著作権法の一部を改正する法律案について (特に、洋楽の輸入版CDの輸入が止まる可能性について)

2004年6月2日 衆議院文部科学委員会

 

○城井委員 

民主党の城井崇でございます。

著作権法の一部を改正する法律案について、時間の許す限り目いっぱい質問をさせていただきたいと思っております。

さて、大臣、今回の質疑、ちょうど先週の二十八日の審議、衆議院の審議中継で、インターネットで流されているんですけれども、生中継と録画の中継と合わせて一万一千を超えるアクセスがあったということだそうです。

今までの、生中継だけでいっても四倍の注目度ということで、これはかなりの数じゃないかというふうに思っています。

ただ、非常に私は本当にさっきから怒っているんですが、素川参考人のこれまでの答弁、本当に誠実さがないというところが感じられてなりません。

すりかえすりかえ、やっと出てきた答えがほんの少しというようなところが何度繰り返されたかということがこれまでの同僚議員からの質問で明らかになっていると思います。

とりわけ、その中で、まず本日冒頭、どうしてもこの点だけは言わせていただきたいと思うんですが、先日の私の質問に答えていただいた素川参考人の答弁の中で、附帯決議は単なる心構えでしかないという非常に不適切な発言がありました。

私も、若輩ではございますけれども、立法府に身を置く一人として、附帯決議をそのように軽んじられた方が行政を担って、現在の著作権法の運用をされている、あるいは答弁に立たれているということは、正直言ってあり得ない、この状況をほうったままで質問をしろというのは無理だということを言わざるを得ません。

まず、附帯決議は心構えだと言ったこの発言の責任について、大臣に所見をお伺いして、その上でこの発言の撤回を要求したいと思います。大臣、お願いします。

 

○河村国務大臣 

国会答弁に法的拘束力はないということをお答えする表現、御指摘の点について、私は、表現は適切でなかった、こう思いますので、この点については、心構えだけだということにはならない、このことはやはり訂正しなきゃいかぬ問題だと思います。

国会における国会答弁、国会における我々の答弁、そしてまた附帯決議というもの、これは行政を進める上で極めて大きいもので、とうといものである、こういうふうに私は考えております。

 

○城井委員 

そのようにお感じならば、御本人から撤回をしていただきたいと思います。

次長、この心構えという件。

私は、法律の部分で、要するに運用ではフォローできない穴があるということを御指摘申し上げる質問をしたつもりでしたけれども、そこで立法府を軽んじる部分まで同時に出てくるとは思っていませんでした。

その軽んじた発言をされたというところについてきっちり撤回をしていただきたいと思いますが、見解をお願いします。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

国会答弁には法的拘束力がないということを答える中で、その中の表現において御指摘のようなことがございました。

適切な表現じゃなかったということで、撤回をさせていただきたいと思います。

国会における大臣答弁は、行政にとって極めて重いものであるというふうに認識しているところでございます。

 

○城井委員 

撤回だけですか。

きちっと有権者に対しておわびしてください。

 

○素川政府参考人 

決して、国会答弁を軽んじるというような気持ちは全くございませんでした。

ただし、言葉につきまして適切な表現ではなかったということで、撤回をさせていただきたいと思っております。

 

○城井委員 

なぜおわびが言えないんでしょうか。

一回口から出た言葉というのは戻ってこないということを重々承知の上でふだんから答弁はされているはずですよ。

もう一回お願いします。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

法的拘束力がないという旨を答える中での適切でない表現があったということで、撤回させていただき、それにつきましては遺憾に存じておるところでございます。

 

○城井委員 

何が遺憾なんですか。

ちゃんとわかっているんですか、今私が指摘申し上げていることを。

もう一回、わかりやすく言ってください。

 

○河村国務大臣 

あのときのやりとり、私もきちっと正確に覚えているわけじゃありませんが、要するに、国会決議あるいは大臣答弁を含め国会答弁というものが法的な拘束力を持つのか、だから附則、法的な拘束力をつくれというお話でこられたものですから、答弁としてああいう表現になって、これは、きちっと拘束力がないということを言ったことが舌足らずであったと思います。

このことについては、今御指摘の点、私からも、これは私の責任において、こういう御指摘を受けたことについてはきちっと訂正をさせるということで、陳謝して訂正をするということであると思いますが、しかし、これはやはりきちっと、表現は、心構えというのは余り重くないと言われるかもしれぬけれども、そういう気持ちをきちっと受けとめてやるということは当然のことですからね。

