義務教育費国庫負担制度改正案について

2004年3月17日 衆議院文部科学委員会

 

○池坊委員長 

質疑の申し出がありますので、順次これを許します。

城井崇君。

 

○城井委員 

民主党の城井崇でございます。

通告に従って質問をさせていただきたいと思います。

まず冒頭、この義務教育の話、これまでも議論がございました。

今回のこの国会の中での委員会でも議論がございました。

その中で、新人で、特に若い世代として、聞いていてどうしても一つひっかかることがありますので、まずこれを大臣にお伺いしたいというふうに思っています。

それは、義務教育のこれまでのあり方というもの。

先日も、我が党の平野筆頭理事からの質問の中で大臣は、義務教育の水準確保というものがこれまでの発展に寄与してきたということをおっしゃられておりました。

しかし、実際に義務教育のこれまでの、例えば私が心ある部分から見てきて二十年余りということになりましょうか、その間に、本当に水準の確保が発展に寄与してきたということだけでとまってしまっていいのか。

むしろ、その中で、これからの発展に寄与していこうという部分もたしかあわせておっしゃられたと思います。

ただ、その間にはまってしまっている部分があるのではないかというところが一番気にかかっています。

特に、小学校、中学校でこの二十年起こってきた問題というもの、これまでも文部科学省としても取り組んできた部分はあると思います。

しかし、殊さらにこの義務教育の果たしてきた役割といったときに、その部分の問題を横において思考停止に陥ってしまっていないかという危惧がまず一番、これまでの質疑を聞いている中でございました。

この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

お願いします。

 

○河村国務大臣 

義務教育を全国一律に行って、そしてその水準を維持する。どんな辺地であろうと離島であろうと、もちろん都会であろうと、水準の高い先生を確保していく、そういう意味においてその条件を整備していく、そういう意味において憲法の要請に基づいて国が責任を持ってこれまでやってきた、それが全体の維持を保ってきた。

しかし、現代の大きな社会変化の中で、物の豊かさと並行して心の豊かさが育っているかどうかということも指摘されてきた。

そういう今の制度がいわゆる画一的で受け身的であると言われる、そういうものに対する制度疲労的なものがいろいろ指摘されていますね。

そういう意味で、今、城井さん、思考停止に陥っているのではないかと言われましたけれども、これでいいのかという議論ですね。

だから、これを踏まえて、今から、これからどうしていったらいいかということ。

例えば、今からもいろいろ議論されますが、これから国と地方の役割分担の中で、もっと地方に裁量を持たせて、それぞれの地域の特性に合わせた、あるいは地域がやっている教育がもっと活性化するような仕組みに変えていこうという国民的要請があるということ、これを踏まえて、文部科学省もそれにきちっと対応していくというのがこれからの課題だと思いますね。

だからといって、国がその義務教育の責任を放棄していいのか、義務教育に国が持つ役割というのを放棄して一切関与しないということでいいのかどうか。

これは、私はやはり水準を維持するのが国の責任だ、こう思っていますから、そういう理論で展開をしていって、そういう意味でこれまで果たしてきたし、これからも果たしていかなければいけないけれども、その態様といいますか、中はこれから大きく変えなければいけない部分もある。

そういう気持ちでこれまで果たしてきた、そしてこれからも果たしていきたい。

しかし、それは今までどおりではやはり問題点もあろう、それに対応した役割を果たしていこう、こういう意味で答弁をしたと思っておるんですが。

 

○城井委員 

今の国民の目から見まして、これまでの努力というものもありましょう。

ただ、実際に見ていくときに、大臣、司馬遼太郎という小説家を御存じでしょうか。

「坂の上の雲」という小説があります。

よく、日本のこれまでの発展は「坂の上の雲」に例えることが多いと思います。

ただ、その「坂の上の雲」で本当によいのかというところの議論が、この十年ほどの日本の一つの議論ではなかったかというふうに思っています。

特に、イギリスあるいはアメリカといったところが経験してきた先進国型衰退、これまでの先進国はある程度の発展をしてきたけれども、そこで、精神が弱り教育が弱りといったようなところに直面した後の対応が問題なんだというところを言っている学者がおります。

