義務教育国庫負担法改正案に伴う政府の統一見解について
第162回国会 衆議院文部科学委員会会議録第6号(平成17年03月16日)より抜粋(前文略)
○斉藤委員長 城井崇君。
○城井委員 民主党の城井崇でございます。引き続き、大臣よろしくお願いいたします。
まず、私からも参考人質疑について一言申し上げてから、質疑に入りたいと思います。
詳細が明らかになっておりません党の方針を理由に、田中長野県知事を参考人として認めないと与党自民党が言い、委員長裁定で参考人質疑自体が中止となった。今回取り扱います法案はいわゆる重要広範議案の一つであり、広く国民の声を聞く参考人質疑という場は非常に重要であると考えます。
にもかかわらず、その機会を前代未聞の委員長裁定でつぶした。我々が一生懸命に求めております徹底した審議に逆行し、国会審議を軽んじる愚行であると考えます。また、選挙で選ばれた知事を愚弄するものであり、何よりその知事を選んだ長野県の人々をばかにしているということをよくよく御自覚いただきたいと思います。
それでは、質疑に入らせていただきます。
本日は、この改正案に関しまして、これまでさまざまな委員会等でなされております大臣答弁で我々に説明をされております政府の統一見解について、本改正案の責任者たる中山大臣に順次お聞きをしたいと思います。
まず初めに、小泉総理の出されている方針、そして示されている認識についてお伺いしたいと思います。
先日の三月二日の衆議院予算委員会におきまして、小泉総理がこう言われているのを何度か私どもの委員からも引用させていただいている部分がございます。「私は、この補助金の問題、今回、義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、今年度は約八千五百億円の中での約半分、今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。」と答えました。
八千五百億円の部分については後ほどまた伺いますが、まずお伺いをいたしたいのは、今回の法律案の中では暫定的に削減というふうになっておりますけれども、将来どのようにこの制度を見直すのか、その道筋、そして考え方というのがはっきりと示されておりません。
その中で、この総理の御答弁の中で、中学校分の権限の移譲の方針を決めたととれる部分があるわけでございますけれども、この「地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、」という部分について、大臣、今年度は暫定だけれども、それ以外、つまり将来の中学校分の権限移譲に関する方針は決めたのかというところ、この点について、総理大臣のこの発言の御趣旨を踏まえながら、政府の一員としての大臣の御見解をお聞かせください。
○中山国務大臣 総理の発言をそのまま記憶しているわけではございませんが、総理はその中で、教育は重視している、このようにも発言をされたと思っております。全国的な教育水準の確保というのは国の責任であるという中で、教育においても地方独自のやり方があってもよいのではないかということを総理は言われたんじゃないかなと思いまして、どちらか一方の考えのみを重視しているというふうな発言ではなかったんじゃないかな、私はそのように認識しております。
○城井委員 そういたしますと、小泉総理大臣としては、あくまで考え方の一つを披瀝した、示したということであって、中学校分の権限移譲という方針を決めたのではない、この理解でよろしいですか。
○中山国務大臣 私はそのように認識しております。
○城井委員 ありがとうございます。
そういたしますと、現在存在します義務教育費国庫負担制度がカバーをしている項目、この委員会でも何度も議論しておりますけれども、現在残されておりますのは教職員の給与部分のみというのは御承知のとおりかと思います。とすると、いわゆる一部かつ暫定的で、項目を特定したものではないとはいえ、義務教育に携わる教職員の給与そのものが今回税源移譲特例交付金という形で一般財源化されるという認識でよろしいんでしょうか。
○中山国務大臣 地方の案というのもあったわけでございますし、私たちは私たちの案があったわけでございまして、そこで政府と与党の間であのような合意がなされて、その中で、暫定として十七年度四千二百五十億円、トータルして八千五百億円が暫定になったということである、私はそのように考えております。
○城井委員 ここで確認したいのは、大臣、義務教育に携わる教職員の給与自体が削減をされて、特例交付金という形で移しかえられたということ、私が今こう申し上げた部分の理解で、認識でよろしいかという点について、もう一回お聞かせください。
