ニュージーランド地震への対応、新技術を持つ中小企業支援、政府調達改革、特に一者応札の改善について
第177回国会 衆議院予算委員会会議録第16号(平成23年02月23日)より抜粋(前文略)
○中井委員長 これより会議を開きます。
平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
本日は、菅内閣の政治姿勢についての集中審議を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。
○城井委員 おはようございます。民主党の城井崇でございます。
本日は、諸先輩方がおられる中で質問の機会をいただき、本当にありがとうございます。
早速質問を始めていきたいと思いますが、まずは、この情勢であります。正式な通告はしておりませんけれども、一刻を争います。昨日のニュージーランド地震への対応、刻一刻と状況は変わってきておりますので、この点について、まず総理にお伺いしたいというふうに思います。
既に対策本部を設置し、邦人救出を含めた対応をいただいているというふうに聞いておりますが、現状認識と対応についてお聞かせください。
○菅内閣総理大臣 まず、ニュージーランドのこの被害に遭われた方にお見舞いを申し上げたいと思います。
今、十五分ほど前、八時四十分から第二回のニュージーランド地震対策関係閣僚会議を開きました。その中で、まず、昨日、ニュージーランドから正式な国際緊急援助隊の支援要請を受け、先遣隊三名、既に現地に、この時間、到着をいたしております。
そして、警察、消防、海上保安庁等、この緊急援助隊のメンバーを現在成田に結集をお願いし、政府専用機で、きょうの午後二時ごろには、約七十名の体制で、現地のクライストチャーチそのものの空港にあす未明、零時四十分ごろ到着の予定になっております。
いずれにいたしましても、邦人の人たちもかなりおられる町でありまして、もちろん緊急援助隊、邦人に限らず、被災を受けた方をまずは救出していく、そのために全力を図っていただきたい、このように思っているところであります。
いずれにいたしましても、全力を挙げ、省庁連携して取り組んでいて、迅速な形でこの緊急援助隊の派遣が進んでいる、このことを御報告申し上げたいと思います。
○城井委員 今回の件に限らず、この二十四時間の対応が大変重要だと思っています。迅速かつ的確な対応を引き続きよろしくお願いいたします。
続きまして、国際競争力の向上につながる新技術を持っている中小企業の支援について、総理並びに経済産業大臣にお伺いをしてまいります。
中小企業への支援が我が国の発展にとって大変重要だというのは、皆の意見の一致をするところであります。来年度予算案には、中小企業減税の実施も盛り込まれております。また、これまでも、中小企業金融円滑化法の適用によりまして、苦しい中ではありますが、光を見出した企業も多くございます。税金を納めることができていない赤字の中小企業からは、そういう中小企業こそ支えてほしいという声も大変切実であります。
中小企業支援を多く盛り込みましたこのたびの来年度予算の成立を、中小企業の皆さんは待っております。我々は、手だてを尽くして、我が国の礎たる中小企業の皆さんを、与党も野党もなく、しっかり支えていかねばならないということをまず申し上げたいというふうに思います。
そのようなさまざまな取り組みがある中、新技術があるけれども資金が苦しい、あるいは赤字だ、そうした中小企業への支援が足りないのではないか、そのように現場を歩いて感じております。
資料とパネルをごらんください。
まず、上の、会社名を伏せておりますが、企業Aをごらんください。
塗装会社の例でありますが、傷がついても自己修復をする、そしてさびないという最新の塗装技術を産学協同で開発した企業がございます。この企業Aでありますが、平成二十二年度の経済産業省の事業であります戦略的基盤技術高度化支援事業、これに申し込んだんですが、新し過ぎたがために、既存の一般的な技術分野とは異なるということで支援分野の対象外となりまして、不認可ということになりました。その後、そのほかの仕組みで支えられることになったわけでありますが、肝心のそういう新しい技術のところに手が届かなかったというのが実態でありました。
そして、資料の下、パネルの下の企業Bをごらんください。
この会社は、介護ロボットやあるいは見守りのロボットなどを開発いたしております。今月十八日には参議院の予算委員会も視察に訪れたということであります。最近では、海洋調査、資源探査、警察、軍事などにも応用可能な、このイラストにあるような海中生物型のロボットを産学協同で開発中だとも聞いております。経済産業省や産業革新機構にも支援を求めているということでありますけれども、経営上の重荷があるなどの理由で折り合わなくて、企業Bは支援の申し出がある外国への移転を検討せざるを得ないような状況にあるというふうに聞いております。
お手元の資料五、昨日の朝日新聞の記事にありますように、そのほかにも、例えば中小企業の海外進出支援も急ぐべき課題であります。
