著作権法の一部を改正する法律案について (特に、洋楽の輸入版CDの輸入が止まる可能性について)
2004年5月28日 衆議院文部科学委員会
○城井委員
民主党の城井崇です。
著作権法の一部を改正する法律案、とりわけ、本日は、CDの逆輸入規制が洋楽も対象となる可能性があるという件について質問させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、まず一番初めに、大臣に、非常に簡単な質問なんですが、お伺いしたいことがあります。
大臣、インターネットをお使いかと思うんですが、ブログというのを御存じですか。正式な名前はウエブログというんですけれども、御存じですか。
○河村国務大臣
私、存じません。
○城井委員
ありがとうございます。
ブログ、正式にはウエブログというんですが、これは、いわゆるネット上での簡単な日記なんです。
形が決まっていまして、自分で入力をして日記を書いていくという方式なんですが、ただ、そのブログという新しいタイプの日記はちょっと変わっておりまして、そこに書いている単語とかあるいはキーワードというのを、そのほかの日記とかブログで書いている方のキーワードと結ぶことができるんです。つまり、ある方のブログを入り口にして、ほかの方が書いている意見とかあるいは情報とかといったものに触れることができるというのが、いわゆるブログが持っている特徴なんです。
そのブログを扱っているネット上の皆さんの中で、今回の著作権法の改正の話が大きく取り上げられています。
特に、今回のはらんでいる問題の分析ですとかあるいは検証といったものが、ある意味でリアルタイムに行われているといった部分がございます。
その中には、もちろん、ネット上の情報ですから、先入観とか誤解とかいろいろなものがあるわけなんですが、ただ、それを一つ一つ丹念にたどっていきますと、ある意味で、今回の著作権法の改正がはらんでいる問題点というのが、その場で、いろいろな方の知恵が集まっていますので、ある意味で丸裸にされているという感じを私は受けております。
その中で、先ほどの質問にもございましたが、やはりぬぐえない懸念が幾つもある。
先ほどの洋楽のCDの件で申しますと、一つは、今後、いわゆる日本のCDの競争が、国際的な競争にさらされないということで、競争がなくなっていくことで価格が高どまりしてしまうのではないか、あるいは洋楽盤CDの輸入がとまってしまうという可能性があるのではないか、そういったことが今の中で音楽文化の衰退につながっていくかもしれないという懸念、心配という声が非常に強いというふうに思っています。
ただ、その懸念、心配というものを受ける中で、私は、今回のこの法律案の改正で最も大事に考えなければならないと思っておることは、著作権を守るということと、自由な流通によって文化を発展させていくということ、このバランスをとることは非常に大事だと思っています。
しかし、その上で、知的財産に伴う産業というものについては、そのよい点だとか、あるいは発展させていくために必要な規制もあるだろう。
しかし、それらを論じると同時に、国民に対して、例えば消費者が自分の不利益を我慢してでもその産業のためにそういった政策を支えていくという気持ちを持つかどうかというのはすごく大事だというふうに私は思っているんです。
ここが、今回の法律改正に至るまでのプロセスと、そして今出されているこの状況といったところに全く足りないという思いがしております。
そういった意味で、今回の改正案というものは、正直言って、羊頭狗肉と言われてもしようがないのではないかと思っています。
御説明にある見かけの部分と、実際にはらんでいる中身というのが天地ほど異なる。
薬に例えて言うならば、ペニシリンとかバイアグラとか、ああいったものとは逆で、ある意味で、あしき副作用の影響が非常に大きい薬のようだというふうに感じています。
実際にこの法律の内容をじっくりと読ませていただきました。非常に規制があいまいだということがわかります。
輸入禁止の対象範囲が明確ではありません。
欧米からの並行輸入盤を含む輸入盤のすべてが禁止対象になり得るという部分があります。
この副作用に対する懸念、心配というものが、単に一部の洋楽ファンにとどまるのではなく、消費者の方々、一部の著作権者の方々あるいは輸入にかかわる小売の業者の方々の、本当にたくさんの方々の間にあります。
そして、反発が強まっています。
音楽家の坂本龍一さんという方がおられます。
この方を含めて五百名もの音楽関係の方々が賛同された輸入CD規制に反対するという声明も発表されています。洋楽の常時愛好者というのはこれぐらいだろうと言われている数字、五万人を超えようとするような署名が非常に短期間で集まっているという状況もあります。
こういった副作用に対する懸念、心配というものが厳然とあるという点について、まず大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○河村国務大臣
今の御指摘の点は、今回の還流防止措置をつくる、とる、こういった場合に、洋盤レコードの影響など消費者の利益に十分配慮しなきゃいかぬ、こういう御指摘は、文化審議会の著作権分科会の報告書を初めとして、この法案の立案以前から指摘をいただいた点でございます。