○中山国務大臣 小中学校の先生方の給料の二分の一、そのうちの一部がまさに、移しかえといいますか、暫定的にせよ移しかえられている、このように認識しております。
○城井委員 ありがとうございます。
では、引き続き、この総理答弁の中でも触れられておりました、今回の法律案の対象となっております四千二百五十億円の部分についてお伺いします。
本日、先ほど、松本委員からも御指摘ございました。この点について、さまざまな言葉のやりとりがありましたので、ここで一度言葉の整理をさせていただきたいと思いますけれども、四千二百五十億円という金額は、中学校の教職員給与である八千五百億円の半分にたまたま相当する額であって、中学校分に特定しているのではない、金額の規模としてであって額として削るものだ、この理解、認識でよろしいですか。
○中山国務大臣 そういう認識で結構でございます。
○城井委員 といたしますと、金額の規模としてということになりますけれども、この金額の大きさ、規模で適当だということで決められたんでしょうか。
○中山国務大臣 それも暫定ということで、そういう規模でいいということで決められたんじゃないかと思います。
○城井委員 暫定とはいえ、これだけの大きな規模を決めるのには合理的な理由があるのではないかというふうに思うわけですけれども、この合理的な理由がもしおありでしたら、お示しをいただければと思うんですが。
○中山国務大臣 地方案では、十七、十八年度の両年度にわたって八千五百億円、これは、向こう側としては中学校の分と言っているわけですけれども、この削減を要求してきたわけでございます。
ですから、四千二百五十億円というのはその半分、要するに、二年間のうちの半分を十七年度に暫定的に計上している、このように認識しております。
○城井委員 今大臣が御答弁いただきましたように、いわゆる地方六団体が出された案、つまり地方六団体が要求した金額というのがベースとなっているというところ、それ自体ではないというのは確認したとおりというふうに受け取ります。
だとした場合に、地方六団体としては、いわゆる一般財源化、つまり、使い勝手を金額をふやす形でよくしたいということを考えている地方六団体が出してきた案であり、数字であり、金額であるということを考えますと、先ほど来お示しになっておられます大臣及び文部科学省の懸念というものが現実になってきているんではないか、心配の部分が現実になってきているんではないかと思うわけであります。
その中で、本日も、先ほど来お話を伺っておりました大臣のお言葉の中で一番出てきているのは、実は、頑張るという言葉ではないかと思います。頑張る、頑張るとおっしゃっておられます。しかし、ここまでの御説明ですと、残念ながら私にも精神論というふうにしか受け取れない部分があるのではないかと思うわけでございますけれども、大臣がこれまでお答えいただいている御答弁の部分、これは政府のほかの閣僚の説明と照らした場合にどうか。いわゆる統一見解としてきちっと一致した答えになっているかというところ、この点をつぶさに見ていきますと、かなり疑問の点が出てくるんではないか。この点をきょうはぜひ確認をしておきたい。今後の運営に非常に大事だと思いますので、ぜひ確認をさせていただきたいと思います。
まず、もう一回、小泉総理の別の御答弁をここで引用させていただきます。恐らく御記憶の部分はあろうかと思いますけれども、具体的に引用させていただきながらと思います。
三月三日の参議院予算委員会におきまして、小泉総理がこうおっしゃられております。恐らく文部大臣に対しては一番厳しいお言葉ではないかと思いますけれども、そのまま読みます。「これは、文部科学省の主張と私の主張とは違っていたと。文部科学省にしてみれば、断固として私の主張は受け入れ難いと抵抗してきたわけです。しかし、それを私が押し切ったと。」これは総理の発言です。そして、もう一つおっしゃられております。これは三月十一日の衆議院文部科学委員会におきまして、小泉総理は、閣僚間での意見の対立はあるが、結論を出す場合には一致協力していくのが内閣だ、こうおっしゃられております。
私は、この発言を踏まえまして、こう考えます。当然これは与党の方々にも御理解いただけると思いますが、閣議を経た法律案でありますから、法律案並びにその法律案の提出に至った背景の解釈と見解については、閣議を経た時点で当然統一をされているはずだというふうに考えます。この点について、まず大臣、御見解をお聞かせください。
○中山国務大臣 政府・与党合意、それから十二月二十四日の閣議、このときまでにはそれこそけんけんがくがく議論いたしましたが、最終的には、四千二百五十億、それで八千五百億、これを暫定的に計上するということについては一致しました。それで、その後のことにつきましては中央教育審議会の結論を待つ、こういうふうなことになったわけでございます。
