マンション共有部分の損害賠償請求、法改正で困る方が1人でも少なくなるように、政府は検討し措置を講ずるべき 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

2025年5月14日衆議院国土交通委員会

○井上委員長
次に、馬淵澄夫君。

○馬淵委員
立民の馬淵です。
質問させていただきます。
まず、このマンション関連法ですが、午前中の連合審査で、当然承継について、これは本法案は取らないことについての、法理論上については何度も確認がなされておりましたので、今回重複いたしますので、これは問いを省きます。
その上で、今までの検討経緯を振り返って見ますと、私は法制審のいわゆる区分所有法制部会、こちらを調査させていただきましたが、ここでは佐久間部会長が、当然承継の問題については、この場合の契約不適合に基づく請求権というのは、売買契約が各区分所有者と分譲業者との間でされておりますから、個々人の権利なんですね、別個独立の権利なわけです、そうだとすると、契約上は個々人の権利を行使することが、本来的には各人に任されていると言うしか言いようがないんだと思うんです、このように佐久間部会長が述べられております。
まさにこの発言に、この議論というのは集約されているんだと思います。
加えて、この区分所有の法制部会での意見の大勢も、まさに共用部分の契約不適合を原因とする損害賠償請求権というのは発生した当時の各区分所有者に帰属するという理解で固まっていた、このように、この法制審の議事録を見ると確認ができます。
そこで、この法理論はよく私も理解をいたしましたが、法務省にお尋ねいたします。
このいわゆる当然承継、これが否定されるという部分で、実務上、これはどういう部分で否定される理由があるのか、これをお答えいただけますでしょうか。

○竹内政府参考人
お答えいたします。
仮に、区分所有権の譲渡に伴いまして、区分所有者の意思にかかわらずに、その処分や移転を一律に強制する特別の規律を設けますと、例えば、共用部分に瑕疵があった場合、ひとまず管理組合において修繕を行うこともあると考えられるところ、修繕費用を負担した旧区分所有者から損害賠償請求権が移転してしまい、旧区分所有者が修繕費用を損害賠償金から回収できないという著しく不合理な事態が生じかねない。
また、ただいま申し上げましたように、旧区分所有者は先に修繕費用を負担しても分譲業者から回収することができないため、旧区分所有者にとって、区分所有権を譲渡する可能性がある状況では建物を修繕しないことが合理的な判断とされてしまう可能性があるといった実務上の問題点が考えられるところであります。

○馬淵委員
つまり、実務上、このような状況で瑕疵が見つかるとすると、先に修繕を行った後に、その物件売却後、損害賠償請求が行われるとなると、元区分所有者も補修費用の回収が困難になる。
結局は、だったらもう修繕は見送ろうということで、自分がやる必要はないということで、全体としてでも放置するということになって、いわゆる管理不全、これを誘発してしまうということだと思います。
したがって、連合審査の議論でもそうでしたが、法理論上も実務上も、やはりこの当然承継説を採用するというのは非常に困難だという状況が今日までの審議にあったんだというふうに私は理解をしています。
そして、その上で、この当然承継説を採用しない場合でも、区分所有権の転売があったマンションは、管理者が一貫して損害賠償請求を行えないという不都合が残ります。
この場合、この不都合に対して、政府は管理規約での対応、これによるとのことでしたが、この管理規約による対応でどのような不都合の解消が行われるのか、これについても法務省、お願いいたします。

○竹内政府参考人
お答えいたします。
本改正法案におきましては、区分所有権の譲渡がされた場合でも、管理者は当該請求権を有する現区分所有者を代理とすることができ、また、別段の意思表示がされない限り、当該請求権を有する旧区分所有者も代理とすることができることとしております。
その上で、各区分所有建物における規約又は集会の決議により、旧区分所有者は共用部分について生じた損害賠償請求権の管理者による代理行使につき別段の意思表示をすることができないものとすること、及び、旧区分所有者は共用部分について生じた損害賠償金につき個別に受領することはできず、管理者が代理受領した損害賠償金は建物の瑕疵の修補のために用いられるものとすることが可能であると考えております。
あらかじめこのような規約を定めておくこと等によりまして、旧区分所有者による別段の意思表示を制限し、損害賠償金の使途を制限することは可能でありまして、管理者が一括して損害賠償請求をすることが可能になると考えております。