これは、今までもそういうことでやってまいりました。

それから、確かに今回については、洋盤レコードファンの皆さんが、洋盤レコードがなくなるよという表現になったものですから、これは大変だと皆さんが関心をお持ちになったことは、それは私もわかります。

しかし、それについてはきちっと対応するんだということを申し上げてきているわけであって、法的にこれをとめられない部分があるんだということも説明しながら、しかし対応についてはちゃんとやります、その心構えをちゃんと持ってやりますということを言っておるわけでございまして、まあ、ぎりぎり詰めていただきますと、答弁する方もいささか動揺して表現が舌足らずになった点は申しわけなかったと私も思います。

 

○城井委員 

大臣から陳謝という言葉が出ましたのでこの質問はこのあたりにしますが、ぎりぎり詰めるというのは当たり前です、こっちも真剣にやっているんですから。

その点を改めて受けとめていただきながらきょうの質問をさせていただきますので、きっちり答えてください。お願いします。

さて、今回のこの法案の審議を進めてまいりまして、問題が非常に多いということはどなたも気がつかれ、そして明らかになってきているというふうに思っています。洋楽の輸入盤のCDへの大きな大きな副作用の問題、データを含めて前提がいいかげんであった点、具体的に申し上げれば、五月二十八日の審議で松本大輔議員からも指摘がございました。

法案提出の根拠として大臣が再三再四答弁をしている六十五カ国、六十八万枚、千二百六十五万枚という数字が、計算方法から調査員まで業界のお手盛りの調査であったということ。

そして、特定業界におもねることは本来あってはならないのに、利害関係者から法案の審議中に便宜を図ってもらって、プレミアチケットを受け取ってコンサートへ行くというようなことがあった。

それに加えて、お手盛り調査をうのみにして、一切の自主的な検証を怠ってきたというような部分、非常にいいかげんであるというふうに思っています。

そういった問題が多い中で、我々民主党としては、見直しを即座にしなければならないという問題意識から修正案を作成しておるところでございます。

一部の与党議員がうそ偽りを広めているんですが、参議院の民主党文部科学部門もあわせ含めて、民主党の総意として今回の修正が不可欠だというふうに考えていることを改めてここで申し上げたいと思っています。

その上で、この見直しについて、先ほどの同僚議員からの質問にあわせて質問をさせていただきたいと思います。

なぜ、この見直しをすぐに行える仕組みを今回の法律の中に入れておかなければならないのかという点であります。

ここの理解がまだいただけていないではないかと思っています。

それはなぜか。

それは、今回の法律を発動した後に問題が起こった、その場合の影響は非常に大きいからであります。

例えば要件、今回の、権利者の利益を不当に侵害してしまうといったことを判断する要件といったところの判断に裁判所がかかわってくるといった場合がそうであります。

恐らく、今回の、利益を不当に害されたことになるのかどうかといったことの判断というものをぎりぎりまで詰めていったときに、恐らく裁判所の判断にされるのではないかと思います。

しかし、裁判所の判断となった場合に、違反者に対して懲役刑やあるいは罰金刑があわせて科されるということ、あるいは裁判所の判断が下されるまでにかなりの時間が必要だということを考慮すると、あらかじめこれだけ時間がかかるということがわかっているにもかかわらず、この点を放置したままでいってしまうということはいかがなものかというふうに考えておるわけであります。

まず、時間がかかってしまうということを含めての、この点への対応について文化庁の見解をお聞かせください。

 

○素川政府参考人 

還流防止措置に係りましての手続でございますけれども、これにつきましては、特に水際の措置の問題が多かろうかと思いますが、この辺につきましては、例えば、事前の申し立て制度というふうなことを活用する中で、手続の迅速化というものについて努めてまいりたいと思います。

 

