地域における文化財保護と活用の両立について

地域における文化財保護と活用の両立について

2018年5月16日 衆議院文部科学委員会

○冨岡委員長

次に、城井崇君。

○城井委員

国民民主党の城井崇です。

私からも、文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について御質問申し上げたいと思います。

質疑に入ります前に、一点、私からも、去る五月六日のアメリカンフットボールの日本大学選手による危険タックルの問題についてお伺いしたいというふうに思います。経緯は先ほど同僚委員からもございましたので、それを踏まえて一点お伺いしたいと思います。

今回の件は、一選手や一事例ということにとどまらず、日常から指導者そして組織ぐるみの動きがあった、こうした報道もございます。勝負を優先し過ぎまして、大学スポーツの本分から外れる状況になっているというふうに思っております。

大臣からも先ほどございましたが、重大事故につながる危険な行為だということは言うまでもないことだというふうに思っています。

先ほどの調査中の話あるいは再発防止策の話もございましたけれども、報道等の加熱もありますので冷静な対応をお願いしたいと思いますが、一点御提案申し上げたいのは、文部科学省、スポーツ庁、あるいは第三者の視点を入れながらということでの調査の徹底をお願いしたいというふうに思いますが、大臣、この点いかがでしょうか。

○林国務大臣

この六日に行われました関西学院大学と日本大学とのアメリカンフットボール定期戦において、関西学院大学の選手が相手守備選手からのタックルを受け負傷退場した件については、今お話しいただきましたように、重大事故につながる非常に危険な行為だったと認識しております。

現在、日本大学が所属をしている関東学生アメリカンフットボール連盟が規律委員会を設置し、調査を行っているというふうに聞いております。

この調査の報告を受けて、このような事態が二度と起こらないように、文科省としても必要な対応をしてまいりたいと思っております。

○城井委員

文部科学省におかれましても、公正な調査となりますように、そして徹底した再発防止策をお願い申し上げて質問に入りたいというふうに思います。

まず、地域における文化財の総合的な保存、活用のため、今回の法律案では、都道府県においては、文化財保存活用大綱の策定、そして市町村においては、文化財保存活用地域計画の作成、これがそれぞれできることとなっております。

大綱に何を書くかというのは、この法律案の中では特に規定がありません。今後の国の指針を踏まえてこれを作成していくという理解でよろしいでしょうか。

○林国務大臣

御指摘のとおり、都道府県が作成する文化財保存活用大綱の記載事項や留意事項等については、今後、法案が成立した後、国会における御審議の中で御指摘いただいた点等も踏まえて文化審議会において検討いただきまして、法律の施行までに国としての指針を作成し、各都道府県等に示していきたいと考えております。

都道府県におかれては、この指針で示された事項に留意しつつ、大綱の作成を行うということになるわけでございます。

○城井委員

今、指針のお話をいただきました。都道府県ごとに大綱に記載する内容が異なることで文化財の保存と活用のバランスに偏りが生じてしまわないように、この指針においても、文化財

の保存、活用に係る国としての基本的な指針として記載すべき内容というものを明確にすべきだというふうに考えますけれども、この指針の策定に係る政府の基本的な考え方をお示しいただけますか。

○林国務大臣

御指摘のとおり、大綱に記載する事項、今後国が作成する指針において具体例を示すことを考えておりまして、例えば、域内の文化財の保存、活用に関する取組の方針や必要な措置、それから、これは大綱でございますので、複数の市町村にまたがる広域的な取組、災害発生時の対応、小規模市町村への支援の方針、こういったことなどについて盛り込むことが考えられるところだと思っております。

○城井委員

次に、活用と保存のバランスについて、私からもお伺いしたいというふうに思います。

活用が進むことを、特に地域でも歓迎をする声がある一方で、文化財の保存が活用に優先する形になるかということ、メディアや研究者、関係者から懸念の声もございます。この点について、改めて国の見解をお聞かせいただきたいと思いますが、お願いします。

○林国務大臣

今回の改正法案の内容について答申を出した文化審議会では、検討の過程で広く一般の意見を聞くため、昨年の九月に、中間まとめを取りまとめた段階でパブリックコメントを行っております。

その中では、次世代へ継承するための車の両輪として保存と活用を考えていくべきといった御意見がある一方で、観光での活用に対する保存上の懸念や首長部局への事務の移管への慎重な御意見等も寄せられたところでございます。

こうした御意見も踏まえて、昨年十二月の文化審議会第一次答申においては、文化財の保存に悪影響を及ぼすような活用はあってはならない、また、目先の利益は本質ではなく、文化財とそれを育んだ地域の持続的な発展のために、文化財の保存と活用そして担い手の拡充を考えていくべきである、こういう提言をされているところでございます。

文化庁においては、今回の法改正に当たって十分にその趣旨を踏まえたものとしたところでございまして、文化財の次の世代への確実な継承に向けて、保存と活用の両面から計画的に取り組んでいくことが重要と考えております。