法案をつくる我々文部科学省側といたしましても、こういう指摘はちゃんと踏まえていかなきゃならぬということで、制度設計に当たってさまざまな要件をセットするということ、また、必要なら後ほど要件を述べさせていただきますが、そうした消費者の利益といいますか、そういうものに十分に配慮して法案を立法した、こう考えております。
特に、御懸念の洋盤レコードの直輸入についても、内外無差別の原則という国際条約上の制約のために、外国の権利者を保護の対象から除外することはできないわけでありますけれども、これら要件をつけたことによって、日本と物価水準等大きな差がない先進国からの輸入については、これは影響がないということをきちっと明確にしておるわけでありますから、これは、先ほど岸田先生のときにも御答弁申し上げました、もちろんこの説明責任というのはきちっとあるわけでありますから、このこともきちっと果たしながら、御理解をいただきたいということで今回の法案を提出させていただいておるわけであります。
○城井委員
大臣、十分に説明責任を果たしていただきたいと思います。
今のお話を伺っておりまして、一言で申しますと、いわゆる要件をそろえるということによってという部分が条件でつくんでしょうが、今私が申し上げましたようないわゆる副作用に対する覚悟、要するに、それをのみ込んだ上で今回の法律を施行していくんだという覚悟を持っての改正であるという認識でよろしいですか。大臣、お願いします。
○河村国務大臣
御指摘の点、その点を踏まえてやっておるというふうに考えております。
○城井委員
聞いたことに答えてください。
今回の、私が指摘申し上げた副作用をのみ込んだ上での、のみ込む覚悟を持った上での改正ですかというふうに伺ったわけです。
もう一度お願いします。
○河村国務大臣
副作用といいますか、輸入がストップされるのではないかとか、こういう御指摘、これは十分踏まえた上で、そしてこの法律をつくる場合に、著作権のあり方というもの、これはやはり私権でもございます。
もちろん法務省、法制局、御承知の法制局でありますが、法案審議に当たっては十分審議をしながら法案を提出させていただいておるわけであります。
○城井委員
踏まえておるということで、その可能性を十分に含めたものだというふうに受け取らせていただきます。
それでよろしいですか。今の私の認識でよろしいか、もう一回確認をお願いします。
○河村国務大臣
これはあらゆる角度から、その可能性の極めて低いこと、十分いろいろな議論を踏まえ、いろいろな御意見を伺いながら、また、これは対外的な問題でありますから、アメリカのファイブメジャーと言われるそういう方々の意見、そういうものもすべて勘案してやったわけでありますから、この法律でこの問題についてはきちっと適用できる、そういうことで確信を持って出させていただいております。
○城井委員
大臣、済みません、可能性がある、ないの二択だったらどっちですか。
○河村国務大臣
これは参議院においても、その点いろいろ御議論させていただいた。
そして、まさに大きな変化、商業用レコードの還流の実態について特異な現象が出たとか、そういうケースによって万が一消費者に不利益が起きるというようなケースについては、これは状況を調査し検証して、そしてその処置が必要であればそれは講じなきゃいかぬ、そのことは申し上げてきているところであります。
(発言する者あり)
○池坊委員長
不規則発言は控えていただきたいと思います。
委員が質問なさることに対して……(発言する者あり)委員会は委員と答弁者との質疑だと思いますので。
○城井委員
可能性はあるという認識でよろしいですか。
○河村国務大臣
参議院でも参考人質疑があったと思います。現時点では可能性はないということで、しかし、情勢の変化というのはあり得る、こう聞いておりますから、そのときにはそのときの対応をしましょう、こう申し上げております。
○城井委員
情勢の変化によっては可能性はあるということでよろしいんですね。
○河村国務大臣
何事も情勢が変化するということはありますから、それはそういうことはあると思います。
著作権を絶えず変えていかなきゃいけない、この現状を先ほど岸田先生も御指摘ありました。
そういうことであるというふうに思います。
○城井委員
可能性はあるということで受け取らせていただきながら、次に進めさせていただきたいと思います。
また、その点疑念が出てまいりましたら、その都度伺わせていただきます。
さて、次に伺わせていただきますが、今回の法律に書かれている実際の内容の部分の確認を若干させていただきながら進めさせていただきます。
まず、そもそもこの問題なんでございますが、たしか最初はレコード輸入権として取り扱われていたはずなんですけれども、その名前が途中から還流防止措置にすりかわってきているというふうに私読んでおります。
先ほどの答弁にもありましたが、いわゆる内外無差別原則を含む輸入権の創設というのが今回のねらいであろうというふうに考えるわけですが、還流防止措置という名前をつけてしまった場合に、この法律が目指しているところ、あるいは実態というものを正確にあらわしていないのではないかというふうに考えますが、この点について、文化庁の方、見解をお聞かせください。
○素川政府参考人
お答え申し上げます。
今回の措置につきまして、先生御指摘のように、当初、知財計画等におきましてはレコード輸入権という表記で整理していたということは事実でございます。
