学校教育法の一部を改正する法律案について

2005年6月10日 衆議院文部科学委員会

 

○斉藤委員長 

城井崇君。

 

○城井委員 

民主党の城井崇でございます。

引き続き、学校教育法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日は二時間ちょうだいいたしました。

大変ありがたいことだと思っております。

服装は涼しく、そして議論は熱く、締めるところは締めて頑張っていきたいと思いますので、大臣、よろしくお願いいたします。

さて、我が国の高等教育の将来、とりわけこれからのあり方についてまず触れさせていただいた上で本題の質問に入ってまいりたいと思いますので、お願いしたいと思います。

我が国の高等教育、これまでもいろいろな点で、ある意味曲がり角に差しかかっているのではないかというふうに思っております。

先日発表されました中教審の答申にもございましたけれども、本来二〇〇九年と言われておりました大学全入時代への突入が二〇〇七年と、前倒しという状況が出てきている点、そして、それの裏表ということなんでしょうけれども、学生数が減ってくることによってこれまである大学の経営が非常に厳しくなっている、そういう経営が厳しくなっている大学の数がとてもふえているということ、そうした状況などが、この曲がり角という点ではあるのではないかと思っております。

しかしその一方で、今我が国がこれから進めていかなければならない点、例えば、国として戦略的に基幹技術の研究開発を進めていく、そういう高等教育をしていかなければならないのではないかというふうにも感じております。

先日から文部科学省の方に少しお願いをして、国として戦略的に推進すべき基幹技術の候補リストというものを挙げていただいておったんですが、その中でも、例えば、地球シミュレーターを初めとするスーパーコンピューターですとか、ロケットの開発、あるいは衛星等での地球規模の統合観測・監視システムとかといった、ある意味で世界でナンバーワンあるいはベストスリーに入るような形の技術を、お金になったり商売になったりというような形も含めて何とか進めていこう、かなり重点的にやっていきたいということで、こうした候補なども挙げていただいておるわけですが、この技術、一つ一つお話を伺っていきますと、やはりその技術を支える人材をどのように継続的に育成し、輩出していくかということはとても大事だというふうに感じました。

こういった点も踏まえながらまずお伺いいたしたいのが、先ほど触れました、中教審から示されている答申であります「我が国の高等教育の将来像」、先ほどの西村委員の質問にもございましたけれども、この将来像の答申を受けまして、本改正も含めましてということになりますけれども、今後この高等教育についてどのような取り組みを行っていくか、その将来像と今後の取り組みという点について、まずお聞かせをいただきたいと思います。

 

○中山国務大臣 

時代がどんどん変わってまいりまして、大学をめぐる環境も変わっておりますし、また大学に求められる役割というのも変わりつつあるなということを実感しているわけでございます。

今回の法律案につきまして申し上げますと、本年一月の中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」におきまして、新時代の高等教育は、各学校種ごとの役割、機能を踏まえた教育研究の展開を図るとともに、各学校ごとの個性、特色を一層明確にすべきであるというふうに提言されているところでございます。

今回の法律案は、このような方向に向けた諸施策の一環として、まず第一に、学位についての国際的な動向等も踏まえつつ、短期大学を卒業した者に短期大学士の学位を授与する制度を創設することによりまして、短期大学の基本的な性格を明確にするとともに、個々の短期大学の特色、個性の一層の発揮を期待するものでございます。

また、助教授及び助手の位置づけを見直しまして、若手教員がその資質、能力を十分発揮することができる環境を整備するとともに、各大学や各高等専門学校がより一層自由に教員組織を編制することを可能とすることによりまして、それぞれの個性や特色を発揮した活動をさらに展開していくことを期待しているものでございます。

このように、文部科学省といたしましては、本法律案を初めとするさまざまな施策を推進することによりまして、個性豊かで魅力的な質の高い高等教育の展開、そして、それによりまして国民の期待にこたえていくということで今後とも取り組んでまいりたいと考えております。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

今るる御説明をいただきましたような将来像に基づいて、今回の法改正を位置づけておられるということは理解をしておるわけですが、この改正案、御承知のとおり、大きくは三つの部分から成っております。

短期大学卒業者への学位授与、そして大学の教員組織の整備に加えて、高等専門学校の教員組織の整備についてでございます。一つずつ丁寧にお伺いをしてまいりたいと思います。

まず、短期大学卒業者への学位授与の部分についてでございます。

この点については先ほどの将来像の御説明の中でも触れていただきましたけれども、短期大学の学位について論じます前に、まず、先ほどの将来像にもございました高等教育における学位のあり方、短期大学を含めてということになると思うんですけれども、この点についてお伺いしたいと思います。この学位というものについての全体像をどう形づくっていくのか、文部科学省のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

 

○中山国務大臣 

学位の全体像をどのように考えるかという御質問でございますが、学位は、大学教育の課程を修了した知識、能力の証明として大学が授与するものでございまして、このような理解は国際的にも共通しているものでございます。

各大学における教育水準の維持向上、教員、学生の国際交流の推進等において重要な役割を果たしていると考えております。

このため、文部科学省といたしましては、学位に関する国際的な動向を踏まえつつ、我が国の大学や大学院におきます学習歴が適切に評価されるよう、これまで必要に応じて学位制度の見直しを行ってきたところでございます。

具体的には、平成三年には学士を学位と改め、平成十四年には専門職学位を新設するなどの学位に関する制度を改正してきたところでございます。

今回の法律案におきまして、短期大学を卒業した者に対して短期大学士の学位を授与することによりまして、短期大学、大学学部、大学院を通じて、大学教育の各課程に応じた学位が整備されることになるわけでございます。

今後とも、我が国の学位が国際的にも信頼され、適切に評価されるように、短期大学も含めた大学における教育の質の維持向上に努めてまいりたいと考えております。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

では、そうしたそれぞれに学位が設定されるということでございましたけれども、特にわざわざ短期大学士という学位をつくることによって今後の短期大学の役割にどういったことを期待されるのかという点についてぜひお伺いしたいと思います。

先ほどの答弁の中でも、これまではいわゆる女性の方々の進学志向の高まりに従ってという点の御説明はあったわけでございますが、国立の短期大学自体はなくす方向になってきているという状況等も踏まえますと、そういった中で期待する内容というのは何なのかという点について少々疑問があるわけです。

この点についてぜひ具体的にお聞かせいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

短期大学について、今回の学位の創設といったようなこととも関係して、今後どのような役割を期待しているのかというお尋ねかと存じます。

短期大学につきましては、中央教育審議会の答申でも指摘されておりますとおり、我が国の高等教育において大変大きな役割を、そして意義を持っておるわけでございまして、多様な生涯学習機会の提供ですとか、身近な高等教育機関として、地域とも連携をして積極的にその役割を担っていくことが期待されているわけでございます。

今回の短期大学士の学位の創設につきましても、短期大学がこのような身近な高等教育機関であるとともに、国際的に通用する大学の一つの類型として、その特色を一層発揮する制度的な基盤を整えようという趣旨のものでございます。

学位創設の具体的なメリットといたしましても、例えば、幾つか考えられるところでございまして、一つには、大学教育の特質である教養教育とその基盤の上に立った専門教育の提供の充実、あるいはグローバル化しつつある社会における国際交流の充実、そしてまた教育研究水準の不断の維持向上に対する各大学への刺激、こういったものが期待されるところでございます。

先ほど、戦後の短期大学の伸びといいましょうか、その人気、女子の方が支えてきているというようなことを私御紹介申し上げましたし、今先生からもそういったことについて触れられたわけでございますけれども、そういった従来から持っておる身近な、そしてある意味で実務的な、職業的な面も兼ね備えた教育を提供しているというところにそういった要素、人気もあったものだと思いますし、そういうメリットというようなものはこれからも十分に生き続けると思いますし、また、それも大きく発揮していくということは、短期大学にとって今後とも重要であろう、このように考えております。

こういった制度改正を契機に、短期大学がその個性、特色をより一層発揮した教育研究を展開して、ほかの高等教育機関と相まちまして、高等教育全体として国民の多様なニーズにこたえていく、こういったことを私どもとしても大いに期待しているところでございます。

 

○城井委員 

多様な生涯学習の機会の場を確保していくということは、とても大事だと私も思います。

その上で、先ほど触れられた短期大学の果たす役割ということで、教養の部分と実務の部分と二つを合わせたという御答弁があったかと思いますけれども、先ほどの我が国におけるニーズというものに目を向けましたときに、最近、とりわけ学生の中でいわゆる実務に対する志向が高まっているという部分があろうかと思います。

その意味で申しますと、これまで短期大学に我々が期待をしてきた教養と実務の合わせわざという部分で、特に実務の部分に目を向ける学生の数がふえていることにかんがみますと、その実務に特に焦点を当ててきたこれまでの既存の専門学校との役割の違いというものが、なかなか見えにくくなっているのではないかと考えるわけですが、実務という点から見たときの短期大学と専門学校の違いと申しますか、その役割分担というものを、お考えがあるのでしたらお聞かせいただきたいんです。

 

○石川政府参考人 

短期大学と専門学校との違いといいましょうか、その特徴に関するお尋ねでございます。

この点につきましては、ただいま先生の方からもお話がまさにございましたように、専門学校は基本的に、特別な、そして深い意味での専門的な、職業的な知識、技能を身につけるといったような教育に特化をされた学校である、このように考えられるところでございますし、そういった位置づけであるわけでございます。

また、ただいま御紹介ございましたように、短期大学につきましては、一定の教養教育といったものをベースにいたしまして、その上にさまざまな生涯教育の視点、あるいは職業教育の視点、そしてまた実務的な技能を身につける、こういう視点が組み合わさっている、そういった性格の高等教育機関である、このように理解をしております。

 

○城井委員 

実際、そのような御理解に立っておられるということですと、今、私が先ほど申し上げましたような実態をどれぐらい調べておられるかという点についてもあわせてお伺いをしておきたいと思うんです。

例えば、実際に短大に通っておられながら専門学校に行かれるという、いわゆるダブルスクールの状況ですとか、あるいは出られた後にいま一度専門学校に通うといったような状況というのが現状としてあるわけですけれども、そういった例えばダブルスクールの状況についてお調べになっておられますか。

 

○石川政府参考人 

ただいまお尋ねのございましたダブルスクールの状況というようなことは、そういった状況があるということは耳にしておりますけれども、大変恐縮でございますけれども、今手元にその実態の資料は持ち合わせておりません。

