偽造キャッシュカード等 対策法案について (議員立法の答弁)
第162回国会 衆議院財務金融委員会会議録第24号(平成17年07月19日)より抜粋(前文略)
○佐々木(憲)委員 今数字を確認しまして、ここでも非常にはっきりしているのは、偽造カードの場合は五百十六件で十二億九千三百万円、盗難通帳の場合は四千百四十件、百三億九百万円。ですから、盗難通帳あるいは盗難の印鑑、それに基づく被害というものが圧倒的に多いんですよ、圧倒的に多いんです。したがって、その対策というものがやはり求められなければならない。
もちろん、件数の趨勢というのは、通帳の方は少し減ってきているということはあるでしょう、あるいは偽造カードが急増したということもあるでしょう。いずれにしましても、総数でいいますと、被害の総額でいいますと、盗難の通帳の被害が圧倒的に多いんです。それをどうするかということを考えないといけないわけでございます。
二〇〇三年の九月十六日、全銀協は盗難通帳による払い出し等の対策を打ち出したわけでありますが、努力したとされているにもかかわらず、今でも被害はなくなっておりません。偽造カードだけではなく、盗まれたカード、盗まれた通帳、印鑑を用いた不正な引き出しの場合も、当然、預金者の無過失の立証というのは非常に困難であります。そのため、事実上、金融機関は免責され、被害者が泣き寝入りしているという事例が後を絶ちません。
過誤払い被害という点では、偽造カードも盗難通帳もその間に差異はございません。盗難通帳も含めて被害を救済するという法的措置が必要だと思うんですけれども、これも与党提案者と民主党提案者それぞれにお聞きをしたいと思います。
○松島議員 佐々木委員おっしゃいますとおり、そして先ほど泉委員もおっしゃいましたように、盗難通帳による、対面で、銀行員が相対しながら不正な取引、引き出しをやってしまうということは、確かに非常に大きな問題だと思います。そしてまた、これは、今後これに対する対応策という法律を必ずつくっていくべき問題ではないかとも考えます。
ただ、今、現時点におきまして、私どもがつくった法律というのは、最近ふえております、銀行のATM、機械のシステムというものに問題があってこういう犯罪が起こっている、被害が起こっている、そこに着目して、この点を集中的に法律に体系にしたものでございまして、この対人、対面取引というものは、また別個にもちろん対処していかなければいけない、今後大きな課題として残る問題だと考えております。
○城井議員 お答え申し上げます。
確かに、偽造カードも盗難通帳も違いはないというふうに考えます。実際に、偽造であろうと盗難であろうと、そして通帳であろうがカードであろうが、それにつけ加えてATMであろうが対面の取引であろうが、問題の本質はすべて同じだというふうに考えます。それは、すなわち、銀行が確実な本人確認を行っているかどうか、この一点が問題であるというふうに考えています。
先ほど御紹介ありました、大きな被害が出ております盗難通帳、そして印鑑による過誤払いでも、銀行がもう少し注意を払うだけでも簡単に被害を防げたケースは多いというふうに聞いてもおります。中には住所や生年月日が間違って記入されていたのを銀行員が親切に書き直させた、先ほど御指摘があった例であります、この例もうそのような本当の話でございます。対面取引での本人確認は決して難しいことではないというふうにも思っています。何か不自然だと思えば身分証明書を確認すればいいということでございますので、簡単だというふうに思います。巨額を投じて新たなシステムをつくる必要もないというふうにも思います。
繰り返しますけれども、多くの銀行はそういう努力を全くしてこなかった、これまでの民法の四百七十八条に安住をしてきたという点は厳しく指摘をせざるを得ません。このように、ある意味で表面的な問題ということにこだわってしまっては、この問題の本質を見誤ると思っています。問題の本質は銀行が確実に本人確認を行う、この一点であるということを最後に改めて申し添えたいと思います。
(文章中略
※佐々木議員と城井議員の答弁は以上にて終了のため、その後の他議員答弁文を省略)
○金田委員長 次に、馬淵澄夫君。
○馬淵委員 民主党の馬淵でございます。
きょうは、この偽造・盗難キャッシュカード対策の法案につきまして、与野党それぞれの議員立法が提出されておりますが、大変重要な問題であると私も認識しております。主に、この提出者の中でも民主党の法案提出者の方々を中心にお話を伺っていきたいというふうに思っております。
私の地元でも、こうした被害に遭われた方々のお話を直接繰り返し伺っておりました。この盗難カード、こういったことに対して、どこに一体話を聞きに行けばいいのだろうか。金融庁や国家公安委員長、あるいは全銀協、こういったところにもお手紙を出されたというようなお話を、私、何度も地元でもお聞きしました。
さて、そうした中で、金融庁のこのことに対しての取り組みというのは非常に遅いというか、その姿勢というものが十分でないということで、私は大変遺憾に感じておったわけです。私は、かつてこの財務金融委員会の中でも、再三、金融庁のさまざまな業界に対する指導について得意の裁量権の行使ではないのかということを指摘させていただいてきたわけですが、それに関しましては伊藤担当大臣はいつも市場の公正な原理にのっとって市場の番人としてしっかりと見ていくんだということをおっしゃっていたわけでありますが、現実には金融機関の指導に腰が重かったというのが実態ではなかったかというふうに私は思います。
