独立行政法人日本原子力研究開発機構法案について (反対討論)
第161回国会 衆議院文部科学委員会会議録第4号(平成16年11月10日)より抜粋(前文略)
○斉藤委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。
○城井委員 民主党の城井崇でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表し、日本原子力研究開発機構法案に関し、反対の立場で意見を述べ、討論といたします。
本日、大臣が御答弁の中で、今回の統合を戦略結婚だと表現をされました。しかし、この審議で、今回の統合が、行革の名のもとに必要な検証と議論が省略をされた、いわば省略結婚でしかないということが非常に残念ながら明らかになりました。
以下、具体的に申し上げます。
まず、統合の対象となる二つの法人は、その事業目的や事業内容が全く異なるものです。その違いを無視して、ただ特殊法人などの整理合理化の名目のためだけに一体化させることに、いまだ疑問が残っています。しかも、核燃サイクルの確立といういわば国家のエネルギー戦略の根幹にかかわる事柄について、独立行政法人がその任に当たるということがいかなる理由で合理的だと判断されているのか、その詳細な検討が極めて不十分であり、このままではこの統合の意義を認めることは困難であります。
今後の日本の原子力研究開発の重点の一つは、現在稼働している五十二基の原発から大量に出される放射性廃棄物や廃炉に伴う廃棄物、再処理によって生まれる高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する技術開発であります。しかし、法の目的にはこの大切な事項が欠落したままになっています。
また、私ども民主党は、今後の原子力政策に当たっては安全確保を最優先すべきだと主張しておりますが、法案ではこの安全が法律の目的にはっきりと示されておりません。なぜ安全の二文字がないのか、納得のいく説明はありませんでした。ウラン残土の処理についても、安全に対する姿勢に疑問が示されました。この法案には重大な欠陥があると考えます。
日本の原子力政策の最大の問題である核燃料サイクルと高速増殖炉の正当性、合理性について、詳細な検証と国民的議論もまだ不十分であることが、質疑の中でも明らかになりました。原子力政策は、政府が原子力委員会を通じて策定する原子力長期計画に基づいて遂行されることになっています。新しい長期計画策定会議のメンバーの選定のあり方について、公正さの問題も提起されました。その長期計画の見直し作業がおよそ一年後に控えているというときに、拙速に新機構の立ち上げを急ぐ理由は一体どこにあるのでしょうか。国民合意のもとに策定された新たな原子力長期計画に基づき、そこで示された基本方向に沿って、改めてそのあり方を構想すべきであります。
以上の論議をもって、私たちは本法案に反対することを表明いたします。(拍手)
(抜粋中略)
○斉藤委員長 これにて討論は終局いたしました。
(後文略)