原子力損害の賠償に関する法律の改正について 衆議院議員 きいたかし 福岡10区 (北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)
2018年11月21日 衆議院文部科学委員会
○亀岡委員長
次に、城井崇君。
○城井委員
国民民主党の城井崇です。
本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
今回は、議題となりました原子力損害賠償法の改正案が抱えております、本来は事前にやっておくべき見直しの議論、この見直し議論の必要な課題の解決に向けて、その解決を先取りする我が党提案と照らしながら、大臣と国民民主党修正案の提案者に質問をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。
まず、国民民主党の修正案について、提案者に修正案の趣旨を幾つかお伺いいたしたいと思います。
まず、この修正案にも記載のあります目的規定についてであります。
東日本大震災そして福島第一原発の事故等も踏まえてという状況でございます、原子力エネルギーへの依存を下げていく観点も含めてでありますけれども、「原子力事業の健全な発達」という文言が今回の改正案も含めてもいまだに法律には残る形になっておりますけれども、ここを、私どもの提案といたしましては「原子力事業の健全性の確保」という形に改めるべきだということで、具体的な提案を準備し、修正案として提案をさせていただいたところであります。
提案者にお伺いします。
この改めた趣旨についてお答えをください。
○牧委員
そもそも「発達」という文言がこの法律の目的になじまないんじゃないかなというふうにまず考えました。
「原子力事業の健全な発達」という文言は、この原賠法の制定時における、原子力発電事業を保護、育成、推進していきたいという政策が反映されたものだと思うんですけれども、そもそもこの法律の目的というのは、そうじゃないと思います。
原子力事業を推進する、あるいはしない、さまざまな御意見があることは承知をしておりますけれども、そもそもこの法律の目的というのは、被害を受けた方の救済、保護というのが目的ですから、そのことについて、この「発達」という文言はあくまでも必要ないんじゃないか、健全性を確保すればこれは事足りるというふうに思ってございます。
したがって、修正案では、「原子力事業の健全な発達」というのを「原子力事業の健全性の確保」と改めることにいたしました。
○城井委員
被害者の救済、保護という観点を置きながらという答弁であったかというふうに思います。
続いてお伺いをいたします。この国民民主党の修正案の中で、新たに国の責務を規定する部分を設けております。
この国の責務規定を設けた趣旨について御説明いただけますでしょうか。
○牧委員
ありがとうございます。
そもそも、原子力災害については原子力発電事業者の責任というのが第一義であることには間違いない、変わらざるところだと思うんですけれども、しかしながら、この原子力政策というのはそもそも国が国策として進めてきたことでございますから、ここで国には原子力政策の推進に伴う社会的な責任があるということを明確化させておくことが必要であろうと思ってございます。
国の責務規定を以上のような理由から設けた次第であります。
○城井委員
国には原子力政策の推進に伴う社会的な責任がある、この点を明確化するためという趣旨ということで確認をさせていただきました。
後ほど大臣にも国の責務についてお伺いしたいというふうに思います。
提案者、ありがとうございました。
それでは、ここからは大臣にお伺いしてまいりたいというふうに思います。
まず、国の責任のあり方についてお伺いいたしたいと思います。
今ほど提案者からもお話をいただきました国の責任のあり方についてであります。
原子力政策は、大臣御承知のように、国策で進められてまいりました。
その中心たる国がこれまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っているというものは言うまでもないことだというふうに考えております。
このことを踏まえまして、原子力損害賠償におきましても、政府は国の責任を明確化することの必要性について検討をし、必要な法制上の措置を講じるべきだというふうに考えますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○柴山国務大臣
委員御指摘の国の責任に関しましては、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会の報告書において、「原子力事業者が万全の被害者の救済や迅速かつ適切な賠償を最後まで行うよう、国は、引き続き責任を持って原子力損害賠償制度を適切に運用していくことが重要である。」とされております。