○城井委員 そうすると、今回の法律案に関しては押し切られたということですか。
○中山国務大臣 総理が私に、済まぬな、こらえてくれと言われたということは、総理は押し切ったという思いかもしれませんし、私としては、暫定という名がついていますが、四千二百五十億削減ということは、ちょっと私の主張がそのまま通らなかったなとは思っております。
○城井委員 実際に、総理は押し切ったというふうにおっしゃっておられ、今大臣、御答弁いただきましたように、大臣の受け取りは少し違うというところもあるわけですけれども、そういう思いの部分の違いは横に置かせていただくとしても、答弁で、我々に対して説明をされている部分で、実際に法律案並びにその背景の解釈あるいはその見解というものに食い違いがある、そごを来しているという部分がかなりあります。これは非常に大きな問題であるというふうに考えます。各大臣が好きに答弁していいわけがないという点は御承知のとおりかと思います。
具体的に、まず、中山大臣と小泉総理の部分について御指摘を申し上げたいと思いますけれども、三月十一日の衆議院文部科学委員会で、中山大臣はこうおっしゃっております。「私は私なりに何とか堅持したい。」これは負担金をということかと理解しております。それを受けて小泉総理は、義務教育の重要性と地方の裁量権の拡大という点は意見の隔たりを認めるとおっしゃっています。ただ、そうは言いながら小泉総理が、三月三日の参議院予算委員会ではこうもおっしゃっておられます。「中山大臣の主張が通らなくて、意向に反して決定したもんですから、そこは内閣の一大臣として内閣の方針に従ってほしいと、まあこらえるところはこらえてくれ、我慢してくれという気持ちで言ったわけであります。」というふうになっています。
この発言を踏まえて、実際、総理のリーダーシップが今回の法律案取りまとめで当然働いているんですね。リーダーシップを発揮されているんですね。この点、いかがですか。
○中山国務大臣 閣内においては本当にいろいろ議論いたしましたが、最終的には総理の御意向に沿った形になっていると思います。
○城井委員 とすると、今回の中山大臣の御説明の部分の中で、実際に閣内不一致と申しますか、意見の食い違いを来している部分があるんではないかと思います。
というのは、これまでの小泉総理の部分と照らしますと、これまで中山大臣が我々に対して主張をされている内容、例えば、不退転の決意で臨みますとか、あるいは、私なりに堅持したいですとか、そういった閣内の中で中山大臣御自身が主張した内容については理解できるわけですけれども、国民への説明として必要なのは、「こう主張しました。」という、そういう内容ではなくて、むしろ、主張した後に政府として一致して決定した統一見解、こちらの方が必要だし大事なのではないかと考えるわけであります。
これまでも、大臣の思いと、そしてかたい御決意というものは十二分にお伺いしておりまして、我々も理解をしているつもりではおります。ここでは、文部科学大臣として、これが政府の一致した見解だというものを改めてもう一度示してください。閣内不一致でやめさせられた大臣は過去にもたくさんおられますので、この点は非常に大事だと思います。この点を踏まえて、大臣、もう一回お願いします。
○中山国務大臣 いろいろな議論がありまして、地方側の案をそのままであれば八千五百億円削減、それは二年間で削減するとすると、十七年度は四千二百五十億円削減ということになったんだろうと思うんですけれども、私が主張いたしました、要するに、財源の中で議論してほしくない、中教審の議論も踏まえてやってくれ、こういうことになりまして、暫定的に四千二百五十億円計上する、そして、この四千二百五十億円も含めて八千五百億円、そして義務教育全般について中央教育審議会で議論していただいて、秋までに結論を出す、こういうことになったわけでございます。
ですから、私としては、いろいろ主張し議論はいたしましたが、最終的には、四千二百五十億円を十七年度に暫定的に計上するということについては納得したわけでございます。
○城井委員 今のお答えで覆い切れない部分で、これまでの大臣答弁における具体的な意見の対立があるというふうに、私は、これまでの答弁すべてチェックをさせていただく中で感じています。
そのほかの部分についても、具体的に御指摘を申し上げながら順次お伺いしていきたいと思います。特に、先ほどの中山大臣と総理の部分もそうなんですけれども、もう一つ、どうしても決定的な対立があるというふうに思いますのは、中山大臣と麻生太郎総務大臣の国会答弁、これが正反対になったままの部分があると思うわけであります。以下、具体的に御指摘を申し上げます。
