大学入試における英語の民間試験及び記述型試験導入の懸念について 衆議院議員 きいたかし 福岡10区 (北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

 

 

2019年3月15日 衆議院文部科学委員会

 

○城井委員

続いて、大学入試における英語の民間試験及び記述型試験導入の懸念について、改めて大臣にお伺いしてまいりたいと思います。

これまで当委員会の質疑におきましても、これまでに、経済的な不公平や地理的な不公平、運営の不公正など、多くの問題があることを指摘してまいりました。

一方で、現時点で、英語民間試験の受検を求めない、あるいは、必須としないとしている大学が出てきております。

北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学などであります。

民間試験を必須とするとした国立大学協会の方針は、既に有名無実化していると考えた方がよいと思います。

このまま実施を強行いたしますとどのような問題が更に広がるかということを、改めて御指摘を申し上げたいと思います。

その上で、大臣には、少なくとも、二〇二〇年度、立ちどまって見直すという方策をぜひとっていただくことを強く要望して、以下、質問をいたします。

まず、各民間試験の検定料の二〇二〇年度予定価格を確認しました。

現時点で、多くの受検者が受けると見られるのは、英検の準二級以上及びGTECであります。

それぞれ、六千九百円以上、六千七百円程度から九千七百二十円となっています。

これらを高校三年のときに二回受ければ、一万四千円前後から二万円弱となります。

これだけで、今やっているセンター試験の検定料、三教科以上受験する場合は一万八千円、二教科以下の受験でも一万二千円でありますが、これに匹敵をするわけです、一科目でです。

すなわち、共通テストの枠組みで民間試験の受検が必要となれば、それを含めた共通テスト全体の検定料は約二倍にはね上がります。

さらに、二回の正式な試験のほかに、高校三年のとき、あるいはそれ以前に練習のために受検をするケースも多いと考えられますので、受検者にかかる負担はそれ以上になります。

事前の教材購入や講座受講などを考えれば、更に上がるということになります。

また、大学によっては、CEFRのC1やC2を取ることによって相応の加点がなされますが、英検などは、これらの高いレベルを認定する試験は、それだけ検定料も高くなっています。

したがって、より高い加点を狙うとしたら、試験によっては更に検定料がかさむことになります。

以上のように、練習受検を含め、検定料の負担が大きくなると、経済的に豊かで何度も受検できる者が有利になるという不公平、経済的格差が生じる点は、大臣、無視できません。

この経済的不公平、以前の文部科学委員会の質疑でも御指摘申し上げ、改善を要請いたしましたが、その後どのように改善されているか。

以上のように、現状を見る限りでは、いまだ改善されていないというふうに考えます。

大臣、改善をすべきです。御見解をお願いします。

 

○柴山国務大臣

大学入学共通テストの枠組みで実施される民間の英語資格検定試験については、受験生の経済的負担に配慮するため、受検時期、回数を、高校三年の四月から十二月までの事前に登録された二回までに限るということとしております。

また、昨年八月に策定した共通テスト実施方針、これは追加分ですけれども、非課税世帯であるなど経済的に困難な状況である場合で、一定の試験成績を有している者は、高校三年時の結果にかえて、もし既にそういったテストを受けている場合には、高校二年時の結果を活用することを可能とする例外措置を設けております。

さらに、法案を提出している高等教育無償化において、低所得者層に対しては、受験料も勘案した給付型奨学金によって負担軽減措置を講ずることとしているとともに、昨年、全国の高等学校に対して実施した受検ニーズ調査を踏まえ、試験実施団体に対して検定料の配慮を求めたところであります。

引き続き、こうした形で検定料負担の軽減に取り組んでまいりたいと考えております。

 

○城井委員

大臣、受験回数ではございませんで、私の指摘は、検定料を含めた共通テストのコストが、受験生のコストが二倍以上になってしまう、手元から出ていくお金がこれまでの二倍以上になってしまうぞ、この点を申し上げているわけです。

更に申し上げると、せんだっての質疑でも、この検定料の配慮を試験実施団体に対して要請している、こういう話はおっしゃっていました。

ところが、おっしゃっていて、あれから何カ月かたつ中で、二〇二〇年度のこの実施要領が出てきて、さあ検定料は幾らかというので計算したのが先ほどの金額なんです。つまり、試験団体は、文部科学大臣の要請を踏まえていないのではないか。

