地方教育行政の組織および運営に関する法律の一部を改正する法律案について

2004年4月23日 衆議院本会議

 

○城井崇君 

民主党の城井崇です。

私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 

イラク戦争、日本歯科医師連盟の疑惑、年金保険料を払っていなかった大臣がいる政府が出してきた年金改革案を審議すること、解決を急がなければならない問題が山積をしています。

これらの問題への対処に当たると同時に、我々政治家は、未来への種まきを続けなければなりません。

教育は、まさにその未来への種まきの一つであります。

しかし、これまでの教育政策は、その要請にこたえるものではありませんでした。

戦後、自民党政治が丸投げをしながら、文部科学省が口だけを出して進めてきた、画一的で硬直的な教育行政は、深刻な教育の不平等をもたらしました。

現場の声は反映されず、人も金も伴わず、実態調査や評価を怠り、政府やほかの省庁、諮問機関からの改革要求に文部科学省自体が振り回されながら、矢継ぎ早に行われた、これぞ朝令暮改と言ってよい教育改革は、整合性が全くなく、迷走の一途をたどり、教育現場の無用な混乱をたびたび招いています。(拍手)

こうした過去の迷走と別れを告げ、現場の実態を重視し、厳密な評価に基づく教育、もっと開かれた選択肢のある公教育への転換を早急に進めなければならないと考えます。

そのためには、監督官庁としての文部科学省が果たす役割は最小限にとどめ、学校現場や地方が主体となって教育政策を担うことができるようにする必要があります。

私たち民主党も、教育の地方分権の推進を掲げ、全党を挙げて取り組んできたところであります。

そこで、文部科学大臣に伺います。

以上の認識を踏まえ、今後の地方教育行政のあるべき姿をどのようにお考えでしょうか。

法案にある地域運営学校は、そのあるべき姿の中でどのように位置づけられるのでしょうか。

チャータースクール、教育特区との違いは何か。

中教審の提言した地域運営学校、総合規制改革会議の答申にあるコミュニティースクールとはどこが違うのか、お答えください。(拍手)

今回の法案にある地域運営学校は、地方が主体となって担う教育の中心を担い得ると考えます。そういった意味では、仕組み自体を取り入れることは評価できます。

むしろ、遅過ぎたぐらいです。

しかし、肝心の中身が伴っていません。

政府としては、自由に地域で決められるように最低限の決まりだけを設けたつもりなんでしょう。

しかし、かえって、そのルールのせいで、運営の際に問題を引き起こしてしまう危険性が極めて高いのです。

以下、今回の法案がはらんでいる問題点について、順次質問します。(拍手)

教育の地域主権という考えのもとに、地域運営学校のあるべき姿を考える際には、学校現場への権限移譲、集中が必要だと考えます。ところが、今回の法案を見ると、運営については、教育委員会とかなりの部分で一体となっており、大きな権限をゆだねられます。

そこで、伺います。

今回の法律案に基づいて設置された学校の運営について、最終的に責任をとるのはだれですか。

それは教育委員会ですか。そもそも、形骸化が進んでいると言われ、教育委員は名誉職と化している教育委員会に役割が果たせるのか。

以上、最終責任者と教育委員会の問題点についての大臣の認識をお聞かせください。

それらを踏まえてなお、教育委員会が地域運営学校に対する役割を尊重し、みずからの責務も果たせるとお考えか、あわせてお答えください。(拍手)

今回の仕組みを検討しながら、私は、運営に当たる学校運営協議会が本当に機能するのか非常に疑わしい、そう感じています。

なぜか。

今から申し上げる懸念があるからであります。

まず、最終的な人事権を都道府県教育委員会が握ることによる問題です。小中学校の学校運営協議会が教員人事に関する意見を述べても、都道府県の教育委員会は個々の小中学校の実態をどこまで把握できるのでしょうか。

また実態無視の教育政策を繰り返すのか。私は、今回の仕組みだと都道府県から現場までの距離が遠過ぎる、根本的には、教員人事権をもっと現場に近いところに移さないとうまく機能しないと考えます。

