ストリーミングやオンラインリーディングなどの規制はどうすべきか 衆議院議員 きいたかし 福岡10区 (北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

 

2020年5月20日 衆議院文部科学委員会 参考人質疑

 

○城井委員

国民民主党の城井崇です。

後藤参考人、堀内参考人、そして福井参考人、大変お忙しい中、当委員会にお越しいただきましてありがとうございます。

私どもからもお礼を申し上げたいと思います。

きょういただきました意見陳述に対しまして一つ一つお伺いをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

まず冒頭、堀内参考人に、一つ、出版界の立場、そして、今回は漫画家を始めとしたクリエーターの方の立場も代表してということで伺っておりますので、その点を含めてお伺いしたいと思います。

先ほどより、意見陳述などでも、今回の法律案が成立をいたしますとできる対策の効果などを含めて、これまでの期待値も含めてお話しいただいたかと思いますが、後ほどほかの方にも伺うんですが、必ずしも百点満点ということではないのではないかというふうに思っています。

お立場というところからで構わないんですが、今回の法律案による対策によって足りないところがあるとすればどこか、今後どのような追加の対策を期待したいかという点がありましたら教えてください。

 

○堀内丸恵参考人(出版広報センター副センター長、株式会社集英社代表取締役社長)

今回の法改正が成立すれば相当な効果があるというように思っております。

ただ、法律だけではなく、先ほど、CODAの後藤参考人から、それから私もお話ししましたけれども、私ども当事者がやらなければいけないこともたくさんございます。

既に、資料にあるかと思いますけれども、さまざまな取組をやってまいりました。

これを一層強化する。

それから、法改正の附則にもございますように、普及啓発、教育、こういうことも、行政それから民間の我々当事者もしっかりやっていく。

こういうことをあわせて総合的な取組をやっていくことで、法改正によって全てが解決するというわけではございませんけれども、こういう法律が整えば相当な効果がある。

その上で、我々も、今までできる得る限り、さらには、何か新しい取組があれば更にそれを進めていく。

そういうことがあわせてあって相当な効果を生むということで、百点にそれがなるかどうかは、まずやってみてというように思っております。

 

○城井委員

続いて、後藤参考人にお伺いいたします。

きょうの意見陳述でも、これまでのCODAにおけるさまざまな取組について御紹介をいただきました。

その中でも、例えば海賊版のサイトに対する広告出稿についての抑制の取組などの話もございましたけれども、この対策が十分かという点について、私としては問題意識を持っています。

いわゆる要請、自主規制といったことでは不十分ではないか、結局抜け穴が残るのではないかということを心配しておりまして、この対策を更に強化する必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、この点について後藤参考人の御意見をお聞かせいただけますか。

 

○後藤健郎参考人(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事)

御質問ありがとうございます。

広告対策でございますけれども、広告事業三団体とCODAで話合いをしておりまして、先ほども申したように、CODAは、警告してもやめない悪質なサイトをリストアップしています。

これはブラックリストですね。それを共有しまして、そのURLには広告を載せないでくださいということでお願いし、三団体の方も了解をしてくれまして、加盟傘下の企業にそれを通達するということで、おかげさまで、広告が載るということは非常に低減しております。これは非常にいいかなというふうに思っています。

ただ、御指摘のように問題もございまして、やはり、とはいえ広告が載ってしまう場合があるということでございます。

さらには、三団体以外のアウトサイダーに広告が載ってしまうということがございます。

どうしても広告が載ってしまうというイタチごっこの感はありますが、アウトサイダーをどうするのかということは対応していきたいなというふうに思っておりまして、三団体の皆様とも、アウトサイダー、どこが大きいアウトサイダーなのかということも情報共有しつつ、特定企業に申入れ等をしていきたいというふうに考えている次第です。

以上です。

 

○城井委員

ありがとうございます。

おっしゃるとおりでして、アウトサイダーに対する対策が刺さらないと、結局、我が国で手が届くところだけで対策をしても抜け穴が残ってしまうのではないかというふうに私自身も考えています。

そこで、後藤参考人と福井参考人にそれぞれ同じ質問をしたいというふうに思いますけれども、いわゆるアウトサイダー、これは国家に限らないというふうに思いますけれども、国家ないしは企業ということかと思いますが、この法案で行う規制に対して協力的ではない国があり、そして、法律の実効性が担保されないのではないかという懸念がある。