○馬淵委員
これは一貫して政府は、管理規約によるこのような形での縛りができるということを繰り返し述べられているわけです。
しかしながら、そうであっても、別段の意思表示をすれば、管理者はその部分の請求、受領が困難になるということ。
そしてまた、管理者が勝訴しても、元区分所有者が賠償金を渡せと要求すれば、これを拒否できないということ。
結果的に共有部分の完全な補修はできない可能性が残るといった問題があるわけですね。
管理規約ということを、これは法務省も、そして法務省から相談を受けた国交省も同意をして進めてきているわけでありますが、そもそも、なぜ、管理規約で対応するという、こうした結論が導かれたのか。
管理規約で対応することを決めた経緯はどういったものでしょうか。
法務省、お願いします。

○竹内政府参考人
お答えいたします。
まず、法制審議会区分所有法制部会におきましては、管理者が旧区分所有者を代理するに当たって、旧区分所有者が別段の意思表示をすることを規約によって制限することはできないかという意見があったところでありまして、規約により別段の意思表示を制限することについて議論がされていたところであります。
このような議論も踏まえまして、法務省においても検討を重ねて、有識者にも相談の上で、あらかじめ規約で定めておくことによって、旧区分所有者による別段の意思表示を制限することが可能であると判断をいたしました。
改正法を円滑に施行し、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るためには、改正法の十分な周知、広報をする必要があるところ、申し上げましたような規約の定めを各管理組合において一から作成することは困難な側面もあると考えられます。
そこで、管理規約のひな形として実務上広く普及をしております標準管理規約に、共用部分に係る損害賠償請求権に関する点についても盛り込むことが、このような定めを含む管理規約の周知徹底を図ることに、より資するものと考えられることから、法案提出の準備と並行いたしまして、国土交通省との協議を重ねた上で、標準管理規約の改定を行うこととしたものであります。

○馬淵委員
つまり、区分所有法の法制部会で、区分所有法の法制部会というのは、これは令和4年の10月から令和6年の1月まで、1年以上かけて議論されているわけですね。
そこでの議論として上がってきたということです。
私もこの議事録を確認をしてみたんですが、例えば、これは令和5年の12月7日の第15回部会、ここでは、大桐委員が述べられている、規約や集会決議において、個別行為禁止というような趣旨のものを設けてある場合に、その後に離脱した者についても拘束が及ぶということについても、理解を示していただけるような補足説明をしていただければなと思います、こんなように述べられている。
また、同大桐委員は、こうした規約を取り入れて、管理組合においては、この規約の存在をもって、団体的規制に服させると解せるというふうに、要するに、個別行為禁止と解することができるのではないかと思っております、第15回でこう述べられております。
そして、あわせて、同年の12月21日の第16回の区分所有法制部会、ここでも同じように大桐委員が、この標準管理規約を既に定めてある区分所有建物、管理組合においては、こうした規定が設けてあると解釈することもできると、これは前回のを引いて再度述べられているんですね。
この第15回、第16回、令和5年の12月の段階で法制部会で、これは弁護士の先生でいらっしゃいます、皆さんの議論の中で当然承継も議論されていたんですが、管理規約というものが一定の拘束を持つ形でできるのではないかということを発言され、それを受けて、この当時、望月参事官ですね、法務省の望月参事官、現民事第一課長が幹事として出席されておりまして、この規約の解釈の問題については今後の解釈問題として委ねるということで整理をさせていただいております、こう述べられております。
つまり、法務省としても、こうした委員の発言によって、管理規約によって十分制限できるのではないかということを法の解釈として受け止めておられるんですね。
これを受けて、法務省が議論をしていかれたわけであります。
こうした指摘のあった中で、今、局長が答弁された中では、この管理規約、まさに法務省がこれを受け止めて、解釈でどう判断できるかというところを、議論を省内で検討するということでありましたが、先ほど局長の答弁の中には、有識者に相談をされたとございました。
この管理規約での対応について有識者に相談したということでありますが、法理論上、専門家の御意見というのは、どういうものでしたでしょうか。
局長、お願いします。

○竹内政府参考人
お答えいたします。
規約において、旧区分所有者による、共用部分等について生じた損害賠償金の請求権の個別行使を制限することなどを定めることができることについては、十分な理論的な根拠づけがあると考えておりまして、有識者にも意見を伺ったところでございます。
その検討に当たりましては、複数の民法等の研究者に意見を伺ったところでございますが、その概要といたしましては、最高裁判決、平成27年の9月18日というものですが、ここにおきましては、共用部分の管理と密接に関連する事項について、区分所有者の団体のみが請求権を行使できる旨を集会で決議し、規約で定めることができるとしたものがございます。
この最高裁判決を踏まえますと、共用部分の修繕は共用部分の管理に関する事項に当たりますところ、共用部分等について生じた損害賠償金の請求権は共用部分の管理に密接に関連するものと言えるため、その請求権の行使方法につきまして、管理に関する事項として規約で定めることができるというものでございました。