そういった部分が、今の文部科学行政がとりわけ直面している課題の大きなところではないかと思っておりますので、そこの部分はぜひ心にとどめていただきながら今後取り組んでいただきたいというふうに思います。

次に移らせていただきます。今回の義務教育費の国庫負担の改正が基づいている三位一体改革についてお伺いしたいと思います。

我が党から見ましたときに、特に今回の三位一体改革、先日来、三位ばらばらということをお伝えしているかと思います。

実際に、では、精神論の部分は先日伺いましたのでよくわかりました。

これまでの三位一体改革がその教育の部分、とりわけ義務教育の部分がつくられてくるに当たって、文部科学省としても、例えばそこに関係をする他省庁の方々と協議を進められてきているというふうに思います。

その中で、それぞれの立場があるだろうというところは想定をしながら、では、例えば総務省あるいは財務省といったところがこの義務教育に対してどのような姿勢で臨んできて、どのように議論してきたのか。

文部科学省として、この部分はかち取れた、残念ながらこの部分はなかなかかち取れなかった、譲ってしまったというような部分があろうかと思います。

その他省庁との意見の兼ね合いの部分も含めて、まずは文部科学省としてのそれまでの他省庁の姿勢についての御見解を伺いたいと思います。

 

○河村国務大臣 

総務省、麻生大臣の立場、これはやはり地方分権、地方主権といいますか、そういう方向で、地方の自由度をいかに増すかという形で考えてこられる。

それから財務省側は、いわば財政論といいますか、いかに効率的に税金をうまく使っていくか、極論をすれば、子供の数が減るのだから当然先生の数は減ってしかるべきだという割り切り方ですね。

私の方の立場は、いや、やはり教育を重視する日本のこれまでやってきた伝統的な日本の考え方、やはり教育論でこのことは考えてもらいたいという意見が絶えず対立し、あるいは時には、それはそうだとは言いながら、しかし財政としてはこうだという考え方ですね。

それで、そういう中ですから、教育は大事だということについて私は総論として異論はないんだろうけれども、しかし、現実を見たときに、ないそでは振れないと言われる部分もありますから、これは効率化も図っていかなければいかぬ。

こういう面も考えながら、しかし、しからば国の基幹、根幹である教育をないがしろにするわけにいきませんから、そういう立場で我々はやってきたわけです。

三位一体論の中で、補助金のあり方を見直せ、それから、今の義務教育費国庫負担制度のあり方そのものを見直せという議論も来ております。

しかし、日本の教育の根幹を守るこの制度は、優秀な教員を一定数きちっと確保する、特に教育は先生だと言われる部分、そういうものからいって、この制度の根幹を我々は守っていきますよということは絶えず言い続けておりますし、その姿勢は一貫して変わっておりません。

それを貫くという方向で、今、まさに十八年度に向けてこれからもさらに議論をする。

それから、我々の方もそれを手をこまぬいて見ているわけにいきませんから、中央教育審議会、こういう問題について専門的に知識を持っておられる皆さん方にも、一体どうあるべきかということを今まさに議論をしていただいておって、それを我々としては根拠にしながら、義務教育の国がやはり責任を持つんだという点をきちっとやっていきたいと思っております。

今この時点で、何を得て何を得なかったかという点は、まさにそれが進んでおるという段階で、我々としては、この根幹をきちっと守っていく、国が義務教育について責任を持つんだということをきちっと位置づけたい、こういう思いで、今まさに三位一体論議、総務大臣、これからまた財務大臣ともそういう議論を闘わせていかなければいかぬ、こう思っているんです。

 

