異常気象時の湾外避難、外国船舶を含めて新ルールを周知徹底すべき 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

 

2021年5月21日 衆議院国土交通委員会

 

【異常気象等に伴う船舶事故の未然防止策の充実強化】
(異常気象等時における湾外避難等の勧告・命令制度の創設について)

 

○城井委員

さて、ここからは、そうしたきっかけとなった事故なども踏まえてということですが、実際にこの法律を仮に運用していく場合に、様々、既存の仕組みともぶつかる点もあろうかというように思いまして、そうした点を、少し細かいところになりますが、確認してまいりたいと思います。

まず、異常気象等のときにおける湾外避難等の勧告、命令制度の創設についてお伺いします。

関空連絡橋へのタンカー衝突事故を踏まえ、現在、同空港周辺海域において、船舶交通の障害発生等のときを想定した現行の海上交通安全法の規定に基づき、台風等の際に一定の船舶に対する航行制限が行われています。

新たな制度を設けなくても、現行法に基づく措置を全国の必要な海域に拡大適用するという手段で本改正案と同様の効果が得られるのではないかとの指摘があります。

政府はこの指摘にどのように答えるでしょうか。

海上保安庁長官からお願いします。

 

○奥島政府参考人

お答えいたします。

海上交通安全法が適用される海域におきましては、現行の海上交通安全法第26条第1項に基づき、工事や作業を実施し、あるいは沈没船などにより船舶交通に障害が発生した海域について、船舶の航行の制限を行っており、関西国際空港の周辺海域においては、当該規定を適用して、大型台風の接近時などに一定の航行制限を実施しているというところでございます。

一方、港則法が適用される港の区域におきましては、平成21年に創設されました関連規定、具体的には39条第3項、4項でありますが、この規定に基づき、異常気象時、錨泊の制限や、港外への避難などの命令に加え、台風の接近など船舶交通の危険を生ずるおそれがあると予測される段階から、早期に必要な措置を促すことができる勧告の規定を整備しているところでございます。

今般、近年の異常気象の頻発化、激甚化を踏まえ、船舶交通がふくそうする海上交通安全法の適用海域においても、港則法と同様、異常気象時における安全な海域への避難等を命令するための規定とともに、台風等の接近に際し、早期に必要な措置を促すことができる勧告の規定を整備することとし、より適切な対応を図っていくこととするというものでございます。

 

○城井委員

本改正案による対策と他の手段による対策との比較についてお尋ねいたしました。

港則法と同様にということでの対応という趣旨での答弁と受け止めさせていただきました。

次に、適用海域について伺います。

令和元年から実施されている走錨事故防止対策では、対策が必要な45か所の重要施設の周辺海域を3つに分類し、錨泊実態があり、走錨に起因する事故が起こりやすい海域を規制海域として、対策を最も強化しています。

現在、海上交通安全法の適用海域にある重要施設で、規制海域にある施設は関西国際空港だけです。

本改正案では、同空港周辺海域に限定せず、全ての海上交通安全法適用海域において湾外避難等の命令等を行えるようにした理由は何でしょうか。

政府の見解を海上保安庁長官からお願いします。

 

○奥島政府参考人

お答えいたします。

東京湾、伊勢湾及び大阪湾を含みます瀬戸内海の海上交通安全法の適用海域につきましては、港則法が適用される港内と比較して海域が広いため、台風などの来襲時には港内、湾外からの船舶の避難場所として利用されているところでございまして、これまでは異常気象時に船舶交通を制限する規定を設けておりませんでした。

しかしながら、平成30年9月の台風21号の際の関西国際空港連絡橋へのタンカーの衝突事故、あるいは令和元年9月の台風15号の際の南本牧はま道路への貨物船の衝突事故など、台風などの異常気象等の頻発化、激甚化に伴い、船舶交通がふくそうする海域において、船舶の走錨による重大事故が発生しているところであります。

こうした状況を踏まえ、本法案では、船舶交通がふくそうする海上交通安全法の適用海域において、異常気象時に、船舶を湾外に避難等するよう勧告し、さらには命令をかける制度の創設、海上空港等の臨海部に立地する施設の周辺海域において走錨事故の防止を図るために情報を提供し、聴取義務をかけることや、危険回避の措置を勧告する制度の創設などといった措置を講じることにより、海上交通安全法の適用海域においても、異常気象時に船舶交通を制限する規定を創設するものであります。

 

○城井委員

本改正案と既存の規制海域との関係について確認をさせていただきました。

続きまして、事故対策を実施している45か所の重要施設のうち、長崎空港、渥美火力発電所、志布志国家石油備蓄基地の3つの施設が、海交法及び港則法の適用海域外にあります。