本来、ベンチャー的な投資や融資を担う既存の機関は、現在のところ、いわゆるもうかるところへの投資や融資を優先し過ぎて、国益を守るという観点が薄くなってしまっているのではないかというふうに感じています。支援対象が国内の従来型の産業に限られて、新し過ぎるものがはじかれて、こういった新しい技術の種を持った企業をとらえ切れていないんじゃないか。世界にまれな技術の芽をしっかりと育てるとともに、軍事転用が可能な最先端技術の海外流出を食いとめて、我が国の発展や安全保障に資する取り組みがもっと必要だというふうに思っています。
そこで、お伺いします。
こういった新技術を持つ中小企業支援の充実について、海外進出支援も含めて、経済産業大臣の見解をお伺いいたします。
○海江田国務大臣 城井委員にお答えをいたします。
質問が若干多岐にわたっておりましたけれども、一つは、先ほど御指摘いただきました戦略的基盤技術高度化支援事業ということで、二十二年度で百億円積んでおりましたものを今回百五十億円にいたしました。
しかし、先生御指摘のような、実際の申請に行くと、なかなかそれが、融資が、この制度の後押しが受けられないということがありますので、これは現場によくしっかりと、そういう例があるということを伝えておきます。
このほかに、地域イノベーション創出研究開発事業というのもございますから、これは地域でそうした新しい技術開発が地域の経済の活性化に役立つ事業について後押しをするものですから、こういうものも御利用を検討いただきたい。
それからあと、これとはまた角度が別でございますけれども、日本公庫による低利融資制度、それから産業革新機構による出資の対象、それから、まさに今度の国会で提出をいたしますいわゆる産活法ですね、産業活動再生法という法律、この改正案でも、ベンチャー企業等が研究開発した新商品を大規模に生産する際の設備投資に対して債務保証制度を措置する、こういう制度がございます。
多角的にいろいろな制度がございますから、どれを使えばおっしゃるような企業がまさに政府の後押しが受けられるかということについては、ぜひ地元の商工会議所などに御相談をいただきたいというふうに思っております。
それから、今もう一つ御指摘のありました、やはりそうした先端技術は、結局、日本の国内で販路も見出せない、あるいはその前の製造の段階で壁に行き当たるというようなとき、どうしても海外に流れていってしまうのではないだろうか。ただ、これは安全保障上、大変大きな問題がございますから、私ども経産省では、これは外為法によって規制をされるわけでございますけれども、外為法に基づきまして、国際的な枠組みにおける規制リストがございます。
私も、せんだってこの現場を見てまいりましたけれども、それこそ本当にきめ細かく、規制リストに漏れがないかどうかということを厳しくチェックしているところでございますから、そういう意味では、この外為法による規制リストを厳しく実施することによって、海外にそういう軍事技術などに転用可能な汎用技術が流出しないようにというふうなチェックをしております。
そして、繰り返しになりますが、日本の国内でしっかり産業化できるような後押しを頑張っていきたい、そのように思っております。
○城井委員 ありがとうございます。
運用面で肝心の中小企業にしっかり手が届くように、今後さらなる取り組みをお願いしたいというふうに思います。
総理、今さまざまな形で経済産業省でも取り組みがありますが、こういった趣旨の話は省庁間の横の連携が足りないという現場の声があります。例えば、科学技術の観点から申しますと文部科学省、あるいは防衛産業の基盤の維持あるいは装備品の開発等というところで申しますと防衛省など、ある意味で我が国が総がかりで取り組みを進めていくべきというふうに思います。
この点、ぜひ、さらに取り組めということを総理から御指示をいただきたいというふうに思いますけれども、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
○菅内閣総理大臣 中小企業については、私も昨年、大田区の物づくり中小企業、また、城井さんの地元でもあります北九州にも出かけて、いろいろと省エネあるいは電池などの企業の実態を見てまいりました。
今御指摘のように、いろいろな制度や仕組みがあるわけですけれども、中小企業の皆さんからいえば必ずしも使い便利がよくない。やはりワンストップサービスのように、ここに相談に行けばいろいろな制度がわかっていて、それを組み合わせた形でどのように中小企業の皆さんが利用できるか、そういうことのアドバイスをきちんとできるような体制が必要ではないか。私も中小企業の皆さんと話をしながら特に強くそのことを感じました。
そういった意味で、経済産業省が中心になるわけではありますけれども、今御指摘があったように、海外に出る場合にはもちろん外務省などとの連携、さらには産学協同の場合は文科省との連携等々、しっかりと、経産省を軸にして連携して中小企業のそうした支援に当たれるよう、私からも強く指示をしてまいりたい、このように考えます。
○城井委員 そうした形で、ぜひ総理のリーダーシップでもって総がかりで進めていただきたいというふうに思います。
続いてお伺いいたします。税金の無駄遣いの見直しの大きな舞台でございます政府調達改革について、総理並びに行政刷新大臣にお伺いをいたします。