○城井委員 

今の大臣のお話を伺っておると、大臣は、ある意味で道をきわめんとする柔道家のような感じを非常に受けます。

ただ、今闘っている三位一体という舞台は、残念ながら柔道の試合ではないんですね。

例えて言うならば、最近ちまたではやりの異種格闘技、バトルロイヤルと言ってもいいかもしれません。

大臣は柔道家として多分その舞台に上がられている。

ただ、そこには空手道をきわめんとする空手家たる総務省と、あるいは、興行が成り立つように何とか舞台回しをしていかなければいけないと思っている興行主かつショープロレスラーの財務省がいるわけですね。

そういうそれぞれがある意味で道をきわめんとする、あるいはある意味でショーの財政が回っていかないと困るというようなところがある中で、そのバトルロイヤルが実はシナリオがなく進んでいるんじゃないかと。

つまり、そこでガチンコをしているふりをしながら、先ほども平成十八年度という話がありましたけれども、実際にはガチンコをするふりをしながら、ちょっとパンチを当てておきますからまた次に勝負を流しましょうよというところになっているんじゃないかという気がしています。

特に、例えば税源移譲予定特例交付金という制度で、当面の間はサポートしますというふうなことにしました。

ですけれども、肝心の義務教育の姿、十八年の議論まで譲るということになった。

つまり、寸どめはしていてパンチは当たっていないというような状況なんじゃないかという感じがしています。

ただ、そのときに、では、先ほどのそういう柔道家のあり方に対して、きょうはお願いしてお呼びしておりますが、空手道をきわめんとする総務省の、その空手に対する道の考え方と申しますか、今回の三位一体について、義務教育について、特に分権のお立場からお考えがあろうかと思います。

その部分を率直にお話をいただきながら、このショープロレスのあるべき姿、シナリオなきでは困ると思います、ぜひ考えたいと思いますので、お聞かせいただきたいと思います。

 

○岡本政府参考人 

お答えをさせていただきます。

義務教の国庫負担制度につきましては、御案内のように、昨年の基本骨太二〇〇三におきまして、地方分権を推進し、義務教育に関する地方の自由度を大幅に高めるという考え方に立って検討するというふうにされております。

私どもといたしましては、その検討に当たっては、国は、教育制度の根幹や全国的に確保すべき水準などのできるだけ大枠に絞って、具体の実施は地方団体が、地域の教育環境や児童などその地域地域の実情に応じて、できるだけその創意工夫を凝らしながら教育サービスを提供するというやり方ができるように、そういう国と地方の適切な役割分担に見直していって地方の自主性を拡大していく。

そういうことがまた全国知事会等からも、そういう観点に立って全額の一般財源化というような要望がなされておりますので、そういう全額の税源移譲によって一般財源化を図っていくという観点で、これまでもいろいろな議論をさせていただきましたし、また、十八年度の全体の議論に向けてこれからも取り組んでいきたいというふうに考えております。

 

○城井委員 

総務省の審議官の方に端的にお伺いをします。

地方分権が進んで義務教育を仮に地域に預けたときに、どのような取り組みを、具体的にこれまでにない部分ができるとお考えですか。

 

○岡本政府参考人 

いろいろな地域におけるいろいろな工夫は、現にいろいろな取り組みがなされていると思っておりますが、いろいろなやり方の問題があります。

例えば現在でも、今の制度の中で、習熟度別でありますとか、あるいは、その地域地域の子供の実情に応じていろいろなクラス分けあるいは教育の仕方をされている工夫がございます。

それが今、今回の総額裁量制を含めいろいろな制度改正の中で対応していただいている部分もございますし、また、あるいはそれで対応し切れない部分もございます。

そういうものをとにかくできるだけ多くふやしていく、そういうことによって、地域でまさに住民と直結してそういう教育行政がなされ、それをまた住民の目からいろいろな意見が闘わされて、より充実した教育に向かっていくというようなあり方があるのではないかと思いますが、私どもの立場は、より分権、地方がより教育の責任を持って対応していくということをどのようにしたらできるのかということにあると思っております。

 

○城井委員 

どうやらきょうは総務省の方は、寸どめというよりは演武に近い形になっておろうかと思いますけれども、実際、文部科学省さんにしても総務省さんにしても、そうして演武を繰り返しているうちに、結局絵が見えないまま進んでいくときに、ではだれが一番負担をこうむってしまうのかといったときに、そのシナリオなきバトルロイヤルを見せられている国民の側だというふうに思うんです。