現在、音楽レコード還流防止措置というふうに説明しているわけでございますけれども、この輸入権という言葉は、著作権にはたくさん支分権がございますけれども、その支分権の一つとしての輸入権をつくる、これは外国の場合にもそういった支分権としての輸入権をつくるというケースがあるわけでございますけれども、その場合には、著作物のいかんを問わず輸入をコントロールする権利を権利者に与えるという広範囲な権利になるわけでございますけれども、そういうふうなものと受け取られるおそれがあるといいますか、そういうのが自然なものでございます。
そういうことで、今回の措置というのは、国内に同一の音楽レコードが売られているということを前提といたしまして、これを要件といたしまして、海外からのレコードの還流防止措置ということとして説明する方がより適切に制度の趣旨を説明することになるということで、このように現在説明させていただいているところでございます。
○城井委員
この名前が変わるきっかけとなった出来事はございますか。
文化庁の方、お願いします。
○素川政府参考人
これだけがきっかけだということはないかと存じておりますけれども、やはり、このレコード輸入権といいますか現在の音楽レコード還流防止措置というものを検討していく中で、より適切に、誤解の少ない表現をする方がいいということでこのような表現にさせていただいたところでございます。
○城井委員
私は、先ほど申し上げましたように、逆に実態を隠してしまっているというのがこの名称の実態だというふうに思っております。
続いて質問をさせていただきたいと思います。
文化庁の方、再びお願いしたいんですが、文言上は、アジア盤に限らず、洋楽盤の国内盤を出している日本のレコード会社が欧米などを初めとした安い海外盤の輸入を禁じるよう求めることもこの法律によって可能になるかどうかということで、可能になるという理解でよろしいでしょうか。
○素川政府参考人
お答え申し上げます。
先ほど来御説明申し上げておりますように、著作権の保護につきましては、著作権に関する国際条約によりまして、内国民待遇というものを制度上与えるべきであるということで、音楽レコードの還流防止措置におきましても、法制度上は日本の権利者と同様外国の権利者も保護するということになっているわけでございます。
そういう意味におきまして、法制度上は海外のレコードの輸入というものは形式的にその対象になるということでございますが、今お話しの日本のレコード会社というのは著作権法上の権利者ではございませんので、今回の還流防止措置の権利を行使する当事者ということではございません。
○城井委員
では、この場合はどうでしょうか。
今のお話のように、著作権法は海外のレコード会社にも適用されるんですけれども、海外のレコード会社の日本法人が輸入している海外盤も規制の対象になり得るという理解でよろしいでしょうか。
○素川政府参考人
音楽レコードといたしましては、先ほどの説明と同様でございます。
権利者は、海外でレコード制作しているレコードの関係の権利者、著作者及び著作隣接権者ということになろうかと存じます。
○城井委員
もう一つ伺いたいんですが、今の話を踏まえていただいて結構なんですが、そうすると、いわゆるファイブメジャーだけではなく、海外の原盤のライセンサーを含む海外のすべての著作権者並びに著作隣接権者が、その方々がかかわる、例えば欧米などを初めとした安い海外盤の輸入を禁じるよう求めることも可能になる、すなわち権利を行使することができるという理解でよろしいですか。
○素川政府参考人
海外の音楽レコードに係ります権利者、これにつきましても、法制度上は、やはり先ほどから申し上げているような御説明と同じわけでございます。
ただし、この還流防止措置が適用されるかどうかということにつきましては、今回改正する法律に書いておりますような多くの要件、これをすべてクリアする必要があるわけでございます。そういう意味におきまして、法制度上保護の対象になっている、形式上なっているということと、実際に物価水準に差のない欧米の先進諸国の音楽レコードにおいて今回の措置で設けられました要件を満たすかどうかということとは、また一つ別に検討する、考えられるものではないかというふうに考えております。
○城井委員
そうすると、今のお話を総合しますと、済みません、非常に細かいことを聞いているというのはわかっておるんですが、大事なところなので。
法制度上は可能だと。
しかし今回の法案が通過した後ということでいうと、要件を満たした場合に、先ほど申した海外のすべての著作権者並びに著作隣接権者の方々が法制度上権利を行使することが可能だという理解でよろしいですか。
○素川政府参考人
形式的に還流防止措置の対象になっているということは否定しないわけでございますけれども、この要件は該当するかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、物価水準に著しい差のない欧米の先進諸国との間におきましては、通常、その現状に変化がないものというふうに考えておるところでございます。
言いかえますと、このような日本との物価水準に大きな差がない先進諸国等の輸入については、影響が起きないような運用の仕方をするということがこの立法趣旨に沿うものではないかというふうに存じているところでございます。
○城井委員