次に、学校運営協議会がどれだけ客観的に判断できるかという懸念があります。

協議会委員には児童生徒の保護者などを委嘱する仕組みになっています。

しかし、保護者の総意が反映されるとは限りません。合議制の機関として、特定の教員に関する人事異動の意見がまとまるのは相当に難しいと考えます。

さらに、人事に関する協議で、児童生徒、教員が加わることを想定しているのでしょうか。

もし想定していないとすれば、協議会の決定に対し、実際に学校生活を送る彼らから反論が出る可能性は十分にあります。

また、そもそも、都道府県教育委員会に、教員異動に関する自由な裁量があるかという懸念もあります。

この法案によれば、任命権は都道府県教育委員会が持つとなっていますが、実際にはさまざまな制約があると考えます。

ある県では、ある教員が転出したら、同じ程度の年齢、資質の教員が転入することが暗黙のルールとなっています。

さらに、この県では、教員から異動希望が出ないと、県の教育委員会は異動させないという慣習もあります。

これらの制約が現場段階にある中で、学校運営協議会が教員人事に関する意見を都道府県教育委員会に出したとしても、意見を尊重することはとても困難だと考えます。

以上の点について、大臣の見解をお聞かせください。(拍手)

このように、実際には、教員人事制度の改革次第で、今回の地域運営学校の仕組みを用いた教育の将来も決まると言えます。

教員人事制度改革に向けた今後の取り組みについて、大臣の取り組みをお聞かせください。

それに加えて、教育の地域主権を本気で進めていこうとすれば、ここで触れた教員人事制度を含めた教育内容の核心部分、検定教科書、学習指導要領、学校管理規則などなど、地域や学校にゆだねていく必要があると考えますが、見解をお聞かせください。

学校運営協議会の権限と校長の力関係も不明確です。協議会については、教育委員会規則において規定することになっていますが、実際の運営においては、校長に協議会の委員構成や選任を委任ないしは相談することになると予想されます。

日ごろ、学校教育に協力的な人が選ばれ、批判的言動を行っている人は敬遠されるのではないか。

また、これまで学校教育に関して十分な情報が提供されず、意思決定に全く関与できない従属的な地位を強いられてきた保護者や住民に、いきなり基本的な方針の決定に関与することを認めることになるのですが、協議会を担う主体、特に保護者、住民の運営の力量も心配であります。

地域コミュニティーが未成熟な中で、協議会を担う主体の運営の力量が時とともに伸びていくことも考慮に入れながら、どのような体制をとっていくことを想定されているのか、学校運営協議会の権限と校長の力関係はどうなるのか、見解をお聞かせください。

今回の法案には、学校設置後の評価の仕組みが見当たりません。

学校評価、授業評価について、客観的でオープンな評価をどのように行っていくのか、大臣の見解をお伺いいたします。

今回の新しい学校は、日本の教育を変える核となるものです。

もし、政府のこの取り組みが中途半端な形になるようであれば、政権交代を実現して、民主党による新しい政権のもとで、子供が主役、地域が主役の教育を実現することを最後にお約束申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

 

〔国務大臣河村建夫君登壇〕

 

○国務大臣(河村建夫君) 

城井崇議員から、六点の質問をいただきました。

まず第一点は、今後の地方教育行政のあるべき姿と地域運営学校の関係及びチャータースクールやコミュニティースクールとの違いについてのお尋ねでございました。

今後の地方教育行政のあり方につきましては、教育の地方分権や学校の自主性、自律性の拡大を進め、それぞれの地域や学校の実情に応じた特色ある教育を行えるようにするとともに、開かれた学校づくりの推進など、教育行政として説明責任を果たして、地域や保護者の信頼を得ていくことが非常に大事であります。

今回の学校運営協議会は、地域や保護者等のニーズを学校運営に的確に反映させていく、そして地域住民や保護者等の学校運営への参画を制度化するものであります。

そして地域に信頼される学校づくりに資していこう、こういうねらいがございます。

さらに、今回の制度は、特区に限定されない全国的な制度であります。中央教育審議会より提示されました地域運営学校及び総合規制改革会議の答申に示されたコミュニティースクールを実現するものであります。