○馬淵委員
つまり、このような議論が法制部会でなされ、そして、それについて法務省が受け止め、また、専門家の御意見を個別にも確認をされている。
その中で、最高裁判決も用いながら、共用部分の管理に関する事項であると。
すなわち、共用部分の修繕というのは管理に関わることだということ、かつ、損害賠償金に係る請求権、これも管理に密接に関連するもの。
関わり、かつ、密接に関連するということから、請求権の行使方法にまで及んで管理に関する規約で定めるということが可能だという結論を導いておられるわけです。
これが、先ほど申し上げた令和5年12月の大桐委員の指摘から始まって、それを受け止めた法務省が詰めてきた見解ということであります。
したがって、管理規約で定めるというのは、安易に決めたことではなく、法制審における大変深い議論を重ねた結果、また、有識者の皆さん方にも確認をしてきた結果の判断だということです。
このような状況で、法理論上も、実務上も、管理規約で対応が可能という結論を持つに至った。
ここは、法務省がこうした判断をするというところで、当然ながら、国交省とも協議をしているはずです。
これはもうイエス・オア・ノーで結構なんですが、楠田局長、こうした形で法務省の一つの見解があって、これ、ごめんなさい、通告はしていませんから。
しかし、事実関係なのでお答えいただけると思いますが、これは法務省の見解を持って、国土交通省もそれを受け止めて、管理規約での対応の意思決定を受けて、国交省としても標準管理規約への反映について検討したということでよろしいですか。

○楠田政府参考人
お答えをいたします。
法務省の方からお話がございまして、国土交通省としても、標準管理規約を持っている立場から、それを一緒にやっていこうということでお話をさせていただいたところでございます。

○馬淵委員
そのことによって、今回のこの法案が、成立を目指して閣法として出されたということだと思います。
しかしながら、私は、先ほど申し上げたように、確実に解決できるかといったら、まだ疑問が残るところなんです。
ただし、その上で、大臣、お答えいただきたいんですが、法理論上、問題ないことが分かりました。
そして、国交省において標準管理規約の改正を行って、縛りをかけていくんだということ、これもよく理解をいたします。
しかしながら、その場合でも、別段の意思表示、制限をする旨を記載が可能になるということでありますが、これで本当に実務上可能になるのかですね、制限が。
また、賠償金の使途に関しても、制限する旨を記載するということが可能になるということで、法務省としても、これを国交省と協議して決めてきたわけですが、実務上これで本当に可能になるのか。
この二点、大臣、お答えいただけませんでしょうか。

○中野国務大臣
標準管理規約の対応で実務上の対応が可能なのかという御指摘だと思いますので、ちょっとそこに絞って答弁させていただきますと、共用部分の損害賠償請求権の行使につきましては、管理組合の管理規約におきまして、区分所有者間の規律といたしまして、あらかじめこの2点を定めようということで、対応が可能だと思っています。
一点目は、共用部分に生じた損害賠償金について、これを修補費用に優先的に充当する旨を定める、もう一つは、旧区分所有者が共用部分に生じた損害賠償請求権の管理者による代理行使について別段の意思表示をすることができない旨、この2点をあらかじめ定めることによりまして、委員の御指摘の、実務での不都合が生じないように対応を図ることが可能であるというふうに考えている次第でございます。

○馬淵委員
実務上も、これを標準管理規約に定めることによって可能だという御答弁です。
マンション標準管理規約、これは令和6年6月7 日改正版というのが最新のものなんですが、これを見ますと、恐らく該当する部分というのは、これはもうお配りもしていませんが、9ページにあります損害保険、第24条の部分だと思います。
第23条に、いわゆる損害保険として、いわゆる請求権の部分が書かれています。
恐らく、この第24条のところに付加する形で、代理権、代理の付加、あるいは別段の意思表示をしない、そして、いわゆる瑕疵修補の優先充当という部分が書き込まれることになるんだろうと思います。
これによって実務上も縛ることができるという大臣の御答弁でありますが、先ほど来、私もちょっと申し上げましたが、どうしてもこれで完全に法的な拘束力を持つとは思えないというところがあるんですが、大臣、ここに関しては、それをどうやっていくかという意味における、更に徹底してやるんだというところにおける御意思の部分というのを、ちょっとお答えを述べていただくことは可能でしょうか。