私、要件を満たせばというふうに伺っておりますので、要件を満たした場合には権利行使が可能だ、それは先ほどの形式的とはいえこの法律案に含まれているという理解、要件を満たせば権利行使は可能だということで理解はよろしいんですかと聞いたので、その点についてもう一度、御確認で質問させてください。
○素川政府参考人
現実に適用になるかどうかということは別にいたしまして、理屈上、理論上の御質問であれば、そういうことかと存じます。
○城井委員
ありがとうございます。
続いて聞かせていただきます。先ほどの、要件を満たせばというところにかかわってくるかと思うんですが、ライセンス料の件について聞かせてください。
現在、作詞作曲などに係る著作権者、あるいは演奏家、レコード会社などの著作隣接権者は、CD売り上げの一部をライセンス料として受け取っていると思います。
今回の法改正の対象になっている現地でライセンス生産される正規版についても同じかと存じますが、各国、各地域におけるライセンス料の格差というものがあろうかと思います。
先ほどの御説明でも、アジアのといった、具体的な地域の名前も出てまいりました。
この実際の格差については、原案では明記はされていませんが、どの程度まで容認をするのか、その基準というものをお持ちなのかという点、この点についてお聞かせください。
○素川政府参考人
お答え申し上げます。
どの程度の著しい差がある場合に不当に害されるかということでございますけれども、著しい差というのは、一定の数値をもって基準とするというよりも、今回の還流防止措置の立法趣旨というものに照らして判断するのが適切ではないかというふうに存じているわけでございます。
いずれにいたしましても、現在、先ほどから申し上げましたように、日本と物価水準に大きな差がない先進諸国からの輸入のように、国外における販売によって得られる利益が国内における販売によって得られる利益と比べまして著しい差がない場合には、不当にとは判断されず、今回の措置の対象にはならないものと理解しておるところでございます。
○城井委員
とすると、先ほどの著しいといった判断は、数値はないということでございました。
立法趣旨による判断ということでございましたけれども、そうすると、担当者の個々の判断によって変わり得るという理解でよろしいんですか。
○素川政府参考人
担当者ということではございません。各国の状況を前提にいたしまして、客観的な状況を前提にいたしまして、この法律の趣旨からいたしまして不当な侵害に当たる場合ということはどのようなものかということをきちんと整理させていただき、税関当局と連携をとって運用に努めてまいりたいと存じておるところでございます。
○城井委員
よくわからないんですが、判断の責任者はどなたですか。
税関当局と連携をとってといっても、その責任者が今の御答弁では全くわからないわけですが、判断の責任者はどなたになるわけですか。
○素川政府参考人
責任者といいますか、この法律を政府において所管している担当部局が責任を持つということでございます。
○城井委員
監督局はどちらですか。
○素川政府参考人
具体的に著作権法を所管しているのは文部科学省であり、文部科学省の中におきましては文化庁でございます。
○城井委員
そうすると、文化庁という理解でよろしいですか。
○素川政府参考人
文化庁という理解でよろしゅうございます。
○城井委員
そうすると文化庁が、先ほどの、数値を持たずに著しい差の判断をするわけですね。
この理解でよろしいですか。
○素川政府参考人
数値を持たずに判断するというふうには申し上げておらないところでございます。
○城井委員
立法趣旨の中に数値は含まれていないんですよね。
判断基準は何ですか。
○素川政府参考人
お答え申し上げます。
今回の法律の趣旨は、今回の還流防止措置の趣旨は、アジア諸国等の物価の安い国からのいわゆる還流を防止するということにありまして、不当に利益を害することとなる場合に限るという要件は、そのような趣旨に照らし運用することが必要であるというふうに考えているところでございます。
○城井委員
わかりません。
委員長、ちゃんと答えていただきたいんですが、判断基準は何ですかといって、数値ではないというところまではわかりました。では何ですかといったときに、立法趣旨の説明に戻られても全くわかりません。
立法趣旨に照らした場合に、その立法趣旨のどの部分が具体的に判断基準となるのかというのを教えていただきたいと申し上げておるわけです。
もう一回お願いします。
○素川政府参考人
立法趣旨は、先ほどから申し上げておりますように還流防止措置の立法趣旨は、安い国からの輸入を防止する、それによって我が国の音楽関係の権利者が海外展開する活動ということができるその環境を整備するということに立法趣旨があるわけでございます。
○城井委員
もう一回言いますよ。
よく聞いてください。
文化庁が著しいを判断するときに、数値ではなくて何を基準にしているんですかと聞いているんです。
もう一回答えてください。
○素川政府参考人
著しいかどうかという判断をするときに、今回の措置に照らしますと、アジア等の物価の安い国からの輸入は防止するということが必要であろうけれども、日本と物価水準に大きな差がない先進国からの輸入、例えばアメリカ、イギリスでございますとかフランスとかドイツ、そういった国、そして、これらにつきましては、現在、並行輸入といいますか直輸入ということでビジネスが行われているわけでございますけれども、こういった国の輸入に影響を与えるということは本来の趣旨ではございませんので、その辺のところを基準として判断するということでございます。