そういった状況でございます。

 

○城井委員 

実際にお調べにはなっているんでしょうか。

 

○石川政府参考人 

現時点では、私どもの方でそういった調査は行っていないところでございます。

 

○城井委員 

まさにこのダブルスクールという状況は、国民の多様なニーズを一番反映した状況なのではないかというふうに思っております。

政府の側で、あるいは国の側で、それぞれの学校の役割分担というものをある程度規定するという形にしても、実際にそういった部分が出てきているとすれば、そういう最新の実態についてもぜひ文部科学省として把握をしていただきたいというのを強く要望したいと思いますので、お願いいたします。

それでは、次に移りたいと思いますけれども、先ほどのお話も伺っておりますと、これだけの、非常に短期大学に対する引き続きの大きな期待というものがあるわけですけれども、それでは、なぜ今まで学位授与のための改正というものをこの時点までやってこなかったのかという根本的な疑問が一つあるわけですが、なぜ今まで学位授与のための改正をやってこなかったのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

短期大学につきましては、昭和二十五年に戦後の暫定的な制度として発足をいたしまして、昭和三十九年に恒常的な制度となったわけでございますけれども、学位、称号等の制度は未整備のままで推移をしていたわけでございます。

そこで、平成三年に、学士の学位化等の学位制度の見直しに合わせまして、短期大学の発展状況も踏まえまして、短期大学卒業者に準学士の称号を付与するということにしたところでございます。

そうした状況で推移をしてまいったわけでございますけれども、しかしながら、近年、アメリカですとかイギリスにおきまして、短期の高等教育の課程を修了した者にディグリー、これは日本語に訳しますと学位ということになるわけでございますけれども、これが授与されるようになっておりまして、グローバル化が進行する中で、国際的な通用性の観点からも、短期大学の課程を修了したことをもって、称号ではなくて学位とすることが求められるようになってきている、こんな状況が生じてきておるわけでございます。

さらに、短期大学関係者からも、短期大学の制度的な位置づけを明確化するために学位授与を可能とすべきである、ぜひ学位授与を創設してほしい、こういった要望が高まってきておりました。このような中で、本年一月、先ほど来お話が出ておりますけれども、「我が国の高等教育の将来像」という中教審の答申におきまして、「短期大学における教育の課程修了を学位取得に結び付けるよう制度改正を行うことが適切である。」こういった提言が行われてきたわけでございます。

このような状況を踏まえまして、今回短期大学卒業者に短期大学士の学位を授与できるように、今般、学校教育法の一部を改正する法律案を提出させていただいている、こういうことでございます。

 

○城井委員 

ただいまの御答弁の中にもございましたけれども、平成三年の学校教育法改正の中で、いわゆる準学士と称することができるようになった、では、その称することができるようになった後の短期大学及びその卒業された方々の社会的位置づけというのはどのように変化をしたというふうに評価をされておられるんでしょうか。

 

○石川政府参考人 

平成三年に、短期大学卒業者に対しましては準学士の称号を付与するということにしたわけでございますけれども、この改正によりまして、我が国社会におきまして、短期大学あるいはその卒業者の位置づけが具体的な形でにわかに大きく変化したということは、率直に申し上げてなかなか言いがたいところがありますけれども、この制度の改正後、既に十年以上が経過しておりまして、関係者の間において短期大学の卒業をあらわすものとして準学士の称号はかなりといいましょうか、しっかり定着をして、適切に評価されているものと受けとめられております。

また、短期大学自身もこの制度改正等をきっかけに、学習歴の評価につながります教育の質の維持向上への意識を大変高めてきたところでございますし、身近な高等教育機関として、教養と実務が結合した専門的な職業教育ですとか、あるいは先ほど来申し上げておりますが、生涯学習機会の提供、充実に従来以上に努力するようになってきている、このように私どもとしては考えているところでございます。

 

○城井委員 

そうしますと、これまで学位授与でなかったことによって現在起こっているとされる不都合が実際にあるのかどうかという点で申しますと、先ほどの御答弁を確認しますと、いわゆるアメリカとイギリスにおいてディグリーの授与ということがされる流れになってきたものに合わせてきているという点、それから、短大側からの要望があったという点をもってということは先ほど触れられましたけれども、それ以外に、では、いわゆる物理的な不都合があったからということではないということなんでしょうか。

また、今回の学位授与への改正というものは平成三年の改正時には想定外だったのかという点、あわせてお聞かせください。

 

○石川政府参考人 

お答えを申し上げます。

具体的に学位が授与されていないという状況であれば、例えばどのような不都合が生じているのかというようなお尋ねかと存じます。

短期大学につきましては、教育研究上、大学の一つの類型としての特色を有して、我が国の高等教育に大変大きな、重要な役割を果たしてきているところでございまして、国民のニーズにもこたえている一方、その個性、特色が必ずしも明確になっていないというようなことなどから、学生確保の点などで厳しい状況に置かれているなどの問題も抱えているところでございます。

そして、最近、例えば英国において、先ほども御紹介申し上げましたけれども、短期高等教育機関の修了者に授与される学位として、ファウンデーションディグリー、こう称しておりますけれども、こういったものが導入され、あるいは米国においても、短期高等教育の修了者に授与されるアソシエートといったようなものが学位として定着しつつある。

グローバル化の進む国際社会の中でこういった状況が生じてきているわけでございまして、短期大学修了者に学位を与えるという傾向が進んできているわけでございます。

例えば、こういった中で、我が国の短期大学卒業者が諸外国に留学をする際の転入、編入などの局面におきまして、あるいはまた我が国に来られました留学生の方々が帰国後にきちっとした正当な評価が受けられるか。

こういった点などにおきまして、いわゆる国際交流面に、そういう側面で我が国の短期大学が国際社会の中で必ずしも有利ではないといいますか、むしろ不利な状況となってきている、こんなようなことも出てきておるわけでございます。

こういった状況等も踏まえまして、今回、この学位制度の創設といったようなことを御提案させていただいているわけでございます。

また、昔にはそういった状況はなかったのかというお尋ねもございましたけれども、この点につきましても先ほど御紹介いたしましたように、諸外国がその当時はまだそういう短期の高等教育機関の卒業者に対して学位を授与するというような環境が醸成されていなかった、あるいはそういう実績も十分に積み上がっていなかった、こういった状況があるわけでございまして、現在の状況をしっかり見据えさせていただくとしますと、国際的にもそういう状況が十分に整っている、こういう認識をしているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

今の御答弁の中で、国際交流面での必要性からという趣旨の御答弁があったかと思いますけれども、確かに、今回の短期大学における学位授与を行えるようにするという改正内容は、最初に伺った中教審答申「我が国の高等教育の将来像」においても、国際的通用性を確保する必要性並びに各短期大学における個性、特色を発揮した教育の一層の充実を図る必要性から提言された内容であります。

ただ、例えば、この国際的通用性の確保ですね。一体どの点をもって学位の授与と関係しているというふうに言っているのか、正直言ってよくわからない部分があります。

少し具体的に伺いたいと思いますが、この学位の国際的通用性にかかわるといえば、先ほども答弁の中にございましたように、言わずと知れた学位を持っている方、卒業者であります。

この卒業者の中でも、日本の短大から海外へ留学あるいは就職などをする方、また逆に海外から日本の短大へ来て学んで自国へ帰る方というのが恐らくその関心層なんだろうというふうに推測はいたします。

ここで、実際に短大から海外へ留学されている留学者の数、それから海外から我が国の短大へ留学されている方の数を具体的に数字で示していただきたいと思います。

できれば、その推移もあわせてお聞かせいただければと思いますが、お願いいたします。

 

○石川政府参考人 

短期大学における学生の国際交流の状況についてのお尋ねでございます。

平成十六年の三月に短期大学を卒業して外国の大学等に進学した者の数、これは二百二十二名でございます。

そしてまた逆に、十六年五月現在でございますけれども、短期大学におきます留学生の数、これは我が国の短期大学でございますけれども、この数は三千四百八十一人ということになっておりまして、近年の傾向といたしましては、全体としてその数字、水準は増加傾向にございます。

これが現在の状況でございます。

 

○城井委員 

今のお答えですと、日本の短大から海外に留学された方が二百二十二名で、海外から日本の短大へ来られている方が三千四百八十一人ということで、全体としては増加傾向だというお答えだったんですが、日本の短大から海外へというのが三けたですね。今の全体の学生数からすると、ごくごく限られた状況かと思うんです。

その点を踏まえてもう一点お伺いするとすれば、では、こうして学位の創設まで行った上で、海外でも通用する人材をこれからどの程度ふやしていこうというお考えがあるのか、例えば目標数値等があるのかという点について、お聞かせください。

 

○石川政府参考人 

これから短期大学における卒業者として学位を取得された方、これがどんな数字になるのか、あるいは私どもの方で例えば目標を立てるか、持っておるか、こういったお尋ねかと存じますけれども、今、私どもとして具体的な目標を定めてそれに向かってというようなことを必ずしも考えているわけではございません。

確かに、先生がお話しされましたように、また私が先ほど御紹介いたしましたように、我が国の短期大学の卒業者として海外の方に進出しておられる方、二百二十二名と大変少ないわけでございますけれども、今般の改正をお認めいただいて、短期大学卒業者に学位というようなものがしっかり与えられる、そういった暁には、私は、こういう海外へ積極的に出ていこうという学生さんはもっとふえるだろうと思いますし、そして、こういったことを軸にいたしまして学生の国際交流というようなものはますます盛んになっていくだろう、こう強く期待をしているところでございます。

 

○城井委員 

今お答えいただいたような内容、理解できるわけですけれども、しかし、今お答えいただいたような内容が、この学位の改正にかかわるもととなりました中教審の答申が出てくるまでの議論の間で、どれぐらい具体的にされたか、具体的な意見として出てきたかという点については確認をしておかなければならないと思います。

今のお答えはお答えで受けとめさせていただきますけれども。

その中教審の段階での議論、私も公開されている議事録を見ました。

中教審の大学分科会の制度部会における短期大学士の創設についての議論の議事録です。

ホームページで公開されたものしか見ておりませんので、もしそのほかのものがあれば御紹介いただきたいと思いますが、その短期大学士の検討の経緯の内容を見る限りで申しますと、今回この改正で出されている準学士の学位化に関する議論はほぼないと言っていい状況ではなかったかと見ております。