○城井委員 

手続の迅速化というお話がございましたけれども、本気でおっしゃっているんでしょうか。

今回の法律を発動した後に、手続はむしろ複雑で煩雑になってくるんじゃないんですか。

この点は、きのうの参考人質疑でもデゼルスキー参考人から指摘をされたところだというふうに記憶をしています。

実際に、デゼルスキー参考人がいらっしゃるHMVの運用のところでも、十二万六千種類をも超えるCDの種類を扱っているというお話がございました。

これに一つ一つ判断というものを加えていくと、例えば、仮に税関にその作業をしてもらったといったときに、どんな作業になるかというのは想像がつきますか。

むしろ、今回の法律を発動する、使うことによって、それだけの複雑な作業が出てくるという認識はあるんでしょうか。

この点、文化庁の方、お願いします。

 

○素川政府参考人 

還流防止措置について、例えば、まず最初の段階としては、日本販売禁止という表示を張るかどうかというところからまず入るわけでございますけれども、私どもといたしましても、まず欧米の先進国の洋盤レコードについては引き続き輸入が自由に行えるように、その運用について最大限の検討をしてまいりたいと考えているところでございます。

いずれにいたしましても、税関当局と連携して、当然そういう措置がとられていなければ起こらないことではございますけれども、たとえそういった表示があった場合でも、事前の還流防止措置の対象を明確にするということなど工夫をして、対応してまいりたいと考えているところでございます。

 

○城井委員 

いいですか、昨日のデゼルスキー参考人の話にもありましたけれども、香港で同様の作業をしたときに、一つ一つの商品の許可をとっていくというのはやはり非常に難しいということが、あの香港の例から明らかになっているわけです。

おまけに、対応されるとおっしゃいましたけれども、もし仮にできなかった場合にどんなことが起こるか。そのタイミングと時期が命のCDが税関の倉庫に眠って動かない状況が起こるんですよ。これでどれだけの利益が失われるか、小売業者にとって利益が失われるかということが本当にわかっているんでしょうか。

具体的にどうするのか、税関とどのように詰めるのか、その点についてもう少しはっきりと答えてください。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

還流防止措置につきましては、いろいろ要件があるわけでございます。

その要件を全部クリアするということが必要であるわけでございますけれども、まず第一に、先ほど申し上げましたように、日本販売禁止という表示があるということがまず最初に起こるわけでございます。

そのようなレコード、還流レコードといいますか、そういうものがある場合に、先ほど申し上げましたような事前申し立て制度ということを活用していただくということでございますけれども、その前段階といたしまして、文化庁は客観的な基準というものを作成、公表いたしまして、その中で税関当局と十分打ち合わせをさせていただきたいと思っております。

 

○城井委員 

今のお答えでは、とても小売業者の方が安心して臨めるというふうには思えません。

具体的に示されていないというふうに思っています。

今回の、今指摘申し上げている点をなぜ言っているかというところをもう一つだけ申し上げますと、結局、それだけ複雑で煩雑な手続というところに、そこでもしかすると商品がとまってしまうかもしれない、滞ってしまうかもしれないというリスクをとってまで飛び込んでいく輸入業者がどれだけあるのか、そのリスクを負える業者がどれだけあるのかということであります。

特に、零細の企業の方々はそういうリスクを本当に背負えるのか。ある意味で輸入行為自体が縮小してしまうという可能性があるという点について、私は本当に深く深く心配をするわけであります。

輸入行為自体が縮小する可能性が出てくる、この複雑な煩雑な判断の作業のために起こってしまうという可能性があると思うわけですが、この点についてお聞かせください。

 

○素川政府参考人 

私どもといたしましては、この還流防止措置によりまして手続が複雑にならないような対応をしてまいりたいと思っています。

そのためには、事前に還流防止措置の対象となるものをリストにアップするということによりまして、輸入される方がそれを見て、ある程度の予見を持ってといいますか、それを見て、その輸入という行為というものを判断できるということになるように、できるだけその運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 

○城井委員 

事前にということで仕組みを準備されているということですけれども、では、仮に事前にしたとして、ちょうど昨日の高橋参考人からも指摘があったところですが、実際にその判断をしていただくときに、輸入業者の側から、守秘義務のある契約書を税関に提出するということが実際の判断で必要になってくるケースがあります。これが現実的に本当に可能なのかという部分の意見について陳述がございました。

この点についての見解をお聞かせください。

 

○素川政府参考人 

税関における手続におきましては、輸入するものにつきましての認定手続というものが必要になるわけです。

これはシールを、日本販売禁止という表示が張ってあるということが大前提になるわけですけれども、その中で、今先生お話しの、契約書というものがその手続の中で必要になってくるのではないかということでございますが、確かに、そういう契約書ということも出すことによって、自分たちの立場というものを明確に主張するということが可能になるわけでございますので、必要な書類というのは提出を願うことになるわけでございます。