○中野国務大臣
先ほど来申し上げておりますとおり、共用部分の損害賠償請求権の行使のところをどうやっていくかというところを、法務省とずっと議論をしてきたところでございます。
区分所有法の改正もございますし、標準管理規約であらかじめこれを定めておくというところもございます。
この標準管理規約、令和5年度のマンションの総合調査によりますと、9割以上の管理組合において、この標準管理規約を踏まえて管理規約が作成をされているということでございますので、この標準管理規約を改正をし、それを反映をした管理規約の見直しをしていただくということで対応をしっかり図っていく。
これは実行の面でもやはりそれが適切ではないかと考えておりまして、特に共用部分の損害賠償請求権の行使に係る内容も含めまして、やはり標準管理規約をできるだけ早く改正をさせていただいた上で、管理組合に対する様々、リーフレットや説明会等も含めまして丁寧な周知、そして、マンションの管理業者、マンション管理士などを通じた働きかけにより、管理規約への反映ということについても、しっかり徹底させてまいりたいというふうに考えております。

○馬淵委員
大臣としても、これはもう周知徹底をしていくんだという強い決意をお持ちだということだと思います。
ただ、連合審査では、我が党の議員も指摘していたように、いや、これが今まで十分できていなかったじゃないか、こんな指摘も午前中にはありました。
でも、もう省を挙げて、今回の法改正に基づいて徹底してこれを周知していき、かつ、この標準管理規約に基づいた管理規約へと改正をしていただくということをお思いだということ、その意思を確認はさせていただきました。
その上で、9割に及ぶという話がありましたが、やはり、これはちょっと確認をさせていただかなきゃいかぬのですが、局長、これは9割と大臣も答弁されています。
また、再三この場でも9割というふうに述べられていますが、実際には、9割という数字は、おおむね準拠と一部準拠、これを合わせた数字なんですね、92%という数字。
直近の令和5年のマンション総合調査の結果ですけれども。
やはり、これはちょっと私は言い過ぎではないかと思っていまして、実際には、おおむね準拠というのは、割合は35.9%ですから、3分の1だという御意見も当然一方あるわけですね。
ですから、国土交通省としての意思を明確に示すという意味では、9割、9割ということを殊更におっしゃると、いや、これは数字を膨らましてごまかしているんじゃないか、やるやると言っても、はなから現実の数字をちゃんと意識して、広く国民の皆さんに見ていただく場なわけですから、国会でも正直な答弁をするべきじゃないかという、こんなお声が寄せられるのも、私は仕方ないのかな、むべなるかなという気がいたします。
局長、改めてですけれども、僅か36%というのが、35.9ですが、標準管理規約におおむね準拠ということなんですけれども、これはイエス・オア・ノーで結構ですから、僅かそれだけの数字でしかないということは事実ですよね。

○楠田政府参考人
委員御指摘のとおり、おおむね準拠ということでいいますと36%ということでございます。
おおむね準拠、一部準拠というのがございまして、おおむね準拠というのは、標準管理規約の方のコメントの中で、実情に合わせて別段の定めをするという例示部分がありまして、その例示を除いて基本的には準拠しているものを、おおむね準拠と言っております。
それ以外に、一部準拠というのがございまして、一部準拠というのは、語感的にはちょっと、物すごく幅が狭いように見えますけれども、必ずしもそういうことではないというふうに思っております。
ただ、9割ということだけが、数字だけが独り歩きするというのは我々もよくないと思っていますし、9割で十分だとも思っていませんで、しっかり徹底をしてまいりたいと思っています。

○馬淵委員
これは、令和5年のマンション総合調査の設問の置き方にも私は問題があると思っているんですね。
このような課題が当時認識されていなかった、したがって、マンション管理規約によって厳しく制限するんだということを今回立法すれば、当然、マンション総合調査での設問の仕方も変わるわけですから、ここはより具体的になって、ある意味、本当に縛りがかけられるような管理規約、標準管理規約に基づく管理規約になるということを、やはりエビデンスとして、次の総合調査で実態を確実に確認した上で対応していただかなければならないということを、改めて申し上げておきたいと思います。
こうした、今、政府の御答弁をいただきましたが、その上で、立民の法案提出者の方々にお聞きしたいんですが、政府の見解を私は今確認しました。
やはりこれは、実態把握を行わないと適切な対応というのはできないんじゃないかと思っています。
そこで、提出者に質問をさせていただきますが、この本修正案、先ほど修正案の趣旨説明をいただきましたが、新区分所有法26条2項に関して、法施行後に検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしていますが、この法案提出の目的についてお答えいただけますでしょうか。