○城井委員
物価水準に差がある、ないというお話が出てまいりましたが、物価水準は何ではかるんですか。
○素川政府参考人
物価水準につきましては、それぞれの国の所管の当局のデータというのを踏まえて検討するものと考えておるところでございます。
○城井委員
それは数値じゃないんですか。
文化庁の方、よく聞いてください。
数値じゃないと先ほど言ったじゃないですか。物価水準を基準に文化庁が著しいかどうかを判断するんですということなわけでしょう、要は。
そこを最初に聞いているわけですから、そこを数値じゃないと言って逃げているのはどういうことなんですか。
いいですか、物価水準が数値かどうかなんて、言わなくてもわかると思いますけれども、その点を一応確認しますが、お答えください。
○素川政府参考人
お答え申し上げます。
一定の数値をもって基準とするものではないと申し上げましたけれども、その基準を検討するに当たっては、そのベースとなるデータというもの、それは数値も含むと思いますけれども、それは当然必要になるわけでございますので、御理解いただきたいと思います。
○城井委員
では、その物価水準、特にベースとなるデータに基づいてということですが、それぞれの国別にお持ちということになるわけですか。
それぞれのその国別に示してください。
○素川政府参考人
物価水準ということを申し上げたわけでございますけれども、その物価水準というのは何に反映されるかといいますと、先ほどから申し上げておりますように、レコードに係るライセンス料というものの相関関係があるわけでございます。
これはきちっと正比例ということではございませんけれども、物価水準に応じた価格設定というものが各国のレコードにおいてされるわけでございますけれども、それは権利者が受け取るライセンス料のベースになるというものでございます。
それで、現在、日本の国内盤とそれからアメリカ盤、イギリス盤、そういった重立った主要国とのライセンス料の比較ということ、これが不当な侵害かどうかということのベースといいますか、その判断する一つのベースとしては資料があるわけでございますけれども、その数値が基準ではないということで言っているわけで、基準の判断のベースにはその数値というものがあるということでございますので、ここは、そういうことは御理解いただきたいと存じます。
○城井委員
そうすると、物価水準に差があるかないかというお話と、今出てきた話で言うと、ライセンス料も踏まえたになるんですかね。
そうすると、数値以外にも基準があるわけですね。
数値も勘案しながらということになるんでしょうが。
ちょっとよくわからないんですが、そのあたり、もう一回整理してください。
○素川政府参考人
不当に害されるという場合には、この判断基準といいますか基準といたしましては、それは、先ほどから申し上げておりますように、著作権者、隣接権者が受け取るライセンス料ということになるわけでございますけれども、物価水準に差があるというのは、そのライセンス料と物価水準、したがって、それは各国の売り出しのレコードというものが相関関係にあるということで物価水準に差があるというような説明を申し上げているわけでございますけれども、基準といたしましては、厳密な意味では、ライセンス料の差が著しいかどうかということでございます。
○城井委員
全然わからないんですが。
先ほど国別にそれぞれ挙げてくださいというふうに申し上げた部分がまだお答えいただいていないので、まずそこの部分をお願いします。
○素川政府参考人
具体的に水際措置をするのは税関当局でございますので、そちらとの連携というものが十分必要であろうかと思いますけれども、私どもが今現在理解しているところでは、アメリカとの間、これは平均いたしましても、大体二割程度ぐらいのライセンスの格差が平均的なものではないかと思っております。
イギリスやフランス、ドイツにつきましては、同等かもしくはそれ以上のライセンス料というものがその国々に対してあるというようなことではないかというふうに思っています。
いずれにいたしましても、これにつきましては、具体的に、法律の施行段階までにより精緻なデータを集めまして、税関当局と連携をとりまして適切な運営が図られるものと考えております。
○城井委員
今の御答弁だと、やはりわからないのは、では、そのライセンス料の差が開いてきたと、どこでその判断が変わってくるのか。
要するに、基準を持たずに今のいわゆる判断を現場の税関の方とされるんでしょう。
その後に、恐らく、こんなふうに法律を施行していきますというのをつくるんでしょう。ですけれども、そこで基準がなくつくっていくことができるんでしょうか。
その根拠のある資料をちゃんとお持ちなんですか。
まずそれを出してください。
○素川政府参考人
先ほどから申し上げておりますように、その判断の基準自体は数値ではございませんけれども、その基準というものを考えるに当たっては、一定の数値をベースにして判断しなければいけないということでございます。
そして、その判断をする際には、やはり今回の還流防止措置の立法趣旨というものを踏まえなければいけないというふうに考えております。