○城井委員

続いて、専門家のかかわりについても確認をさせていただきたいと思います。国の認定を前提に、市町村に現状変更の権限が移譲されます。ただ、その肝心の市町村に文化財の専門家がどのくらいいるかということを、ルール変更に当たって国として把握をされているのかという点が大変心配でございます。十分な人数を確保できておらず、適切な判断が困難である、こうした指摘もあります。

国として、足りない専門家をどのように補っていくかということをぜひお伺いしたいというふうに思います。大臣、お願いします。

○林国務大臣

文化庁では、今回の法改正に先立って、地方公共団体に対して調査を行いまして、文化財保護に携わる職員の配置状況について把握をしたところでございます。

この調査結果によりますと、都道府県には約四十五人、指定都市には約二十六人、一般市には約七人、町村には約二人となっておりますが、全体的に言える傾向としては、記念物や埋蔵文化財の専門家が多い一方、やはり無形文化財の方の専門家が少ない、こういう状況があるわけでございます。

文化財の適切な保存、活用には専門的人材の確保が不可欠でございますので、これまでも文化庁では職員等の専門性向上のためのさまざまな研修を実施しておりますが、新たに平成三十年度から法改正とあわせた地方財政措置の充実、これは、保存活用計画に基づく専門的知見を持つ外部人材の活用等のソフト事業への特別交付税措置でございますが、それからもう一つ、地方公共団体等からの相談に一元的に対応するセンター機能の整備、これを進めることとしておりまして、今回の法改正の趣旨を踏まえつつ、必要な人材の確保に対する支援に努めてまいりたいと思っております。

○城井委員

専門家の数が少ない、裏を返せば、それだけ専門性が高い方をなかなか確保しにくいという状況はこれからも続くというふうに思います。

その意味で、先ほどの大臣からのお話ございました研修も重要でございますし、また、特別交付税措置での後押しということも重要だと思いますが、私、今回の地域社会の総がかりをしていくときに、その裏側で、これまでがどうだったかと見ましたときに、特に関心が高くて専門性が高い個人に押しつけ過ぎてきたんではないか、このように考えております。

その意味では、その専門家、専門家を支えていく地域にいる人材ということでいうと、学芸員の存在は大変大きいというふうに思っています。単にこれまでの博物館業務ということだけではなくて、文化財を地域全体で保存して活用していくその重要なつなぎ役となるし、また専門家の一人でもあるというふうに思います。

この学芸員の取組をぜひ国としても後押しをしていただきたいというふうに思いますが、大臣、この点、いかがでしょうか。

○林国務大臣

キュレーター、専門家というような方がやはりしっかりおられて、保護、そして活用両面でしっかりと現場で活躍をしてもらう、こういうことが大事だ、こういうふうに思っておりますので、先ほどの申し上げた専門家を育成する中で、そういう観点をしっかりと頭に入れてやってまいりたいというふうに思っております。

○城井委員

しっかりと学芸員の皆さんの後押しもお願いしたいというふうに思います。

続きまして、地域計画の策定に向けて設置される協議会についてでございますが、文化財保護の観点がどこまで重視をされるか、また、先ほども議論のございました、いわゆるできる規定による措置が多くて、その実施が地方公共団体の判断に委ねられているために、規定の実効性がやや明確になっていないという状況があります。

これらの観点からも、地域でまちまちの対応になるということへの懸念がございます。文化財保護行政における国の方向性、先ほどの議論からで申しますと、登録はふやす方向だというのが一つ方向性かと思いますが、これをしっかりと示していただく、この必要性も含めて、国としてどうお考えでしょうか。

○林国務大臣

まず、協議会についてですが、市町村の教育委員会は、地域計画の作成、変更や計画実施に係る協議や連絡調整を行うための協議会を組織できるということにしておりますが、これは、関係者間でやはり文化財に係る各種の課題を共有する、また、その共有された課題を踏まえて、文化財の保存、活用の総合的な推進をする、これに向けた合意形成を促進する、こういうこと等を図るものでございます。

協議会の構成員である市町村や都道府県、また文化財の所有者等は、この文化財の保存、活用の双方の視点を持って協議会に参画するものと考えておりますが、地域計画の作成には、地方文化財保護審議会への意見聴取も必須としておりまして、例えば保存状態に懸念のある文化財の公開の可否などのような専門的、技術的判断を伴う事項については、やはり文化財についてすぐれた識見を有する者で構成する地方文化財保護審議会における審議を期待しておるところでございます。

また、地域でまちまちの対応となる懸念につきましてでございますが、文化財保存活用大綱や文化財保存活用地域計画は、できる規定による措置であり、地方公共団体の主体的な取組を期待するというものでございますが、計画に盛り込むべき事項などについて、各地域における検討の参考となるように、国としても今後指針等を作成して方向性は明確に示したいと考えておるところでございます。

○城井委員

続いて、地域の首長との関係についてお伺いしたいと思います。

本法律案では、地方文化財保護審議会の設置等、条例制定を条件として、文化財保護の事務を首長から独立した教育委員会から首長部局に移管できるということになります。首長からの活用意欲、場合によっては圧力ということになるかもしれません。文化財保護の観点がなおざりにならないかという懸念についての国の見解をお示しいただきたいと思います。