○城井委員
お答え申し上げます。
まず、今回の政府案においては、マンションについて、建物と区分所有者の二つの老いが進行し、外壁の剥落等の危険や集会決議の困難化などの課題が顕在化してきている。
こうした問題意識の下、修繕等に係る決議を出席者の多数決によることとするなど、現在、実際にマンションに居住している区分所有者による管理を容易にする内容が盛り込まれています。
この問題意識と改正の方向性については、おおむね同感であります。
しかし、法案の新区分所有法26条2項には、共有部分について生じた不具合に関する損害賠償請求の場面で、旧区分所有者に独自の権利行使に関する意思表示を認めるなど、先ほどの方向性と逆行するような内容も含まれており、かえって適切な管理が難しくなるマンションや、そこで不利益を被る区分所有者が出てくるのではないかとの懸念もあります。
他方、実際にマンションに居住している区分所有者によるマンションの管理を容易にするため、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求は、旧区分所有者ではなく、当然に現在の区分所有者ができるようにすべきであるとの提案もあります。
しかし、この案についても、新旧の区分所有者の間に不公平が生じないか、財産権の制約につながらないかなどの懸念が指摘をされているところであります。
そこで、本修正案におきましては、新区分所有法26条2項に基づく、旧区分所有者による独自の権利行使に対処するための規約の設定状況や、マンションの管理者による損害賠償請求の状況、賠償金の受領の状況などをしっかり見て、この問題について困る方が一人でも少なくなるように、こぼれる方がないように検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるよう、法律をもって政府に義務づけようとするものであります。

○馬淵委員
まさに今提案者がおっしゃった二つの老い、所有者の方々も当然老いてくる、建物も老いてくるという状況の中で、やはり実際に発生している問題というのをもう無視はできないんだという中での、提出者の皆さん方の提案だということを理解いたします。
そして、その上で、新区分所有法26条2項の規定によって、実際にはどのような問題が発生するということを想定されていますか。それを御答弁をお願いいたします。

○森山(浩)委員
お答えします。
現行法では、外壁などマンションの共用部分に欠陥があった場合は、全ての区分所有者に損害賠償請求権が帰属する場合に限り、管理者が一括して分譲業者などに損害賠償請求を行うことができるとされています。
この損害賠償請求権は、区分所有権の譲渡に伴って当然に買主に移転するというわけではないので、区分所有権の売買があったマンションでは、管理者が一括して損害賠償請求を行うことができない事態が生じます。
そこで、今回の政府案では、この点について、元区分所有者も含めて、管理者が一括して損害賠償請求を行うことが可能となるよう法改正が行われているところです。
しかしながら、政府案の区分所有法第26条の改正案には、元区分所有者が自分で請求するという別段の意思表示をすることができるという規定が盛り込まれているため、この別段の意思表示があれば、管理者はその部分の損害賠償請求などが不可能になります。
また、管理者が勝訴して損害賠償を得たとしても、元区分所有者が賠償金を渡せと要求すれば、これを拒否できない。
このような事態が生じると、補修のための費用が不足をし、結果的に共用部分の完全な補修ができないというおそれがあります。

○馬淵委員
まさに我々が一番危惧しているところでもあるんですね。
繰り返しになりますけれども、政府側は、管理規約でということでおっしゃっていますが、どうしてもこの問題が置き去りにされてしまうということ、こうした実務上の不具合というのがあるということであります。
私が今こうして政府側にも尋ね、提出者にも聞いておりますが、改めて、政府案に対する、この管理規約改正、不足している部分、これについて提出者としての御意見をお答えいただけますでしょうか。