一方、同専門部会におきましては、国の責任を明確化する観点からの必要な法制上の措置について、法改正を行うことが妥当との結論には至っていないものと承知をしております。
なお、現行原賠法第十六条及び第十七条において既に必要な国の措置が定められておりまして、文部科学省としては、引き続き、原子力損害賠償制度を通じた被害者の保護にしっかりと力を注いでいきたいと考えております。
○城井委員
大臣、一点だけ、基本的な確認をさせてください。
これまでの原子力政策は国策で進められてきたという認識は共有できるでしょうか。
○柴山国務大臣
国の産業育成、発展のために国としてもバックアップをしてきたということは事実でございます。
○城井委員
国策で進めてきたというのとバックアップしてきたというのは少々違うと思うんですが、原子力政策そのものは国策で進めてきたという認識でよろしいでしょうか。
○柴山国務大臣
国の原子力基本計画に基づいて進めさせてきていただきました。
○城井委員
原子力基本計画に基づいてという答弁でございましたが、この原子力基本計画の作成とその実行は国策でしょうか。
○柴山国務大臣
そう考えていただいて結構です。
○城井委員
確認をさせていただきました。
続きまして、「異常に巨大な天災地変」という文言が法律にはございます。
この定義、解釈についてお伺いをいたします。 政府は、原子力の損害賠償に関する法律、原賠法第三条第一項ただし書きに規定する原子力事業者が免責される場合について、「異常に巨大な天災地変」が広く解釈されないよう、この文言の削除を含め抜本的な見直しを行うべき、こうした意見がございます。
大臣、この「異常に巨大な天災地変」につきまして、政府としての現在の定義、解釈を確認したいと思います。
これまでも国会答弁がありますけれども、今回の審議に当たって、いま一度、基本部分でありますので、確認をさせてください。
○柴山国務大臣
原賠法第三条第一項ただし書きにおいて、「損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、」当該損害を与えた原子力事業者は免責されるとしておりますが、この免責事由は、立法過程において、ほとんど発生しないような超不可抗力、人類の予想していないような大きなもの、全く想像を絶するような事態であると説明されております。
○城井委員
もう少し具体的に確認を申し上げたいと思いますが、これまでの国会答弁で、関東大震災の三倍を超えるものというのを想定していたというふうに承知をいたしておりますが、この具体的な部分について、大臣、いま一度お答えいただけますか。
○柴山国務大臣
大変失礼いたしました。
今御指摘があった関東大震災の三倍を超えるものという免責事由に関する過去の答弁は、かなり以前の、昭和三十五年当時の答弁であるかと思いますが、何を基準に比較したのか明確ではなく、一つの説明の例にすぎないと承知をしております。
先ほど説明させていただいたとおり、免責事由については、ほとんど発生しないような超不可抗力、人類の予想していないような大きなもの、全く想像を絶するような事態であると立法過程の段階から一貫して明確に解釈をされており、それに基づいて、東日本大震災についてもこの免責事由の適用がないというように判断されたところでございます。
○城井委員
今ほどの関東大震災のというのは、国会での正式答弁でありまして、単なるそこら辺で聞いた説明ではないということは付言をいたしたいというふうに思います。
大臣、今の、かなり古い国会答弁であるというのは私自身も認識をしておるわけでありますが、では、この定義と解釈について、今ほどの説明ですと、具体的なそうした基準の部分には触れずにという形になりましたけれども、過去の答弁から今ほどの表現された部分について変わっていると思いますけれども、この見直し、どのように行ったのか。
今の答弁に固まった経緯をお話しいただけますか。
○柴山国務大臣
大変お待たせして失礼をいたしました。
今御指摘の、免責の範囲を変更すべきかという点についてでございます。 原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会の報告書においては、被害者の保護という法目的に照らして、免責事由は、いわゆる我々が法学上利用している不可抗力という概念よりも更に狭い、非常に希有な場合に限定されていること、そして、国際条約において、我が国が批准する原子力損害の補完的な補償に関する条約、いわゆるCSCでは異常に巨大な天変地変は免責が認められていること、この二つを踏まえて、現行の規定を維持することが妥当であるというように結論づけられておりまして、文部科学省でも同様に考えております。
○城井委員
今ほど大臣から御説明いただいた説明に照らしても、そして過去の国会答弁での基準に照らしても、現状は見合わない形になっているのではないかというふうに感じております。 このたびの改正案に対しまして我が党から修正案を出させていただいた中で、異常に巨大な天災地変を、過去に経験したことのない異常に巨大な天災地変と改めるべきだという提案をさせていただきました。