ただ、契約書がなければ絶対にだめかということにつきましては、私どもは、契約書または陳述書ということで、陳述書でも対応可能な場合があるというふうには税関当局からは聞いておるところでございますが、いずれにいたしましても、手続につきましてスムーズな運用が行われるように、税関当局と協議してまいりたいと存じております。

 

○城井委員 

ということは、契約書でなくてもよいという理解でよろしいですね。

ちなみに、陳述書というのは何ですか。

その二点、お願いします。

 

○素川政府参考人 

陳述書とは、事実関係を記載し、それにつきまして、自分が、こうこうしかじかの者が書いたものだということを証明したというようなものだということでございます。

 

○城井委員 

そうすると、その陳述書があれば契約書は要らないんですね。

 

○素川政府参考人 

この点につきましては、いろいろなケースがあろうかと思いますので、税関当局ときちんとした情報交換をしていく必要があろうかと思います。

そういうことで、関係の団体の方々、関係者の方々に対してきちんと情報が提供されるように努めてまいりたいと思っております。

 

○城井委員 

先ほどは、税関の方と話してということで言われたんじゃないんですか、契約書の部分と陳述書の部分。それをもう一回持ち帰って考えなきゃいけないぐらい、今いいかげんな状況というわけですか。

もう一回お願いします。

 

○素川政府参考人 

一般的には、契約書または陳述書ということが必要だというふうに税関当局から聞いているところでございますけれども、どのような場合にでもそうなのかというふうなこととか、どういう条件がついているかということについては、残念ながら、今の段階ですべての情報を持っているということではございませんので、そういうことも含めましてきちんと税関当局から情報をいただき、関係の方々に情報提供していくということに努めたいと存じております。

 

○城井委員 

法律の施行までにきちんと示してほしいと思います。

これはきちっとやってください。

そうでないと、この後聞こうと思っていたんですが、実際に、この法律ができたときに、やはり輸入業者はリスクをとるわけです。この質問にもぜひお答えいただいて、リスクが本当にあるのかということを確認したいわけです。

文化庁の国会答弁の中で、ファイブメジャーは権利行使しません、口約束だとは思いますが、あるいは、洋楽は本法律の対象にならないということを信じて輸入を行って、それに伴う損害が生じた場合に、この国会答弁を信じた輸入業者に責任があるというふうに政府が考えているのかどうかというところにかかわってくると思うわけですよ。

つまり、リスクをとるのは業者の自由ですよというところになってしまうならば、結局そこは、政府は法律だけ、仕組みだけ準備して非常に無責任だということになるのではないかというふうに思うわけですが、この損害が生じた場合の輸入業者の責任というものについての政府の考えをお聞かせください。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

私どもといたしましては、先ほどから申し上げましたように、先進国の並行輸入、直輸入につきましては、引き続き自由に行えるというような運用基準というものを明確にしてまいりたいと考えておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、還流防止措置の具体的な適用に当たっての件につきましては、国が損害賠償をするというような法的責任ということはなかなかなじまないのではないかというふうに考えているところでございます。

 

○城井委員 

ということは、この法律が運用され始めて、実際に今の政府の説明を信じて輸入を行って損害が生じた、その損害をかぶってしまっている、国会答弁を信じた、あるいは今の次長の説明を信じた輸入業者に、その損害の責任を結局負わせる、政府は負いかねる、そういう理解になってしまうわけですが、この理解でよろしいんでしょうか。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

今回の措置の要件を満たしているレコードというものにつきましては、その最初の段階で、日本販売禁止という表示が出るわけでございます。

先ほどから申し上げておりますように、その段階で事前にそのリストというものを公表して、消費者の方、輸入者の方の心配というものを軽減するという努力をしたいと存じておりますし、また、不当な侵害の基準に当たりましても、客観的な基準を事前に公表したいというふうに考えておりますので、できるだけそのような心配がないように努めてまいりたいと思っております。

 

○城井委員 

今、日本販売禁止と書いてあるだけで輸入がとまるとおっしゃいましたけれども、本当ですか。

 