例えば、ことしの五月の伊藤大臣の会見の概要の中でも、こうした盗難キャッシュカード等に対する対応の取りまとめについても、事態の推移について十分注視していきたいといった言葉、あるいは、この六月の六日にありました五味長官の会見の概要におきましても、与党の法案化に向けた動きを引き続き注視するということだと考えている、こうした非常に後ろ向きというんですか、金融庁の動きというものが非常に問題があったのではないかということを私は強く感じております。
そこで、民主党の法案提出者の方にお伺いをしたいわけでありますが、こうした偽造・盗難カード対策が遅きに失したこと、政府、金融庁の遅きに失したこと、そして、現在この議員立法の動きをじっと眺めているという状況について、与党案に先駆けて法案を提出した民主党の提出者の方々にこの状況についての御見解を伺いたいと思います。
○中塚議員 この偽造キャッシュカードの問題につきまして、昨年の三月三十一日にこの委員会で取り上げましたときには、要はキャッシュカードを偽造された人は法律上は被害者になり得ないということで、どこに頼みに行っていいのかわからない、どこに相談に行っていいのかわからない、警察に相談に行ってもそれは被害者じゃないと。被害届も受け取ってもらえない、そういうふうな状況だったわけなんですが、警察は、その後いろいろと指導もあって、銀行がちゃんと被害届を出すということで事件自体は事件化をするようになってきたということだと思いますけれども、ただ、金融庁が果たしてどっちのサイドに立つのかというのは、私は本当にこれは大切なことだと思うんです。
私どもも、実はそもそもは偽造キャッシュカード等の対策で案を練り始めたんです。この与党案のような考え方もいろいろと研究をしたことはあります。でも、この問題は、やればやるほど、要は銀行が本当にちゃんと本人を確認するかどうかということに尽きるわけであって、先ほども申し上げましたが、要は預けた方、預金者の方の権利をいかに擁護するのか、その点に立たなきゃ話にも何もならないわけですね。
別に、私は、私どもの案が銀行に厳しいというふうにも思っておりません。というのは、これだけ低金利の時代に、預けたお金がいつどうなるかわからないということになるならば、もうたんす預金にしようかという人だって出てくるかもわからないわけですね。そうしたら、一体日本の金融というのはどうなるんだ。金融というのはまさに信用ということが一番大切なわけですから、そういった意味で、金融庁も、その信用というものがどうあるべきなのか、金融の信用、信頼というものはどうあるべきなのかということをちゃんと考えた上で、銀行等預金取扱金融機関だけではなく、カードによってですね、生命保険あるいは証券、その他貸金業もありますけれども、そういったところにもきっちりと対策を打つ、指導をするということが必要だろうというふうに考えております。
○馬淵委員 まさに今の御指摘のとおり、信用創造に向けて金融庁が本当にしかるべき態度を明確にしてこの問題について取り組んでこなければならなかったということがこの委員会の中でも繰り返し議論されていく中で、私はそのことが我々の中にもあったということを確認させていただいた思いであります。
そして、今お話にありますように、金融庁が本来ならばそうした信用創造に向けての対応をしなければならなかったのではないかという御指摘もありましたが、一方で、先駆けて今回の法案の提出をされたわけです。そして、民主党案、与党案を比較していきますと、先ほどの質疑者の中にもありましたが、大きな違いとして、いわゆる盗難通帳による被害は救済対象とならないという点、これが一番大きな特質ではないかと私は感じております。
真の権利者保護ということ、この利益を守るということは、ATMを通じようが窓口を通じようがこれは全く関係がない、そんなことによるものではないんだということを繰り返し御答弁でもいただいたわけであります。そしてまた、いわゆる盗難の手口の違いによって補償を選別すべきではないということ、これも先ほどの御答弁の中にも再三再四御指摘をいただきました。
通帳の被害というのが、先ほどは金融庁の数字にもありましたが、全銀協の調べの中でも、かつて、平成十五年四月―六月期におきましては二百四十四件という数値、これがいわゆる副印を廃止することによって平成十七年の一月―三月期には五十三件と激減した。しかし、同時期の偽造キャッシュカード、この預金等の引き出しの事件は八十件。さして変わらない数字であるというような見方もあるかもしれませんが、一方でATMの利用件数が圧倒的な数であるという、窓口利用件数を圧倒的に上回っているという事実を考えれば、盗難通帳による被害というのは本当に深刻である、そう断ぜざるを得ません。その点につきまして、与党案は盗難通帳に対して欠如しているという点について、ぜひ民主党法案提出者の方々からこれについての評価、どのようにお考えかということを御意見いただきたいと思います。
○城井議員 お答え申し上げます。
盗難通帳による被害の救済は、当然やらなければならないというふうに考えます。先ほども少し御説明申し上げましたけれども、私ども民主党では、今回のこの問題解決のかぎは、いわゆる通帳かカードかという線引き、あるいは偽造か盗難かという線引き、あるいはATMか対面取引かという線引きでは表面的な解決にしかならない、根本的な解決にはならないというふうに考えています。金融機関が確実な本人確認を行う、このことが必要だという認識のもとで今回の法律案を提出させていただきました。