この二倍以上になっている、もう英語一科目でセンター試験に匹敵するようでは、これは踏まえていると言えますか、大臣。

配慮しているというふうに言えますか、大臣。

いかがでしょう。

 

○柴山国務大臣

私どもといたしましては、試験実施団体に対して、検定料の配慮を以前から求め、そして今回、今委員から御指摘があったような状況であるということですので、引き続き、極力、検定料負担の軽減をどうするかということを考えるとともに、特に、先ほど紹介させていただいたとおり、高等教育無償化において、一定の所得階層の方についての、受験料も勘案した給付型奨学金によって、何とか負担軽減措置を講じていきたいというように考えております。

 

○城井委員

受験料を勘案した給付型奨学金の話でございましたけれども、あの給付型奨学金は、世帯の年収目安が限られています。

税金を納めて、保険料を支払って、手取りが残らず貯金がないというその御家庭には、真面目な納税者の世帯には届かないわけであります。

そういう方々のお子さんたちがこの受験に立ち向かったときに、センター試験よりも二倍以上の負担を強いられる状況になっていて、なおかつ、大臣が配慮を要請したにもかかわらず、そのことを無視して、この金額設定で今強行しようとしているんです。

大臣、この受検料の引下げについての要請を再度行っていただけますか。

 

○柴山国務大臣

昨年六月に委員からこの受検料の問題について御質問いただいたときから、更にニーズ調査の集計を行って、試験実施団体に対して試験会場の追加ですとか検定料の負担軽減などを求めてまいりましたし、また、実施方針の追加分も含めて、経済的に困難な事情を抱える家庭や、離島、僻地の受験生等に関する例外措置も定めております。

そしてまた、関係者による意見交換の場を設けて、課題や不安感の解消に向けた議論を実施しているなどの新たな取組をさせていただいておりますので、今委員から御指摘のとおり、そういったことも踏まえて、さらなる努力というものを求めていきたいと考えております。

 

○城井委員

さらなる努力を求めるというのは、再度、引下げの要請をいただけるという理解でよろしいですか。

 

○柴山国務大臣

引き続き要請してまいります。

 

○城井委員

ぜひよろしくお願いします。

これだけのコストをかけて何が得られるかということを考えるわけです。

受検料が二倍以上になって、さあ、どうか。現状では、CEFRのA2レベル以上を出願資格としている大学が多い状況です。

高いコストをかけて民間試験を受けて、A2レベル以上と認められることで、得られるのは何か。

それは、希望する大学に出願することができる資格だけです。これまでですと、誰でも出願することはできました。そこにやっとたどり着くだけなんです。

大学によっては、加点方式を採用するとしているところもあります。

例えば静岡大学の場合、共通テストの英語二百点、民間試験五十点という配点で、受験者が多く分布すると予想されるA1、A2レベルではそれぞれ八点、十六点という加点、該当者が非常に少ないと思われるC1、C2レベルだと四十点、五十点という加点になります。

実際には、英語の合計二百五十点のうち、八点の加点か十六点の加点か、もう少し上の二十四点の加点かという、わずかな点差の競争です。

もちろん英語以外にも受験科目があるので、総合点の中での民間試験の配点は、受験にかかるコストに比べて非常に小さくなります。

このように、単に出願資格を得られるだけ、あるいはごくわずかな点差を生むだけの民間試験を、共通テストの検定料を倍増させてまで導入する必要が本当にあるのか甚だ疑問であります。大臣、いかがでしょうか。

 

○柴山国務大臣

今、これまでの受験と比べてどれだけのメリットがあるかということについて御指摘をいただきました。

ただ、私ども文部科学省としては、今の高校の英語力は、とにかく、話すこと、書くことに課題があることが明らかだというように考えております。

大学入学者選抜において、この四技能を評価をしていくことが我が国の英語力の向上のために重要であるという観点から、教育振興基本計画において、高等学校卒業時点でCEFRA2レベル、英検準二級相当以上を達成した高校生の割合を五割以上にするということを目指しております。