○素川政府参考人 

日本販売禁止というのが書いてあるということが、まず、税関で手続を開始するかどうかの最初になるということでございます。

すべての要件を満たさなければ還流防止措置の対象にはならないわけでございますけれども、物事の始まりといいますか水際では、その表示があるかないかということが、まず手続の最初になるわけでございます。

それらにつきましても、今申しましたように、事前に申し立てていただきまして、これがその措置に該当するものかどうかということにつきましては、リストを作成し公表して、対応をしていくということが必要かと存じております。

 

○城井委員 

要件については後から伺うので横におきますが、今伺っているのは、事前の制度で対応ができない部分について伺っているんですよ。

先ほど言ったのは、要するに、国会答弁を信じた輸入業者さんが輸入を行って損害が生じた場合という話を一つしておるわけです。

それに加えて、事後に起こり得る可能性というのはほかにもあるわけですよ。

もう一つだけ指摘を申し上げて、この点について見解を伺いたいんですが、例えば、善意の国内のレコードショップさんが既に輸入して販売をしている洋楽盤、これに対して、ほかの国のレコード会社が今回の権利を行使した場合、例えば、仕入れなどにかかった費用というのは一体だれが負担をするのか。

先ほどの話と同じです。国会答弁や附帯決議、政府の説明を信じて行った人々です。その方々がそれをかぶってしまうのか。

実際に権利行使をしない旨主張していた国やあるいは企業といった責任についてはどうなのか。

もし、これが、輸入をし販売をした善意の国内のレコードショップの自己責任ということになるならば、音楽レコードの輸入はとまりますよ、全面的に。

この点について、いかがですか。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

輸入の段階で還流防止措置の適用の対象になっていないものが、輸入の後に、たとえ権利者がそのような還流防止措置の対象にしたいと思っても、これは要件に該当するようになるものではないということで、その点については御安心いただけるものと存じておるところでございます。

 

○城井委員 

今のケース、二番目に言ったケースはわかりました。

では、事後に、損害が生じた後に、政府が責任を負いかねるといって、その輸入業者の自己責任で損害をかぶるということになってしまうという点については、その考え方、見解でよろしいんですね、改めて確認をします。

 

○素川政府参考人 

申し上げておりますように、そのような場合はできるだけないように努力するわけでございますけれども、先生がおっしゃっているのは、そういうことが起こった場合はどうするのかということでございますので、お答え申し上げます。

一般論で申し上げれば、やはり私人間の民事の問題につきまして、やはり国が責任をとることはできない性格のものであるというふうに存じているところでございます。

 

○城井委員 

国が設定する権利でしょう。

それで、こういう影響が起こるというのはあらかじめわかっていてそういう説明になるわけですか。

今回の権利を設定することによって起こり得る影響ですよ。今想定できるから御説明申し上げているわけです。

もう一回お願いします。

 

○素川政府参考人 

お答え申し上げます。

そのようなことがないように、運用に当たってはきちんと適正な対応を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございますが、もしそのようなことが起こればということでのお話につきましては、やはり私人間の民事の問題について国が責任をとるということは困難なものと考えておるところでございます。

この点につきましては御理解をいただきたいと思います。

 

○城井委員 

今回の法律が設定されることでこれだけの大きなリスクがあるということがよくわかりましたので、その点をよくよく輸入業者の方々にもお伝えいただきながら法の運用をしていただきたいと思います。

次の質問に移ります。

さて、先日の、先週の私の質問の中で資料の要求をさせていただきました。委員の皆さんのお手元にも来ておるかと思います。ライセンス料というものが、利益を不当に害しているかどうかという判断の基準の一つの部分として使われるというような趣旨の発言でございました。

このライセンス料の基準となる資料というものをいただいたわけですけれども、これはぜひ皆さんにも見ていただきながら質問させていただきたいと思いますが、今回の出していただいた数字、「洋盤ヒットアルバムの各国国内盤から権利者が得る利益の比較」というもの、これが、アメリカ盤、イギリス盤、ドイツ盤、フランス盤そして香港盤、台湾盤ということで、「日本国内盤から得られる利益を一〇〇とした場合」ということで、それぞれ指数が出されています。