さしたる意見もなかったと言わざるを得ないと思うわけですが、この検討経緯の中で出てきた具体的な意見について、どういった立場の方から、具体的な個人名は恐らく差し控えられるかと思いますけれども、どのような意見が具体的に出てきたかという点についてお聞かせいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

今回の短期大学卒業者に対する学位の授与といった御提案、あるいは、その前の段階としての中教審の答申でのそういった提案、指摘、これに至る議論の経過というお尋ねでございますけれども、中央教育審議会の「我が国の高等教育の将来像」といったような答申の取りまとめに当たりましては、主に審議会の中の大学分科会の制度部会というところで、社会や時代の変化に対応した短期大学の位置づけですとか、あるいは短期大学卒業者に与えられる従来の準学士の学位としての位置づけ等を論点の一つとして審議が行われております。

審議の中では、例えば、現在、短期大学の卒業者には準学士の称号が付与されているけれども、これは国際的に見れば正式な第一学位に位置づけられるべきものではないかというような指摘ですとか、あるいは、短期大学教育の実績を踏まえますと、短期大学を学位を授与する課程として位置づけるよう考慮が必要という指摘がされているところでございます。また、委員の中には、当然のことながらといいますか、短期大学関係者も何人か入っておりますし、そういう方々からは積極的にそういった御意見が出されているところでございます。

また、審議に際しましても、短期大学の関係団体から審議会といたしましてもヒアリングを行うなどしましてその意見の把握に努めてきたところでございまして、短期大学卒業者に学位が授与されるということに対しまして大きな賛意が、あるいは賛意というよりは強い要請と言った方が的確かもしれませんけれども、そういった気持ちが示されているところでございまして、学位を与えるという社会的責任への自覚に立って教育研究の充実に取り組むべきであるというような決意、あるいはそういった意見も出されているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

もう一つだけお伺いをさせていただきたいと思います。

この短期大学、学位の創設以外の取り組みについて、先ほどの西村委員の質問への御答弁の中でありましたもの、一つがいわゆる短期大学自体が努力をしていくという点と、それからもう一つが国としての支援もという、この二つに触れられたかと思うんですが、では、具体的に今回の学位の創設以外で、今後、短期大学の取り組みに対して国として支援をしていく具体的な施策についてお示しいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

短期大学の振興に向けた支援の施策、私どもの取り組みの内容についてお答えを申し上げさせていただきたいと思います。

現在、短期大学におきましては、資格の取得ですとかビジネス、あるいは語学など、社会生活に役立つさまざまな授業を展開する新たな学科への転換など、既設学科の見直しが進められているところでございます。

また、米国のコミュニティーカレッジをモデルにいたしまして、地域の多様なニーズに対応して多彩な科目と柔軟なコース展開を目指す、いわゆるこれは地域総合科学科と呼んでおりますけれども、そういった構想への取り組みも進められているところでございます。

このように、各短期大学が社会の多様なニーズに機動的に対応し、一層主体的な組織改編が行われるよう、例えば、平成十四年には設置認可制度を弾力化いたしまして、これまで認可事項であった学科の設置ですとかあるいは収容定員の変更を、一定の要件のもとで届け出事項といたしております。

この結果、短期大学におきます教育研究組織の見直しも大変活発に行われ始めているところでございます。

さらに、短期大学の教育改革の取り組みを促進するために、特色ある大学教育支援プログラム、先ほどちょっと御紹介をいたしたかと思いますが、そういったものなど国公私を共通いたしました支援の充実を図るとともに、私学助成を充実するなど、その支援に努めているところでございまして、今後とも、さまざまな制度改正を初めとしてさまざまな施策を総合的に展開して短期大学の発展を支援していきたい、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

それでは、短期大学についてはこのあたりにとどめさせていただくといたしまして、次に、大学の教員組織の整備並びに今後の大学における教育及び研究のあり方について質問をさせていただきたいと思います。

まず、現在の教員組織に生じている問題点について、文部科学省としてここが問題だと考えている部分についてお聞かせいただきたいと思います。

 

○中山国務大臣 

大学教員の職のあり方等、大学の教員組織のあり方につきましては、従来よりいろいろな場で検討課題として議論されてきているところでございます。

平成八年の大学審議会の答申におきましては、助手の職務内容や名称の見直し等を含めた教員組織のあり方について検討の必要性がある旨、指摘されているところでございます。

また、平成十三年三月に閣議決定されました第二期科学技術基本計画におきましては、若手研究者の自立性向上の観点から、研究に関してすぐれた助教授、助手が教授から独立して活躍することができるよう、制度改正も視野に入れつつ助教授、助手の位置づけの見直しを図ることとされているところでございます。

このように、現在の大学の教員組織というのは、若手の大学教員が必ずしもその自主性あるいは独自の発想を生かした活動を展開する上で、適切なものとなっていないのではないかという御指摘がなされているところでございます。

きょうも、私、閣議で報告いたしましたが、平成十六年度の科学技術白書におきましても、こういった若手研究者、あるいは女性研究者、さらに外国研究者のもっと活躍をというふうなことも出ているわけでございますが、そういった中で、若手教員がみずからの資質、能力を十分発揮して活躍ができるように、助教授や助手の位置づけ等の見直しを行うこととしているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

そうした数ある問題点を踏まえまして、今回の法改正によって実現される大学の教員組織の整備によって、具体的に一体どのように教育や研究、特に、今大臣が触れられました若手研究者による教育あるいは研究が活性化されるのでしょうか。

人材育成あるいは学術研究の面でどのように改善されるのか、このもたらされる成果について具体的にお聞かせいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

このたびの改正によりましてもたらされる具体的な成果、メリットについてのお尋ねでございます。

従来、助教授ですとか助手は、教授の職務を助けることを主な職務として規定をされていたところでございまして、今回の改正によりまして、各大学がそれぞれの教員の職務内容を主体的に定めることが可能になったわけでございます。

これによりまして、各大学の実情や各分野の特性を踏まえました教育組織の編制が可能となるわけでございまして、特に若手教員が大学の教育研究に係るみずからの資質、能力を十分に発揮して活躍するようになる、こういったことが大きく期待されるわけでございます。

また、助教の職が新たに設けられることによりまして、将来の教授等を目指す者が最初につく若手教員の職ということが明確化されたわけでございまして、これとあわせまして、各大学におきまして若手教員が柔軟な発想を生かして研究活動を行い、将来の大学の教育研究の中心を担う者としての力量を養うための環境がより一層整備される、こういったことが期待されるわけでございます。

さらに、近年、大学院の整備が進んでいるわけでございますけれども、その量的規模も拡大をしております。

こういった中で、組織的あるいは体系的な教育の充実が強く求められているわけでございますけれども、今回の改正によりまして助教が新たに設けられ、そして大学院生の指導に当たるということが可能になることから、大学院教育につきましても、これが一層充実されるというようなことを私ども期待しているところでございます。

 

○城井委員 

今の部分を少しだけ言いかえた形になるかもしれませんが、確認なんですけれども、今回の改正で、ある意味、教授、准教授、助教、それぞれのお立場で、恐らく教育面でも研究面でも独立性が高まるのではないかというふうに想像いたします。

これまで教員組織にあったとされる教授を頂点としたピラミッド構造のような形はこれで改善をされるという方向を期待しているのではないかというふうに受け取っておるわけですが、この認識でよろしいでしょうか。

 

○石川政府参考人 

そういった大きなメリットも期待できるのではないか、このように考えております。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

ただ、その期待の部分、私は、少々疑問と申しますか懸念を持っております。というのは、今回の組織改編を行いましても、今申しました教授を頂点とする大学内におけるピラミッド構造というのは変わらないのではないか、結局、改編前と同じ状況になるのではないかということを非常に懸念いたしております。

むしろ、今回の改正でその力の構造が強まり、恣意的な任用につながるおそれがあるのではないかという指摘をする声も、大学の現場の一部からでございますけれども、出ております。

イメージでいうと、ドラマに出てくる医学部に見られるような、「白い巨塔」のような感じかもしれません。

特に、研究内容を適切に評価していけるのか、人事や採用といった面で、そうしたそれぞれの人材の研究内容を適切に評価できるのかという点はとても心配をするところです。

狭い専門領域ほど、同じ大学の中でそういった研究内容の適切さを評価できる人材は限られるのではないかというふうにも思います。結局、直属の教授しか判断できないような状況になってしまうのではないか。先ほどの御指摘にもありましたが、論文の数などいわゆる外的な要素のみで判断をするということに偏りがちな危うさもあります。

この新しい准教授、助教、加えて新しい助手などの任用方法について、こうした懸念があると思いますが、この懸念される点について、お考えをお聞かせください。

 

○石川政府参考人 

若手の教員の任用ですとか昇進に対する御懸念が示されたわけでございます。

大学教員の採用あるいは昇進等におきましては、そのふさわしい能力等を有するか否かにつきまして、まずもって公正かつ厳正な審査を行うといったようなことが大変重要であり必要である、このように考えられるところでございます。

その際、例えばアメリカにおきますテニュア審査、こういったところにおきましては、大学外の該当する専攻分野の専門家に意見を求める等の工夫がなされている、このように承知しておりますし、こういったものを一つの参考にするというようなことも有力なことであろうと考えております。

それから、新しく准教授や助教を採用する際に、当然のことながら、内部昇進に限定をするのでなく、広く公募を行うといったようなことが大変有意義であろうと考えられておりまして、公募を行う大学の数も、現実にますます増加をしているところでございます。

いずれにいたしましても、どのような選考や募集の方法を採用するかといったようなことは各大学が判断すべき事柄でございますけれども、本当にすぐれた人材が公正かつ厳正な審査で採用されますように、責任の所在の明確化ですとか、あるいは手続の透明性を確保していくといったようなことがこれからも大変重要になっていくのではないか、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

今御答弁の中で触れられました米国の決め方の一例、この例を参考にというお答えでございましたけれども、実際にそういった方法を導入している日本の大学というのはございますか。幾つぐらいございますか。

 

○石川政府参考人 

現実にどの程度のところで採用しているかということについては、恐縮でございますけれども、しっかり把握できておりません。ただ、アメリカでこういう取り組みが行われているということは、私どもの国においてもこれは大いに参考にしていいのではないか、こういう視点から申し上げた次第でございます。

 

