21世紀の日本 このままでよいか

ネットワーク型の関係作りへ

21世紀の日本について考えるに当たって、まず日本は今いったいどんな状態にあるのかをきちんと認識する必要があります。

現在の日本の姿について、ある学者は「先進国型衰退」と呼んでいます。経済的な絶頂を極めた国がその後、国家としての活力を失い行く姿を形容したものです。

豊かさに惑わされ、誇りとモラルを失いゆく人々がその象徴でした。

これまで、この「先進国型衰退」は19世紀の英国と20世紀の米国しか経験していないとされています。今、このこれまでに例のない衰退に日本は差し掛かっているのです。  

 

では、この一言で「衰退」と言える状況を日本に住む人々が自らの手で乗り越えていくにはどうしたらよいのでしょうか。  

 

経済が立ち直ればよいのでしょうか。

財政のあり方を見直せばよいのでしょうか。

教育を変える必要があるのでしょうか。

もっと環境に力を入れるべきなのでしょうか。

世界に冠たる外交姿勢こそ重要なのでしょうか。

私はここで挙げたどの項目にとっても基本となる部分の変革こそが最も重要だと考えています。その「基本となる部分」とは何でしょうか。  

 

それは、政治の変革、もっと具体的に言えば、政治家と政党の変革です。  

 

今、政治家と政党と申し上げましたが、では現在この日本において、どのようなかたちの政党・政治家が望まれているでしょうか。  

 

後援会単位で有権者を組織する政治家による選挙互助会的な政党ですか。それとも幹部の決定を党の方針とする鉄の規律を誇る組織政党ですか。

いえ、そのどちらでもないのは、この10年の政界の動きからもはや明らかです。

その動きをずっと実体験として追ってきた諸先輩方こそよくよくお分かりの部分ではないでしょうか。  

 

21世紀の日本では、緩やかに有権者を組織化し、政権を目指してしなやかに政策を調整し、戦略的なポジションをとれる政党が必要とされていると私は考えます。

現在政党職員として働いている私は、これからの政党をそういった政党へと日本に住む全ての人々と共に育てたいと考えています。  

 

実際、政党組織と政党システムの硬直化は多くの先進国の悩みの種です。まさに「政党の先進国型衰退」といっても過言ではないかもしれません。

逆に日本においては政党の融解が進み、簡単に政界再編が起こる状況にあります。これはある意味危機的状況です。

しかし、それを逆手にとって新しいタイプの政党組織を作り上げる重大なチャンスに恵まれているともいえます。  

 

これまでの諸政党が組織化したのは政治活動によっていろいろな行政措置を引き出すことを望む有権者です。

こうした有権者の姿を、飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)は「行政依存人」と呼んでいます。無党派層の増大にもかかわらず、こうした行政依存人のコアな部分は引き続き日本の政治の担い手であって、一方の勢力をなしてゆくだろう、と氏は分析しています。  

 

行政依存人に向けた政治活動は次のような特徴をもっています。

 ・ 関係依存型の価値観に基づく

 ・ 社会関係を人の和の維持というかたちで処理しようとする

 ・ 政治的には利益と票の交換関係を義理人情のオブラートで包んで長期多角決済化し、安定化させている  

 

こうした活動の問題点は、まさに「親心の政治」のままでは財政破綻などが避けられないために一定の体系化と自己規律のある政党が必要なことです。  

 

それに対して、旧来型の政治活動を嫌悪し、政治家による口利きに頼らない有権者は「経済自立人」(飯尾氏による)と言えます。

こうした経済自立人は、政策的にも組織論的にも満足できる政党が見つけられないために無党派になっていることが多い(これをお読みの皆さんもそういう方が多いのではないでしょうか)ですが、何らかのきっかけで積極的に政治参加する可能性があると思います。長野県や横浜市などの一連の現象はその一端ではないでしょうか。  

 

こうした人々の価値観は、頭で理解できる公正な政策体系と、ベトベトした濃密な人間関係に頼らない、広がりのあるネットワーク型の組織を求めていると私は思います。

こうした人々にとっての政治は、個性や考え方の違う他者と共存するためのインフラを提供してくれるものであるとも思います。

その点でこうした人々は、以上のような点で一定の公正なルールに基づいた市場原理によって、えこひいきの体系である利権構造を解体することに期待をもっているとも感じます。  

 

私は、こうした、「行政依存人」な人々には、自己規律を促し、「経済自立人」な人々には他者との共存のためのインフラを提供したいと考えます。  

 

現在この日本には、もっと世の中を住みよくしようとする様々なネットワークがあります。

NPOやNGOという名前がついているものから、ボランティア、子育てネット、勉強会、勝手連、親父の会、婦人会、子ども会、自治会、井戸端会議、商店会、まちづくりの会、メーリングリストというものもあります。

私もこれまでの30年弱という短い人生の中ではありますが、こういった集まりにたくさん出会ってきました。子どものためとか、家族のためとか健康のためとか、身近な関心から始まったこうしたネットワークは、教育政策や福祉政策などの具体的な政策課題の検討に入ってきているように感じます。  

 

21世紀の日本を良くしていくためには、こうした人々の受け皿が必要です。私自身としては、先に述べた「行政依存人」と「経済自立人」に対して提供するもの、「ネットワーク型の関係作り」が、こうした関心のある方々の政治分野での受け皿ともなると思っています。

私はこの考えを共有できる仲間と共にこうした人々に対して、「ネットワーク型の関係作り」を通じて、体系的な答え、新しい対案を提示していきたいと思っています。そしてこの国に希望と魅力を取り戻したいと思います。  

 

21世紀の日本、このままではよくありません。しかし、良くしていくきっかけを私たちはすでにたくさん見つけています。

そのうちのひとつがこれです。行政依存型から、ネットワーク型の関係作りへ。

みなさん、忙しい毎日の中で、少しずつでも一緒にこの世の中に必要なものを形にしていきませんか?