今ほどの答弁に照らしても、そして、過去の国会答弁で、関東大震災の三倍を超えるものを想定していたという答弁に照らしましても、大変悲しい出来事でございました東日本大震災の発生によって、既にそうした想定は超えている事態が起こっているというふうに認識をしております。事実、実態に見合わない状況が続いております。
大臣、我が党提案の形、過去に経験したことのないという文言を加えての法案修正をすべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○柴山国務大臣
今、現行法の「損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるとき」の意味は、立法過程の段階から、ほとんど発生しないような超不可抗力、人類の予想していないような大きなもの、全く想像を絶するような事態であると説明をされており、そういう意味では、十分明確なものとなっていると考えます。 また、東北地方太平洋沖地震においては、過去に発生した地震と比較した結果、人類の予想していないような大きなもの、全く想像を絶するような事態には該当しないと解されたため、免責規定は適用されないとされたものでございまして、これにより、免責規定の解釈が、あのようなマグニチュード九クラスのものであっても免責されないんだという意味では、更に明確になっていると考えられます。
これらのことから、文部科学省としては、免責事由の文言を修正するほどの立法事実はないものと考えております。
○城井委員
一点だけ確認をさせてください。
では、大臣、東日本大震災は、その災害の規模などを含めて、政府の想定の範囲内であったという認識に大臣はおられるということでよろしいでしょうか。
○柴山国務大臣
先ほどマグニチュード九クラスということを申し上げましたけれども、過去において、世界の巨大地震、例えばあのチリ地震、一九六〇年では、マグニチュード九・五クラスのものもございました。
ということで、過去の巨大地震に比べればそういった超不可抗力といったものには当たらないということで、我々がこの法律の適用対象としているということは、繰り返しになりますが、言えるかというように思います。
○城井委員
では、東日本大震災は政府の想定の範囲内だったということでよろしいでしょうか。
○柴山国務大臣
少なくとも、全く想像を絶するような事態ではなかったということは言えると思います。
○城井委員
大臣、被害の大きさのはかり方はさまざまな尺度がございますが、先ほど過去の国会答弁でも御指摘を申し上げた、関東大震災の三倍を超えるものを既に超える、マグニチュードのクラスでは超える事態が東日本大震災では起こったという意味では、我が国にとって過去に例がない極めて異常な、そして巨大な天災地変であったという受けとめは、多くの日本国民の共有するところだというふうに思っております。
そういう意味で、実態にかなり合わないということは確認させていただきたいというふうに思います。 次に参ります。
原子力事業にかかわる関係者の責任のあり方について質問いたします。
原子力損害賠償に当たり、広く国民負担を求めることとなる場合には、原子力事故を起こした原子力事業者の法的整理等により、当該原子力事業者の株主、金融機関等の利害関係者に公平な負担を求めることを含めて、責任のあり方について検討し、必要な措置を講ずる、検討すべきと、我が党からの提案の中で、こうした趣旨を申し上げております。
この責任のあり方について、大臣、お答えいただけますか。
○柴山国務大臣
今の責任のあり方についてでありますけれども、さまざまな可能性は指摘をされてきたところでありますけれども、少なくとも、事故事業者が破産等によって法的に整理された場合には、既に実施されている被害者への賠償、事故収束、廃炉の着実な実施、電力の安定供給などに支障が生じて国民生活及び国民経済に重大な支障を生じさせるおそれがあるため、原賠・廃炉機構法による資金援助によって事故事業者の破産等を回避し、将来の収益をもって賠償、廃炉の責任を果たさせることが結果として国民負担の最小化に資すると考えたところでございます。
その上で、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会の報告書においては、法的整理によって、株主、金融機関等の利害関係者に公平な負担を求めるべきであるとの指摘があることを指摘した上で、「法律上は、原子力事故を契機として会社更生手続等の法的整理を原子力事業者自身が選択する可能性を否定できない。」として、「国は、見直し後の原賠制度において対応可能な事項、対応困難な事項等を整理し、万が一の事態に備えておくことが重要である。」というふうにされております。
これを踏まえて、文部科学省としては、法的整理や利害関係者の負担に関する考え方について、必要な対応について検討してまいります。