具体的には、先ほども少し触れられておりましたけれども、この義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合、今後のいわゆる見通しも含めた部分ですね、一般財源化した場合の教育水準に地域格差が生じるかという点について、決定的に違っていると思っています。
まず、中山大臣が、三月一日の衆議院文部科学委員会でこのようにおっしゃられました。既に一般財源化された図書購入費や教材費が大幅に下がっており、懸念はぬぐい切れない、これは教職員給与に使われるかということだと理解をしますが、懸念はぬぐい切れない、必要な財源が確保されるか大変心配だというふうにおっしゃっております。これはつまり、言いかえますと、地域格差への懸念があるということ、そして、財源確保がされない可能性というものを示していると私は理解をしております。
それに対して、麻生大臣、これは三月八日の衆議院総務委員会において答弁をされておりますが、学校図書整備費と違い、教職員の場合は標準法で学級編制や教員の数が決められている、教育問題は選挙でも一番の関心事、これは道路や川などの事業ということだと思いますが、道路や川に使ったら次は落選だとおっしゃっています。
つまり、標準法の存在によって地域格差は生じないんだ、しかも、選挙という点に触れられておりますように、政治主導で財源は確保されるというふうに、この点、御説明をされておると理解いたしますけれども、この格差への懸念についての認識が全く正反対だという点、そして、財源確保の部分についてもかなりの食い違いがあるというこの二点に非常に問題があると思いますけれども、この点について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○中山国務大臣 私の見解についてはもう既に承知していただいていると思うんですけれども、麻生大臣が、標準法があるから大丈夫なんだ、こう言われましたけれども、私どもの考えとしては、標準法プラスそれを裏打ちする予算措置、これが両々相まって義務教育というのがスムーズにいっているんだ、私はこういうふうに認識しております。
それから、教育に力を入れない知事は落選するんだと言われましたが、この辺については私と見解を異にするところでございまして、中には福祉に力を入れているから当選する方もいるでしょうし、なかなか教育というものは目立ちませんから、地方行政においては、教育のことを主張して知事選挙を戦う、そういう方もいらっしゃると思いますし、そうじゃない方もいらっしゃるんだろう、こう思うわけでございます。
それと、教育費というのは、そういう意味でじわじわと減っていったりすると、なかなかその痛みがわからないということもあるわけでございますし、何より、知事を含め四年間という任期があるわけですね。ですから、私に言わせますと、四年間あるいは二期、三期、八年、十二年、教育に力を入れていないから落選する、これはなかなか数字が直接には結びつかない。そうしますと、少なくともその期間、四年なり八年間、極端に言えば、ほっぽり出された子供たちの将来はどうなるんだ、だれが責任持つんだということにもなるわけでございまして、選挙だけでこの義務教育費国庫負担制度を論ずるわけにはいかないんじゃないかな、私はそのように考えております。
○城井委員 そうすると、私は、本日お伺いしたいのは政府の統一見解ということでございますけれども、先ほどの麻生大臣がおっしゃっている部分について、標準法については、中山大臣がおっしゃっている、両輪であるので含まれるんだという考え方であるということと、それから、政治主導の部分に必ずしも依拠することはできないというふうに今の御答弁を理解させていただくと、中山大臣がおっしゃっている部分が政府の統一見解ということでよろしいんでしょうか。
○中山国務大臣 その政府・与党の合意文書の中には、標準法の話とか選挙の話は出てきていないと思うんですね。専ら、義務教育制度は維持する中で国の責任は堅持する、そして、そういったもとで地方案を生かす形で、かつ、教育全般について教育審議会で議論していただく、この合意があるわけですから、私は、そういう意味で、予算委員会とかいろいろな議論を聞いておりますが、この政府・与党の合意の範囲内で話はしておられるなということは感じております。
○城井委員 大臣、今の御発言はその言葉でよろしいのかともう一回確認させていただきますが、大臣、標準法とあるいは選挙の話というのは政府・与党合意には書かれていないというふうにおっしゃいました。ただ、麻生大臣は総務委員会において、今回の三位一体関連の法案の審議の中で、正式の答弁でおっしゃっていることです。これが合意の範囲内でないとすると、これは非常に大きな問題ではないかというふうに思いますけれども、この点についてもう一度お伺いします。
