十三条の臨時会召集義務の条文の効力が無力化をされてしまいます。
もう一つは、長期にわたって召集されないことで、議員立法の提出権がある国会による内閣への関与が確保されない問題です。
長谷部恭男・早稲田大学教授は、令和二年六月十日那覇地裁判決の判例解説で、議員の要求によって召集される臨時会での審議事項は、内閣提出の案件に限られるわけではないことは当然のことであり、案件の内容審議のための内閣の準備不足を理由に召集を延ばすことはできないと考えられると指摘しており、傾聴に値します。
以上を踏まえて、召集に必要な物理的な準備期間と臨時会の議案としての議員立法の提出権がある国会による内閣への関与を念頭に、召集期限の明確化が必要です。
立憲民主党など野党四党からは、憲法五十三条に基づく要求時における二十日以内の臨時会召集を規定する議員立法を提案しています。
この二十日以内は、自民党の改憲草案にも記載があり、多くの政党で方向性が一致する提案です。
臨時会の召集義務をめぐっては、憲法に違反せず、召集期限を明確化し、国会による適切な行政監視を行うことが必要です。
憲法改正の議論を言う前に、大前提として、憲法を守り、憲法の要請に応える取組を内閣や与野党に強く求めます。
以上で私の発言を終わります。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)