きょうのお話ですと、オフショアホスティングや防弾ホスティングもそうですし、レジストラーの問題も指摘がありましたけれども、こうした部分について懸念があるということ。

本来ですと、どういう対策をすべきか、民間の側の対策もあると思いますけれども、主には国家対国家の部分になるのではないかというふうに考えておりますが、この点、それぞれ御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

 

○後藤健郎参考人(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事)

まず、御質問の一点目でありますが、先ほどブラックリストの共有ということを言いました。

それは、日本国内でなくて、海外ともやっております。

海外ではIWLといいます。インフリンジメント・ウエブサイト・リストということで、悪質なリストを共有しましょうということで、IWLのいわゆる地域枠組みというのがかなりできています。

我々としては、香港IWLにも加盟しています。

それと、台湾のIWLにも加盟しています。

それで、三地域で悪質広告を載せないという形をとっています。

また、進んでいるのはイギリスでございまして、イギリスは、ロンドン市警の中に知財ユニットというのがございまして、そこが先駆的な働きをしておりまして、我々と定期協議もいつもしているところでございます。

それと、あとWIPOですね。WIPOの方でこのIWLの情報を共有しようということで、昨年からお話がございまして、現在、私どももお話合いに参加しているところであります。

ただ、定義が若干違いますものですから、その辺の調整をしないといけないというふうに思っております。

それと、次に海賊版全体の話でありますが、やはり国の差というのは非常に多うございます。

おっしゃいますように、今回法律が施行されれば、まず日本国内で広報啓発をして、この法律を知ってもらう、国民に広く知ってもらう。

それでもやめない場合は警告する。個々に警告をしていきます。

それでもやめない場合は、警察庁にお願いして都道府県警察で事件検挙をしてもらうということになると、多分、国内ではすぐなくなると思うんです。

問題は、そうなると主戦場は海外に移ってくるということでございまして、この点をどうするか。

ICPOルートでの照会、二国間共助条約での照会等々はありますが、御承知のように、著作権侵害の場合はなかなかプライオリティーが低くて、それが優先順位に上がるということはございません。

今回の漫画村がフィリピンで検挙されましたけれども、これは非常に私はリーディングケースだと思っています。

これを今後、広く太くしていただきたい。国際連携。

それで、先ほど福井先生のお話もありましたけれども、レベルの低い国に対してはそれなりの指導をするということも必要かと思います。

CODAとしましても、文化庁からの支援を頂戴しまして、東南アジアの執行機関の皆様に、トレーニングセミナーということでオンライン侵害の対策のあり方等々をしているところでございますけれども、それをもっと各国、地域に多層的にやっていく。

さらには、国、政府としても、しっかりとその辺の教育、申入れ、場合によっては厳しい申入れもしていただきたいというふうに思っている次第でございます。

以上でございます。

 

○福井健策参考人(弁護士)

ありがとうございました。

大きくは、今、後藤参考人のお話に同意するところであります。

それにつけ加えていくとするならば、先ほども少し御紹介させていただきましたが、民間での権利行使というのは、やはり最後はそこに尽きるわけでありますね、民間個社での権利行使。

これについて、産業財産権では、例えば、海外で冒認商標と言われる、有名な作品名やブランド名が乗っ取られてしまった商標登録に対しては、国がしっかり助成をして、その取消し、あるいは紛争の解決を支える制度は既にあるわけです。

では、なぜ海賊版に対してはそれがないのか、著作権に対してはそれがないのかといえば、ただないだけなんだと思うんですね。

これは早急にぜひ御検討いただけないかというふうに思うところです。

現在は、何とか、権利者の有志連合でそういう個社の対応もしていますが、中小は無理です。

時々、武勇伝のようなお話がネットメディアをにぎわすようなことはありますが、ほとんどの会社は間違いなく泣き寝入り状態です。

これが一点。

二点目は、サイトリストの共有化、海賊版サイトリストの国際的な共有化ということを先ほど申し上げましたが、そういうものをどんどんと輪を広げていくこと、それによって包囲網をつくっていくこと、これも重要だというふうに思います。