○城井委員 

把握をされていないということでございますので、もう一つお伺いいたしますが、先ほど御指摘を申し上げましたように、大学自体が決定するとされる人事、採用の決定の方法、この部分に関して、では、文部科学省として、その決定の方法についての一定の基準ですとかあるいは指導といったものは、この米国の例を参考にしながらなども含めたことになるかもしれませんが、そういったことは行わず、どちらかというと大学に任せるという認識でよろしいんでしょうか。

 

○石川政府参考人 

教員の任用につきましては、基本的に、それぞれの大学が現行制度等、あるいは関係法令等も踏まえながら、それぞれの大学において考え、任用を行っていくべきものでございまして、私どもの方でそういったルールとか基準を決めるような性格のものではないと考えております。

 

○城井委員 

そうすると、大学の自主性に任せた場合に、恣意的な任用というものが出てきた場合に、それをどこでチェックするのか、チェックするのがだれかといった場合には、どの点でその部分をチェックするんでしょうか。

文部科学省はそこにかかわらず、大学の自主性に任せるということならばという点からお願いします。

 

○石川政府参考人 

基本的には、ただいま申し上げましたとおり、大学における教員の採用につきましては、大学それぞれの判断に任せるべきことと考えております。

どの程度の不都合があったときにどの程度の対応をというふうな先生のイメージ、おっしゃっているイメージ、ちょっとその辺ははっきりつかみかねますけれども、私は理解が難しいところでございますけれども、基本的には各大学の自主性とその判断に基づくべきもの、このように考えておるところでございます。

 

○城井委員 

今申し上げた、いわゆる恣意的な任用というのを少しだけ具体的に申し上げますと、文系、理系で申しますと、特に理系の方面がそういう点が強いと思いますが、各教授ごと、研究室ごとということになるかもしれませんけれども、そこについて、非常に限定された狭い分野で学んでいる大学院生、それから今後ですと、助手、助教、准教授といった形になるかもしれません。

そういった非常に限られた分野に連なる研究者の間での、人間関係を含めてその中でのやりとりで、恐らく大学の研究室内あるいは大学の学部内自体における人事、採用が決まってくるだろう。

そうすると、そこの人間関係に強く依存してしまうと、いわゆる研究者としての資質や研究内容の成果の優秀さとかいったところではなくて、人間関係が例えばこじれてしまっている場合に、そこで、あいつは採用ができないというような形でけられてしまうような例が出てくるのではないかというところがある。
先ほどの公募といったところも、まだまだ大学間の交流が進んでいない、あるいは、先ほど申し上げましたように、分野自体が非常に狭い場合に、ほかの大学ではなかなかその分野をサポートできないところがある中で、ある意味で、教授や准教授といった上司に当たる方々がかえって天井をつくってしまう例が出てくるという懸念が現在の大学の現場でもある。

とすると、そういった懸念を振り払うのに、先ほどの文部科学省さんのお答えですと、文部科学省としてはその部分にはタッチをしません、大学の自主性に任せますということだったら、ある意味で実際に公正で厳正ではない人事、採用の判断、決定が出てきた場合に、どこでチェックをするのかということをお伺いしているわけです。

この点について、もう一回お願いします。

 

○石川政府参考人 

公正でない、あるいは恣意的な人事が行われた場合に、どこでどうチェックするかといった点についてのお尋ねでございますが、基本的には、教員の採用、それから任免についての人事につきましては、それぞれの大学が判断されるべき事柄であると私どもは考えておりますし、そしてまた、本来、それが大学が持つべき良識であろうと思っております。

私どもは、むしろそういった恣意的な、あるいは余り適当でない人事が行われるようなことがないように、例えば、公募制を積極的に導入すべきであるとか、あるいは外部のレフェリーを設けたらどうかとか、そういうさまざまな公正で透明性のある任用方式を心がけるべきだ、そういったことを強く呼びかけ、あるいは注意喚起をしていくことによって、そういう公正さをこれからもできる限り担保していきたい、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

大学の現場における任用については、やはり師匠と弟子という非常に濃い人間関係が善とされがちなところもありますし、その点についてはしっかり今後見ていってほしいと思います。

今後、問題が出てきてからではおそいというふうに思いますので、ぜひお願いをいたします。

さて、次に移らせていただきたいと思います。

今回の法改正で出されております法律案の内容を見ますと、先ほど触れました中教審の大学分科会から出された答申の内容と少々相違点があるのではないかと思っております。

中教審の段階での「審議のまとめ」にはあったけれども、法律案には含まれていない内容、以下の二点が盛り込まれていないのではないかというふうに思います。

一つは、各職種における資質に言及しているという点、それから助教の職務の限定、大学が定める特定の事項についてというところだと思いますが、この二点がなぜ盛り込まれなかったのかという点。

盛り込まれないに当たって、どのような観点から文部科学省は検討を行って盛り込まなかったのかということについて、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 

 

○石川政府参考人 

今回の教員組織に関する改正案につきまして、中央教育審議会の答申で触れられておる指摘内容との差についての御指摘でございます。

中央教育審議会の大学の教員組織の在り方検討委員会の「審議のまとめ」におきます助教の職に関する記述におきましては、ただいま御指摘のありましたような文言があります。

また、同時に、そのまとめにおきましては、助教は将来の教授、准教授を目指す若手教員が最初につく職である、そして教授等と同様に教育研究を行うことを主たる職務とするが、責務等の点において教授とは異なる職である、このようにも言われているわけでございます。

本法律案を作成するに当たりましては、これらのことを総合的に踏まえつつ、教授、准教授の職務の規定ぶりとの関係なども含めまして、法制上の観点から整理を行いました結果、ただいまお示ししておりますように、「専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」このような規定ぶりにするということにしたわけでございます。

そういった意味で、もう少し言葉をかえますと、「審議のまとめ」におきましては、助教が担うこととなる具体的な職務に即して、大学、学部等の定めた特定の事項についてという文言を付すことが提言されているわけでございますけれども、例えばこのような文言をそのまま規定するというような形をとるといたしますと、これは法制的な見地から見ました場合には、教授等も大学や学部等の定めた特定の授業科目や研究プロジェクトに従事するといったようなことがあり得るわけでございまして、教授等と助教の職務の違いをあらわすことが非常に困難になるというような状況がございます。

また、職務を限定的に書くということが、若手教員の職であるという位置づけをあらわすことには条文上必ずしもならないというような事情もあろうかと思っております。

こういったようなことを踏まえまして、今回は、中教審の検討結果の趣旨、その実質的な意味を極力きちっと生かした範囲で、法制的に成立する規定ぶりとして現在の法律案の文言を採用させていただいているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

では次に、教員の新しい名称についてお聞きしたいと思います。
准教授、助教、どうもいまだに耳なれない言葉の響きで、少々戸惑うところがあるわけですけれども、この名称、特にこの名称の国際的通用性の議論というものが不十分なのではないかと感じる部分が具体的にございますので、御指摘を申し上げて質問をさせていただきたいと思います。

まず、先ほどの響きもそうなんですが、非常に不自然な名称だという点でございます。

これまでの名称についての問題が単に翻訳の問題であるならば、英語の訳語を統一すればいいのではないかと思うわけです。

英語の訳については法律には書き込んでいないわけですから、そちらで対応するという考え方もあるのではないかというふうにも思うわけであります。

もう一つ、この日本に生まれ育った人間の一人として見逃せない点があります。それは今回の名称、准教授及び助教が、アジア圏、言いかえますと漢字文化圏との通用性が確保されていないという点でございます。

まず准教授、准教授は、中国あるいは韓国では副教授という訳が定着をしているのは恐らく御承知のとおりかと思います。

助教については、韓国や台湾では研究者としてみなされてはおりません。

そういった点を踏まえると、助教は助教授、助手は助教に変更する方が、東アジアにおける国際的通用性という観点からは妥当だという意見もあるわけでございます。

今後使う教員の方の名刺ですとかあるいは紹介文に一々解釈をつけたりするわけではありませんので、このままですと、漢字の表の意味、この漢字の字面から混乱が起こるということは避けられないのではないかというふうにも思います。

漢字文化圏における国際的通用性を無視している今回の名称について、大臣、いかがでしょう、ある意味で、英語の訳語は欧米の大学向けには通用するかもしれませんけれども、今の漢字をそのままアジアの方々から見たら混乱されるわけですが、この点、どうお考えなんでしょうか。

ぜひ御見解をお聞かせください。

 

○石川政府参考人 

具体的なお尋ねでございまして、また少しくそういった点も御説明させていただきたいと思いまして、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

ただいま御指摘がありましたように、中国や韓国におきましては副教授という名称が定着をしておりますし、韓国や台湾におきましては助教は研究者とみなされていないといったような状況があることは御指摘のとおりでございます。

ただ、今回、こういった名称を定めるに当たりまして、中央教育審議会でも相当長い時間をかけて幅広い議論が行われたわけでございまして、例えば、准教授の職を設けることにつきましては、教授の次に位置づけられた職という意味を端的にあらわしたものがいい、そういうものにするべきだというようなことで、次に位するという意味の准を教授に付した准教授という名称が最も適切である、このように考えられたわけでございます。

また、助手のうちから設けられます助教につきましても、若手教員の職という位置づけをあらわすことができるというような観点、あるいは助教授や講師など、従来の他の職名との間で混乱や混同を起こさない、こういった点、そしてまた国語的、文化的な面から見ても、歴史的、社会的に一定の用例があること、こういったことなどが必要と考えられまして、中央教育審議会でこういった点につきまして総合的にさまざまな議論をしっかりとした時間をかけて行った結果、助教という名称が適切であるという結論を得たところでございます。

そして、少しまた話が戻りますけれども、こういった趣旨から、准教授あるいは助教という名称を設けたわけでございますけれども、この中央教育審議会におきましても、その検討の場では、副教授という名称についても検討の対象として上がりました。ところが、副という字が、これは漢字の意味としては助けるというような意味を強く持っておる漢字であるということから、現行の助教授と同じく、実態や位置づけを適切にあらわすものにはならないんじゃないかといったようなこともあって避けたということがございます。

そしてまた、助教につきましては、先ほど申し上げましたような主に三つの大きな要件でございますけれども、そういう要件から、助教といったものが一番適当な名称であるということで、これを採用しているところでございます。