さて、この数字ですが、じっくり読ませていただきました。大変申しわけないと思うんですが、文化庁の方、これ、ちょっといいかげんじゃないですか。

実際のライセンスの実務を行っている方々の扱っている数字の実態と違うんじゃないですか、この前提となっているところが。

細々御指摘を申し上げながら質問したいと思います。例えば、ここで計算をする利益としているところ、注の二でありますけれども、「著作権使用料及び原盤印税(著作隣接権者)をいう。」とあるんですけれども、著作権使用料と原盤印税というのは全く別々の権利じゃないんですか。

それに加えて、それぞれの方が今回の権利行使というものができる、それぞれにお持ちであるにもかかわらず、この利益の中では、このペーパーによると合算をされているわけです。

これは別々の権利で、利益はそれぞれあるだろうと思うんですが、今出されている、例えば一ページ目でいうと、アルバムA、日本国内盤、指数一〇〇としたときに、アメリカ盤の指数で九四・二という例えば数字があります。

でも、この九四・二の中に著作権使用料がどれぐらいなのか、原盤印税がどれぐらいなのか、その割合がここからはわからないわけです。

つまり、個々のアルバムでどのような利益体系になっているかというところがわからなくて、これで判断しろというのははっきり言って無理じゃないか。

しかも、なぜ指数なのかという点もよくわかりません。

それに加えて、あと二点ほど御指摘を申し上げると、利益の比較で前提としている、注の三ですが、「卸売価格は、各国とも希望小売価格の七〇%とした。」とありますけれども、これは実際にライセンスの実務にかかわっている方に伺いました。

こういう数字でふだんから扱っていらっしゃるんでしょうかということで、聞きました。

ところが、ライセンス契約というものは、現在は日本でもいわゆる卸価格を算出対象としているという部分があるわけです。

つまり、もうここだけで実態が異なっているということがあります。

そして、それに加えて、注の四と書いてありますところについても、卸売価格についても三〇%というのは非常に高過ぎる。

実際には二〇%から二五%が普通だという指摘を受けているところであります。

つまり、今ここで出されている指数というものでは、一体どのようにしてはかるのかということ、この計算の前提となっている部分が、これだけ実際のライセンスの実務と実態がかけ離れている資料で、もし仮に文化庁とそして現場の税関が判断をしていくということになるならば、実態とかけ離れた部分の悪い影響というものがその判断で及んでしまうという懸念がありますけれども、この点についての見解をお聞かせください。

 

○素川政府参考人 

まず、なぜ指数でこれを表示したのかというお尋ねだったかと存じます。

これにつきましては、まず還流防止措置につきましては、国内の音楽レコードの利益というものをベースにして物事を考えていくというようなことになっているわけでございますので、そういう意味におきまして、指数で外国盤の利益というものをあらわす方が適切でわかりやすいということで、このような資料を作成させていただいたところでございます。

また、ライセンス料のベースとなるものにつきましては、卸売価格がベースになるということは御指摘のとおりでございまして、ここにおきましても卸売価格をベースとして原盤印税というものを算出しているところでございます。

また、三〇%という数字につきましては、二〇から二五が普通ではないかということでございますが、世界的にこの数字を比較する場合に、やはり三〇%というものが国際的な標準とされているというような実態を踏まえまして三〇%、個々の契約によりましてはそれは二〇とか二五、いろいろ変動はあろうかと思いますけれども、国際的に見て、同じレコードの比較をする、その推定をするという意味におきましては、このような前提というものは適切なものというふうに認識しているところでございます。

 

○城井委員 

ここで前提としている、例えば国内盤ですけれども、この価格というのは、これはいわゆる定価ですか、それとも実売の価格になるわけですか。この価格の部分について、もう少し詳しく教えてください。

 

○素川政府参考人 

日本の場合の定価と申しますのは再販売価格ということでございます。これをベースに、JASRACの規程というものによりまして、著作権料というものが計算されるベースになっているということでございます。

原盤印税につきましては、これは卸売価格をベースにするということで、各国とも共通の希望小売価格の七割ということで設定をしたものでございます。

 

○城井委員 

このいただいた資料の指数ですけれども、先ほど御指摘を申し上げたように、これは、著作権使用料と原盤印税の足し算をしたものを指数化したという理解になると思うんですが、それぞれの内訳があると思います。

お示しをいただきたいと思います。
なぜか。

先ほど申し上げたように、著作権使用料と原盤印税、つまり、著作隣接権者というのは別々の可能性はあるわけでありますし、そうすると、それぞれがそこで得られる利益で不当に害されるかどうかという判断になってくるのではないか。