特に、先ほどからのやりとりの部分を伺っておりますと、三位一体というよりはむしろ三位三すくみではないかというふうに感じるところもあるわけです。

演武を見せ合うことで議論が進むとは思っていません。

これまでも恐らく我々の見えないところでパンチやキックを当て合っているに違いないというふうに想像はするわけですが、そこの部分が我々に見えずに、これからの義務教育のあり方、あるいはいわゆる教育における地方分権というものを進めていくという基本的な方向を持ってやっていくとしたときに、そういう演武だけ見せられていたときに、我々には、とてもじゃないけれどもそこに想像が至らないというところがあります。

我が党でも、三位一体の具体的な姿が見えないから、そこをまず示してくれということを言っているわけですけれども、先日筆頭理事から伺っていただいたときには精神論だった。

今見たときには、残念ながら、まだパンチが当たる姿もなかなか見えないというところがあります。そこは、今後の審議でぜひ我々に見える形で、どのように本気で当てているのかというところをお見せいただきたいということを要望して、次の質問に移りたいと思います。

今の質問に関連しまして、改めて文部科学省の見解をお伺いしたいと思っています。それは、教育に関する分権の程度についての問題でございます。

大臣、率直に言って、地方というか地域はどれぐらい教育に関する受け皿になり得るかとお考えでしょうか。

例えばこういう考え方があるかもしれないと思っているのは、一つは基準、水準づくり、それから予算、それに関する運営、運用の部分という三段階に分けてもよいんじゃないかと思いますけれども、その点について、大臣お願いします。

 

○河村国務大臣 

基本的な問題として城井さんと話さなければいかぬと思うんですが、地方分権を考えるときに、私はむしろ、私も地方議会からの出身でありますから特にそういう思いがしますが、今の地方分権、地方主権の考え方というのは、もう身近なところでやれる、住民に近いところの行政はできるだけそちらでやってもらう、一番身近なところでやるのが本来のあり方だという考え方ですね。

それでいきますと、私は、教育は地方は受け皿じゃないと思うんですよ。

だから、地方が主体的にやるんだということに考えていきませんと、この地方分権は成り立ちません、と思います。

だから、受け皿論というのはちょっと、受け皿というのは、やはりどうしても中央があってそれを受けてくれるのが地方だという考え方になりますから、むしろこれからの教育、私は、地方分権、教育こそまさに地方が本当にやっていることだと思うんです。

どっちかというと、国は、全体の標準を下げないように見ながら、教育のセンターとしての役割を果たしていく。

だから、はしの上げおろしまでもう言わないというのがこれからのあり方でしょうから、そういう意味でいえば、できるだけ地方に裁量を増すというのが、この考え方は正しいと思うんです。

だから、その考え方をずっと進めていけば、もうともかく国は何も言わないから、財源も何も全部渡しますから、全部やってくださいと。

やらせてくれ、やらせてもらいたいという意見を言われるのが知事会の中心的方々、いらっしゃいます。

しかし、ちょっと待てよというのが、一方、しかし、さはさりながらやはり自由勝手にやれば、財政力が違ったり、いろいろな地域の取り組みの中で、そうはいってもやはり財政というのは大きいですから、この点についてやはり国が責任を持てと。

だから、現時点で言われているのは、国は金は出すが、できるだけ地方に任せなさいという考え方、特に義務教育については。

これが基本だと思いますね。

それが義務教育費国庫負担制度のあり方。そこにおいて国が義務教育については責任を持ちますよということの担保だという考え方に立てば、一切というよりも、役割分担をして、その部分については国が責任を持つんだという考え方が私は必要だと思いますね。

しかし、現実にやっている取り組みについては、さっきおっしゃった運営のあり方とか、それから予算の基本の適用は国が持つ、しかし、運営のあり方、教育の実際の運営はそっちでやってもらいますが、全国の標準的な基準は国がやはり持ちましょう、考えましょうという役割分担をこれまでやってきた。