確かに、韓国あるいは中国におけるものとは少し職務内容が違う面がございますけれども、漢字文化圏におきます助教というような位置づけは必ずしも統一的なものではないわけでございますし、こういったことを考えますと、助教というような名称を用いるといたしましても、特に漢字文化圏における通用性に反する、あるいは著しい問題が起こる、そういったようなことにはならない、このように私どもは考えているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。
この名称について、もう一つ別の問題が今後あるのではないかというふうに思っております。

ぜひお聞かせをいただきたいと思いますが、これまでに幾つかの大学では自由な職名の利用が認められておりました。

例えば首都大学東京あるいは国際基督教大学などの私立の大学で自由な職名を利用するということについて、今後どうなっていくのか。

今回の法案の成立後、そういった大学は引き続き使うことができるのか。

大学の自主性、あるいは国際的通用性の観点から見てどうかという点、この使える場合の根拠となる法律も示していただきながら、御見解を伺いたいと思います。

 

○石川政府参考人 

ただいまお話がございましたように、首都大学東京あるいは国際基督教大学等におきましては、現在でも、学校教育法に定められた大学教員の職名以外の職名を用いたりしている、こういった実態があるわけでございます。

もともと、各大学には、学校教育法に規定する職名を有する教員を大学設置基準に定められた水準を満たすように配置するということが求められているわけでございまして、またその一方で、大学設置基準を満たす場合においては、各大学における沿革ですとかあるいは教育研究上の理念に応じまして、学校教育法に位置づけられた職につきまして別の職名で呼称するということについても、実態上、慣行上、認められてきたところでございます。

他の職との混同を来すような取り扱いがされていない限りは、その取り扱いは今回の改正後も基本的に変わるところではないもの、このように考えているところでございます。

ただ、現実問題といたしましては、ただいまちょっと申し上げましたけれども、名称にはある程度の自由はありますけれども、実態面でほかのものと誤解をされるようなケースはやはりこれは避けるべきであろうと思いまして、そういったものについてはやはり不適切であろう、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。
そういたしますと、今後も、いわゆる実態上そして慣行上使われているものについては、あるいは使いたいというものについては、ほかの名称との混同を来さない限りは使用することができるという理解でよろしいですか。

 

○石川政府参考人 

そのように考えているところでございます。

(発言する者あり)

 

○斉藤委員長 

与党側の出席が少ないという指摘がございましたので、出席方要請、よろしくお願いいたします。

質疑につきましては、引き続き。

 

○城井委員 

では、引き続き、与党の方々がお戻りになるのを待ちながら質問をさせていただきたいと思います。

次に、准教授について何問か詳しくお聞きをしたいと思います。これまでの助教授と今回導入される准教授の違いというのはどこにあるか。

先ほど来のお話ですと、これまでのいわゆる助けるという役割ではなくて、独立性を高めるという点については理解をするわけですが、そのほかにもございますか。

 

○石川政府参考人

従来のといいますか現在の助教授と、改正後の准教授の違いについてのお尋ねでございますけれども、現在の助教授の職務につきましては、教授の職務との関係をもとに、教授を助ける、こういうふうに規定をされているわけでございまして、これに対しまして、改正後の准教授の職務は、みずから教育研究を行うことを中心に、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」このように規定されているわけでございます。
すなわち、既に現在でも助教授が教授から独立的に専攻分野の教育研究活動を行っているという例は非常に多いわけでございまして、またその職務内容につきましては、教授との関係という観点からではなくて、現実に行っている職務の内容に即して規定をするということが適当と考えられるところでございます。

このような点にかんがみれば、実際上の助教授と准教授との職務上の違いはほとんどないものと私どもは考えているところでございます。

 

○城井委員 

では、そうした准教授にはどのような人材が充てられるというふうに想定されておりますか。

具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。

 

○石川政府参考人 

准教授にどういった人材が充てられるか、あるいはどういった人材が期待されるかということでございます。

現在の助教授においても基本的にそうでございますけれども、大学の教育研究の中心的な役割を担う教授という存在があるわけでございますけれども、その次にはその教授という職を担うそれだけの能力や資格のある人材として、これまでは助教授、それから今後の准教授というようなものがそういった役割を期待されているわけでございまして、今回の規定におきましても、すぐれた教育研究能力、教育研究上の実績、こういったものが求められる職として位置づけられているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

続いて、助教についても二、三お伺いしたいと思います。

一つ目は、この助教になるための資格要件、そして二つ目に、期待される役割、三つ目に、ほかの職務との相違について教えていただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

助教についてのお尋ねでございます。

助教につきましては、将来の教授等を目指す者が最初につく若手教員の職であるということから、大学教員としてみずから教育研究に従事し、その中で資質、能力を高めていくということが期待される職であります。

また、このような教員組織におきます位置づけをあらわすために、学校教育法上、専攻分野における知識及び能力を有する者がつく職であるということを定めることとしているところでございます。

これを踏まえまして、本法案が成立した暁には、中央教育審議会に諮問をいたしました上で、大学設置基準を改正しまして、具体的な教員資格を定めることとしております。

現在、事務的には、中央教育審議会の大学分科会、そこに置かれました大学の教員組織の在り方検討委員会が取りまとめをいたしました「大学の教員組織の在り方について」、その「審議のまとめ」を踏まえまして、基本的に、修士または専門職学位を有するとともに、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有することも求める、このような形にしたいと考えております。

それから、助教とそれ以外の教員との違いについてのお話がございました。

これにつきましては、例えば准教授は教授に次ぐ位置づけの職でございまして、すぐれた知識、能力、実績を基礎として教育研究活動に従事する、さらに資質、能力を高めていくことが期待されるという職でありまして、教員資格といたしましては、現在の助教授と同じような内容のものを考えているところでございます。

また、教授につきましては、教育について責任ある位置づけの職ということで、特にすぐれた知識、能力、実績を基礎とした教育研究活動に従事するという職といたしまして、これに加えて、また教授会の構成員として大学における重要な審議に参画するといったような役割も負っておるわけでございます。

このようなことから、教員資格といたしましては、現在と同様に、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有するとともに、博士の学位を有し、研究上の業績を有するといったようなこと等を資格として求めることにいたしたい、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

今のお答えを踏まえて一点、確認でお伺いしたいんですが、今回の法律の改正案において、いわゆる教授や准教授に対しての助教、この助教とそれぞれの教授、准教授との職務上の関係について、この法律案の中で具体的に規定されておりますか。

規定されているんだったら、どこかというのを教えていただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

このたびの改正案につきましては、教授、准教授それから助教とも、教育研究に従事をするといった意味で、その具体的な職務内容については同様の書き方をしているところでございまして、それぞれの関係について規定を設けているというものではございません。

 

○城井委員 

職務内容についてはわかりましたけれども、では、職務上の関係については法律には書いていないんですね。

どこで規定をするんですか。

 

○石川政府参考人 

今回の教員組織に関します改正のねらいの一つの大きな点は、こういった規定をすることによりまして、従来の、例えば助教授は教授を助けるとか、あるいは助手は教授や助教授を助けるといったような関係中心の書き方から、実際の職務内容中心の書き方にするということでございまして、実際、現実的な組織を編制するということにつきましては、それぞれの大学の自主性あるいは独自性といったようなものを尊重していこうという考え方をもとにしているものでございます。

そういった意味で、今回の新しい姿になりました暁には、そういった大学の教員の組織のつくり方について、さまざまな形あるいは独自性、そしてそれに伴った大きなメリット、こういったものも期待できるのではないか、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

そういたしますと、これまでのものが関係性に基づいていたものなので、今回の部分はそういうのではなくてという御説明なんですが、職務上の関係の部分については、これまでも非常に問題になってきたところだ、先ほど恣意的な任用というところでも御説明申し上げたようなところとも深くかかわる部分だと思うわけです。

もう一点御指摘を申し上げると、先ほどございましたいわゆる「審議のまとめ」の中もあわせて見ますと、今回の職務上の関係については、法律上には書いていないものの、後ほど政令あるいは省令で手当てをするという形になるのではないかということを、「審議のまとめ」にある表現から推測をいたしますとそう考えるわけですが、この法律の施行後、政省令で、助教とそれぞれ教授、准教授との職務上の関係については規定をするということになるんでしょうか。

 

○石川政府参考人 

あるいは、先ほどあわせてお答えをすべきであったかもしれません。

その点をおわびしなければいけませんが、先ほど御説明申し上げましたように、今回の新しい形はそういった教員の、例えば教授、助教授、助手という関係に基づいてその組織を定めるというような思想をとっておりません。

しかしながら、それでは、それぞれの職が全部独立して、ばらばらになって大学に存在するのか、極端に言うと、そういった疑問も当然にわくわけでございます。

私ども、それぞれの教員の独自性といったものは尊重していくということが大学の教育研究の発展にとって大切であると考えておりますけれども、かといって全員が一人一人、独立独歩、ばらばらでいいという点も、必ずしもそれがいいというふうに思っておるわけではございません。

そういった意味からは、ただいま先生から御紹介のありましたような政省令、実際にはこれは省令レベルになると思いますけれども、そういったところで、それぞれの教員は大学の教育研究の例えば発展に向けて有機的な、あるいは有効な、有益な連携関係を保つようにしなければいけないとか、そういう観点のもとに組織編制が行われるべきであるとか、そういったことが望まれる、そんなような規定を置きたい、このように考えているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

職務上の関係については後ほど省令でということのようですが、今の御説明、ちょっと矛盾したところがあるんじゃないかと思うので、少し詳しくもう一回聞きたいと思うんです。

一つは、関係に基づく組織編制ではない、ないという形に今回の教員組織の整備はなっていると。ただ、そうはいいながら、ばらばらではだめなのでということになりますと、先ほどおっしゃっておりました有用な連携というのはまさに関係ではないかと思うわけですが、関係に基づかなくて有用な連携というのは何なのか。

もう少し具体的に、関係に基づかない有用な連携を省令で定めるというのは、具体的にどのような形になるのかというのを聞かせていただきたいんです。

 

○石川政府参考人 

先ほどちょっと御紹介を申し上げましたけれども、具体的な大学設置基準の改正内容等につきましては、ただいま、まだ検討中でございますけれども、例えば、講座制、学科目制等の規定を削除いたしました上で、教育研究上の目的を達成するために必要な教員を置くこととする、そして、主たる授業科目は例えば専任の教授あるいは准教授が担当すべきこととか、そして助教等につきましてはこういった教育研究上の目的を達成するために、助教だけではありませんで、教授、准教授、助教等のすべての教員について、役割の分担あるいは連携等の組織的な体制が確保されるような、そういった視点で教員組織を編制すべきであるというような規定を置きたい、このように今考えているところでございます。