そして、話す、書くでこのA2に達している者の割合は今二割に達していないわけです。

ということからすれば、このA2を出願基準とすることですとか、あるいは加点により差を設けるということ自体に私は意義があるというように考えております。

ただ、今おっしゃったとおり、では、そのメリットが少ないではないかということはおっしゃるとおりでありまして、大学入学者選抜において英語四技能評価をどのように活用するかということは基本的に各大学の判断ではありますけれども、文部科学省といたしましては、現在でも活用されている英語四技能評価、この一層の活用促進に向けて引き続きしっかりと広げていきたいというように思っております。

 

○城井委員

大臣、英語の四技能の教育の充実は私も賛成なんです。

でも、四技能の教育の充実のときに、では、この民間試験導入という入り口がその四技能教育の充実の入り口なのかといったときに、今申したような、経済的な不公平の話を今申していますが、そういうさまざま問題がある中で、では、英語技能の教育そのものを充実する方が先なんじゃないか、試験のハードルの上げ下げや道具を変えるということが四技能の教育の充実なのか。

つまり、四技能の教育に資するかどうかという議論はまた別途の部分でありますが、ここで申しているのは、試験そのものの不公平がありますよ、ここを正さなきゃということを申しているので、そこは大臣、ぜひきちんと分けて御議論いただけたらというふうに思います。

さて、この経済的不公平に加えて、地理的な不公平の話も御指摘を申し上げています。

試験会場から遠隔の地域に住む受験者には、交通費や宿泊費の負担もかかります。

地域的格差の問題も生じるという地理的不公平についてこれまでも御指摘申し上げてまいりました。

これも、大臣、問題解消していただく方向に当然していただけますよね。これまでの取組、御説明いただけますか。

 

○柴山国務大臣

大学入学共通テストの枠組みで実施される民間試験については、今御指摘になられた受験生の負担に考慮して、原則として、毎年度、全都道府県で実施することなどを参加要件としております。

また、昨年八月に策定した「共通テスト実施方針(追加分)」においては、離島や僻地に居住、通学している場合で、一定の試験成績を有しているものは、高校三年次の結果にかえて、高校二年次の結果を活用することを可能とするという例外措置も設けております。

さらに、昨年、全国の高等学校に対して実施した受検ニーズ調査の結果を踏まえて、試験実施団体に対して、実施会場の追加を求めているところであります。

以上、引き続き、受検生の受検にかかる負担の軽減に努めていきたいと考えております。

 

○城井委員

今の御答弁ですと、昨年、委員会質疑で伺った内容から前進が見られていないというふうに思います。

一体、会場は幾つふえたのか。特に、車やバスなどの一時間以上かかるような移動で会場に行ってしまうというような、地理的な不公平もあろうかというように思いますし、離島の件でも、結局、交通費や宿泊費を含めてかかるというのは学年では変わらないわけでありますが、そうしたこれまでの改善状況という意味では、どの点が変わったかというのを改めて御答弁いただけますか。

 

○柴山国務大臣

先ほど申し上げたとおり、受検ニーズ調査の結果を踏まえて、まさに、試験実施団体に対して、実施会場の追加を求めているところであります。

今おっしゃったように、昨年と同じじゃないかということなんですけれども、まさしくその会場の追加を求めているところでありまして、しっかりと試験実施団体に対して、その結果を明らかにしてくださいというように要請をしたいというように思います。

 

○城井委員

ということは、増加した会場の部分の確認はとれていないということでよろしいんでしょうか。

ということは、変わっていないということになりますね、大臣。もう一回、お願いします。

 

○柴山国務大臣

これは当然、再来年の三月、四月に実施ということになりますけれども、来年の夏までにはしっかりと明らかにしてくれということであります。

失礼しました。ちょっと一年、間違えました。ことしの夏までに明らかにしてほしいということです。

済みません、ことし、もう年が改まりましたので来年の四月から。

失礼いたしました。

ことしの夏までには、少なくとも、しっかりと明らかにしてほしいということを要請してまいります。

 

○城井委員

もう一点、懸念をお伝えしながら質問させてください。

受検を希望する者全員が、事故なく受検できるかというのもいまだ心配です。

以下、具体的な提案を確認させてください。

民間試験のうち、英検とGTECに受検者が集中する見通しです。

それが、特定の実施下に集中した場合、会場、監督者、スピーキングの面接者や録音機器、これはタブレットが想定されますが、こうしたものを十分な数、調達できるかという最も基本的な点について保証が得られていないのが現状です。