○中山国務大臣 麻生大臣が総務委員会でどういう発言をされているかわかりませんが、少なくとも、これまで麻生大臣が発言されている、答弁されている言葉を聞いておりますと、政府・与党の合意文を逸脱しているものはないな、そういうふうに感じているところです。
○城井委員 大臣、私も、そうおっしゃられると困るので、とても丁寧に引用をさせていただいて、今質問を申し上げているわけです。
もう一回読みます。三月八日の衆議院総務委員会です。麻生大臣がこうおっしゃっております。学校図書整備費と違い、教職員の場合は標準法で学級編制や教員の数が決められている、教育問題は選挙でも一番の関心事、道路や川に使ったら次は落選だ、これは総務委員会での正式の麻生大臣の答弁であります。それをそのまま引用させていただいております。これが政府・与党合意の範囲外の答弁という理解でよろしいんですね。
○中山国務大臣 範囲内外じゃなくて、それとは違う見地から発言されているんじゃないかというふうに感じます。
○城井委員 そうすると、この麻生大臣の答弁は、今回の法案説明の統一見解とは違うということでよろしいんですね。
○中山国務大臣 いや、あくまでこの政府・与党間の合意の中で答弁されていることだと私は思っています。
○城井委員 大臣、先ほど大臣は、この麻生大臣が答弁をされている内容の二つの大きな部分、標準法についてと選挙については合意の範囲外だという御答弁をされました。今の大臣のお答えでは、その部分と食い違いが出てきます。もう一回お願いします。
○中山国務大臣 範囲外というか、その合意とは違う議論ではないか、別の議論ではないか、このように考えております。
○城井委員 そうすると、大臣が今おっしゃったように、この麻生大臣の総務委員会における答弁は、いわゆる法案の部分の政府の見解を説明したものではなくて、個人的な意見を勝手に言ったものだという理解でよろしいんですね。
○中山国務大臣 どういう発言をしておられるかわかりませんが、総務大臣は、総務大臣のお考えを述べていらっしゃるんじゃないかと思います。
○城井委員 大臣、どういう発言をされているかわからないというのは、私は二度も引用して御紹介を申し上げているので、それはちょっとひどいのではないかと思います。
ただ、先ほど大臣から、この麻生大臣の発言が、いわゆる個人的な一つの意見として言ったという趣旨の、そういうことだったというふうに今大臣は御説明をされたと受け取りたいと思いますけれども、もう一つ、別の大臣も、この意見の食い違いというところでは例外ではないと思っています。その大臣というのは財務大臣であります。
三月二日の衆議院予算委員会において、谷垣財務大臣がこうおっしゃっておられます。まだ、率直に言って、例えば麻生大臣と私の間の意見もまとまっているわけではないんですがと言っています。つまり、素直に読むと、財務大臣と総務大臣の意見が、法律案とそれに関連する予算を審議する場で一致していないということを財務大臣が公の場で認めているわけですが、この点、大臣、政府の一員として御見解をお聞きしたいんですが。
○中山国務大臣 細かなところではみんなが全部一致するというわけにはいかないので、少なくとも法案を提出する段階で、政府として出しているわけですから、その法案の範囲内では私は意見が一致しているんだろうと思うんです。これは、私と麻生大臣との間でも同じでございまして、細かなところとか、こういう思いを持っているんだけれどもとか、そういう思いとか、そういったものはそれぞれ違っているのかなと思います。
○城井委員 法案の部分だけで一致をするということですけれども、その法案が出されるときに、その背景としてこれまでの流れがあり、そして、今回暫定措置ということですから、当然、将来像を含めての部分も一体として考えるべきではないかと思いますけれども、今回の法律案の部分だけで政府の見解が一致していればいいというお考えですか。
○中山国務大臣 この法案をまとめる前といいますか、合意に至るまでは、いろいろな意見の食い違いがあったわけでございまして、それをああいう合意という形でまとめたわけですね。そのことについてはまとまっているというか、意見は一致しているわけでございまして、これから先のことについては、まさに暫定ということもあります、今何度も御指摘になっていますけれども、中教審で議論していただくということになっているわけですから、これから先のことはまたこれから先のことでございまして、少なくともこの法案については、考え方は一緒である、このように理解していただきたいと思います。