 

○城井委員 

職務上の関係を規定する省令についてはまだ成案がないということのお答えだったかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、非常に、どうしても関係性に引きずられてしまうのではないかという懸念が大きくありますので、その点については、省令の文言を定める段階できっちりと議論をされた上でぜひお決めいただきたいということを、このことについてもお願いを申し上げたいと思います。

では、引き続き質問をさせていただきたいと思いますが、今回の改正案の中で、先ほどの准教授あるいは助教については、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には置かないことができるというのが第五十八条一項の関係で定められておりますけれども、この教育研究上の組織編制として適切と認められる場合というのは具体的にどのような場合をお考えかという点、教えていただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

ただいま御指摘がありましたように、今回の准教授、助教、助手につきましては、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には置かないことができるというふうに規定をされているわけでございます。

この規定の趣旨は、先ほども触れさせていただきましたけれども、それぞれの大学がそれぞれの理念等に基づいて、教育研究上の個性、特色を発揮して緩やかに機能分化をしていくということが考えられる、こういったこと等を踏まえまして、必ず置かなければならないというようなことにはしないで、それぞれの大学の理念あるいは専攻分野の実情等によりまして、教育研究上の組織編制として適切な場合には、准教授等を置かないことができるということとしたものでございます。

具体的なケースは、これからさまざまなケースが出てこようかと思っておりまして、典型的なものとして御紹介できるかどうかわかりませんけれども、例えば、学生への教育に重点を置いて他大学において既に業績を確立しているベテランの教授の方々を中心に採用して、レベルの高い、あるいは教育に特化した大学を運営していこうというような場合、こんな場合はそういうケースに当たろうかと思います。

また、例えば、最近の教育研究は非常に大きく目まぐるしくまた発展をしております。

そういった観点で、例えば学際分野などにおきまして、教育研究分野の特性に応じまして、教授、准教授、助教等の重層的な教育体制をしいて一定の分野をより深く履修させるというような形よりは、教授のみを置いて幅広い関連領域を履修させる方が有効である、例えばそういったことが考えられるような、あるいはそういう方針をとられるような大学においては、特定の職を置かないというようなこともあり得るのではないか、このように考えております。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

そうすると、置かないことを踏まえますと、新しく設置される准教授及び助教、それから新しい形の助手、それぞれの配置される数というものはどの程度を見込んでおられるのか。

その配置数の想定について、現在の助教授あるいは助手との比較という点から、もし可能ならば、踏まえてお答えいただければと思うんです。

 

○石川政府参考人 

この法律が施行された場合の、現在の教授、助教授、助手の構成比と比較して、新しい教授、准教授、助教、助手の割合がどのようになると予想されるかというお尋ねかと存じます。

現在、大学教員に占めております教授、助教授、助手の割合は、それぞれおおむね教授が約四〇%、助教授が約二五%、そして助手が約二五%、こういう状況でございます。今回の改正におきまして、准教授は教授の次に位置づけられる職といたしまして助教授にかわって置かれるものでございますので、大学教員に占める准教授の割合は、現在の助教授の割合と大きく変わることはないのではないか、このように予想されるところでございます。

また、今回の改正では、現在の助手の職につきまして、既に御案内のとおり、みずから教育研究を行うことを主たる職務として将来の教授等を目指す、そういった方々が最初につく大学教員の職としての助教、それから教育研究の補助を主たる職務とする職としての助手、これを明確に分けて位置づけるということにしているわけでございます。

この点につきましては、全国の国公私立大学あるいは短期大学等の約一割を抽出いたしまして、私ども、調査を既にいたしております。そうしたところ、現在の助手の方々のうち約八割の方が、その職務実態は助教の職務内容と同様と見られるというふうに考えられるところでございます。

そんなことから、大まかに、現在の助手の方々のうちの約八割の者が助教につくという形が推測されるところでございます。

 

○城井委員 

そうしますと、現在の配置数ということでいうと、准教授は助教授とほぼ同じ、助教については助手のうち八割で、新しい助手については古くの助手の同じく二割ということでございます。そうすると、そういうふうな組織自体が変わっていくという意味ではそういう数字の割り振りになると思うんですが、では、その部分を踏まえつつになりますが、職種が新しくなることで新しい雇用が生まれるのか、新規の雇用をどれぐらい見込んでいるのか。

つまり、今まで助教授であったり助手であったりというのをされていた方が、名前が変わるというのは想定の範囲内だと。

それに加えて、今回新しい名前ができることによって生まれる新規の雇用の部分についてはどれぐらいを見込んでおるか、この点を教えてください。

 

○石川政府参考人 

ただいま御紹介いたしましたように、基本的に、新しく准教授という職名が設けられるわけですが、その准教授は、今までの助教授のところにニーズ的には実質上移り変わるというような形になることが考えられます。

そしてまた、新しい形での助教、そして新しい意味合いでの助手という方々については、従来の助手の世界を区分してこれを設けるということでございますので、そういった意味では、今回の職名を変える、あるいは新しい組織編制を法令上規定するということによって、直ちに新しく人材的な需要あるいはニーズがふえるということにはならないであろうかと思いますが、先ほど来御紹介申し上げておりますように、こういう組織編制、柔軟な組織編制がとりやすくするような改正、新しい姿、それぞれが活躍できる、そういう形の改正をするということによりまして、大学自体が活性化をしていく、あるいは活性化をさらに強く求めていくというようなことは大いに考えられるところでございまして、それに伴った需要というようなものも期待できるのではないか、こんなふうなことを考えております。

 

○城井委員 

この点をお伺いしたのは、いわゆるポスドク問題の解決の一助となるのではないかという期待があったのでお伺いしたんですけれども、直ちにそのような効果は見込めないというお答えだったかと思います。その点については理解をいたしました。

続いて、新しい助手についてお伺いしたいと思います。法改正後の助手の扱いですね。

これまでの助手と今回の新しい助手というのは、名前こそ同じですけれども、大分位置づけが変わるのではないかというふうに思っております。

この新しい助手の扱いが、研究者という扱いになるのか、教員の扱いになるのか、そして、いわゆる事務職員や技術職員との具体的な相違点はどこにあるのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

 

○石川政府参考人 

新しい形での助手についての取り扱い、位置づけについてのお尋ねでございます。

例えば本法律案におきましては、助手は、教育研究の補助を主たる職務として明確に位置づけるということとしているところでございます。

このため、例えば研究者ということにつきましては、一般にはみずから研究を行う者を指すというふうに考えられることからすれば、これは教員ということについても同じ考え方が当てはまると思いますけれども、新しい制度における助手というものは研究者ではないということになろうかと思います。

しかしながら、各法令による位置づけあるいは調査の趣旨によって、あるいは事業、いろいろなプロジェクト、そういったものを立てる場合の位置づけ、そういう場面では、それぞれの法令の趣旨あるいは調査の趣旨によって、研究者と同じ扱いをするといったようなことが適当であったり必要な場合も出てこようかと思っております。そういう場合には、研究者に含めるということも大いにあり得るのではないか、このように考えております。

それから、改正後の助手と事務職員、技術職員などとの具体的な相違点についてお触れいただいたところでございますけれども、制度上は、事務職員及び技術職員は、大学または学部全体の観点から必要な事務ですとか、あるいは技術に従事する職として設けられているわけでございます。

これに対しまして、新しい制度の助手は、所属組織の教育研究活動に直接必要な補助的な業務に従事をするというところが異なるものと考えております。

ただ、この言い方ですとやや抽象的でございますので、それぞれの具体的な職務内容について少し敷衍をさせていただきますと、具体的な職務内容そのものについては、各大学において、分野ですとか個々の職員によって実態は多様になってくる。

部分的には、あるいは個々の業務においては多少重なっていくようなこともあり得るのではないかと思います。

一般的な例を挙げて御説明をさせていただくとすれば、例えば事務職員は、大学または学部全体の運営上の必要な人事、会計、庶務等に従事をする、これは比較的わかりやすい世界でございます。

そして、技術職員につきましては、大学または学部全体に共通して必要な技術、技能を要する、例えば実験装置の維持管理ですとかあるいは材料の製作、加工、こういったものに従事をするといったことが通常予測されるわけでございます。

一方、助手につきましては、所属組織の具体的な教育研究活動を補助する、こういった観点から、講義等のための教材作成の補助ですとか、あるいは研究プロジェクトに係る実験の補助あるいは観測といった活動、こういうものに従事をする。

こういった形が一つの典型的な形態かな、このように考えられるところでございます。

 

○城井委員 

そうすると、基本的に新しい助手は研究者というような扱いにはならず、そして教員というような扱いにもならないという中で、いわゆる所属組織に限った補佐の仕事というのが主になるだろうという認識になろうかと思いますが、では、そういう新しい助手がその職についた場合に、将来のキャリアパスというふうな歩みをしていくことが想定されるのかという点についても、あわせてお伺いをしたいと思います。

今、この法律案が前提としている仕組みですと、この新しい助手については、そのほかの助教や准教授とは違って、いわゆる昇進というものが前提にはなっていないのではないかというふうに思うわけですが、例えば、いわゆるポストドクターから助手、助手から助教、助教から准教授というキャリアパスがあり得るのか、あり得るとする場合にはどんな条件がつくのか。

この点、新しい助手の将来のキャリアパスについてお聞かせください。

 

○石川政府参考人 

新しい助手のキャリアパスについてのお尋ねでございます。
従来から、助手の配置状況や職務のあり方につきましては、各大学あるいは各分野によって多様でございます。

特に最近は、教育研究の補助につきましては、ティーチングアシスタント、いわゆるTAでございますが、あるいはリサーチアシスタント、RA等が増加するとともに、競争的資金の間接経費によって大学が雇用し得るというような余地がふえてきたりしております。

こういったことから、教育研究の補助を主たる職務とする者としての助手の配置あるいは職務内容のあり方というのは今後一層多様化していくのではないかな、このように考えております。

また、助手についている方の将来の処遇や職業能力の開発あるいは将来の他の職への転換等を含めたキャリアパスということについて考えてみますと、この点につきましては、各大学や各分野の実情に応じて、それぞれの大学において判断することが基本的には適当であると考えております。