なお、アメリカにおけるチャータースクールは、地域住民等が設置をして、公費によって運営される学校でありまして、今回の地域運営学校と同じものではありませんが、チャータースクールの特徴であります、保護者や地域住民の意向を反映した学校づくりを実現する、この点からいえば、日本型チャータースクールと言われるゆえんのものであろう、このように思います。

第二点は、地域運営学校に対する責任や教育委員会のあり方についてお尋ねがございました。

地域運営学校の運営につきましては、学校の責任者たる校長が日常的な学校運営を担いながら、最終的な責任については学校を設置管理する教育委員会が負うものでありますが、教育委員会は、その自覚のもとで、みずからの責任をしっかり果たしていくべきものと考えております。

教育委員会のあり方につきましては、城井議員も御指摘ありましたが、さまざまな指摘があることも承知いたしておりまして、現在、中央教育審議会においても改革方策を検討いたしておるところであります。

次に、学校運営協議会の人事に関する意見の尊重の仕組み及び今後の教育人事制度改革についてお尋ねがございました。

公立小中学校の教員の人事につきましては、都道府県教育委員会が広域的な人事を行いながら必要な教員を確保することになっておりますが、このもとで、できるだけ現場の意向を反映することは重要なことであります。

このために、今回の改正案では、地域住民や保護者など、より現場に近い関係者の意向を反映できますように、学校運営協議会が教員の人事について意見を述べることができる、こうなっておりまして、これを任命権者は尊重することとしたものであります。

また、学校運営協議会と校長が、当該学校の教育の推進の観点から、それぞれの実情を踏まえて必要に応じ人事に関する意見を取りまとめて、任命権者である教育委員会において、地域全体の状況を勘案しながら、適切な判断により人事が実行される、このように期待をいたしております。

文部科学省といたしましては、校長等の意見の十分な聴取あるいは公募制の検討、こうしたことで、校長等の学校の意向が反映できるようにするための教職員人事に関する取り組みについて教育委員会を促してまいりたい、このように考えております。

また、さまざまな権限を地域や学校にゆだねていくことについてお尋ねがございましたが、地域の実情に応じた特色ある教育を推進するためには、教育の地方分権、あるいは学校の自主性、自律性の拡大に努めていく、このことが大事であります。

このような観点から、学習指導要領の大綱化あるいは弾力化を進めておりますし、また、教育委員会においても、学校管理規則の見直しや通学区域の弾力化などが進められておるものと考えております。

今後とも、全国的な教育水準を確保するための教育内容の基準である学習指導要領など、国として必要な役割はしっかりと果たしてまいりますが、一方では、地方の自由度を拡大しながら、教育委員会の責任のもとで特色ある学校づくりが進められるようにさらに努めてまいりたい、このように考えております。

次に、学校運営協議会の委員として学校教育に批判的な人が敬遠される懸念、あるいは保護者や地域住民の力量の懸念など、さまざまな地域の状況が想定される中で、学校運営協議会と校長との関係がどうなるかについてお尋ねがございました。

今回の学校運営協議会の委員につきましては、その役割を十分理解して、運営に積極的に参加し、貢献できる人について、教育委員会がその責任で任命していただく必要があると考えます。

また、学校運営協議会が設置された学校におきましては、学校運営協議会と校長との連携共同のもとで、校長がリーダーシップを発揮しながら地域に開かれた学校づくりを行っていく、これが肝要である、このように考えております。

さらに、地域運営学校の評価についてお尋ねがございました。
現在、すべての小中高等学校は、その教育活動について自己評価と公開に努めることとなっております。

とりわけ地域運営学校については、所期の目的が達成されているかどうか、設置管理者たる教育委員会が定期的に評価を行うことが必要である、こう考えております。

このために、各教育委員会が地域運営学校の評価を適切に実施するよう、その取り組みを促してまいりたい、このように考えます。

以上であります。(拍手)

 

衆議院議員 きいたかし 福岡10区