両法の適用海域外にある重要施設周辺海域については海交法等の改正後も法的根拠を持った措置が講じられないのではないか、これらの重要施設周辺海域における事故防止対策はどのように講じられるか、政府の見解を海上保安庁長官からお願いします。

 

○奥島政府参考人

お答えいたします。

関西国際空港連絡橋への衝突事故などを受け、海上保安庁では、海上空港や火力発電所など、全国の臨海部に立地する施設の周辺海域において、異常気象時の走錨事故防止対策を重点的に行ってまいりました。

今般の法改正により、これまでの港則法の適用海域に加えて、東京湾、伊勢湾及び大阪湾を含む瀬戸内海におきましても、異常気象時の錨泊制限等の勧告、命令といった措置が法的に可能となります。

走錨対策を重点的に実施している臨海部に立地する施設の周辺海域の多くは、港則法及び海上交通安全法が適用される海域でございますが、先生御指摘のとおり、長崎空港、渥美火力発電所、志布志国家石油備蓄基地の3つの施設は、いずれも法律が適用されません。

しかしながら、両法の適用されない海域は、概して船舶交通量が少なく、走錨による事故の発生の可能性も低いため、両法の適用海域に含めた上で法律による規制をかける必要はないと考えてございます。

当該海域の監視体制の強化を図るとともに、巡視船艇による指導を行うなどにより、事故防止対策を適切に行ってまいりたいと考えてございます。

 

○城井委員

船舶の航行の数が少ないということでの取扱いということを今の答弁で確認をさせていただきましたが、後段で触れていただきました、きちんと監視をしながら適切な対応という点は大変重要だというふうに思いますので、その点は是非お願いしたいと思います。

続きまして、湾外避難等の新ルールの周知について伺います。

旅客船や貨物船の湾外避難の実施に当たっては、湾外避難に伴う費用や運航スケジュールの遅れの発生も想定されます。

このため、船舶運航事業者の協力だけでなく、旅客や荷主等の理解も必要です。

また、外国船舶の関係者への事前の周知など、綿密な周知徹底がなされなければ、現場での湾外避難作業が混乱するのではないかとの現場関係者からの心配の声も届いています。

湾外避難等の円滑な実施に当たり、外国を含めた関係者への周知を広く図るためにどのように取り組むか、大臣の考えをお聞かせください。

 

○赤羽国務大臣

この法案で新たに創設をいたします湾外避難制度につきましては、船舶を利用する様々な企業や荷主の皆様の経済活動等にも大きな影響を与える可能性があり、船舶運航者のみならず、荷主等の船舶を利用される方々にも、御理解、御協力いただけるよう丁寧に説明していかなければいけない、こう考えております。

さらに、消費者や旅客など国民の皆様の理解も得られるように、ホームページへの掲載などを通じまして、広く周知することに努め、制度の普及と定着を図ってまいります。

外国船舶に対しましては、海上保安官が、入港した外国船舶を訪問する機会等を活用いたしまして、英語版のリーフレット等を配布しながら周知に努める一方、外国船舶の出入港に係る手続などを代行する船舶代理店などの海事関係者の御協力も得て、広く周知するように努めてまいりたいと思っております。

 

○城井委員

新しいルールを実際に現場で運用する折には日本の船舶でも戸惑う部分があるというふうに推察をされますし、そのような声も届いております。外国船舶ならなおさらだと思います。

十分な周知を図っていただくように引き続きお願いしたいと思います。

続きまして、平成28年の海交法改正において、非常災害発生時における海上保安庁長官による交通障害の発生等に関する情報提供や船舶に対する移動命令等の制度が創設をされています。

この非常災害発生時における措置と今回創設される異常災害等のときにおける措置は、国においてどのような整理をしているのか、大臣からお答えいただけるでしょうか。

 

○赤羽国務大臣

簡潔に申し上げれば、前者が災害が発生した後の定めでございまして、今回の法改正でお願いしているのは予見可能な事象を捉えての予防的な対応でございます。

平成28年の海交法改正にて創設をされました非常災害時の一連の措置は、船舶同士の衝突による大規模火災などの災害が発生した後に、港内を含む湾内全域におきまして、海上保安庁長官が、災害発生を周知し、航行制限をかけるなどの船舶交通の危険を防止するための措置を実施するものでございます。

他方、今回の改正により新設をさせていただきます異常気象時の措置は、台風など予見可能な事象を捉え、船舶交通の危険が生じるおそれが予想される段階から船舶に対して避難を勧告するなどの措置を講ずることによりまして、事故の未然防止を図るものでございます。

今回の改正によりまして、予防的段階からの対応が強化されることとなり、船舶交通の一層の安全の確保に寄与するもの、こう考えておるところでございます。

 

○城井委員

非常災害時と異常災害時の関係について確認させていただきました。

前者については災害発生後、後者については予防的対応ということで、明確な区切りを確認させていただいたところであります。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)