○城井委員
お答え申し上げます。
新区分所有法26条2項の問題点について、政府からは、管理組合の管理規約において、共用部分について生じた損害賠償金の使途をあらかじめ定めることで、元区分所有者が有する賠償金を確実に修繕費用に充当することが可能であるとの事前の説明がありました。
また、国土交通省において、標準管理規約の改定を実施するとともに、各管理組合に周知徹底を図っていくという話もあったところであります。
しかし、この案は、それぞれのマンションの管理組合が個別に改定後の標準管理規約を参照して、その規約を改正することを前提とするものであります。
先ほどのこの委員会でもやり取りもありましたが、規約の法理論上の扱いというのがあるんでしょう。
一方、そのことを踏まえても、現在、標準管理規約をおおむね参照して管理規約を作成しているマンションは3分の1程度であり、標準管理規約を改定しても、これがどの程度参照されるかは未知数であるというふうに考えます。
また、広報等により標準管理規約の周知を図ったとしても、個々のマンションの管理規約の改正には管理組合の決議など相当の労力が必要であることから、どれだけのマンションで実際に規約改正ができるのか、不透明であります。
このように、政府の説明による管理規約の改正による内容では、仮に一定の効果があるとしても、様々な問題が依然として残ると言わざるを得ないと考えています。

○馬淵委員
ここは、言い方は悪いんですけれども、本当にやってみないと分からないというふうに我々も聞こえてくるんですよね。
政府側としては、これは繰り返しになりますけれども、法制審での議論があり、専門家の議論も重ねながら、この管理規約ということが一つの大きな、ある意味、解決策だとして作った立法だとは思うんですが、それに対しての疑問、疑義というのは拭えないという状況です。
やはり今、提出者のお話でありましたように、ここはもう完全にそのような状況で補修できるかというと、そこは極めて心配だということをおっしゃっていただいているわけでありますが、こうした状況で、それでも、我々としては修正案で、政府にこうしたことに対する対応を強く求めていくということで、この法案の審議を少しでも前に進めたいということでの趣旨の修正案の提示だというふうに思います。
そうした状況で、紛争処理や、提出案には、相談に係る体制等の在り方について、これは検討を加えるのを法施行後5年とされています。
私も、当初の議論の中では、より短い期間という話をされていたのを記憶しておりますが、これを5年という期間にされたことについて、これはどういった理由なのか、御答弁いただけますでしょうか。

○森山(浩)委員
2年や3年というようなお話もございましたけれども、先ほど委員からもお示しをいただきました、マンション紛争の実態等を把握するための根本資料でありますマンション総合調査、これは5年ごとに実施されております。
直近は令和5年度に実施をされ、結果が公表されたのは令和6年度でございます。
次回の調査実施は令和10年度で、公表は11年度になりますため、本法案施行後の紛争の実態や管理規約改正の推移を見極め、更なる改正の検討を行うための期間としては、施行後5年をめどとするのが適当であると考えました。

○馬淵委員
通常、見直し規定というのは、3年というのが短い期間ではありますね。
これは、いわゆる審議会を回していく期間として1年ないし2年を見るということで、3年というのが大体見直し規定では短い方だと思います。
しかし、この3年では、今、それこそ提出者からは、マンション総合調査のタイミングに合わないんだということであります。
ここは、少し実務的なことで、済みません、国交省にはこれは質問通告していませんが、今の答弁を私は聞いていてちょっと思ったんですけれども、楠田局長、お答えいただければお答えいただきたいんですが、分かる範囲で結構ですが、5年に1回ということでマンション総合調査がなされています。
これは法定なんでしょうか。
これは、例えば短期的に回していくということは可能なんでしょうか。
これは、お答えいただければ、お願いいたします。

○楠田政府参考人
お答えを申し上げます。
マンション総合調査、これまで継続的にやってきておりますが、5年という期間を何かの法律とかで決められているというものではありませんので、それは、その時々の判断でどうするかということだと思いますが、やはり、定点的にこれまでやってきているところとの関係もありますので、そういうことも考慮しながらということかと思います。

○馬淵委員
ありがとうございます。
法定ではないけれども、一定、大規模の調査を行うということであるので、5年という期間だというお話でありました。
当然、私もよく理解できますのは、定点で観測しているので、やはり同じタイミングでということを行うというのは、これはあることだと思います。
もう一つ、これも、済みません、通告していないんですが、御存じでしたらお答えいただきたいんですけれども、この国交省が行うマンション総合調査以外に、民間の様々なディベロッパーの方々がいろいろな調査を発表されています。
名前を出していいのか分かりませんが、いわゆる大手ディベロッパーでいう長谷工さんなんというのは独自の調査結果を出されたりしていますが、こういったものを参考にするということは可能なんでしょうか。
これも通告していませんので、お答えできる範囲で結構ですが。