ですので、そういった、今申し上げたようなことは、しっかりと考慮、オプションに加えた上で検討を進めさせていただいているということでございます。
○城井委員
オプションに加えてということで、確認をさせていただきました。 続きまして、損害賠償措置のあり方についてお伺いいたしたいというふうに思います。
賠償措置額の件であります。 本日も、公明党の委員さんから、この引上げについての言及もございました。
これは各党の関心の高いところかというふうに思っております。 この損害賠償措置のあり方については、東京電力福島原発事故による甚大な被害を踏まえまして、被害者への迅速かつ公正な賠償の実施、被害者への賠償に係る国民負担の最小化、原子力事業者の予見可能性の確保といった観点から、現行の一千二百億円以内の賠償措置額の引上げを含めて、抜本的に見直すべきだという意見があります。 私どもも、事業者等からの聞き取りや過去の賠償金額の引上げの経緯なども踏まえまして、我が党からも、今回の修正案の提案の中で、現行の賠償金額からの上限引上げに言及をいたしております。
引上げの際に、民間保険会社が増額分の保険を引き受ける準備が整うまでは、引き続き一千二百億円を措置すれば足りる旨の政令を定めることが可能としております。
閣法の附則第八条を踏まえての提案であります。
さらに、我が党提案では、検討条項の追加として、政府は、この法律の施行後五年以内に、国内外の保険市場の動向、原子力事業者の事業環境の変化、原子力発電所等での事故発生の危険性に対する評価等を踏まえ、第七条第一項の賠償措置額の引上げについて検討を加え、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると提案をいたしております。
この狙いは、中長期的な見通しを踏まえて、今は変えられませんではなくて、ぎりぎりまで、引上げできるか、どこまでできるか、この努力を促したい、こうした狙いが私どもとしては強くございます。
先ほど申しましたように、ここは各党会派をまたぐ形で引上げについてどこまで努力ができるだろうか、現実は踏まえたい、でも引上げには至りたい、この部分をぎりぎりまで努力したい、こうした趣旨でございます。
大臣、この損害賠償措置のあり方について、このように賠償金額の引上げを含めて今後抜本的に見直すことについて、大臣、国のお考えはいかがでしょうか。
○柴山国務大臣
これまで、原賠法第七条に規定 する損害賠償措置につきましては、賠償措置額の国際水準及び原子力損害賠償責任保険に関する国内外の保険市場の引受能力を踏まえて、平成二十一年改正による一千二百億円に至るまで、それまで数次の引上げを御案内のとおり実施をしてきました。
しかし、今般の法改正に関しては、現時点における賠償措置額の国際水準及び保険市場の動向を踏まえ、責任保険の引受限度額を引き上げ得る状況にはないと判断をさせていただきました。
賠償措置額については、迅速かつ公正な被害者への賠償の実施、被害者への賠償に係る国民負担の最小化、原子力事業者の予見可能性の確保といった観点も踏まえつつ、文部科学省を中心に必要な検討を行いますけれども、民間保険市場の引受能力が整う見通しも現時点では不透明であることを踏まえれば、今御提案のあった、政令で経過措置的な規定を置くことも必ずしも適切ではないのかなというように考えております。
なお、先ほど事業者への聞き取りということについて言及をしてくださいました。民間責任保険の支払い限度額の引上げ余地については、平成二十八年十月から累次にわたって日本原子力保険プールを始めとする関係事業者との交渉を行ってまいりましたけれども、引上げ余地があるとの回答は得られなかったところでありまして、今般改めて関係事業者に確認をとったところ、やはり現時点で支払い限度額の引上げが可能であるとの認識は持っていないというように私どもは回答をいただいております。
○城井委員
大臣、この点、ぎりぎりまで努力をいただきたいということを改めてお願いしたいというふうに思っております。
一千二百億円ということで金額がとどまりますと、実際に、東日本大震災そして福島の原発事故の折の賠償の、現在見えている実際の総額のところでいいますと、最新の数字で十兆円を超えるという形になっております。
一千二百億円ですと、一割前後という形であります。
残りの部分は国が仕組みを整えて責任を持ってということを政府の説明ではおっしゃるわけですが、実際には電力会社の相互扶助で賄うというのが実際の仕組みになっているというふうに思います。
この相互扶助ですと、結果として、電力会社が負担をするとなりますと、電気料金にはね返ってくるという意味では、回り回って国民の負担になるという形であります。
先ほど大臣も国民負担の部分については言及いただきましたけれども、国民負担は最小化していくべきという観点に立ちますと、電気料金にはね返っていくというところをやはり慎重に考えるべきではないかというところ、この点を考えるべきだというふうに思いますけれども、大臣、最終的に電気料金にはね返っていくという現状認識を含めて、お考えはいかがですか。
