【きいたかし提案】大学等における修学の支援に関する法律案及び学校教育法等の一部を改正する法律案に対する修正案 衆議院議員 きいたかし 福岡10区 (北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2019年4月10日 衆議院文部科学委員会
<修正案の提案理由説明>
○亀岡委員長
これより会議を開きます。
内閣提出、大学等における修学の支援に関する法律案及び学校教育法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
この際、両案に対し、城井崇君から、国民民主党・無所属クラブ提案による修正案がそれぞれ提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。城井崇君。
○城井委員
ただいま議題となりました大学等における修学の支援に関する法律案及び学校教育法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、国民民主党・無所属クラブを代表して、順次その趣旨を御説明申し上げます。
まず、大学等における修学の支援に関する法律案に対する修正案について申し上げます。
本法律においては、支援措置の財源を本年十月一日に予定されている消費税率引上げに係る増収分によって確保することとしていますが、政府は、予定どおり消費税率を引き上げるかどうか、リーマン・ショック級の出来事がない限りとの留保を付し、いまだにはっきりさせておりません。
消費税率を引き上げるかどうか、本法律案による支援措置が実施されるかどうかは政府の判断によるというような、不安定な財源だけに頼るべきではありません。
また、現在各大学が行っている授業料減免においては、その独自の取組により中間所得層の学生等も対象となり得ている一方で、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の者のみを対象とする本法律案の施行によって、大学等における授業料減免が新制度に統一され、現行の授業料減免が縮小、後退してしまう懸念があります。柴山文部科学大臣は、新制度の施行による影響を把握し精査する旨を御答弁されていますが、影響があらわれてからでは手おくれです。
影響があらわれないよう事前に措置することが必要であります。
さらに、本法律案による支援措置の対象範囲は住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の者に限られており、不十分です。対象範囲の拡大を検討していくべきであります。
このような点を踏まえ、我々国民民主党・無所属クラブは、本法律案に対する修正案を提出することといたしました。
第一に、附則第四条の「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則第一条第二号に掲げる規定の施行により増加する消費税の収入」に「等」を追加して、財源として消費税の増額分以外の財源も活用するようにすることとしています。
第二に、この法律の運用に当たっては、各大学等による学生等の経済的負担の軽減を図るための主体的な取組を阻害することのないよう配慮しなければならない旨の規定を追加することとしています。
第三に、政府は、大学等における修学の支援の対象とする学生等の範囲の段階的な拡大等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行う旨の規定を追加することとしています。
次に、学校教育法等の一部を改正する法律案に対する修正案について申し上げます。
私立学校が社会から信頼され支援を受けるにふさわしい存在であり続けるためには、学校法人のガバナンスの改善を国として促進する必要があります。
本法律案では、私立学校法を改正し、学校法人の役員の職務及び責任に関する規定の整備等の措置を講ずることにより学校法人のガバナンスの改善を図ることとされており、一定の評価ができるものであります。
昨今の私立大学における不祥事、不正問題等を踏まえれば、私立学校の自主性や建学の精神を尊重するとしても、学校法人内における自浄作用をより高める必要があります。
しかしながら、本法律案においては、学校法人の理事長の選任方法については改正事項に含まれず、現行法のまま、当該学校法人が定める寄附行為によることとされており、理事長が不正を行った場合等に学校法人内で理事長の解職を進める手続等については法律上担保されておりません。
学校法人内における経営に対するチェック機能を強化し、自律的に運営体制を改善するための仕組みを構築するため、理事長の選定及び解職については理事会の権限とすることを法律上明確に規定することが必要であります。