それがやはり義務教育を国が責任を持つというあり方だろうな、こう思います。

そういう意味で、地方に裁量性を、自由度を増すという考え方、これは私はしっかりやってもらうし、これはまさに国立学校準拠法というものがなくなった今時点、まさに実際にやれるようになってきた、こう思っています。

 

○城井委員 

では、教育においてお金をある程度自由に裁量で使えるようにするといったときに、現状というか、今後の実際のところはどうなるだろうかといったときには、義務教育に関しては、やはり国の責務としてという部分で、予算措置でいうといわゆる二分の一を国が担うというのが今のぎりぎりの姿、その給与本体についてということになると思いますが、その二分の一の給与本体を担うというのが義務教育に対する国の責務を果たすということになるんでしょうか。

 

○河村国務大臣 

これは、考え方はいろいろあろうと思いますね。もっと国が責任を持つべきだ、だから、小学校、中学校、義務教育は国立でやるべきだとおっしゃる人もいらっしゃいます。

しかし、それでは地方の自由度ということは非常にいろいろな面で障害が出るでしょうから、これまでも身近なところの行政はということでやっていただいております。

そのぎりぎりといいますか、二分の一というのが一番私はそういう意味では役割分担する上で。そして、二分の一を決めることによって総額も決まってくるわけですね、その半分ですから。それで交付税措置で半分行きますから、その中で考えるということになっていくんではないんでしょうか。

だから私は、これは二分の一というあり方が一つの担保のあり方としてある。

それは、国庫補助金や何かでも、三分の一負担とか二分の一負担とか三分の二負担とか、それぞれ政策によってありますが、これは今までこういう形でやってきて、いろいろな問題点が出てきたから、今、三位一体論も出てきて指摘をされておりますけれども、この義務教育費国庫負担制度の二分の一というのは、国が責任を持つ範囲として、そして地方にも大いに自由度を増し、また地方が実際に教育をやるんですよという意味において、これまでの形として、私はこれは一つの知恵だな、こう思っています。

 

○城井委員 

大臣、私自身も、ある程度地域で教育について決めていける形にしたいというふうに思っているんですね。

ただ、そのときに、どこまで預けられるかと。能力がない、そういうことではありません。

どちらかといえば、水準確保のために、どれぐらい基準、水準づくりというものを国が担っていくか、そのぎりぎりのラインがどこかにあるんではないかというところを考えています。

特に、教育予算において、どれぐらい一般財源化というものがなじむのか、その裁量の範囲をどのあたりに一つ置くのかというのが、そこを考えていくに当たって一つの判断基準になるんではないかというふうに思っているんです。

その使い道の限定の最大幅ですね。

これは我が党の中島章夫議員が一つの議論のたたき台として出されている考え方ですが、その使い道限定の最大幅を教育全体と考えた場合と、もう少し狭めて学校関係全体、もう少し狭めて義務教育関係経費、もう少し狭めると給与関係経費、恐らく本体ということになろうかと思いますが、そういう少しずつ狭めていくことによって、そうすると恐らく現行と変わらない形になってくるんじゃないかと思うんですけれども、そのそれぞれの幅によるメリット、デメリットというものをどのようにお考えか、ぜひお聞かせください。

 

○河村国務大臣 

そうですね、これをメリット、デメリットで考えるかどうかという問題も私はあると思いますが、この一般財源化という考え方が出てきて、それで一番問題になるのは、私は、これは極論かもしらぬけれども、知事会が一般財源化ということを盛んに言われる知事さんもいらっしゃる。

そこで、文部科学省は総額裁量制というのを出した。そこで今また新しい議論が生まれていますが、一般財源化で自由度を増せ、増して大いにやります、こうおっしゃるけれども、私は、これはこれだけの今財政難のときに、地方交付税をむしろ今回予算をつくるのに大変だと言われる、むしろ総務省側は地方交付税をもう削減して出してきた。