○柴山国務大臣
今回の原子力・廃炉支援機構のスキームにせよ、それから今御指摘になった電力料金の負担にせよ、御指摘のとおり国民負担ということにはつながってくるのかなというふうに思います。
ですので、事業者が負担したから国民負担が減るというふうにストレートにはつながらないのではないかなというふうに思います。
○城井委員
この国民負担という部分はぜひ認識、意識をしながら、この行政執行、進めていただきたいというふうにお願いしたいというふうに思います。
さて、続いて、原子力損害賠償制度における国の措置のあり方についてお聞きをいたします。 原子力損害賠償請求に係る訴訟については、被害者の迅速な救済を図る観点から、アメリカ合衆国におけるクラスアクションのような団体訴訟制度の導入について政府は検討すべきとの意見があります。
これは、当委員会の参考人質疑でも確認をさせていただいたところであります。 我が党におきましても、原子力損害賠償制度における国の措置のあり方等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると提案をいたしました。
このクラスアクションのような仕組みを念頭に置いた提案であります。
こうした原子力損害賠償制度における国の措置のあり方の改革の方向性についての大臣のお考えをお聞かせください。
○柴山国務大臣
実は、原子力損害賠償請求に係る訴訟に関して、被害者救済の観点からクラスアクションを導入するべきではないかという点については、原子力損害賠償制度専門部会において検討が行われました。
ただ、その結果、専門部会の報告書においては、クラスアクションの導入は、我が国の司法制度全般のあり方とも密接に関係する事項であり、また、御案内のとおり既に導入されております他の団体訴訟の施行状況等を踏まえて、将来的な検討課題とすることが妥当というふうにされたところでありまして、文部科学省としても同様に考えております。
○城井委員
この原子力損害賠償以外の部分で、専門部会での検討時にぶつかった部分があったということですが、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
○柴山国務大臣
具体的には、専門部会の報告書の中に以下のような記述がございます。
「原子力損害賠償請求に係る訴訟に関して、例えば、アメリカのクラス・アクションに対応する仕組みの導入についての指摘があるが、我が国の司法制度全般の在り方とも密接に関係する事項であり、また、他の団体訴訟制度の施行状況等を踏まえ、将来的な検討課題とすることが妥当である。」こういう記述でございます。
○城井委員
その将来的な検討は、どちらで行っていただけますでしょうか。
○柴山国務大臣
原賠制度の所管は文部科学省でございますので、当省においてまた検討させていただければと思っております。
○城井委員
では、検討をしっかりとよろしくお願いいたします。
続きまして、ADRの改善の方向性についてお伺いいたしたいと思います。
この原子力賠償におけるADR、二万件の取扱いが全部裁判になっていたらという心配の声もあり、そういう意味では相当に大きな役割を果たしてきたということを関係者からも伺ってまいりました。
しかし、その一方、このADRが進まないことに苦しんでいる当事者が東日本大震災の被災者にいるということも同時に伺っております。改善の必要性があるのではないか、何か方法はないのかという思いであります。
政府は、原子力損害賠償紛争審査会のもとに置かれた原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解案について、東京電力はその内容が著しく不合理でない限りこれを受諾しなければならないこととする等の、東電福島原発事故に係る損害賠償における和解仲介手続の実効性を確保する法制上の措置を講ずるべきとの意見があります。
我が党におきましても、原子力事業者は、原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解案について、その内容が著しく不合理でない限り、これを受諾しなければならないこと等とする提案を出しました。
片面的受諾の規定として、金商法を参考に条文案とスキームを書き起こしたものであります。
こうしたADRの改善の方向性について、大臣、どのようにお考えでしょうか。
○柴山国務大臣
ADRセンターの和解仲裁案に、今御紹介をいただいた片面的受諾義務を導入することは、原子力損害賠償制度専門部会においても検討がなされました。
しかし、拘束力のある手続を利用することを望まない紛争当事者が和解仲介手続の利用をちゅうちょし、紛争解決の迅速性及び簡易性が損なわれて、かえって被害者の早期救済の妨げとなるのではないかという懸念があること、原子力事業者が半強制的に応諾せざるを得ない状況となり、それにより原子力事業者の裁判を受ける権利が制限されることになるのではないかなどの委員の意見が表明された結果、現行の規定を維持することが妥当であるとされております。