物価の安い国からの還流を防止するということによって日本の音楽関係の権利者の利益を守る、そして、安んじて海外展開することができるような環境を整備するということは非常に重要なわけでございますけれども、それと、物価水準に大きな差がない、したがってライセンス料に大きな差がない先進諸国、アメリカ等の輸入がとまるというようなことになるということについては、それは本意ではございません。
そういうことで、そのようなことが、輸入が影響を受けないような要件の運用をするということがその立法趣旨に沿うものと考えているところでございます。
○池坊委員長
城井崇君。
城井崇君。
(城井委員「質問に答えていない。答弁をちゃんとしてもらってから質問は」と呼び、その他発言する者あり)
私、委員長一人に言っていただいても困りますので、それは筆頭と協議なさってお決めいただきたいと思います。
質問者の質問に対し、答弁者の答弁が納得いくものでなかったとしても、きちんと答弁しておりますので、この委員会を続けたいと思います。
(発言する者あり)
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○池坊委員長
速記を起こしてください。
城井崇君。
○城井委員
先ほど来私が申し上げておる点、もう一度確認をして、お願いをしたいことがあります。
先ほどの御答弁の中で、ライセンス料を判断のベースにしているという御答弁がございました。
このライセンス料を判断ベースとするならば、その算定根拠となる数字がないとどうしようもありません。
この算定根拠となるライセンス料の各国の比較できるような数字をこの委員会に提出してください。
でなければ、先ほど来申し上げておりますように、消費者の方々を含めて非常に不安の声がある。
不当だと言われても、その基準があいまいなままで、結局、後から決められていく、その基準がわからないままに決められていくということをそのままにしておくわけにはいかないというふうに考えます。
この資料の提出について、ここでお願いを申し上げます。
○池坊委員長
理事会で協議いたしまして、お答えいたします。
○城井委員
その資料はございますか。
○素川政府参考人
資料はございます。
○城井委員
その資料を提出していただくように理事会にお願いを申し上げます。
○池坊委員長
理事会で協議いたしましょう。
○城井委員
この問題は資料が出てきてからまた改めて質問させていただくといたしまして、次に進ませていただきます。
本日の岸田委員の質問の中にもございましたけれども、本法案の参議院での法案審議の際、大臣の方あるいは政府参考人の方の答弁、あるいは先ほどの岸田委員の質問に対する大臣の御答弁といったものでも、今回の海外からの、特に欧米からのレコードの輸入というものに関しては心配ないということの御趣旨のお話が何度も触れられているというふうに思いますけれども、これらの答弁で言及された内容、触れられた内容というものには、いわゆる国内における法律の運用に何らかの措置ができるとしても、海外の著作権者及び著作隣接権者による今回与えられた権利の行使、つまり、輸入権あるいは政府の言う還流防止措置ということになるんでしょうが、そういった権利の行使をそれらの答弁で言及された内容ということをもってとめることができるのか、この答弁にそういう効力があるのかないのか、この点、文化庁の方、お願いします。
○素川政府参考人
国会での答弁自体は、権利行使をとめるそのものの効力があるかという御質問に対しましては、そのようなものではないというふうに承知いたしております。
それは、政府の見解、心構えであるということでございます。
○城井委員
ということは、答弁内容が担保されたというお話が幾つもあるわけですが、答弁内容が担保をされたとしても、権利行使をとめるということはできない、あくまで心構えでしかないということでよろしいんですね。
○素川政府参考人
法律の運用というものは、各担当の官庁で法律の権限を受けまして行うものでございますけれども、そのようなレベルにおきましては、法の運用におきまして、各省、各部局が行う場合には答弁の内容に沿った運用をするということでございます。
その点は御理解いただきたいと存じます。
○城井委員
その点は理解をしたんですが、聞いたことに答えていただいていないのでもう一回だけ確認をしますが、そういう答弁の内容によって、海外の著作権者及び著作隣接権者による権利行使をとめることができない、あくまで答弁は心構えでしかないという理解でよろしいですねと聞いているんです。
この点について、イエスかノーかで結構ですので、お答えください。
○素川政府参考人
答弁自体で海外の権利者の権利行使をとめる効力自体というものがあるということはございません。
○城井委員
今の点は、非常に大事だと思っています。
というのは、大臣の答弁が担保されることによって大丈夫ですよというふうに、今消費者の方々を含めて説明している政治家、関係者が本当にたくさんいます。
それがうそだったということが、ここで明らかになるわけであります。非常に大きな点だと思っています。
この点にかかわると思うので、もう一つ質問させていただきます。
同じように、本法案に関して、先月、参議院で全会一致で可決されたわけですが、その中で、洋楽レコードに還流防止措置などが行使され、消費者の利益が侵害された場合に法律の見直しなどを検討するという附帯決議が添えられたとあります。