大学入試センター試験の場合は、各地区の受験者数の予測に基づいて各大学に通知があり、各大学はそれに基づいて教室や監督者等の準備を進めますが、民間試験の場合は、受検者数の予測そのものが難しいことや大学による実施が予定されていないことなどから、不安要素が非常に多い状況です。

文部科学省は、昨年、全国の高校にニーズ調査をしました。先ほど大臣からも触れていただきました。

ただ、その結果の概要の発表がございましたが、各大学の方針が公表される前の段階での調査であったこともありまして、方針公表後の現在では、このニーズ調査は、実は、確たる情報とは言いがたい状況だというふうに考えます。

これらの最も基本的な点について、国として保障できるか、大臣、明確にお答えいただけますか。

 

○柴山国務大臣

試験実施団体に対しましては、今お話をいただいたとおり、昨年、全国の高等学校を対象に実施した受検ニーズ調査結果を踏まえて、これまで実施してこなかった地域ですとか、次期の実施、また受検希望人数を踏まえた会場数の追加を求めたところであります。

また、さまざまな大学の状況がその後明らかになってきたということもありますので、各実施団体において、現在、実施会場やスケジュールを調整しているところですけれども、高等学校関係者の御意向を踏まえつつ、私どもといたしましては、再度、受検ニーズ調査の実施を検討するなど、実施会場などの不足がゆめゆめ生じることのないように、各試験実施団体と調整を図り、会場の確保にしっかりと取り組んでいきたいというように考えております。

 

○城井委員

もう一点確認させてください。

大学入試センター試験では、リスニングの機器のふぐあいが少数ながら発生をしています。

再試験などの方策がとられています。

スピーキングを録音する試験では、リスニングとは比較にならない頻度でトラブルが発生すると予想されます。

正確に録音されていなかったことが、試験終了後、受検者を帰した後に判明した場合には、どのように対応するのか。

資格検定試験として用いる場合は、後の実施回での再試験でも大きな問題はないと思いますが、入学者選抜の共通テスト、一発勝負です。

ここで用いる場合はそうはいきません。

大臣、お答え願います。

 

○柴山国務大臣

リスニングに比較にならないほどふぐあいが発生するというようなお話でしたけれども、私どもといたしましては、機器のやはり技術進歩等により、ほとんどそういうことがない

というようには考えております。

ただ、いずれにいたしましても、民間の英語資格検定試験の実施に当たり、仮に、スピーキングを録音する試験において、正確に録音されていないなど、試験機器のふぐあいが生じた場合には、速やかに再試験を実施するなどの受検生保護の措置がとられるものと承知をしております。

なお、各試験実施団体においては、受検生本人による試験実施前や試験実施中の音声チェックをしっかりと行ってもらうなど、録音等によるトラブル発生に備えて万全の体制が整備されるものと伺っております。

それで、仮に、十二月の最終回のスピーキングにおいて、じゃ、再試験の必要が生じたらどうなるんだ。これは、今委員が御指摘になったような懸念かと思いますけれども、仮に、最終回において再試験の必要が生じた場合には、更に追試験を実施する、裏を返せば、その追試験ができるタイミングによる十二月の試験にしてもらうなど、万全な体制をとる予定と伺っております。

 

○城井委員

大臣、一度スピーキングのテストの現場を見ていただければと思います。

受検生が並んで、タブレットに向かって一斉にしゃべります。

隣の声が聞こえたりします。

タイミングがおくれて、後から小さな声でぼそぼそしゃべったりします。そんな受検生の置かれている状況も含めて、ぜひ直接確認をいただきたいというふうに思います。

今、以上申し上げたように……(発言する者あり)そうですね。

確認いただけますか。

 

○柴山国務大臣

実際に現地で確認をしたいと思います。

 

○城井委員

経済的不公平、地理的不公平、そして現場での事故の可能性、さらには記述型の試験も導入されるものですから、共通テスト全体のコストも上がってくるだろう、検定料も上がるんじゃないか、こんな心配もあります。こうしたことを考えますと、二〇二〇年度の実施は立ちどまって考え直すということをぜひお願いしたいと思います。最後の質問にします。

 

○柴山国務大臣

予定どおり実施できるよう、遺漏なきよう万全を尽くしてまいりたいと思います。

 

○城井委員

終わります。ありがとうございました。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区