○楠田政府参考人
お答えを申し上げます。
先生御指摘のとおり、マンションについては様々な調査があると思っております。
マンション総合調査で今やっているようなものが、民間の方でも直接そういうものがあるかどうかということについては、あるものもないものもあるかなとは思っておりますが、参考になるようなものについては積極的に参考にして、政策の検討に生かしてまいりたいと思っております。

○馬淵委員
済みません、ためにする議論ではないんですが、民間の調査も、当然ながら、住宅局としてはずっとウォッチしているわけですよね。
チェックもされているわけです。
その意味では、このマンション総合調査の結果のみならず、民間調査も含めて照らし合わせたときに、大きなそごというのを感じられたことはありますかね。
これも、ごめんなさい、先ほどの提出者の答弁をいただいている中で浮かんだものですから、これは全く通告外なんですけれども、お答えできる範囲で。
そういったものを御覧になっている中で、住宅局として専門家の皆さんが集まっているわけですから、なるほど、こういった部分はもっと取り入れた方がいいなというようなことは、お考えの中に浮かんでくるかどうかも含めて、お答えいただけますか。

○楠田政府参考人
お答えを申し上げます。
マンションについては様々な調査があると思っておりまして、我々も、先生御指摘のとおり、日々、その辺もウォッチしながら考えているというところがございます。
大きな方向性として、物すごくそごがあるとかいうようなこと自体は余り感じたことはありませんけれども、マンションは、築年数とか立地とか性能とか、いろいろなことで物が変わってきますし、管理の問題もありますれば、いろいろな修繕とかの問題もありますので、その辺の中で様々な調査があるというふうに考えております。

○馬淵委員
大臣、今、楠田局長の答弁を、私、今聞いていて、先ほど来、このマンション総合調査、そのときの設問、より細かく、また、今回の目的を達成できるような設問、これも作り込んで、とにかく漏れのないように実態を把握するんだということで御答弁をいただいてきたわけでありますが、今の局長の答弁なんかを聞きますと、これは、今までのマンション総合調査、国交省がやってきたということだけではなくて、民間調査も含めて、まさに総合的に網羅した形で調査を行っていくという必要性があるのではないかと思いますが、これも通告はしていませんが、今のやり取りの中で大臣がお感じになったことをお答えいただけますか。

○中野国務大臣
お答え申し上げます。
通告がありませんでしたので、詳細はやはり、検討は今後していくことになろうと思いますが、ただ、様々御指摘もいただく中で、今回は、特に、やはり標準管理規約というところで、こういう対応を特にしていくんだというふうな、そういうところがかなり集中的に議論をされたところでございますので、フォローアップに関しては、やはりこれはしっかりと丁寧に漏れなくということは、委員御指摘のとおりかというふうに思います。
マンション総合調査の中の在り方については、今までの連続性ということも当然あろうかと思いますので、様々これは議論をしていくことかと思いますが、いろいろな民間の調査、先ほど御指摘いただいたことも含めて、やはり今回しっかりと改正をしたことの実効性がどうなっているのかであるとか、実態がどうなっているのかであるとか、できる限り把握できるような、そういうフォローアップということを心がけていきたい、また検討していきたいというふうに感じたところでございます。

○馬淵委員
済みません、通告外のことをお聞きして。
ただ、これは重要なことですから、今までの、既定どおりでやるということではない中で、本当に網羅的に、かつ、先ほど来、提出者が言っているように、本当に困っている方々、これを徹底的に少なくするんだという強い意思を持って、この調査、設問を作って、そして標準管理規約に基づく管理規約に改正させていくということが重要だというふうに思います。
そして、提出者に、では、改めて質問させていただきますが、紛争処理や相談に係る体制等の整備、これをこの修正案でも求められておりますが、これは例えばどのような仕組みというのを考えておられるんでしょうか。
お答えいただけますでしょうか。

○城井委員
お答え申し上げます。
いわゆるADR、裁判外紛争解決手続機関として認定を受けた日本マンション管理士会連合会を始めとして、そのほかにも、弁護士会による相談なども含んだ体制づくりが考えられると思っております。

○馬淵委員
ありがとうございます。
こうした体制整備も、これも政府に求めるということであります。
その上で、このマンション共用部分の補修等に関する紛争の予防及び解決の方策として、所要の措置を講ずるということであります。
修正案に書かれている。
この所要の措置とは、具体的にどのようなものを想定されているんでしょうか。お答えいただけますか。