加えて言いますと、先ほどのレジストラーですね、悪質なレジストラー。

これは、ICANNはドメイン名を各サイトに振り分ける団体であり、インターネットという超国家的な存在にとっては相当大きな権威なんです。

ところが、このICANNルールは、要するに守られていません。

少なくとも、海賊版などを支援する、違法サイトを支援する多くの事業者は、そしてそれを支えるレジストラーは、それを守っていません。

これは、年次会議でICANNポリシーの見直しというのは行われていますから、政府からも後押しをして、ちゃんと守りましょうよという働きかけをしていくことは大事かなというふうに思います。

四つ目です。プロバイダー責任制限法。本当は海外の法令もあわせてと言いたいところなんですが、まずは、国内のプロバイダー責任制限法というものがあります。

いわゆるプラットフォームなどのネット上の場を提供する事業者は、いろいろなコンテンツがアップロードされてきても、どれが侵害物かわからないから、侵害物がアップロードされただけでプラットフォームまで権利侵害の責任を負わされては大変です。

とてもではないけれどもIT社会はやっていけませんので、上がってきたコンテンツが侵害物だよという通知を受けたら削除すればいいよというような、プロバイダーの責任を制限する法律があります。

この中で、発信者情報の開示制度というのがあります。権利侵害情報を発信する、要するに、海賊版サイトの運営者などの身元の情報を、プライバシーを害さないように一定のセーフガード、手続で開示してもらうという手続なんですが、現状、任意での開示が非常に時間がかかるということ、消極的であるということと、もう一つは、省令で開示情報が指定されているのですが、ちょっと時代にそぐわなくなってきて、抜け道が多いということが指摘されています。

例えば、投稿時のIPアドレスは開示対象になっているんですが、投稿時のIPアドレスというのは自由に変えられるので、実はそのIPアドレスがわかってもしようがないということがあるんですね。

ログイン時のIPアドレスを知りたい、ただ、それは省令で対象になっていないとか、こういう細かい点が実は積み重なって、権利者の身元を判明させるための決定打になっていきます。

ということで、プロバイダー責任制限法、現在、見直しがちょうど公開で議論され始めたところだと思いますが、プライバシーに配慮しつつも、適時な見直しは必要かなというふうに思います。

最後、さまざまな海賊版対策のノウハウが国内専門家の間で共有されておりません。

よって、このセミナー、人材育成、これが非常に重要かなというふうに思います。

以上です。

 

○城井委員

ありがとうございます。

今の福井参考人のお話を受けて、後藤参考人に一つ確認をしたいんです。

海外でも著作権を守っていく取組を国がやらなきゃいけない部分もあると思いますが、そうしたサイトリストの公開など、仕組みとして防いでいく手だての打ち方はあると思うんですけれども、例えば、海外での著作権侵害の対策助成がないことで、自力で海賊版の対策を充実させるのが難しい中小規模の会社などに対して国がノウハウ提供や経費助成をする必要があるというふうに考えているんですが、例えば業界全体で、業界全体を守っていくために、そうした規模が限られたところについて支援をしていくということができるか、現実的かという点について御意見をいただきたいと思うんですが、お願いできますか。

 

○後藤健郎参考人(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事)

あくまで私見でございますけれども、著作権侵害、非常に多岐にわたっております。

それに全て対応をするという形になりますと、とても大変、CODAの二十二名じゃとても対応し切れません。やはりそれは、情報の出口をいかに集約して、効率的に取り入れていくかという方法が必要だと思っております。

これについてはCODAの課題だというふうに思っています。

経済産業省、文化庁、総務省、警察庁等々から支援をいただいているところではございますけれども、とはいえ、なかなかその辺の、全著作権侵害それぞれに対応するというところまでのマンパワー、蓄積、システムがないというのが現状でございます。

 

○城井委員

やはり国が中心となって取り組むべきだという点を確認させていただけたかと思います。

ありがとうございます。

福井参考人にもう一点お伺いさせてください。

今回の法律案によって規制をかけるいわゆるインターネット関係の技術は海賊版の権利侵害について全て網羅ができているかという点から見ますと、例えば、ダウンロードについては対象であるけれども、そこから外れるものがあるのではないか。

例えば、ストリーミング技術自体について、今回直接触れていないわけでありますが、リーチサイトを通じてストリーミングにも手をかけるという形をとっていて、ストリーミング技術そのものには言及をしていないという点ですとか、いわゆるオンラインリーディング型についての規制をどのように見るかという点も含めて、今回規制対象に入っていないのではないかとされる技術の部分について取扱いをどうすべきかという点について、御意見をいただけますでしょうか。