この附帯決議は、海外の著作権者及び著作隣接権者による、今回の法律で付与される権利の行使をとめることができるのか、その効力があるのかないのか、これもイエス、ノーで結構でございます、お答えください。
○素川政府参考人
附帯決議自体は、これは基本的には政府に対するものでございます。
政府は、その趣旨を体して、その実施に努めるというものでございます。
附帯決議自体は法律そのものではないということは、もう委員御案内のところだと思いますけれども、政府におきましては、附帯決議は尊重しながらその実施に努めてまいるというのが基本であるということは御理解いただきたいと思います。
○城井委員
ということは、法律そのものではないということでございますので、先ほどから申し上げている海外の著作権者及び著作隣接権者による権利の行使をとめることはできない、そういう効力はないという理解でよろしいですか。
○素川政府参考人
附帯決議というものが法律かどうかというような説明ではないということは言えるかと思います。
○城井委員
聞いたことに答えてください。
もう一回言います。
海外の著作権者及び著作隣接権者の権利行使をとめることがこの附帯決議でできるのかできないのか、そういう効力はあるのかないのか。
イエス、ノーで結構です、もう一回答えてください。
○素川政府参考人
イエスかノーかということだけを言えということであればノーでございましょうけれども、附帯決議を踏まえて、政府がそれを尊重した運用をするということでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
○城井委員
ということは、今のお話を総合しますと、附帯決議で権利行使がとまることはない、あくまでそれは政府の取り組みなんだ、しかし政府も、答弁内容としては心構えでしかなく、権利をとめることはできないということが、先ほどの答弁とあわせて言えば理解をするわけですが、そういうことでよろしいんですね。
○素川政府参考人
国会での答弁というものは、そのものが法的拘束力があるというものではないということは御存じのことだと思います。
それを政府におきまして、政府提案の法律の考え方というものを国会答弁の中で明らかにしていくというものがその趣旨ではないかと存じております。
○城井委員
ここまでの御答弁でとんでもないことが明らかになっていると私も思うわけですが、この附帯決議で権利行使をとめることができる、あるいは答弁の内容でとめることができるというふうにさんざん喧伝をしてきた政治家、関係者がたくさんいるということをここで改めて申し上げなければなりません。
なぜここにこだわっているかというと、一度文化庁の方々、大臣答弁やあるいは附帯決議で担保できなかったがために痛い目に遭った覚えがあるんじゃないんですか。
具体的に指摘を申し上げます。
十年前に議論されたレコードレンタル権の問題のときに、米国は権利を行使しないという大臣答弁やあるいは附帯決議があった上でその権利を設定したという経緯がございました。
にもかかわらず、結果的には、米国の権利者は権利を行使したという苦い苦い経験が過去の我が日本にはあるわけです。
だからこそ、そのときの経験からすれば、大臣答弁や附帯決議は、何ら現場に拘束力を持たないということが明らかなわけです。
この点の苦い経験を踏まえての今回の取り組みなのかという点でいったときに、今回もまた同じように、大臣答弁あるいは附帯決議といったものは効果がないということがここで明らかになっているわけです。
この過去の経験を踏まえての今回の取り組みなんですか。
お答えください。
○素川政府参考人
今先生御指摘の過去の例というのは、平成三年のレコード貸与権のことかと存じます。
そのような理解でよろしゅうございましょうか。
平成三年に、外国のレコード製作者に貸与権を認めた際に、外国のレコード製作者が、発売後一年間の許諾権を行使するのではないかというような懸念があったわけでございます。
外国のレコード製作者と日本のレコード製作者との間で、国内当事者間のルールに準じたルールを協議中であったということから、当時の文化庁といたしましても、この協議が調い、懸念された問題は起きないということを期待していたわけでございます。
しかし、結局、この協議というものは調わなかったということで、今先生の御指摘のようなことがあるのだろうというふうに存じております。
ただし、今回は、還流防止の適用のためには複数の要件が定められているということ等から、レコード貸与権と同様の結果にはなるものではない、状況は違うものというふうに理解しているところでございます。
○城井委員
今、状況は違うという御答弁でしたけれども、どこがどう違うのか、具体的に御説明ください。
○素川政府参考人
外国のレコード製作者に貸与権を認めた場合にどのような行使の仕方をするかということ、具体的に申し上げますと、法律で、一年以内の間において禁止、許諾権というものを行使することができるわけでございますけれども、それをどの期間行使するかということにつきましては、その権利者の意思に任されているわけでございます。
ということで、そういう状況と比べますと、今回のいわゆる還流防止措置が適用されることになるかということにつきましては、法律に定めました複数の要件、これがすべて満たされなければならないということがございますので、これは権利者の意思、一存の問題ではないということで、状況が違うということを申し上げているわけでございます。