そのため、本修正案は、理事長の選定及び解職に係る規定を追加し、理事長の選定及び解職については理事会の権限とすることとしております。
以上が、両修正案提案の理由及びその内容でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をいただけますようお願い申し上げまして、提案の理由を終わります。
○亀岡委員長
これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました
<修正案に対する質疑に対する答弁>
○牧委員
修正案の趣旨について提案者にお聞きをしたいと思います。
提出者は、高等教育修学支援と少子化対策、今大臣から説明ありましたけれども、多分次元の異なる別物と捉えているというふうに思います。
改めて、そういった観点から、財源の確保に係る規定について修正を加えた理由についてお聞かせいただきたいと思います。
○城井委員
お答え申し上げます。
政府案では、修学支援の財源について、消費税の増額分を財源として活用することと定めておりますが、消費税の増額分は本来少子化対策に充てられるべきものであります。
もし用いるならば、消費税の使い道に教育も加えるべきところであります。
加えて、景気後退局面との分析も専門家から出ている状況もあり、消費増税が本当に行われるか確定的でないというのが今回の質疑でも明らかになったところであります。
しかしながら、家計が苦しくなるときこそ修学支援は役割を発揮するものというふうに考えています。
そこで、今回の修正では、消費税の収入に等の一文字を加えることといたしております。修学支援の財源については、消費増税の増額分以外の財源も活用することとしたところであります。
これによりまして、これまで、例えば、国立大学運営費交付金等で授業料減免等の予算確保をしてきたことも踏まえることができるというふうに考えます。
○牧委員
ありがとうございます。
つまりは、高等教育無償化に向けて、更に対象範囲も今後広げていくという前提のお話だというふうに思います。
続いて提出者にお聞きをしたいんですけれども、新たに運用上の配慮に係る規定を追加した理由について、まずお聞かせください。
○城井委員
お答え申し上げます。
現在、各大学が独自に行っている授業料減免の取組の中には、修学支援法が支援の対象としている、想定している世帯年収よりも高い年収について、五百万円か六百万円ぐらいが多いわけですが、授業料減免を行うといった取組も相当数ございます。中間層を想定してのことであります。
本日の質疑でも明らかになりましたように、この法律の施行により、大学等における授業料減免が新制度に統一され、各大学における主体的な取組が後退あるいは縮減しないように政府に対して配慮を求めることとしたものであります。
例えば、国立大学でも、運営費交付金の裏づけがあって初めてこれまで減免対象だった中間層を含めた授業料減免の着実な実施が図られるものというふうに考えます。
○牧委員
今、修正案提出者からお話があったように、これまでの各大学独自の取組というのがあるわけで、ちょっと手元の資料を見ると、例えば収入が七百十四万円以下というような基準のところさえあるわけで、さまざまございます。三百万円台のところもあれば、四百万円台、五百万円台というところがあります。
こういうところで今までそういった給付を受けていた人たちに対して、今回の新たな制度がどのように働くのか、この人たちのこれまでの既得権が失われるような話になってしまうのかどうなのかということについて、これは大変学校によってまちまちでありますから、きちっと今の提出者の答弁に対して、政府としてもこの辺の配慮について具体的な形をぜひお示しいただきたいと思うんですね。
善処しますとかそういう話じゃなくて、どのように整理をしていくのか。減免、免除、あるいは寮費を無料にするとか、そういうところもありますし、いろいろな形があります。
〇牧委員
次に、これまでの議論の中で、あくまでも政府案というのは低所得世帯向けという理解をさせていただいております。
つまりは、社会権規約の高等教育の漸進的無償化の理念とは私は別物だという理解をさせていただいております。
時間がないのでそこについてはあえて問いませんが、私の理解はそういう理解です。
そこで、提出者の方が新たに検討条項を加えた意図、多分この辺に絡んでくる意図だと思うんですけれども、その意図についてお聞かせをください。
○城井委員
お答え申し上げます。
委員からもございましたように、政府案は、いわゆる低所得者世帯向けの施策だということであります。
