我が国の造船業の価格競争力アップのため強力な財政支援の継続を 衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2021年4月16日 衆議院国土交通委員会
(今後の造船業への国の支援のあり方について)
○城井委員
そこで、次に、今後の造船業への国の支援の在り方について伺いたいと思います。
中国、韓国両政府がそれぞれの造船業にてこ入れすることで、表面船価が、我が国と比較して、中国とは2割、韓国とは1割低い状況だ、中国、韓国の造船業はそれぞれ、政府助成を背景に低い船の価格での受注を行い、世界の造船市場を席巻している、これは、日本造船工業会から我が国造船業の苦しい状況をお聞きした中身でございました。
実際に、2020年の世界の新造船建造量シェアでは、中国が40%、韓国が31%に対し、日本は22%であります。
船の内部の質に関しては、使われている鉄の品質などを始めとして我が国の優位は揺るがないところですが、この表面船価、表向きの船の価格の比較ということで申しますと、中国、韓国との受注競争のネックになっていることは間違いがありません。
今回の対応によって、我が国の造船業は価格面でどの程度競争力を確保することになると見込んでいるか、大臣から具体的にお答えいただけますか。
○赤羽国務大臣
我が国は、建造船では、中韓に比べて船価が高い一方で、他方で、委員からもお話がありますように、燃費の性能ですとか、荒れた海においてのスピードが落ちないといった、性質的には大変優れているという評価もいただいておりますので、船舶の発注におきましては、必ずしも船価のみで決められるわけではなくて、建造船の品質も踏まえて総合的に判断されるものだというふうに考えております。
他方、コストという面では、大変大きなポーションも占めておりますので、今回、この法案に基づき講じる予算、税制、財政投融資等の支援措置の活用によりまして、造船事業者の事業再編ですとか生産性向上等を強力に推進し、コスト面の競争力の強化を図るということで、事業者によっては製造コストを約一割程度引き下げられるものというふうに想定をしているところでございます。
○城井委員
特に荷主においてはコストというのは極めて大きな要素かというふうに存じております。後ほどこの点についてはお伺いしたいというふうに思います。
続きまして、中国、韓国による造船業への過度な支援の是正について伺いたいと思います。
この中国、韓国の両政府によるそれぞれの造船業への過度な支援について、国土交通省として過去に両国とどのような協議があり、その結果どうなったか。
ハイレベルでの働きかけやOECD造船部会での対応は功を奏したか、また、韓国の自国造船業への過剰な公的支援がWTOのルール違反だとして我が国からWTOへ提訴しておりますが、この見通しはどうか、手だては講じているが結果が伴っていないのではないか、以上を踏まえて、中国、韓国政府による造船業への過度な支援がどのように是正されたか、今後どのように対応するか、大臣からお示しをいただけますでしょうか。
○赤羽国務大臣
中国、韓国との競合関係というのは、造船業だけではなくて、様々な業界、業種で同じような状況が続いております。
そうした中で、我が国としては、造船市場の公正な競争条件の確保、また、供給過剰問題、これは、供給過剰というのは実は中国、韓国も含めていいことがないというのは、もう鉄の世界でもそうですし、過去繰り返されてきております。
そうしたことで、二国間又は三国間の協議を行い、また、今お話がございましたように、OECDの造船部会の場でも協議を進めてまいりました。
全く効果がなかったわけではなくて、こうした取組を通じて、造船設備の新設などの過剰な投資に対しては一定の抑止効果が出ているというふうに認識をしております。
ただ、残念ながら、不公正な支援の是正という意味ではまだまだ至っていないということでございまして、今、韓国の自国造船業への公的支援について、これはWTO違反ではないかということで、その是正を求めて提訴をしているところでございます。
これまで、数次にわたりましてWTO協定に基づく二国間協議を行っております。なかなかちょっと、WTO内の原因も、要因もあるということでまだ決着がついておりませんが、日本政府としては、引き続き、しっかりとこの協議、WTO協定に基づく協議、まずこの是正を求める提訴をしっかり取り組んでいって、本来、公正な競争条件で争われるべきということ、当たり前のことでありますが、なかなかそれが実現していないことについて、一つ一つきっちりと決着をつけていきたい、こう考えております。