○城井委員
次長、私の質問をきちんと聞いていただいているんでしょうか。お手元にもペーパーでお渡ししていると思うんですが、今比較していただきたいと申し上げたのは、米国は権利を行使しないという大臣答弁や附帯決議があった上でこの権利をつくったにもかかわらず、結果的に米国の権利者が権利を行使したという経験の部分について申し上げているんです。
この点について同じなのか違うのかといったときに、私はここから学ぶべきだということを申し上げているわけです。
この点についてもう一回お願いします。
○素川政府参考人
過去の事例というものにつきましては何事も学ぶべきものであると考えておるところでございます。
○城井委員
今回の法律案をつくるに当たって、では、どこを学んでいるんですか。
実際、同じことを今繰り返しているだけじゃないんですか。学んだ点を教えてください。
○素川政府参考人
過去の事例に学ぶということは必要だと申し上げたのは、このケースが平成三年のケースと同一であるということを申し上げたわけではございません。
先ほどから御説明しておりますように、外国の権利者に権利を与えるという意味におきましてはその部分は共通する部分がありますけれども、レコード貸与権につきましては、支分権としての貸与権というものを完全に法律上付与した後、それがどのような権利の行使をするかということにつきましては、これは全くその権利者の意思にゆだねられているわけでございます。
そういう状況と、今回のいわゆる還流防止措置につきまして外国の権利者が権利行使をすることができるかどうかということは、これは法律に定められた要件、多くの要件をすべてクリアしなければ行使できないという意味におきまして、権利者の一存で権利を行使できるという支分権を完全に与えたというような形態とは状況を異にしているということを申し上げたところでございます。
○城井委員
ここで私が学んでいただきたいと思っていることは、今お答えいただいたところではありません。
一言で申しましたら、附帯決議やあるいは大臣の答弁というものが、この権利行使をとめるということに関して担保にはならないという点をまた繰り返してしまうのかという点から学ぶべきだということを申し上げているわけです。
確認します。附帯決議と大臣答弁はこの権利行使に関してとめるということについて担保にはならないということでよろしいですね。
○素川政府参考人
附帯決議や法案審議における答弁というものは、先生から先ほど御質問ありましたような法的拘束力を持つかという意味においては、それ自体が法的拘束力を持たないということは自明のことであると存じます。
ただ、附帯決議、法案における審議ということにつきましては、これは政府として、その法律の解釈、運用に当たってそれを踏まえて行うという意味におきまして、非常に大きな意味を持っているものと存じております。
○城井委員
お答えいただいていないと思うので、もう一回だけ聞きます。
附帯決議そして大臣答弁というものは、先ほどから申し上げております、海外の著作権者及び著作隣接権者による権利の行使をそれをもってとめることはできないという理解でよろしいですか。
イエスかノーかでお願いします。
○素川政府参考人
それ自体が法的拘束力を、法律と同様の法的拘束力を持っていないという意味においては、答えはノーということでございますが、それ以外のことにつきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。
○城井委員
ということは、海外の著作権者の方々そして著作隣接権者の方々は、附帯決議と大臣答弁に法的にとらわれないで権利を行使することができるということでよろしいですか。
○素川政府参考人
法律の解釈、運用に当たりましては、関係各政府当局の担当にその執行する責任があるといいますか、その役割を持たされているところでございます。
その法律の解釈、運用に当たりましては、この附帯決議を踏まえて行うこと、そして法案審議の答弁というものを踏まえて行うということは当然のことでございますので、そういう意味におきましては、法律の具体的な運用におきまして非常に大きな意義を持つものであると考えております。
○城井委員
時間が参りましたので質問を終えたいと思いますが、最後に一言申し上げます。
今の点、やはり答えていただいていないと思っています。
そして、私のこの質疑の中での答弁で明らかになったことは、非常に大きなことがたくさんあると思っています。
これまで権利行使は心配ないということで説明がされていたにもかかわらず、その理由となっていた部分、例えばその判断をする基準、著しいかどうかという判断をする基準が全くもって明らかになっていない、資料すら本日出されていない、事前に通告していたにもかかわらずです。
そして、それに加えて、これまで大丈夫だという理由にしてきた附帯決議も、そして大臣答弁も何ら役に立たないということも明らかになったということで、非常に大きな点だと思います。
このほかの点にも問題はたくさんあると思います。
残りは仲間の皆さんから質問していただくということにさせていただいて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区