東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動の労働者性に関する質問主意書 衆議院議員 きいたかし 福岡10区 (北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

平成三十一年三月二十七日提出

質問第一一五号

東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動の労働者性に関する質問主意書

質問者 城井 崇


平成三十年十一月十六日の衆議院文部科学委員会(以下、「委員会」という。)において、東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティアの活動分野のうち、医療等の専門性の高い分野に関わるボランティア活動を例に挙げて、専門性の高い活動であるために、労働基準法により労働者性があると判断されるため、ボランティアではなく、労働基準法による労働者として報酬を支払わなければならないのではないかと指摘したところである。

そこで、東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティアの活動分野の労働者性に関して、以下質問する。

 

一 委員会において、櫻田義孝東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣(以下、「櫻田大臣」という。)は、「医療スタッフは、会場内の医務室で働くに当たり、勤務している病院を通じての参加となるため、組織委員会から重ねて報酬は支払わないとする方向で検討されていると伺っております。」と答弁している。この答弁にある、「病院を通じて報酬が支払われる医療スタッフ」は、ボランティアなのか、労働者なのか。ボランティアである場合には、どのような理由で病院を通じて報酬が支払われるのか。労働者である場合には、どのような理由で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、「大会組織委員会」という。)からではなく、病院を通じて報酬が支払われるのか。委員会において櫻田大臣は「病院の労働者という理解になりますので、病院から賃金はもらっているのでありまして、そういう意味ではボランティアではない」と答弁しているところでもある。政府の認識を明らかにされたい。

 

二 委員会における櫻田大臣の答弁にある「病院を通じて報酬が支払われる医療スタッフ」による活動や、その他の医療ボランティア活動は、労働基準法における労働者性の判断基準によれば、使用従属性においては、指揮監督下の労働であり、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由が極めて低く、業務遂行上の指揮監督事項が多く、拘束性が高く、代替性が低いため、ボランティアではなく労働者と判断される可能性が極めて高い。仮に労働基準法により、ボランティアではなく労働者と判断される場合には、ボランティア活動は、労働基準法に違反していることになる。そこで、医療等の専門性の高い分野に関わる活動については、労働基準法による労働者として、大会組織委員会は、活動に従事する者に対して報酬を支払うべきであると考える。政府の認識を明らかにされたい。

 

三 委員会において櫻田大臣は、医療、メディア、通訳など、専門性の高いボランティア分野を例に挙げた、「実際にお願いをする仕事をもう一度精査して、有給スタッフで本来やるべきところとボランティアとの整理をきちっとしていただく、労働基準法に照らしての部分で問題ないか確認いただくということを、ぜひ大臣にお願いしたいと思いますが、この作業をお願いできますか。」との問いに対して、「きちんとそうさせていただきます。」と答弁している。政府は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動の労働者性について、どのような整理、確認をし、どのような作業を行ったのか、明らかにされたい。

 

右質問する。


平成三十一年四月五日受領

答弁第一一五号

 

内閣衆質一九八第一一五号

平成三十一年四月五日

内閣総理大臣 安倍晋三

衆議院議長 大島理森 殿

 

衆議院議員城井崇君提出東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動の労働者性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 

衆議院議員城井崇君提出東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動の労働者性に関する質問に対する答弁書

 

一及び二について

櫻田東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣は、御指摘の委員会において、御指摘の「病院を通じて報酬が支払われる医療スタッフ」とは答弁しておらず、お尋ねにお答えすることは困難であるが、御指摘の同大臣の答弁のうち、「病院の労働者という理解になりますので、病院から賃金はもらっているのでありまして、そういう意味ではボランティアではないと思います。」との答弁は、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「大会」という。)の医療スタッフの募集方法の一つとして、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)が、その依頼に応じた医療機関において当該機関が雇用する労働者である職員に大会に参加してもらうことを検討している旨を承知していたことから、その認識を述べたものである。

いずれにせよ、大会の医療スタッフの募集方法や活動内容等については、現在、労働関係法令に留意しつつ、調整が進められているものと承知している。

 

三について

御指摘の「東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるボランティア活動」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、政府としては、現時点においては、組織委員会が、「東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会 大会ボランティア募集要項」に基づき募集した「大会ボランティア」について、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者に該当するか否かについて検討し、同法等の労働関係法令に照らして適切に活用する方針である旨、組織委員会から確認している。

 

衆議院議員 きいたかし 福岡10区