この中で、教育費の固定費をきちっととっていくだけでもだんだん大変なことになっていくと考えますと、私は、それは一般財源化ということで臨んだ場合には、これは教育をまず確実に確保するんだということで、強い意思でおやりになる知事さんもいらっしゃる。

しかし、ちょっと待てよと。

うちはもうここまで来ている、全国の水準を見ても達しているんだから、この部分は、ともかく一般財源化という考え方は、色をつけないわけですから、何に使ってもいいですよという考え方ですから、この一部分はこっちへ回す。まさに自由度を増すという考え方で来られるけれども、むしろこれは削減以外にこの自由度というのは考えられないんじゃないかと思うんですね。

だから、そういう心配もあるわけでして、また現実に、知事さんの中には、みんな今財政をつくっていくのに大変だ、人件費ですからかなり大きいものでありますから、どうしてもこの一部をという思いがあるので、やはり国が担保して、教育財源については心配するなと言ってもらう方が本来のあり方だという意見もありますから、どこまで持つかどうかというんですが、これは国の教育水準をいかに担保するかということですから、学校教育の条件を整備するところまではやはり国が地方と一体となってやっていくということが必要なことじゃないでしょうか。

特に、義務教育については国が責任を持つということは、教育条件を整備する、その中にはもちろん人件費も含みますが、学校の校舎の問題とかそういうような問題等、国が責任分担をしていく部分というのは教育条件を整備するという考え方でこれまで来ておりますし、それを貫くべきだろう、私はそう思っているんです。

 

○城井委員 

そのような中で、恐らく今、文部科学省さんが頭をひねって、いろいろ考えられて出されているのが総額裁量制ではないかというふうに思っています。

これはなぜ政令なんですか。なぜ政令でつくられたんですか。

 

○近藤政府参考人 

お答えをいたします。

今回考えております総額裁量制は、教育の機会均等と教育水準を維持するという国の責任を果たすために、教職員給与費の実支出額の二分の一を国庫負担する原則を維持しながら、義務教育費国庫負担制度の中で地方の自由度を拡大するために、従来は、給与の種類でありますとか教職員の職種ごとに細かく最高限度を定めていましたのを、改めまして、国庫負担の最高限度を総額のみで設定することによりまして、負担金総額の範囲内で、給与額や教職員配置について都道府県の裁量を拡大しよう、こういう趣旨でございます。

したがいまして、総額裁量制の導入によって、実支出額の原則二分の一負担という法律の大枠が変わるものではございません。

そういったことから、法律改正ではなく政令改正によることにした、こういうことでございます。

 

○城井委員 

この総額裁量制の導入、私も文部科学省の方から御説明を受けて聞いていく中で、非常に耳ざわりのいいメリットの話がそのペーパーにも書いてありました。

その中で、いわゆる給与の一定程度の抑制による教職員の増員や非常勤講師、再任用教員の多数の任用などということで、現場に先生方がふえるところができますよというようなことが書いてあったわけなんです。

実際、いわゆるメリットのところを言われる前に、逆に、そういう仕組みになった後に地方の現場にとってデメリットというのはどうなのか。

我々としては、あらかじめリスクはきちんと受けとめた上でないと、制度の導入といったところにはとてもじゃないけれどもうなずけないというところがありますが、その点、いかがでしょうか。

 

○河村国務大臣 

結論からいいますと、この総額裁量制の趣旨をきちっと御理解いただいてこれを適切に運営していただければ、これによるデメリットというのは考えられないと私は思うんですが、今のこれがいわゆる一般財源化ということになると、給与費を下げるとかそういうことになるんでしょう。

しかし、総額裁量制の場合には、金額は決まってきますが、ではその分先生を、もうちょっとこの部分をふやそうとかということが自由にできますから、それによって安易に安い非常勤講師をどんどんふやせばいいとか、そんなことによって教育の質が下がるのではないかという懸念、そういうことは懸念としてあると思います。

まさにそれは適切にやっていただきたいということになるわけですから、そういう意味においては、まさに私は、いわゆるデメリットといいますか、そういうものはない、こう考えて、今、総額裁量制の理解を高めるように努力をいたしております。