そのアルバム自体の足し算だけで本当にいけるのかというところ、懸念があるというふうに思うわけですが、その指数の内訳についてお示しください。

 

○素川政府参考人 

指数の内訳につきましては後ほどお示ししたいと存じますけれども、この著作権使用料及び原盤印税が一緒になっているということについての御指摘でございますけれども、今回の還流防止措置につきましては、権利者が得る利益の比較ということにつきましては、レコード全体について、総体的にどのような著作権者、隣接権者の利益が集積されているかということを判断するということにしているわけでございますので、そういう意味におきまして、著作権使用料及び原盤印税を合算しているということについて問題があるというふうには考えていないところでございます。

 

○城井委員 

個々のアルバムについて判断をするということでございますけれども、実際にアルバムにかかわる権利者の方というのは本当にたくさんおられるというふうに思うわけです。

この利益というところの計算の段階でも、最低二人というと変かもしれませんが、最低二つの権利者が想定をされるわけです。
そうすると、アルバム全体のところで判断したときに、実際に著作権者あるいは著作隣接権者の方が利益を害されるかどうかという判断をするところと、実際にこのアルバムについてはこうですよと文化庁が判断をしたところとのギャップというものが生じると考えますが、この点についていかがですか。

 

○素川政府参考人 

この法律の施行に当たりまして、先ほどから文化庁において必要な客観的な基準というのをお示ししたいというふうに申し上げていますが、それはやはりアルバム全体で、著作権者、権利者、大きく分けて二種類あるわけでございますけれども、この方々の利益の総体というものでその基準というものもお示ししたいというふうに考えているところでございます。それが運用の基準になるということでございます。

 

○城井委員 

先ほど私が申し上げた部分、ちゃんと御理解いただいているんでしょうか。

今回の、例えばアルバムにかかわる権利者の数というのは、非常に膨大な数に上るというところがあると思うんですが、その中でも、利益と計算をすると言っている部分についても、これだけかかわりがある。

そのほかの権利を持っている方々のところは、これでどうやってはかるのかというのは、結局見えないわけですよ。

そこを、今の御答弁の中で、ではどれぐらい担保されたのかといえば、運用でちゃんとしますという話になるわけでしょう。全然見えないわけです。

もう一回答えてください。

 

○素川政府参考人 

音楽レコードの中の一枚を売った場合の利益というものは、御指摘のように、著作権使用料、原盤印税、それぞれの関係者がかかわっているということではございますけれども、この還流防止措置の適用としてレコードがとまるかとまらないかというようなことになるわけでございますけれども、レコードは一つの有体物でございますので、そういう意味におきまして、著作権使用料及び原盤印税を合算いたしまして、このレコードに係ります権利者のすべての利益の総体を比較するというのが最も適切な対応だということでございます。

権利につきましては、関係者がそれぞれ行使するということでございますけれども、レコードの比較、不当な利益はどうかという比較につきましては、このような全体の比較というものが適切であるというふうに考えているところでございます。

 

○城井委員 

これまで言ってきたことと実際の仕組みと、ちょっと違うんじゃないんですか。

先ほどのこの内訳の数字というものも示されていないどころか、今の御説明ということになりますと、一体だれを守っているのかというのがよくわからなくなってきますね。

そんな一くくりにして判断をするということなんですね。

だれを守るんですか。

 

○素川政府参考人 

音楽レコードにかかわる著作権者及び著作隣接権者というものが保護の対象でございます。

 

○城井委員 

質疑時間が終わりということですのでこれで終わりますが、そういう、実際にこれまで言ってきた、個々の権利者の方を守りますよと言ってきた部分と、今この利益の比較の表から始まった御説明のところで示されたものというところのギャップというのがこんなに大きいというのがこの場で明らかになったということは、非常にゆゆしき問題だというふうに思っています。

もうちょっとよく考えてから答えてください。

もう本当にあきれます。

ほかにもまた聞きたいことはたくさんあるわけですけれども、非常に時間が限られておりますのでここで私は終わりますが、ここで私が聞かなかった点もきちんと通告をしておりますので、その点、また後ほどお答えいただくということにさせていただいて、私の質問を終わります。

ありがとうございました。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区