例えば、それぞれの大学の判断によりまして、主任助手など、教育研究を補助することを主たる職務とする職につきまして独自の体系を設けるといったようなやり方、位置づけもございましょうし、それから、情報化、国際化への対応、あるいは入学者選抜等の専門性の高い職務が近時非常に拡大をしておりますので、そういう専門性の高い職務を担う職を事務局内に設けまして、こういった助手の方々との間で人事交流を行うというようなことも大いに考えられることでございます。

それから、先ほど先生ちょっとお触れになりましたけれども、こういったものが大いに考えられるわけでございますけれども、助手の職についている個々人の資質あるいは能力によっては、そういう適性や資質、能力に基づいて、各大学の判断によって准教授ですとか助教等に採用されるといったようなこともこれまた当然にあり得ることか、このように思っております。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

今お答えいただきましたけれども、いわゆる本人の資質、能力に基づいてというところは当然あるんだろうと昇進については思うんですが、逆に、先ほど事例も挙げていただきましたが、職務規定がとてもあいまいで、それぞれにやっている仕事が違う、その上で昇進すなわちキャリアパスが各大学の判断に任されているということになれば、ある意味で専門性も発揮できずに、そして昇進も据え置かれる万年助手というようなものが生まれる可能性もあるという考え方もできると思いますので、ぜひこの点についてはしっかり見ていただければと思います。

この助手についてもそうですけれども、今回の改正がいわゆる研究者の独立を主眼とした改正であるという点を考えたときに、それぞれの研究者の研究を支える手足となる人材というものをどうやって確保するのかという点についても確認をしておかなければならないと思っています。

実際に教授のサポートを、例えば准教授や助教がしないということになると、先ほど来のお話ですと、その役割は主に助手が担うということになるかと思いますけれども、この教授などをサポートする人材をどうするのかという点、とりわけ若手研究者の駆け出しということの位置づけである助教の研究をサポートする人材をどうするのか、この点についてお聞かせください。

 

○石川政府参考人 

今回の改正につきましては、先ほど来御議論をいただいておりますように、例えば新しい准教授、そして助教、そういう若手のあるいは中堅の教育研究職員、こういった方々が積極的にその能力を発揮できるようにという観点から改正を行うものでございます。

そういった意味で、それでは、それぞれの方々のサポートをするスタッフをどう確保していくか。

これは、ある意味では今に始まった議論ではなくて、我が国の大学において、そういった教育研究、特に研究面においてすぐれた研究をしっかりと推進していくためには、やはりそういう研究をしっかりと支えていく人材、特に専門的な素養を持った人材、そういう方々をしっかり配置していくことが大切であるということが従来から言われているわけでございます。

そういった意味では、これは今回の改正を契機にということに限らず、これまでも言われてきていることでございますし、私どももそういう観点を十分に頭に置きまして、大学における教育研究体制のさらなる充実に向けて支援を強めていきたい、このように考えておるところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

さて、そうした点も踏まえつつということになりますけれども、今回の大学の教員組織の整備を行っていただく際に、同時に考えなければならない部分があると考えております。

それが、先ほど来取り上げさせていただいております大学教員だけではなくて、いわゆる教員の予備軍である、大学院の拡充で人数が格段にふえております若手研究者、特にポストドクターに対する研究職としてのポストあるいは財政的な支援のあり方、そして教員などにかかわる人事、採用、配置転換の流動性のあり方、これは先ほど来御指摘をさせていただきましたが、こういった点などがどのくらい同時に整備をされるか、この点がとても大事だというふうに思っております。大学院の拡充でふえている若手研究者、特にポストドクターに対する部分についても、とても大事だと思っております。

実際に大学の現場に目を向けてみますと、私の友人にもたくさんおりますが、博士号を取得したのに定職につけない、余った博士号の人々がふえております。ふえ続けていると言ってもいいかもしれません。

博士号の取得者が毎年大体一万五千人、平成十六年三月段階では一万五千百六十人だそうですが、生まれております。しかし、それに対して、常勤の研究職の空席は、毎年約三千人分、平成十六年では二千五百一人分だったそうです。

それに加えて、日本学術振興会が採用しているこのポストドクターも含めて行っている特別研究員制度では、延べで六千人しか手当てをできていません。

平成十七年度の新規採用分では千八百九十六人しか手当てをできておりませんし、実際にこの特別研究員制度も三年間の限定で、一人一回のみしか適用ができない。

そうすると、この毎年約一万五千人生まれている博士号の取得者の中で、常勤の研究職にありつけない一万二千人が出てくる。

その中で、三年分、つまり三万六千人のポスドクの中から、この日本学術振興会の特別研究員制度、その手の方々の中では学振員と呼ばれているそうですが、学振員に当たったというふうに言われる六千人を差し引いた三万人、つまり、一年で約一万人の人が研究職からあぶれる、そういうポスドクが生まれているという結果になっている状況でございます。

お聞きしますと、文部科学省さんの方でも、この博士号取得者の進路を調べて分析をしていただいているというふうにも聞くわけですけれども、最近十年間で、実際にこの数自体も二倍にふえている、つまり、博士号ばかりがふえていって、その方々が行く進路というものが実際には見えてきていない。

先ほどの約一万五千人のうちの一万人ちょっとは自然科学系の博士という状況だそうですけれども、こういった方々は、実際に大学の教員や公的な機関の研究者という職種を希望するわけですけれども、そういう職種での採用人数は、この十年間でさほどふえていない。しかも、民間の企業の方に伺うと、博士号を持っている人は社会的経験が乏しくて視野も狭いので使いにくいというような理由で、博士号を持っている方の採用を避けるという傾向があるとも聞いております。

このために、実際これまでの博士の就職率は大体五割から多くても六割ぐらいというふうにとどまっておって、しかもこの十年間で一〇ポイントぐらい下がっているということだそうでございます。

となると、本来ならば高度な専門知識を生かして社会のために活躍すべき博士が、全体の四割も職にすらつけないという博士余りの現象が年々深刻になっていると言わざるを得ないと思います。

このことは今に始まった話ではなくて、これまでも、科学技術・学術審議会の人材委員会の第一次、第二次、第三次の提言、それぞれ平成十四年、十五年、十六年というところでも同様の指摘がなされておるところから見ても、今に始まった話ではないというのは明らかだというふうにも思うわけであります。

大臣、将来大学教員にもと目しておるはずの博士号取得者、いわゆるポスドクと呼ばれている方々の部分はとても深刻な状況になっていると思います。

この点について、御見解をぜひ大臣の方からお聞かせいただきたいと思うんです。

 

○有本政府参考人 

私から、大臣御答弁の前に、少し状況あるいは今御指摘の科学技術・学術審議会の提言の状況を御説明いたしたいと思います。

今先生御指摘のありましたように、ポスドクのキャリアパスというところ、一つ重要なところは、当然でございますけれども、今回の改正案で創設を予定しております、先ほど来御議論がございます助教として大学あるいは研究機関において研究者として活躍していただくということが、一つ大きなキャリアパスとしてあるわけでございます。

それ以外に、科学技術・学術審議会の人材委員会、これは民間の小林陽太郎富士ゼロックス会長に主査をお願いしているわけでございますけれども、ここでも、このポスドクのキャリアパスというところに非常に関心を持っていただいておりまして、先ほど申しましたようなアカデミックキャリアパスだけではなく、今後は産業界、マスコミあるいは行政、あるいは科学館とか博物館、こういった非常に多様な場所、それから、研究をやるだけではなくてその活動といたしましても、例えば最近非常にニーズが高まっております知的財産の管理あるいは技術経営、あるいは社会と科学技術との間のコミュニケーション、こういった非常に多様なキャリアパスをつくっていく必要があるだろうという御指摘を御提言いただいておるわけでございます。

私どもとしましては、こういう御提言を踏まえまして、人材養成をする場合に産学官の連携で人材養成をやっていこう、あるいは、先ほど申しましたような社会的なニーズの多様性、あるいは学問が大きく変化をしている、あるいは融合しているということを踏まえての大学、大学院教育の工夫、改善、こういったところを今後しっかり取り組んでいきたいというふうに思っているわけでございます。

具体的ないろいろな施策というのは、少しずつ手を打ってございますけれども、さらに、先ほども申しました人材委員会におきまして、この点非常に関心が高まっておりますので、さらに御審議の上、具体的な施策というものをさらに拡大していきたいというふうに考えておる次第でございます。

以上でございます。

 

○中山国務大臣 

今、局長もお答えいたしましたけれども、これからの科学技術創造立国、それを支えるやはり非常に創造性豊かなすぐれた研究者をいかにたくさん輩出させるかということが一番大事なことだろう、こう思っているわけでございます。

今話がありましたように、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選ばせながら、生活の不安なく研究に専念させる、そしてその能力を十分に発揮させる、そしてまた将来も見据えた研究ができる、そういう体制をつくっていくことは絶対必要だ、こう考えているわけでございまして、さまざまな支援策を講じているところでございますが、今後とも、それについては一段とやはり考えていかなければいけないと考えておるところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

今大臣がおっしゃったさまざまな支援策の中には、恐らくこのポスドクにターゲットを絞ったポストドクター等の一万人支援計画というものなども含まれておると考えておりますけれども、先ほど挙げられたより望ましいキャリアパスについても、こういったところでふえればいいなという希望の部分にすぎないところもありますし、また、これまでの支援についても、例えば、先ほど御紹介を申し上げた日本学術振興会の特別研究員制度についても、数年の期間が終わった後にはやはり就職難に直面しているというような状況もあります。

そういう意味では、この施策も問題の先送りでしかないというふうにも思います。

実際に支援できている人数についても、大体二年から三年の延べ人数で博士課程の方対象で三千二百二十人、そしてポスドクの方で千三百六十四人と、これは平成十六年の特別研究員制度の数字でございますが、延べ人数でもこの程度という状況がありますので、毎年一万人、職のない博士が生まれているという状況からすると、正直言って焼け石に水だという状況もあると思いますので、この事態を抜本的に改めるには、もう少し踏み込んだ取り組みが必要だろうというふうに思います。

実際に、科学技術白書の中でも、我が国の科学技術の研究に対する支援対策は非常にもろくて弱いという点については、毎年白書にも書かれております。

そうすると、やはり取り組みはもっともっと踏み込んでやらなければならないだろうというふうにも私としても思うわけです。

そこで、ではどのような形が現実的かということなんですけれども、実際に現状を見た場合には、そうしたポストドクターの方々を研究支援に参加させていくという選択肢が現実的ではないかというふうに考えています。