 

○城井委員 

先ほどのメリット、デメリットということで申しますと、この総額裁量制が抱えているメリットというところで、ちょうどその御説明を聞いているときに、私は一つの質問をしました。

いわゆる給与を抑えて人数をふやすということのほかに、逆に、教育現場において給与をある程度上積みすることによって、かえって優秀な人材が集まりやすい環境ができるのではないかというような部分はないのかと言ったときに、幾つか全国的な取り組みがありますということでした。

具体的には、東京や大阪でそういう取り組みがなされているということだったんですが、なかなか今人数自体が足りないと言っている現場が多いというふうに聞く中で、その仕組みが本当に働いていくのか、どれだけ現実味のあるものにしていけるのか。

つまり、能力主義というか、そういう評価をある程度前提にした、高い報酬も前提にしながらの仕組みというものがどれぐらい現実味があるのかというところを、今の取り組みの進捗状況を含めてお聞かせください。

 

○近藤政府参考人 

お答えをいたします。

学校教育の成否は、先生御案内のとおり、直接の担い手である教員に負うところが大きいわけでございまして、教員が資質、能力を向上させながらそれを最大限に発揮するためには、教員一人一人の能力や実績等が適正に評価され、それが配置や処遇でありますとか研修等に適切に結びつけられることが必要であろうと考えております。

そういったことから、文部科学省では、平成十五年度から三年間の予定で、教員の評価に関する調査研究をすべての都道府県、指定都市教育委員会に委嘱いたしております。

自己申告と業績評価による能力開発型の人事考課制度の中で、評価方法、評価項目、あるいは評価者の研修のあり方等について、今、各都道府県教育委員会で検討が進められているところでございます。

一応これは三年間の調査研究でございますけれども、こういった調査研究の状況も踏まえながら、引き続き、各教育委員会におきます教員評価の改善充実に向けた取り組みを私どもとしては促してまいりたい、こういうふうに考えております。

 

○城井委員 

その教員の評価の部分なんですけれども、最近いろいろ教員の方々の給料あるいは手当といったところを見ているときに、ちょっと気にかかる部分がありました。

今、三年間で教員の評価に対する研究を全県にお願いしていますというお話だったんですが、そんな取り組みだったのかと。

では、それまで教員の働きに対する評価というものが、改めて研究を全県でお願いしないといけないほど手つかずだったのかというところは、むしろ私としては非常に懸念をするところであります。

特に、最近ちょっと気にかかったのが、いわゆる教職員の方々に係る手当の部分。

具体的に申しますと、教職調整額というのがございますね、一律四%で先生方の給料に上乗せをする。

聞くところによりますと、残業をされていない先生も、そしてめちゃめちゃ働いている先生も、みんな四%なんですね。

それに加えて、義務教育等特別手当、これも一律四%だと聞いています。

つまり、小中学校の先生の場合、働いていない人間が、ただ取り四%プラス四%と、ただ取りでその八%の部分をもらってしまうという現状。

逆に、現場で時間も関係なく働いているからというのが、たしかこの制度が取り入れられている趣旨だと聞いています。

しかし、そういう一生懸命時間も惜しんで働いている先生がおられる。

そういう方々に対しての部分、支えが八%。四%プラス四%ですね、義務教育にかかわる方ということならば。ということで本当によいのかというところがあります。

もちろん、時間を長く働けば効率がよいということではありません。その質を上げるために、短い時間の中で先生方に努力を重ねていただくというところは必要でしょう。

ただし、そのときには、その部分がわかるためには何が必要かといえば、先生方がどういう働きをされているかという評価の部分が当然あってしかるべきだということなんです。

そこで、お伺いしたいんですが、この教職調整額について、これまで実態調査というものは行われたことがあるんでしょうか。

 

○近藤政府参考人 

制度を導入するときに調査を行ったという経緯はございます。

 

○城井委員 

つまり、それは、導入当時には調べたが、それまでは手つかずだという認識でよろしいですか、局長。

 

