関空連絡橋タンカー衝突事故 海上保安庁の事前対応、情報提供は適切だったか 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2021年5月21日 衆議院国土交通委員会
【異常気象等に伴う船舶事故の未然防止策の充実強化】
(関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故について)
○城井委員
立憲民主党の城井崇です。
今回は、海上交通安全法改正案、特に、この法律案が、既存の他の法律もある中で、現場においてどのように運用されるかなどについて、赤羽国土交通大臣と奥島海上保安庁長官に順次質問をいたします。よろしくお願いいたします。
まず、異常気象等に伴う船舶事故の未然防止策の充実強化について伺います。
初めに、法改正のきっかけともなりました関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故についてお尋ねします。
関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故が発生した要因を国としてどのように分析しているか、改めて政府の認識を、海上保安庁長官からお願いします。
○奥島政府参考人
お答えいたします。
関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故につきましては、平成31年4月、運輸安全委員会より調査報告書が出されてございます。
この報告書によりますと、大阪湾を含む瀬戸内海に海上台風警報が発表されていた状況下、当該タンカーが、一、台風避難の目的で関空島南東方沖の北方約1マイルに連絡橋がある錨地に錨泊したこと、二、2つのいかりのうち1つのいかりのみを使用した単錨泊を続けたこと、三、台風接近に伴う強い風及び波浪により走錨し、一旦、主機を使用して圧流が止まったとして、風が強まった後も前進推力がないニュートラルの位置にし続けたことから、本船を制御する距離的な余裕がない状況で再び圧流され、連絡橋に衝突したものと考えられるといった内容の報告書であると承知をしております。
海上保安庁では、このような事故原因も踏まえ、安全対策の強化に取り組んでいるところでございます。
○城井委員
事故発生当時、同空港周辺海域においては、海上保安庁による錨泊自粛の行政指導により走錨に起因する事故防止対策を実施していたにもかかわらず、衝突事故が発生をしました。
このことに鑑み、国として行ってきた行政指導による錨泊自粛や湾外避難の推奨の効果をどのように評価していますか。
行政指導による措置を法律に基づく措置とすることで何が変わるのか。
また、事故当時の情報提供の在り方は適切だったか。
政府の見解を、海上保安庁長官からお願いします。
○奥島政府参考人
お答えをいたします。
海上保安庁におきましては、関西国際空港の陸岸から3マイル以上離れた場所で錨泊するよう、機会あるごとに注意喚起を行ってきておりました。
タンカーの衝突事故が発生した当日、平成30年9月4日、そのときも、大阪湾海上交通センター及び第五管区海上保安本部から、無線通信として、AIS、これは船舶の位置、針路、速力等の安全に関する情報を自動的に送信するシステムでございますけれども、このAISによる文字情報の送信あるいはVHF無線電話による音声での呼びかけにより、全ての錨泊船を対象として一斉に注意喚起を発出しております。
あわせて、走錨の予兆のある錨泊船に対しては、大阪湾海上交通センターから、船舶電話等により個別に注意喚起を行ってきました。
海上保安庁が把握する限り、事故当日、関西国際空港から3マイル以内に錨泊船が13隻ございましたが、当該タンカーを含む6隻に注意喚起を行ったにもかかわらず、事故が発生したものでございます。
このように、行政指導による場合、多様な関係者がございますので、それが足並みをそろえるということが困難であるなどからその実効性に欠けるという課題がございました。
こうした状況を踏まえ、今回の法改正により、海上交通安全法に基づき、船舶に対し湾外への避難などを勧告し、さらには、命令をかける制度の法制化を新たに図ることで、湾外避難等の実効性を確保し、台風等の事故発生の防止を図ることとしております。
今後は、この規定に基づき、異常気象時に関西国際空港など臨海部の施設の周辺海域で錨泊する船舶に対し、移動や退去等を勧告、命令することができるようになるため、船舶交通の一層の安全確保を図ることができるものと考えております。
○城井委員
注意喚起等の行政指導がなかなか実効性に欠けていた、だからこそ法制化によって実効性を確保しよう、こうした狙いだという答弁だったかと思います。
その上で、一点、お伝えをというふうに思います。
事故発生時の海上保安庁の動きなどについて、海事関係者から以下のような意見もあります。
事前の海上保安庁の出動の在り方によっては防げたのではないか、海上保安庁が先にアンカーを打ってよい場所を確保していたのではないか、事故発生後に海上保安庁は速やかに救助に向かったのか、防波堤など事前対策が行える部分はどうだったか。
厳しい意見もございますけれども、現場からこのように見える部分があったという点も踏まえて、今後の対応に生かしていただくことをお願いしたいと思います。
令和2年の海難発生状況を見ますと、事故原因の多くが人為的要因となっています。
湾外避難等の新たな対策の導入とともに、人為的要因による事故を減らすことも必要と考えます。
国としてどのように取り組む考えか、大臣の見解をお聞かせください。
○赤羽国務大臣
先ほど長官からの答弁は、関西国際空港のああした事案があり、私も同じ認識でありますけれども、日頃からのルール決め、避難の在り方ということを事前に決めていなかったということから、ある意味では、現場での対応というのがああした事案を起こしてしまったということがあったというふうに思っております。
今御指摘の海事関係者からの海上保安庁に対する御指摘について、必要があれば長官から後で答弁させたいと思います。
いずれにいたしましても、あの事案を教訓といたしまして、人為的要因による安全対策を講じるということは、海上交通の安全確保に万全を期すという観点から大変重要だというふうに考えております。
まず、国交省といたしましては、船舶側の対策として、錨泊検討地点における走錨リスクを判定するシステムの普及を図るということが一点でございます。
また、海上保安庁の監視体制の強化につきましては、錨泊船舶の走錨の予兆を早い段階で検知するシステムを、本年度中に現場に配備するということを予定しておるところでございます。
加えて、今回創設されます湾外避難制度におきましては、船舶を安全な海域に無理なく避難できるよう、時間的な余裕を持って勧告することとしておりまして、人為的要因に起因する走錨事故の防止に資するものというふうに考えておるところでございます。
○奥島政府参考人
先ほど、海事関係者等からの厳しい御意見もあるという御指摘がございました。
当時の状況の中で、現行法制度の中で海上保安庁としてはやれることを一生懸命やったというふうに思っておりますが、一方で、事故が起こったこと、これも事実でございます。
そのため、まず第一に、今回お願いしてございます制度を改正し、安全の実効を期していくということがイの一番だというふうに思っておりますし、また、様々な御意見の中でそういった法の運用を改善していく余地もあろうというふうに思いますので、そういった声にも耳を傾けながら、より船舶交通の安全確保に努めてまいりたい、このように思ってございます。
○城井委員
海上保安庁長官に加え、大臣からも丁寧な今回の法案に対する思いと趣旨をお述べいただきました。
また、海上保安庁長官からも、先ほどの、厳しい意見ということでお伝えをさせていただきましたが、そこを受け止めての決意についても聞かせていただいたところであります。
私ども、しっかり受け止めてまいりたいというふうに思います。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)