ただ、今回の改正案におきまして、原子力事業者は、損害賠償実施指針において、原子力損害の賠償に関する紛争の解決を図るための方策を定めなければならないこととしておりまして、この中で、ADRセンターによる和解仲介への対応の方針についても記載をしていただくということで、和解仲介手続の実効性の確保を私どもとしては図ってまいりたいと考えております。
○城井委員
今、大臣から最後の方でおっしゃっていただいた実効性の確保の部分でありますが、ADRの改善の方向性の提案をしておりますのは、実際に当事者同士がぶつかった、あるいは、手続の受入れの検討が長引いて、結果として受け入れなかったというような形で、ぶつかっている紛争そのものが長期化してしまうことで、立場の弱い被災者にそのしわ寄せが行ってしまっている、こういう現状があるので、ここを改善できないかというのがこの提案の中身の肝心のところなんです。
今の実効性の確保、書き込んでいただくというお話がございましたけれども、長期化させないための仕組みがそこに盛り込まれなければ改善には至りません。
紛争解決までの長期化を防ぐ手だてがそこに書き込まれるかどうかという点、大臣、確認をいたしたいと思いますが、この点をお答えいただけますか。
○柴山国務大臣
貴重な御指摘でございますので、そういったことがうまく読み取れるような規定ぶりについて、省令でしっかりと検討させていただきたいというふうに思います。
○城井委員
省令検討ということで、しっかりお願いしたいというふうに思います。
続きまして、提案者にも確認をさせていただきました原子力損害賠償法の目的規定について、一点お伺いをいたします。
政府は、原賠法の目的規定のうち、原子力事業者の健全な発達に資することについては、今後、被害者の保護や、つまり、賠償をやり遂げる観点、そして原子力事業の健全性を確保する観点、こうしたことが重要だという考え方から、私どもからは、原子力事業の健全性の確保に改めるべきではないか、このような提案をいたしております。
大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○柴山国務大臣
原賠法は、「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資すること」が目的とされておりまして、この原賠制度の目的について、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会において議論、検討が行われました。
その結果、報告書においては、「原子力事業者が適切な賠償を行い、被害者の保護を確実に行うためには、原子力事業者の予見可能性の確保と事業の円滑な運営にも留意する必要があり、これらをもって、国民生活の安定と国民経済の健全な発展に寄与する」として、目的規定を変更するべきとの結論には至らなかったと承知をしております。
さらに、原子力事業の健全な発達の視点については、発電事業者やメーカーなどのみならず、東電福島原発事故の事故収束や廃炉などを進めていく上でも重要であると認識をしております。
このため、私ども文部科学省としても、原賠法一条の目的規定については、現状を維持することが妥当であると考えております。
この「健全な発達」には、健全性の確保ということも読み取れるのではないかと考えております。
○城井委員
時間が限られておりますので、最後の質問になろうかというふうに思います。
最後に、原子力事業にかかわる人材の育成の確保について、この機会に大臣と議論をさせていただきたいと思います。
原子力事業にかかわる人材は、養成や採用、そして現存の人材を含めて減少の一途をたどっております。
これは東日本大震災の前から、この減少傾向は変わっておりません。
時間がなくなってまいりましたので、本来でしたら、この二十年での変化を大臣からお答えいただきたいと思っておりましたが、かなり減っているというところを大臣も確認いただいているというふうに思いますので、最後の質問で聞きたいのは、原子力発電所等の安全性の確保、そして廃炉等の技術革新の必要性を考えますと、国による研究開発を始めとする原子力にかかわる人材の育成と確保は不可欠であると考えます。
中長期的な人材育成、確保について、具体的な政府の見解を大臣から最後に伺いたいと思います。
○柴山国務大臣
極めて重要な御指摘だと思います。
具体策として、文部科学省では、大学や高等専門学校等において、福島第一原発の廃炉に資する基礎的、基盤的研究や、学生などを対象とした講義、研修等の実施、原子力関連教育のカリキュラムや講座の高度化、国際化などを通じ、原子力分野の人材の育成を支援する取組を進めてまいります。 以上でございます。
○城井委員
終わります。
ありがとうございました。
衆議院議員 きいたかし 福岡10区