○森山(浩)委員
紛争の予防のための方策としては、先ほどの標準管理規約の改定とその普及、広報、個別のマンションの管理規約改正の支援などのほか、より根本的な方策として、共用部分について生じた不具合に関する損害賠償請求権を、旧区分所有者ではなく、当然に現在の区分所有者に帰属させる制度などが考えられます。
本修正案における検討に際しては、こうした制度の導入の是非や、この制度を既存の区分所有者にも適用する遡及適用の是非も含め、緻密な検討がなされることを想定をしています。
また、紛争解決のための方策としては、裁判外紛争解決手続の導入や弁護士会等による相談支援体制の整備が挙げられますけれども、これらを含め、幅広く様々な検討がなされることを想定しています。
いずれにせよ、本件は人の住まいに関わる問題でありますことから、マンションの規模や管理の態様に関わりなく、一人でもこぼれることがないよう、適切な方策を検討していただきたいと考えております。

○馬淵委員
ありがとうございます。
こうした、具体的にどういった形でということについても、今おっしゃった、答弁いただいたように、この修正案でしっかりと求めていくんだということだと思います。
その上で、必要があるときという文言もございます。
この「必要があると認めるとき」というのは、どのような基準でその必要性を認定するとお考えなのでしょうか。
これも、提出者、お答えいただけますでしょうか。

○城井委員
お答え申し上げます。
新区分所有法26条2項の、別段の意思表示等に関する規約の設定状況や、管理者による損害賠償請求や賠償金の受領の状況をきちんと見るならば、この問題について、どのくらいの数の紛争が生じているか、その原因は何かといった問題状況や、その問題への対処の必要性は、客観的に明らかになるものと考えられます。
本委員会の審議におきましても、多くの残る懸念が示されております。
今日、例えば、いわゆる投資目的の購入者の件、あるいは別段の意思表示の確認の通知の件、あるいは標準管理規約の改定や普及、そして、いわゆる塩漬け問題、最初の区分所有権者の権利行使や、また、改正法の施行時の、従前の例による部分の取扱い云々、こうした、今日の審議だけでも問題提起は随分といただいています。
こうしたものも踏まえるものだというふうに考えています。
必要があると認める主体は政府でございますが、政府においては、このような客観的状況等を踏まえて、措置の必要性や取るべき措置の内容について、適切に、そして速やかに判断されるものと考えます。

○馬淵委員
ありがとうございます。
つまり、この審議を通じて問題とされると指摘された部分に関して、これは政府が主体的にこのことに対して取組をしていくということ、これを求める修正案ということなんですね。
大臣、これは当然、我々、この立法府における、立法府の我々の中での修正の案であり協議なわけですが、政府としては閣法を提出されていますが、今、提出者から説明がありましたように、この修正案、政府に対して、立法事実というものを明確にさせていく必要があるんだということで、このエビデンスを明確にしろというのが、今回、この修正案の趣旨です。
繰り返し、この委員会でも、この法律の議論の中で出てきましたように、様々な課題があって、そして、そこに取り残されてしまう方々がいらっしゃるという現実がある、それに向けて事実を把握していく、これは単にマンション総合調査だけということで委ねるのではなくて、実態把握ということを、これは政府の責任で、5年ということでありますから、これは長い期間のように見えるかもしれませんが、やはり現状を知らなければなりませんので、そうしたことに対して必要な修正だということを、我々、この質疑でも明らかにさせていただいたと思っておりますけれども、大臣、最後に、こうした実態把握ということに対する決意をお述べいただきたいと思います。
いかがでしょうか。

○中野国務大臣
お答え申し上げます。
議員提出の修正案そのものについての政府としてのコメントというのは、少し差し控えさせていただければと思いますが、いずれにしましても、改正法の施行後の実態把握等々も含めたということの御質問かと承知をしておりますので、様々、標準管理規約等、今御議論ありましたものの反映の状況もそうでございますし、また、マンション総合調査は当然そうですが、これら以外の様々なものも活用しながら、実態把握はしっかり取り組んでまいりますし、また、取り残されるマンションがないようにという御指摘もございました。
法務省との緊密な連携の下、これは様々な関係者による支援体制の構築ということも必要かと思います。
しっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○馬淵委員
ありがとうございました。
本修正案が極めて重要な修正案であるということを確認させていただいたことで、私の質問を終わります。
ありがとうございました。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)