羽田空港航空機衝突事故、運輸安全委員会の調査は再発防止の取り組みを第一義とするべき 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

2024年5月24日衆議院国土交通委員会

○城井委員
次に、羽田空港における民間航空機と海上保安庁機の衝突事故について伺います。
本年1月2日、日本航空516便と能登半島地震被災地に向けて支援物資を輸送する業務中であった海上保安庁機が羽田空港のC滑走路で衝突した事故、大変残念な事故でございましたが、再発防止の観点から、大臣に伺います。
この事故で海上保安庁の乗員5人の貴い命が失われました。
かけがえのない命だと思います。
その海上保安官とそして御遺族を思いつ、改めて心から御冥福をお祈りしたいと思います。
一方で、乗務員の冷静かつ的確な判断に基づく緊急脱出や、空港関係者、医療関係者など多くの方々の支援と協力によって、日本航空516便の乗員乗客379人の命を守ることもできました。
また、衝突事故によって羽田空港C滑走路が閉鎖となった。
その結果、多くの航空便が欠航となりました。
多くの利用者にも影響がございましたが、全国の航空関連産業で働く皆様による奮闘で空港関連業務が安全に遂行されたことに対しては、心から敬意を表したいと思います。
さて、この事故につきまして、まず運輸安全委員会の調査について伺います。
航空事故は、徹底的にその原因を追求し、再発防止をできる限り早く講じることは極めて大切です。
運輸安全委員会による調査が行われ、そして現場検証や関係者の聞き取り、日本航空機、海上保安機のフライトレコーダーとボイスレコーダーの回収、解析、事故原因の究明が進められていると聞いております。
ただ、この事故の原因究明は、責任の追及というところよりも、むしろ再発防止が第一義であるというふうに考えます。
現時点における運輸安全委員会による事故原因の究明の進捗、そして再発防止の徹底に対する考え、大臣からお示しください。

○斉藤(鉄)国務大臣
運輸安全委員会に確認したところ、羽田空港航空機衝突事故につきましては、事故発生の当日、1月2日から事故調査官6名を現地に派遣し、現在までに、事故機の残骸の確認、関係者からの聞き取り、飛行記録装置の記録の解析などを行ってきたと聞いております。
運輸安全委員会において事故原因をしっかりと究明していただき、報告書が取りまとまりましたら、その内容に従い、再発防止のための取組を徹底してまいりたいと思います。

○城井委員
現在進行中のこの航空事故の調査、責任追及ではなく、再発防止を第一義にすべきだということを改めて申し上げたいと思います。
犯罪捜査と事故調査は、そもそも目的が違います。
国際民間航空条約の第13附属書では、事故又はインシデント調査の基本目的は、将来の事故又はインシデントの防止である、罪や責任を課すのが調査活動の目的ではないとされています。
犯罪捜査は強制力に裏づけられていることから、関係当事者に萎縮効果が働きます。
2012年3月には、運輸安全委員会業務改善アクションプランにおきまして、適確な事故調査の実施に係る重点的な取組項目として、「責任追及とは独立して事故調査を実施する。」という方向性が示されています。
この犯罪捜査が事故調査に重大な影響を与える可能性があることを踏まえて、再発防止のために関係者の積極的な協力が得られるよう、事故調査を第一義にするべきだと考えます。
大臣のお考えをお聞かせください。

○斉藤(鉄)国務大臣
運輸安全委員会が行っている事故調査と、刑事責任の追及を目的とする犯罪捜査とは、それぞれの公益を実現するために独立した立場で行われているものであり、どちらかが優先するというものではないと考えております。
なお、運輸安全委員会に確認したところ、これまで、警察による捜査の可能性があるため、関係者から必要な協力が得られず、事故原因の究明に支障を来すようなことは特になかった、このように聞いております。

○城井委員
事故調査報告書についても、今ほどの指摘、再発防止を唯一の使用目的とすべきだということを申し上げたいと思います。
事故調査報告書には、国際民間航空条約上も裁判証拠としての使用には厳しい制限が課せられています。
事故調査報告書は、刑事裁判などの証拠としては使用せず、再発防止を唯一の使用目的として制限を設けるべきだと考えます。
大臣の考えをお聞かせください。

○斉藤(鉄)国務大臣
運輸安全委員会に確認したところ、これまで、運輸安全委員会の報告書が刑事裁判などの証拠として使用される可能性があるために関係者から必要な協力が得られず、事故原因の究明に支障を来すようなことは特になかったと聞いております。
このため、御指摘のような使用目的の制限につきましては、特に必要であるとは考えておりません。

○城井委員
この点は、今までなかったからこれからどうかという点については厳しく見ておいていただきたいという趣旨でお願いをしていますので、御理解いただければと思います。
さらに、運輸安全委員会の事故調査機関としての機能を強化すべきとの観点から伺います。
運輸安全委員会は、事故調査報告までに時間を要しています。現状では、事故発生から国土交通大臣への経過報告までおおむね1年、事故調査報告書の公表までおおむね1年半から2年を要している状況です。
この状況を踏まえて、早急に予算と人員規模を拡充して、再発防止を唯一の目的としての体制と機能の強化をすべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○斉藤(鉄)国務大臣
ありがとうございます。
運輸安全委員会につきましては、これまでも事故調査に必要となる予算及び定員を毎年度要求し、必要な体制の確保を図ってきたところでございます。
今後とも、運輸安全委員会の事故調査が迅速かつ的確に行われるよう、必要な予算及び定員の確保に努めてまいりたいと考えております。

○城井委員
1年半から2年、最終的に、報告書までかかっているという現状を縮めるためには、やはり、体制や機能の強化は必要だ、今の取組以上に必要だということは申し上げておきたいというふうに思います。
続きまして、運輸安全委員会の事故調査に関する機能と権限を強化して、独立性の確保を図るべきとの観点から伺います。
運輸安全委員会は外局であるものの、国交省の下に設置された機関であることから、管制官や行政システムなど、国交省内部に対して十分な事故調査ができるのかという点で課題がある、こうした指摘があります。
現状では、犯罪捜査が事故調査に優先しているというふうに受け止めています。
これは改めて、運輸安全委員会に、他の機関に優先する調査権など強い権限を与えて、事故調査を犯罪捜査に優先させる仕組みや枠組みをつくるべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○斉藤(鉄)国務大臣
運輸安全委員会に確認したところ、これまで警察と委員会との間で適切に調整が行われ、支障なく調査が実施されてきたとのことであり、事故調査を優先させる枠組みが必要であるとは考えておりません。

○城井委員
航空現場からの意見を踏まえての御指摘でありますので、受け止めていただければと思っています。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)