○城井委員 中教審の答申に丸投げをしてしまって、食い違いをそのままで置くということで、今回の法律案に対する責任が果たせているのか、私は甚だ疑問であります。
実際、先ほど御指摘申し上げましたように、総理大臣、文部科学大臣、そして総務大臣、財務大臣と、それぞれが好き放題にお話しになっているだけではなく、政府参考人による説明も対立をしたままで流れていっているわけであります。
実際に、総務省の自治財政局長がこんなふうにおっしゃられております。「一般財源化されることによりまして教職員の配置の地域間格差あるいは教育水準の低下というような事態を我々は想定できないというふうに考えておりますし、むしろ、補助金事務から解放されまして、より創意工夫のある形での教育ということが地方ごとにできるのではないかというふうに考えておるところでございます。」これは二月二十三日の衆議院文部科学委員会においてですけれども、その一方で、文部科学省の初等中等教育局長、銭谷局長でありますが、このようにおっしゃっておられます。「現在、各都道府県が国から負担金として受けている額に比べますと、四十道府県で財源不足ということに陥るおそれがあるわけでございます。」というふうに言っております。先ほど申し上げましたように、この点だけでも大きな食い違いがあるという点、政府参考人の御説明にしても、そのまま残っているということでございます。
そういった食い違いがあって、これはなぜ問題かということなんですけれども、ここでもう少しだけ具体的に申し上げたいと思いますが、先ほど中山大臣から、両々相まって、つまり財源の保障と、そして水準の確保のための基準づくりというところ、この二つが両々相まってということがとおっしゃっておられました。
ただ、その二つの関連性について、政府・与党の一員であり、公式の答弁に立たれております今井総務副大臣、これはたしか池坊委員の質問のとき、三月九日の衆議院文部科学委員会での御答弁であるというふうに記憶しておりますが、こうおっしゃられておりました。「教育水準と財源の種類、この種類ということは国費でやるのかあるいは地方費かということとは直接的なかかわりがない」。また別の項目で、こうおっしゃられております。「結局財源が国であれ地方であれ、学力そのものにイコールでリンクしていない」とおっしゃられています。この財源保障と教育水準確保は関係ないというのを総務副大臣すら正式の答弁でおっしゃっておりますけれども、この点一体どういう、何が政府としての統一の見解なのかという点、余りにもかけ離れていると思うんです。両々相まってという表現と今の部分と余りにもかけ離れていると思うんですが、大臣から、政府としての統一した見解の部分についてお聞かせください。
○中山国務大臣 まず前段の丸投げではないか、私は丸投げでよかったと思っているんですよ。丸投げというと何か悪い言葉みたいですけれども、中教審に、何か限定つきではなくて、とにかく全部中教審ですべて議論してくれと言われたんですから、この丸投げほどすばらしい丸投げはないな、いい丸投げだったな、こう思っております。
それから、政府参考人もいろいろなことを発言していると思いますけれども、私は、それもそれぞれの省の立場からいえばそうだろうなと。今井副大臣の話も、私も聞きましたけれども、国庫負担制度と学力の問題、それが相関するものじゃない、それはそうだと思うんですね。
だから、学力ということではなくて、私が言いたかったのは、やはり国の責任ということ、しかし、その学力はそれぞれですから、まさにそれぞれの地方が責任を持ってやっているわけでございますし、これは家庭とかいろいろな責任もあるわけでございます。
私は政府委員のいろいろな答弁を聞いておりましたけれども、それぞれの立場からいい議論をしておられるなと。まさに私は、中教審にも、幅広い立場から、タブーを設けることなく議論してほしい、こういうふうにお願いしているわけですけれども、私ども政府内でも自由濶達な意見を闘わせていきたい、それまでの間にいろいろな意見があるのは、立場の相違があるのは当たり前であろう、こう考えております。
○城井委員 大臣、丸投げというのは悪いように聞こえるがということですが、今回の部分はあくまでその答申を尊重するという非常に弱い表現になっておりますから、その扱いがまだはっきりと決まっていない状況のところに丸投げしてしまうという危険性を私は申し上げているということであります。
それで、今大臣おっしゃられたもう一つの部分ですけれども、私が今井総務副大臣の答弁から引用申し上げました「財源が国であれ地方であれ、学力そのものにイコールでリンクしていない」というのはそのとおりだと今おっしゃったと思いますが、その点、確認をしたいんですが。