今回お伺いしたいのは、特にいわゆる一者応札、入札におきまして一者が応募、そして一者が落札をするというケース。いわばなんちゃって入札と言ってもいいような状況ではないかというふうに思うわけでありますが、この改善がさらに必要だというふうに思っております。
お手元の資料とパネルをごらんください。
これまでに地方支局を含めて全省庁に御協力をいただき、平成十九年度、二十年度、二十一年度の三年分を調べてまいりました。行政事業レビュー、いわゆる国丸ごと仕分けでも、約五千五百に及ぶ国の全事業を政府としても見直しをしておりますけれども、契約ベースで見ると全体像はこんなふうになります。
資料三の表の右下、平成二十一年度分の合計だけを見ましても、不落随契を含め一者応札の全体で、何と四万八百六十一契約もあったということが明らかになっています。金額でいうと約一兆九千億円であります。
理由を調べました。このうち、理由が不明、そもそも理由を政府が把握していない一者応札がこの中で三二・九%にも及んでいます。また、一者しか応募がなかったというのを理由にしているもの、これは正直、理由の分析になっていないわけでありますが、二七・一%もありました。つまり、見直し検討すべき余地のある契約は、合わせて六〇%にも及ぶというのが実態であります。一方、一者応札でも仕方がないかなと思う特殊なもの、専門性が高いものだけを見た場合には二七・九%しかありませんでした。
平成二十年度の後半にも政府として一者応札の見直しが図られておりますが、この表にあります二十年度と二十一年度の数字を比較すると、約三千五百契約しか減っておりません。見直しが徹底されていないというふうに感じております。
予算の姿を国民の皆さんに見せた事業仕分け、特に行政事業レビューを通じての改善も、その意味では道半ばだというふうに思っています。なぜか。今から申し上げる三つの問題がいまだに存在するからであります。
一つは、入札、特に一般競争入札が自己目的化している、つまり、募集しても一者しか応募がないのがわかっていて、アリバイづくりのためにやっているケース。これでは契約金額の低減にはつながらない。
二つ目。特殊性や専門性が高くない一般的な仕事、つまり多くの企業が本来参加をしやすいのに、一者応札が定番となっているケース。例えば、印刷の発注やイベントの開催支援、清掃、警備、ここではこうした七つの類型を挙げておりますが、努力をすれば多くの企業に参加してもらえるんじゃないか、こういったものは全体の二六%を占めておりました。
三つ目。実績要件や資格要件、発注ロット、公告期間など、募集方法の改善によって競争性や透明性を確保するというふうに各省庁はこれまで説明をしてまいりましたが、これらだけに仮に光を当てても、この一覧表で見ていただくとわかりますように、こうしたものが理由となっているのは全体のわずか、足し合わせて三・四%しかありませんでした。
以上のように、一者応札の改善の余地は極めて大きいというふうに思っています。本当の意味で競争性と透明性を高めるということに加えて、国に契約内容の質と価格を精査できる能力を持たせるということ、共同調達を拡大することなど、今後の改善策について行政刷新担当大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○蓮舫国務大臣 まず、政府の公共調達に関する城井委員の問題意識の高さ、そして今回のこの調査分析、私個人としても大臣としても敬意を表しますし、政府としては重く受けとめます。
その上で、一者応札のうち各府省の回答の六割が、理由について不明とか一者しか応募がなかったという答えは、発注者の要因分析としては極めて不十分だと思って、問題は高いと思います。つまり、政府、各府省が発注して買っているサービスあるいは物品の財源は税金ですから、そのサービスの質を下げない、あるいは上げる努力をしつつ、コストを下げる不断の努力をするのは当然のことだと思っています。
行政刷新会議においては公共サービス改革分科会を今立てておりますので、そこの第一回目のときに、応札条件に過度の制約がある、あるいは仕様が不明確、限定的である、業務範囲、規模が不適切であるといった入札に係る問題があるというのはもう既に認識をしておりまして、三月末までに一者入札の改善策について取りまとめをしまして、公共サービス改革プログラムに盛り込むことにして、各府省がもっと積極的にこの問題を改善していただけるように提言をしていきたいと考えています。
○城井委員 ありがとうございます。
ぜひ、三月末の取りまとめということでしたら、今回のこの調査結果も十分に踏まえていただければというふうに思います。
総理、こうした一者応札の改善一つとりましても、無駄遣い見直しのブームは去ったと言われる中でありますが、これだけの問題がある。ぜひ、深掘りしていく覚悟をお示しいただければと思います。
○中井委員長 菅総理大臣。時間が来ていますから、短く。
○菅内閣総理大臣 大変いい御指摘をいただきましたので、行政刷新担当大臣とともにしっかり取り組んでまいります。
○城井委員 終わります。ありがとうございました。
○中井委員長 これにて城井君の質疑は終了いたしました。
(後文略)