これまでの研究支援という面を見ますと、いわゆる研究のプロジェクトごとにお金を落とすか、あるいは、先ほどの日本学術振興会の特別研究員制度のように、いわゆる個人向けのフェローシップの形をとるか、このどちらかというふうに思います。

ただ、現場の研究者の方々に実際の状況というものを聞きますと、プロジェクトごとの研究費だと、どうしてもプロジェクトの長である教授の力が強くなる。そうすると、そこに参加をしているこれまでの助教授の方あるいは助手の方というのは、やはり教授の研究の手足にならざるを得ず、自分の研究にまでは十分取り組むことができない状況だというふうにも聞いています。

そうすると、今回、法改正によってせっかく研究者の独立性を確保しようというふうに考えている文部科学省の意図も、このプロジェクトごとの研究費の助成というところの持っている今の仕組み上の問題を考えたときには、残念ながらこの意図は生かされないという形になるのではないかというふうに思うわけであります。

もう一つ、個人向けのフェローシップの形においても、実際の数字でいいますと、カバーできているのはポスドク全体の人数のわずか一四%にしかすぎないという状況にありますし、ちょっと細かい話になりますが、そればかりか、一個人に対する金額が単年度にかけられる研究の予算としてはちょっと大き過ぎるのではないか。とりわけ理系の場合には大き過ぎるケースがあって、個人の方に上げたフェローシップの金額を、使われ方、何月に幾ら予算が執行されたかというのをぜひ調べてほしいんです。

特に三月に予算消化のためにその個人の方の名義ということで、その研究室に要らない実験器具を買ったり、かなりもったいない使い方をしている例が後を絶たないというのが、特に理系の研究室にいる研究者の方から多く声を聞きます。

そういった点、予算を使い切るために三月に道路を掘り返すということをいきなりわざわざふやしてしまうような、そうした研究支援のお金の使い道、使われ方というのは、やはり文部科学省としてもきちんと調査をしていただきたいというふうに思うわけですけれども、そうしたこれまでのプロジェクトへの支援、あるいはフェローシップといった点についてのお金の使われ方、調査というものはされておりますか。

 

○有本政府参考人 

お答えいたします。

まず、今、先生がおっしゃいましたように、ポスドクの支援と申しますのは非常に現在多様化しております。

学術振興会のフェローシップ、あるいは最近は競争的資金が額あるいはいろいろな制度ともに拡大をいたしておりますので、この実態調査をいたしますのはなかなか困難でございますけれども、今回、十六年度に初めて悉皆調査をいたしまして、全体として一万三千人弱の方々のいろいろな状況、これは社会保険加入率も含めて調査をいたしたわけでございます。

今、先生御指摘のフェローシップに伴う研究資金の具体的な使われ方までは、いまだ調査をいたしてございません。必要ならばさらに調査をいたしたいと思ってございます。

こういう悉皆的な調査をいたしましたのは、特に科学技術基本計画の第三期に向けて、今、総合科学技術会議あるいは私ども文部科学省も含めまして、政府全体で取り組んでいるわけでございますけれども、この中で、若手の人材育成あるいは生活安定的に、しっかり研究に取り組んでいただくという環境整備というところが非常に大事な今後の大きな政策になろうかというところで、まずきちっとしたファクトをしっかりつかんでいこうということで、現在いろいろな分析をやっておるわけでございます。

そういう分析に加えまして、先ほど少し申し上げましたけれども、産業界の方も、先生御指摘のとおり、今までは受け入れ側として自分たちのニーズに合わない人が多いということを言っておられましたけれども、今やこの世界大競争の中で、せっかくのこういうポスドクあるいは博士課程修了者の能力を自分たち産業界でも生かそうということが、非常に関心が現在高まっておりまして、経団連初め産業界と大学との間で連携して、例えば三カ月あるいは半年ぐらいの長期インターンシップをやりまして、それで単位を取っていこうというような、具体的な施策が今広がっている段階でございます。

そういうことを、諸般いろいろございますので、今後さらに一段とこの問題については分析をし、さらに施策を拡充していきたいというふうに思ってございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。
このフェローシップの予算の使われ方については、ぜひお調べをください。

そうしますと、せっかくのフェローシップが、今までのような使われ方をしていてはもったいないということが恐らくおわかりいただけると思います。

その点を踏まえて、一つだけ御提言を申し上げて次の質問に行きたいと思いますが、三月の予算消化のように使われるぐらいだったらという点を踏まえて、先ほど額が大き過ぎるということを申し上げましたが、もう少し研究支援の金額を細かく振り分けてフェローシップの対象の人数をふやして、自立的な研究がポスドクの方でできる人数を物理的にふやすという形のフェローシップの拡充を図っていただく方が、研究者自体の動機づけも高めると思いますし、先ほどそういう産業界からの要請があるということでしたら、より多様な人材、研究のすそ野ということを提供できるのではないかというふうに思いますので、ぜひ御検討いただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

さて、時間も限られてまいりましたので、最後に、高等専門学校の教員組織の整備について何問かお伺いをしたいと思います。

今回の法改正、教員組織の整備によって、今後の高等専門学校の役割に一体どのようなことを期待するのかという点についてお伺いをしたいと思います。

お願いいたします。

 

○中山国務大臣 

高等専門学校というのは、中学卒業後の早い段階から五年一貫の体験重視型の専門教育を行うことによりまして、実践的で創造的な技術者を養成する我が国固有のユニークな学校制度でありまして、これまで多くの優秀な人材を産業界や大学に送り出して、社会から高く評価されていると考えております。

このように、高等専門学校というのは、大学あるいは短期大学と異なる特色を備えた高等教育機関であることに大きな意義があるわけでございまして、今後もその特色を一層明確にしながら、我が国のものづくり基盤技術分野を支える人材育成や地域貢献に一層大きな役割を果たすことを期待しているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

今回、この高専の教員組織の部分については、大学の教員組織とほぼ同様の組織改編を行うという説明でございました。

にもかかわらず、高等専門学校の卒業者への学位授与に関する改正は、今回なされておりません。

同じ準学士であった短期大学士は創設するのに、なぜここで差がつくのか、何か理由があるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。

 

○石川政府参考人 

中央教育審議会の「我が国の高等教育の将来像」の答申におきまして指摘されておりますように、高等専門学校は早期からの体験重視型の専門教育等の特色を大学や短大との対比において一層明確にしつつ、今後とも実践的、創造的技術者等を養成する教育機関として重要な役割を果たすことが期待されている、こういうふうに中教審でも言われております。

こうした観点からいたしますと、高等専門学校につきましては、学位を授与する学校である大学の一種となるのではなく、実践的、創造的な技術者の養成という大学とは異なった本来の個性、特色の明確化を図るということが適切であると考えているところでございます。

そもそも学位は、中世ヨーロッパにおける大学制度の発足以来の沿革を有しておりまして、学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学から、大学教育修了相当の知識、能力の証明として授与されるというものでございます。

他方、高等専門学校につきましては、目的に教育研究という項目、研究が含まれず、教育研究を行う学術機関という位置づけではないこと、そしてまた、例えば教授会を置くことというような形にはなっておりませんで、自律的な運営が制度上定められていないことなど、大学とは異なる学校制度でございます。

したがって、高等専門学校が学位を授与するということは、国際的な通用性の観点から見ても困難と考えられるところでございまして、高等専門学校の卒業生への学位授与に関する改正は今回は行っていないところでございます。

 

○城井委員 

今の御説明ですけれども、今回、高専には学位授与を行わないという考えに立つまでの議論で、特に先ほど来触れております中教審における議論の内容の中で、実際に審議会において学位を授与するかどうかという議論は具体的にあったんでしょうか。

それを踏まえての今の御説明なんでしょうか。もう一回お願いします。

 

○石川政府参考人 

御指摘のような御意見が一部の高等専門学校の関係者から出されたこともあったということは承知をいたしております。

しかしながら、そうした意見につきましては、他の高等専門学校関係者を含めまして慎重に考えるべきといったような議論がございまして、そのようなやりとりを経まして、最終的には審議会として取り上げられなかったもの、このように理解をしているところでございます。

 

○城井委員 

ありがとうございます。

最後に一点、お伺いしたいと思います。

先ほど大臣からもございましたけれども、高等専門学校、私の地元にもございます。

北九州高専という高専なんですけれども、非常に大きな役割を果たしてきた。

私の友人もたくさん通っておりましたしというところも含めてですけれども、非常に私も高く評価をしているところであります。

特に、国際的な技術者教育水準の確保ですとか、あるいは地域の教育拠点としての役割も本当に大きいというふうにも思うわけです。

そうした教育水準の確保ですとか教育拠点としての役割を今後も各地域で果たしていただこうとした場合に、一つだけぜひ確認をさせていただきたいという点があります。

それは、高専における教育内容、教授する内容の維持と向上のためにどのようなことが行っていけるかという点でございます。

今回の法改正をずっと検討させていただく中で、この点どうなんだろうかというところで、ぜひ委員会の場で確認をさせていただきたいと思っておりますのが、高専における教育内容を維持向上させる目的で行う、高専におられる教員の方々、今後だと教授、准教授、助教という方々になると思うんですが、そうした高専の教員の方々の研究活動、あくまで高専の設置目的に即した形で、教育内容を維持向上させる目的で行う研究活動というものは、現行法制と、それから今回の法改正で規定をされる高専教員の業務の範囲内でそうした活動を行うことは可能かどうかという点についてお聞かせいただきたいと思うんですが、お願いいたします。

 

○石川政府参考人 

高等専門学校におきます研究活動についてのお尋ねでございます。

学校教育法に定める高等専門学校につきましては、同法の下位法令で、下位すなわち下の法令であります高等専門学校の設置基準の第二条におきまして、「教育内容を学術の進展に即応させるため、必要な研究が行なわれるように努めるものとする。」こういった規定が置かれているところでございます。

したがいまして、高等専門学校の教員がこのような観点から行う研究活動につきましては、本来の職務である学生を教授するということに資する活動として積極的に取り組むことが求められているわけでございまして、この点につきましては、現行法制におきましても、そしてまた改正後の学校教育法上も変わるものではないもの、このように考えております。

 

○城井委員 

ありがとうございました。終わります。

 

○斉藤委員長 

この際、暫時休憩いたします。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区