○近藤政府参考人 

教職調整額につきましては、教諭について、その職務と勤務態様の特殊性から、ほかの一般公務員に対して支給されている時間外勤務手当の支給がなじまない、こういったために、これを支給しないこととし、これにかえて、勤務時間の内外を問わず包括的に評価するものとして、給料一体として支給されるべきものとして現在位置づけられているわけでございまして、いわば、労働基準法第三十七条を適用しないこと、時間外勤務手当を支給しないことに対する代替措置、こういう位置づけである、こういうことで教職調整額について支給している、こういうことでございます。

 

○城井委員 

趣旨はよくわかりました。

問題は実態だというふうに思います。

つまり、これは実態調査とかあるいは勤務評価というものが前提になく、一律で、導入された当時から、その後の変化の状況も勘案することなく続いてきているというところである。これは非常に怠慢ではないかというふうに思っています。

つまり、今例えば、我々議員も税金から歳費をいただいています。その中で、議員年金の話を含めて、身分にかかわるお金というものがお手盛りになっていないかということが常に国民の目にさらされています。

その中で、では、税金から同じように給料をいただいて働いていらっしゃる先生方の給与あるいは手当といった部分に関して、そういう実態調査もなければ勤務評価も反映されていないようなことで、これは国民の目から見ると、もしかすると非常にマイナーな制度かもしれません。

しかし、それが長らくお手盛りで続いてきていたということがもし明らかになったときに、どうやって申し開きができるのか、説明がつくのかといったところは、先ほどからの答弁では、とてもじゃないけれども見えないというところがあります。

ここの部分の今後の改善ということについて、大臣、ぜひ御決意をお聞かせください。

 

○河村国務大臣 

今日の教育で、いろいろさまざまな指摘がされている部分、これはやはり教員の質の向上という形ではね返ってきておりますね。

それを受けて、今回の総額裁量制を含めての改善、これは今度は、国立学校準拠法で今までの給与をがちがちに決めていたという、それは確かに、ほとんど評価らしいものもなしに来たという面がございます。

これからは、地方が県条例に基づいて給与を決めることができる。

もちろん、人確法、標準法という形がありますから、この枠の中、だから、平均を見たときに一般の公務員より下回らないような制度をつくるとすれば、しかしその中で評価をして、まさに、非常に効果を上げている先生とそうでないという評価がつけば、それによって給与の差が出る、こういう仕組みがつくれるわけですね。

これはもう地方でやっていただくようにこれからやっていきます。そこによって差をつけようとすれば、当然評価をしなければいけなくなるということです。

それから、四%の問題は、教員については残業手当が出ないという部分があって、この部分について一律ということでありますから、これは先生方は、学校だけじゃなくて部活とかいろいろなことで随分やっていただいている先生が大多数ですから、そういう面で見てやりますから、これは一律になっています。
しかし、それも含めて、今後評価に値するかどうか、これを入れませんとこの給与の差はできなくなるという問題ですから、これは我々、もちろん教育センターである文部科学省の基本的な考え方は示してくれ、こう言われるだろうと思いますが、これから各地方が条例に基づいてそういう制度をつくっていただく、これによって教員の質が上がっていく、このように期待をいたしております。

 

○城井委員 

やはり実態が求められていると思うんですよ。

特に、きょうもずっとやりとりをさせていただきながら感じますのは、義務教育、本当に国の責任でやっていくんだ、それが今や給与本体という部分が最後のとりでとなってきているわけですけれども、その部分を本当に国の責務でといったときに、国民に説明をし、納得をしていただこうといったときに、その給与本体自体のところ、先ほど言ったようなグレーの部分を残したところ、今後仕組みが変わっていくからということで、その趣旨のところだけを説明するということで本当に通っていくのか。

今後の議論にも出てくると思いますけれども、実態のところをぜひ踏まえながらお話をしていただかないと、結局、理念上滑りかというふうに言われかねないということを最後に御指摘を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

ありがとうございました。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区