しかし、一方、自民党案、先ほどもお答えございましたけれども、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律案という名称、この法律名、法案名を比較しただけでも、法案の精神がもともと異なるという点を御理解いただけると思います。委員が御指摘のとおり、手口の違いという表面的な問題ではなく、金融機関による確実な本人確認という問題の本質をとらえた対策が必要であり、先ほど御紹介ありましたように、四千百四十件という圧倒的な数に及ぶ盗難通帳、この件については当然その対策に含まれるべきだということを改めて申し上げたいと思っています。与党案にこれが欠けているということは、問題の本質を見誤っていると言わざるを得ません。
与党はみずからの案にこだわることなく、我々との協議に応じて、民主党案をぜひ成立させるということに協力すべきだというふうに考えております。このことを強く申し上げたいと思っております。
○馬淵委員 与党案が問題の本質を大きく見誤っているという御指摘をいただいているわけでありますが、そのもともとの根本はどこにあるのかというと、消費者あるいは預金者という、実際の市民の皆さん方がいかに弱い立場に立っているかということ、このことについての御理解が私は浅いのではないかという気がしてならないんです。
例えば預金者というのは、これは情報の非対称性というのがあるのではないかというふうに思っていまして、今回、偽造キャッシュカードやあるいは盗難通帳の問題もありますが、例えば約款上定めてあるということになります、この約款上に定めてあるということでカードの利用というものが行われているわけですが、これを約款に書いてあるじゃないかという抗弁を受けても、約款をすべて網羅して読んで理解をされた方というのは少ないのではないか、これが現実ではないかと思うわけです。
そこで、民主党案の場合は、私もこれは注目すべきだなと思っていましたが、特に第五条で、キャッシュカードの約款等に書かれた預金者の不利となるものについては無効となるという旨を法案に明記しておられます。こうした点を法案に明記したことの意義をぜひこの委員会の場で御開示いただけないでしょうか。
○城井議員 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、金融機関の約款は、私も何度か目にしましたけれども、およそ人に読ませるような形でつくられているというふうには言えないものだというふうに私も思います。しかも、カードの暗証番号が正しければ、偽造、変造あるいはそのほかの事故があっても、そのために生じた損害については一切責任は負いません、こういう内容の、ある意味で銀行に一方的に有利な規定も記載をされているわけであります。この点も踏まえて、民主党では現在金融サービス市場法の検討を進めております。この中では、プロである銀行とアマチュアである預金者の間にどのようなルールを置くのかなどを含め、銀行の約款のあり方にもかかわる重要な問題がこの中には含まれております。民主党案は、いずれ世に問うことになるであろうこの金融サービス市場法の精神も先取りをして、御指摘の第五条の規定を設けさせていただいたところでございます。
○馬淵委員 ありがとうございます。
こうした預金者が、情報の非対称性ということを十分考えて、その不利益をこうむらないようにという配慮があるかと思うんですが、こうした預金者の方が実際に被害に遭われた場合、どこに話を持っていっていいかということで大変悩まれておられます。この点について、一点お聞きをしたいと思うんです。
キャッシュカード被害者の方々がひまわり草の会といった被害者の会を結成されておられます。銀行相手に一人で闘うことがなかなかできないということで、被害に遭った多くの方々が、警察も頼りにならぬ、銀行もだめだということで泣き続けたとか、あるいは息子が勝手に引き出したんじゃないですかというような、そんな厳しい話をされて、それこそもう精神的ショックで立ち直れない、こんな状況があったということもお聞きをしています。
民主党案の中で、第八条で情報の提供、相談等の体制の整備というのを定めているわけですが、こうしたことに対してのお考え方ということを端的に御説明いただけませんでしょうか。
○城井議員 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、これまで被害に遭われた方に対する銀行あるいは金融機関の対応には大きな問題があったというふうに感じています。先ほど御紹介のありました、ひまわり草の会の方々からも大変詳しくその被害についてもお伺いをしたところでございます。警察の対応についても、非常に不適切だったというケースも多々あったというふうにも聞いております。世の中の方の多くがこの問題に対して十分な認識を持っていない。それにもかかわらず、被害者は孤独な闘いを強いられているという感を、その被害者の方々のお話を伺うにつけても、非常に強く感じたところでございます。
民主党案では、このような認識のもとで、国と地方公共団体、そして金融機関は、無権限預貯金等取引に関する情報の提供、相談その他の援助を行うものとし、そのために必要な体制の整備に努めるものとしたところでございます。
(後文略)