○中山国務大臣 リンクしているわけじゃない、このように今井副大臣はおっしゃったと記憶していますが、そういう面もあるでしょう。しかし、長い目で見ますと、やはり私は、費用はどこで持つかということはいろいろ影響するのじゃないかと。そうでなくても財政力格差が出てきておりますし、これからますます地方財政厳しくなる、交付税のことも考えますと、ないそでは振れぬといいますか、そういったことも出てくれば、学力にリンクしてくるということも考えられるんじゃないかなと思っています。
○城井委員 といたしますと、先ほど私がお聞きした部分にまだお答えいただいていないと思うんですが、財源保障と教育水準の確保の関係、これは関係あるのかないのかというところをもう一度はっきりとお聞かせいただきたいと思います。
○中山国務大臣 今財源確保と学力教育水準とは、これはリンクすると思うからこそ、私どもは国の責任として義務教育費国庫負担制度を堅持すべきだ、こういうことを主張しておるわけでございます。
○城井委員 ありがとうございます。そうすると、これは、今井総務副大臣はほかにもその考え方とかなり離れた御答弁をされているので、今後政府部内できちっと詰めていただかなければならないというふうに思います。
具体的に一つだけ御紹介申し上げますと、三月十一日の衆議院文部科学委員会において、義務教育国庫負担制度の弊害は何かという長島委員の質問に対して、今井総務副大臣はこう答えておられます。これまで確かに役割を果たしてきたが、義務教育国庫負担制度によって地方の運用の幅を狭めている、国に要望を上げていかなければならないので、手続が煩雑になる、かなりの分量になる、一般財源ならばこういった部分の弊害がなくなる、活性化を図ることができる、財源が国費によるべきかどうかは時代の状況による、教育費の削減の議論ではなくて、財源保障のあり方の議論であるというふうにおっしゃっております。
こういった部分を見ておりますと、今の大臣の御説明とは全く異なるというふうに思いますので、この点、きちっと政府部内で詰めていただきたいと思います。
そのことをお願いした上で、さらにお聞きしたいんですけれども、今回の法案の提出の趣旨という中で、小泉総理からこういった説明がありました。三月十一日の衆議院文部科学委員会においてでございますが、地方にできるだけの裁量権を拡大したいというふうにおっしゃっておられました。法律案の審議の中の説明でおっしゃっておられます。
この発言を見ながら私は思うんですが、今回、先ほど大臣と御確認をさせていただきましたように、教職員給与の一部移譲、つまり一部一般財源化、交付金化ということですけれども、この一部移譲で具体的にどれくらい、どんなふうに地方の裁量権が拡大するのかということであります。この教職員給与というものは、政治的にも行政的にも義務的経費に近いのではないかと思います。つまり、動かしがたいところを動かすということで、裁量権の拡大ということとはほど遠いと思うわけですけれども、この点、大臣、見解をお聞かせください。
○中山国務大臣 今井副大臣も、弊害は何かというようなことで、いろいろな報告文書等がたくさんになる、それよりはもっと裁量権を拡大することになる、こんなことも言われた、このように思っているわけでございます。
一般財源化されたということでは、これは裁量権拡大ということになると思うんですけれども、まさに御指摘のように、これは学校の先生の給料に使うということでございますから、ほかのところには使えないわけですね。そういう意味では、裁量権といっても、今文部科学省が進めております総額裁量制と似たようなものじゃないかなと私は思っております。
○城井委員 大臣も苦しい御答弁だと思うんですが、裁量権拡大とはいいながらほかに使えないというのは、ちょっと矛盾をしておるというふうに思います。ただ、この矛盾が、肝心の権限を受ける側になります地方の方でもやはりその点について声が上がっております。
具体的には、国の関与が残る補助金の交付金化という点について、次のような声があります。これは、具体的に梶原拓前全国知事会長がおっしゃっておられることでございますが、この補助率の引き下げというのは、地方が自由に使える金がふえるのではなく、金を出すのは国か地方かという機械的な金の移動にすぎない、使い道で地方の裁量範囲が広がっても、相変わらず財務省の査定を受けなければならず、本質は変わらないということをおっしゃっておりました。つまり、財務省の査定を前提とするならば、交付金で地方の裁量権は広がらないという考え方、この点について、大臣、いかがですか。
○中山国務大臣 財務省がかかわっているということについて言えば、これはすべての予算がそうでございますから、一般財源化されようとされまいとやはり財務省がかかわっているということで、だから裁量権が拡大しないんだということではないと思っています。