 

○福井健策参考人(弁護士)

ありがとうございます。

とても重要な質問であろうというふうに思います。

すぐに十全なお答えはできませんが、二つのポイントでお答えをさせていただきます。

まず、一つ目は、これで完全というわけではありませんが、今回の著作権法改正案の中には、一部その対応がされております。

それは、百十三条七項などに関連するアクセスコントロールと言われる部分ですね。

従来から、こうしたアクセス制御がされているものに対するいわば不正なアクセスは、一定の場合にはみなし侵害あるいは刑事罰というような対応がされてきたわけですけれども、今回、シリアルコードを送信するようなタイプの、従来よりもう一つ進化したような配信のサービスに対して、あるいはゲーム等のサービスに対しての不正アクセスも、こうした規制の対象になるような改正が入っております。

これが一点目。

ただし、これは制度的にはごく一部の問題でありますので、今後も議論を続けていくということは御指摘のとおりかと思います。

それから、もう一点。非常に重要になってくるのはプラットフォームの役割です。

もはや、こうしたさまざまなコンテンツの流れを権利者と、ときには裁判所、警察、この力だけで抑え込むのは、スピード的にもネットの本質論からも到底不可能であります。

そこではプラットフォームが大きな場としての役割も果たしているし、何かを抑え込むときに実効的な手段をとり得るのも彼らです。

よって、彼らがその力を正しく使うこと、彼らなしの社会はもう考えられないけれども、でも、その力を正しく使い、我々が巨大プラットフォームたちと幸福に共存できること、これが非常に重要です。

そのために、業界でルールをつくってもらうが、政府もそれを見守らせていただく、そういう共同規制のような考え方が、今後はストリーミングサービスその他新しい著作物の流通の中にあって重要な鍵になっていくだろうというふうに思います。

以上です。

 

○城井委員

最後に、福井参考人にもう一問だけお伺いいたします。

新型コロナウイルスで苦しむクリエーターは大変多いわけでありますけれども、先ほど馳委員の質問でもありましたように、そんな中、オンライン教育にかかわる部分について、補償金はゼロでというような対応だったと。

こうした部分も含めて、やはり文化芸術全体、クリエーターなどに対しての支援を国は強めるべきだというふうに思っています。

今、公演などを休んでいるけれども、その補償が十分に行き届かないという声がたくさんございますし、そうした文化芸術の担い手、クリエーターが倒れないような支援、今やるとすれば何かという点を最後にお伺いしたいと思います。

 

○福井健策参考人(弁護士)

ありがとうございます。

予想していない御質問でしたが、とても大事なことを聞いていただいたと思います。

ライブイベント支援、私も取り組んでおりますが、まさに危機的な状況です。御存じのとおり、多くのライブイベントは、他の業種よりも六週間以上早く、二月二十六日、突然とも言える要請を受けて、これに全面的に協力し、全てのコンサートあるいは舞台公演等は中止をいたしました。

これらは、それまでの公演準備にかけられた全経費が一瞬にして損失に変わる瞬間です。

チケット代は全て払戻しをしておりますので、全てが損失になり、最近行った緊急調査によれば、我が国を代表するような演劇団体十六団体で五月末までで延べで約三千ステージが中止され、純損失が百六十億円です。事業継続は困難などの回答が四割以上を占めました。大変な状況です。

しかし、今のところ、正面からの補償というものは行われません。政府が正面からの補償を行えないことはよく理解しました。

しかし、倒産するものは倒産します。

もし日本を代表するようなライブイベントの団体が潰れれば、それは必ずや、中小、フリーランス、全てに波及します。

これを放置して、それをコンテンツ立国と私は呼ばないと思うんですね。

彼らには緊急の支援が必要です。今現在、潰れてしまった公演の後始末のために奔走し、資金繰りのために奔走し、秋からの再開を信じて公演準備のために奔走している彼らは、休業などできません。

よって、雇用調整助成金は一銭もおりていません。

その十億単位の損失は、百万、二百万の持続化給付金では残念ながら焼け石に水です。

これを何とか救ってあげていただきたい。

必ず、人々が立ち直って、コロナ後の社会を築いていくために必要な存在なはずです。

ありがとうございます。

 

○城井委員

終わります。ありがとうございました。

 

衆議院議員 きいたかし 福岡10区