しかし、社会権規約の高等教育の漸進的無償化の理念に沿うならば、段階的に修学支援の対象となる学生を拡大し、将来的には全ての学生が修学支援の対象となることが望ましいと考えています。
この間、質疑においても、大臣からは、中間層には貸与型奨学金で支援といった説明がございましたけれども、貸与型奨学金はあくまで本人責任の借金であり、無償化ではないというふうに考えます。
そこで、将来的には、世帯の年収にかかわらず、全ての学生が修学支援制度の対象となることを目指して、政府は、大学等における修学の支援の対象とする学生等の範囲の段階的な拡大等について検討を加え、その結果に応じて所要の見直しを行う旨の規定を追加することとしたものであります。
〇牧委員
学校法人のガバナンスに関して、提出者に伺いますけれども、学校法人の理事長の選定及び解職を理事会の権限とした理由についてお尋ねをいたします。
○城井委員
お答え申し上げます。
政府案では、学校法人の理事長の選定及び解職については、現行法のまま、寄附行為によるとしています。しかし、今回の私立学校法の改正が学校法人のガバナンスの改善を図るものであることに鑑みれば、理事長が不正を行った場合等に学校法人内で理事長の解職を進められるよう、法律上措置することが望ましいと考えます。
そこで、今回の修正では、他の民間法人、社会福祉法人等のルールも鑑みながら、学校法人の理事長の選定及び解職を理事会の権限としたものであります。
<討論>
○亀岡委員長
次に、城井崇君。
○城井委員
国民民主党の城井崇です。
国民民主党・無所属クラブを代表して、大学修学支援法案並びに学校教育法等改正案について、国民民主党修正案に賛成、政府原案に賛成の立場から討論を行います。
私たちは、経済状況や生まれた環境に左右されず、希望する全ての子供たちが学ぶチャンスをつかめる日本にしたいとの観点から、慎重に法案審議に臨み、審議を通じて懸念事項を確認しました。
大学修学支援法案については、新制度による授業料等減免の対象範囲が、各大学が制度をつくり、国が国立大学運営費交付金や私学助成で補助してきた減免範囲よりも狭いことによる従来制度の打切り、後退の懸念を大臣答弁で何度も確認しましたが、精査するなどとの答弁に終始しました。従来の制度対象範囲をカバーすることを明言いただけず、懸念を払拭するに至っていない残念な状況です。これまでの先進的な授業料等減免制度が打切り、後退することがないように、法律上も配慮を明記すべきです。
また、このたびの新制度の財源について、リーマン・ショック級の事態が起こったときなど、消費税の引上げが行われない場合の新制度の扱いを文部科学大臣より明確にしていただけませんでした。
国の経済状況が厳しいときこそ、給付型奨学金や授業料等減免といった機会の均等を保障する制度、政策はその役割を発揮します。
厳しい状況を勘案しながらも新制度を確実に行うことができる、妥当性と公平性のある財源の確保について法律で明記すべきと考えます。
高等教育無償化の漸進的実現と少子化対策の関係についても、当委員会で議論となりました。
二〇一二年に国際人権規約、いわゆる社会権規約の留保撤回を行い、高等教育無償化の漸進的実現の義務を負っている我が国として、今回の新制度は高等教育無償化の漸進的実現の一里塚としてしっかり位置づけ、対象拡大を含めたさらなる高等教育の無償化を図っていくことが重要です。
本法案についても、さらなる高等教育無償化に向けた検討条項を明記すべきと考えます。
学校教育法等改正案については、私立学校の不祥事が続く実態を踏まえ、学校法人における自律的なガバナンスの改善に資する仕組みを構築するためには、医療法人や社会福祉法人など他の民間法人が具体的な規定を持っているのと同様に、学校法人の理事会の権限として理事長の選定及び解職の規定を追加すべきと考えます。
以上申し述べたとおり、政府案には懸念事項が残ります。
大学等修学支援法案については、政府案では対象がごく限られるという問題があります。
しかし、全ての子供と若者たちに夢とチャンスを与えるため、教育費の負担軽減を提案してきた国民民主党としては、たとえ小さくとも一歩を踏み出すべきと考えます。
学校教育法等改正案については、私立学校のガバナンス改革を推進するに当たっては、私立学校の自主自律を基本とする学校法人制度の趣旨を十分に尊重すべきであり、これを踏まえた改正部分は必要性を理解できます。
以上を踏まえ、政府案に賛成することとし、よりよい内容にするため、懸念点については修正案を提出させていただきました。
委員各位の御賛同をお願い申し上げ、討論を終わります。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区