○城井委員
大臣のおっしゃるとおりでして、公正な市場が確保されるべきということは言うまでもないと思います。
不公正な状況が是正されていないということ、そして供給過剰はいいことがないということもおっしゃるとおりかというふうに思います。
これは、大臣、今のお答えを聞きながらなんですが、一つ、違う角度から、逆の角度からお伺いしたいというふうに思いますが、今回の我が国の支援パッケージ、要するに公的支援の充実ということになるわけですが、韓国の公的支援との違いというところがどうか。中国、韓国から同様の協議や訴えがもしぶつけられてきたときにどうだろうかということを心配しますが、この点の整理はできていますか。
○赤羽国務大臣
ちょっと細かいことはあれですけれども、局長に聞いていただければと思いますが、訴えられないような、フェアネスは当然認識をしての法改正でありますし、仮に、訴えるというのは結構いろいろな、その国の事情によってはそういうことがあり得ますけれども、そうした場合でもしっかりと勝てるような体制というか、対応ができる法改正の内容になっているというふうに承知をしております。
○城井委員
続いてお伺いしたいと思います。
今回の法案で、我が国造船業のファイナンスの充実が図られ、中国、韓国の造船業と戦う基盤を整え、一定のコストダウンを図って反転攻勢に打って出る構えでありますが、国の支援が十分かという点について伺いたいと思います。
先ほどからもお話がございましたように、マーケットの見通しとしては、船舶が供給過剰で、次の造船需要が見えている谷の状況だというふうに現場からも聞いています。新型コロナの影響もあり、経済回復を見通せない状況でもあります。
昨年の緊急事態宣言時を中心に、落ち込みが大きいという状況です。造船受注は、数十億円にも上る対面での大きな取引であり、海外との取引が多いにもかかわらず、往来ができない状況であるためです。
この法改正による金融支援の充実で船を造りやすくなる一方で、以上のような事情から、すぐに顧客からの発注増とならないが、赤字受注で回しながら環境規制には対応したいというのが現場の声でございました。先ほどからの議論のような、ゆがめられた市場の状況があることから、国の直接的な支援金額が十分ではないという声もあります。
以上を踏まえ、今回の支援を皮切りに、国として、今後も、我が国造船業に対する予算、税制等の財政支援を更に充実させていく必要があるというふうに考えますが、大臣、お考えをお聞かせください。
○赤羽国務大臣
今回の法改正に絡んでの予算措置につきましては、令和2年度補正予算及び令和3年度当初予算におきまして、海事産業の競争力強化関連予算を相当程度拡充をし、生産性向上や事業者間の協業、統合のための設備投資等も支援をさせていただいております。
また、環境省、また資源エネルギー庁との連携予算も確保しながら、温室効果ガスの排出を大幅に削減するLNGの燃料船の開発、実証等を支援していくということになっております。
また、先ほど申し上げましたが、グリーンイノベーション基金の活用も、これも経産省と連携しながら、検討しながら、まさに2050年カーボンニュートラルに資する、水素、アンモニア燃料船の技術開発等を推進していくこととしておるところでございます。
こうした意味で、新しい世の中の在り方、環境に配慮したことを、それが当たり前の状況をつくって、そのトップランナーにしていく、そのルール作りも我が国が主導できるようにしていくということが、恐らく中国や韓国にはできない、我が国が優越性を持っているというふうに認識をしておりますので、そうしたことを切り口をつけて、効果があれば引き続き政府の中で、2050カーボンニュートラルという大きな枠組みの中で、予算計上もスムースにいくものであるというふうに、そういう認識をしておるところでございます。
○城井委員
財政支援の充実についての要望は、この法案や支援パッケージが示された後に、造船業の現場から是非更なる充実をということでの要望をいただいたということでありますので、この場でもお伝えさせていただき、引き続きの取組をお願いしたいと思います。
次に参りたいと思います。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)