○城井委員 そういたしますと、先ほどの御答弁とあわせて確認をさせていただくならば、手続上の裁量権はとても大きく広がったが、実際に事実上使える裁量権の拡大部分というのはとても小さいという理解でよろしいですか。
○中山国務大臣 ですから、この義務教育費国庫負担制度というものについて、この負担をふやしてくれとかなんとかいうことで文部科学省に陳情というのは上がってこないんですよね。これが国土交通省とか農林省なんかの補助金と違うところでございまして、学校の先生のお給料としか使えない、極めて硬直的といいますか、でございますから、地方団体側の趣旨はどこにあったのかなということも思うわけでございますが、暫定的にせよ、今回一般財源化ということになりましたけれども、それが地方の裁量権といいますか、ほかのものに使えるという意味では、これは全く裁量権は広がっていないと思っております。
○城井委員 今大臣がおっしゃられたように、今回の部分は、あくまで税源移譲特例交付金ということで、一般財源化であります。使い道については、文部科学省からの御説明の紙には、基本的に教職員給与分に配分というような表現だったと思いますけれども、これは何か根拠の法律があってということではないと理解をしております。とすると、いわゆる一般財源化された部分について縛りをかけることが可能なのかどうかというところは改めて確認をせねばならないと思っています。
先日、銭谷局長の答弁で、平成十七年度予算、今ちょうど組まれているものですね、この予算における税源移譲特例交付金を前提にした各都道府県の予算の措置状況について説明があったのは、大臣、御記憶でしょうか。あの予算状況の把握について、銭谷局長はこうおっしゃっておりました。簡単に申しますと、三月十一日の衆議院文部科学委員会において、今回の措置は暫定で、全体の一六・七%、来年度分については何とか措置できている状況というような御説明があったということでございます。
しかし、今回のこの税源移譲特例交付金は一般財源であります。これまでの国庫負担の対象となっていた教職員給与というのは、どれぐらい確認できているのか、減少が確認できたところがあるのか、都道府県でいうと幾つかという点、そういった詳しいところまで大臣、把握されているんでしょうか。この点、わかれば。
○中山国務大臣 これは文部科学省としても大変重大な関心を持っているところでございまして、ちゃんと学校の教員の給与に計上されているかどうかということについては関心を持っていますので、それは事務方の方でチェックしていると聞いております。今のところといいますか、計上されているというふうに聞いておりますが、あとはそれがしっかりとそのように施行されるかどうかということも見ていかなければいかぬな、このように思っております。
○城井委員 そういたしますと、今回の減額分に関しては教職員給与費を基本に配分することとされているということですけれども、一般財源とされるこの交付金の使い道について、文部科学省として縛りをかけることはできない、つまり見守るしかないということでよろしいんですね。
○中山国務大臣 そのとおりでございます。
○城井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、最後に一言申し上げたいと思います。
中山大臣も、これまでも御答弁の中で、一般財源化によって教育以外の目的に使われることについておそれなしとはしないというふうにおっしゃっておられました。実際にそういう可能性は出てくるだろうと思います。
ただ、今のところ防ぐ手だてはないということでございますので、例えば、我が党でも検討しております、先ほど川内筆頭からもございました義務教育財源確保法という法律で規定をする。その内容がどういう形がいいかというのは、我々も今検討を進めているところでございますけれども、いわゆる見守るという点だけではなく、実際に基準の策定という大きな役割を担っている文部科学省として、できる部分というのを法律で模索するという点については、今後ぜひ御検討いただくということを考えていただきたいと思います。
○中山国務大臣 もちろん、今でも標準法とか人確法というのがありますから、そういった観点からのチェックといいますか、それはやっていかなければいかぬと思っていますが、今、民主党の方でそういう法律をつくっていらっしゃるということでございます。定かには存じませんが、そういう法律をつくるぐらいなら、義務教育費国庫負担制度をきちっと守った方がいいんじゃないかなと私は思っております。
○城井委員 今申し上げましたのはいわゆる財源確保に関する法律だということを最後につけ加えさせていただきまして、これで質問を終わります。
ありがとうございました。
(後文略)