地方自治法第百八条の七に基づく、教育委員会の所管事務の一部を首長部局に委任させることができるという規定と同様の運用になるかなというふうに想像いたしますが、この点いかがでしょうか。

○林国務大臣

文化財保護に求められる専門的、技術的判断の確保や開発行為との均衡、これを担保するために、首長部局において事務を所管する場合には、地方文化財保護審議会の必置を制度化するとともに、専門的知見を持つ職員の配置の促進や、情報公開など文化財行政に係る透明性の向上など、各地方公共団体に対して適切な対応を求めていきたいと考えております。

また、今回の改正案では、仮に首長部局に移管する場合は、地域計画等による計画行政の導入や地域の関係者が参画する協議会の設置等を進めることによって、文化財を次世代に確実に継承していくための取組が適切に進められると考えております。

また、地方自治法の関連ですが、地方自治法第百八十条の七に基づく事務委任や補助執行により、現在でも文化財保護に関する事務の一部を首長部局において行うことが可能でございます。しかしながら、事務委任、補助執行は首長の補助機関の職員等を対象にしたものであり、首長自身にこの事務を委任したり補助執行させたりすることはできず、また、文化財保護に係る重要事項を事務委任、補助執行させることは法の趣旨に反すると解されております。

このため、現行では、首長部局に事務委任、補助執行させたとしても、本来の職務権限者である教育委員会には一定の権限が残る、こういうことになっておりますが、今回の改正による特例は、職務権限そのものを首長に移すというものでございまして、地方公共団体の長自身が、文化財の保護に係る事務の全体について、他の関連行政とあわせて、その権限と責任において一元的に担当することを可能とするものでございます。

○城井委員

ありがとうございます。通告を一つ飛ばしまして、次の質問をさせていただきたいと思います。小規模の市町村との関係でございます。

小規模の市町村では、地域計画の作成に当たる人員や予算の制約が大きくなるというふうに想定をされます。先ほども同僚議員から質問がございました技術的助言でありますとか都道府県の助言ということでございましたが、この小規模市町村の負担の軽減に国が主体的で直接的に支援するべきだというふうに考えますけれども、この点、大臣、見解はいかがでしょうか。

○林国務大臣

市町村に対しては、国として、地域計画の作成に係る経費への補助や文化財調査官の派遣等による技術的な助言などの支援を行っていくこととするほか、都道府県においても、大綱の中で小規模市町村への対応を明示したり、協議会への参加を通じて当該市町村への助言を行ったりするなど、積極的な支援が行えることが期待をされるところでございます。

こうした支援が適切に行われるように、法案が成立した際には国が策定する指針においてその旨を明示いたしまして、小規模市町村においても文化財の保存、活用のための取組が促進されますように、国、都道府県、市町村で連携して取組を進めていきたいと考えております。

○城井委員

ありがとうございます。続いて、一つまた飛ばさせていただいて、個々の文化財の確実な継承についてお伺いいたします。

旧何々邸のような個々の文化財の保存、活用については、計画の作成と国の認定が規定をされます。計画の作成は原則所有者でございます。文化庁による計画の認定を受けると、相続税の猶予が認められます。

一方、納税の猶予が認められる文化財の類型は、租税特別措置法上、重要文化財と一部の登録有形文化財に限られます。重要有形民俗文化財などのほかの有形文化財については納税猶予が認められておりません。

この猶予対象が絞られているのはなぜか。そして、個々の文化財の保存活用計画の作成、認可申請を促進するならば、計画認定を受けた全ての有形文化財についてこの相続税の納税猶予を認めるべきではないかというふうに考えますけれども、大臣、この点、いかがでしょうか。

○林国務大臣

美術工芸品であります文化財につきまして、相続税の負担を理由に貴重な美術工芸品の散失、流出が懸念をされていることを踏まえまして、今回の改正により、個人所有者の負担軽減を図るとともに、美術品の計画的な保存とともに展示などの活用を促進する必要があると考えております。

このため、今回の改正によりまして、保存活用計画を作成して国の認定を受け、かつ、美術館等への寄託公開を継続的に行う美術工芸品について、課税価格の八割に対応する相続税の納税猶予の仕組みを設けることとしております。

今回の措置は重要文化財等である美術工芸品のみを対象としたものですが、重要文化財等である建造物の家屋、土地に関しては、既に相続税等に係る財産評価額について七割控除されるなどの措置が講じられておるところでございます。

また、重要有形民俗文化財については、相続税の対象となる個人所有のものが十数件ということで非常に少ないことに加えまして、地域に伝わる民具、衣服などの民俗文化財はおおむね評価額が高価になることというのは余りないわけでございますので、税負担軽減のニーズが相対的に低いということで、今回は措置の対象とはしていないところでございます。

いずれにしても、文化庁としては、保存活用計画の作成、また、この計画に基づく取組の推進について、文化財所有者等への指導助言等を行うなどの措置とあわせて、税財政上の措置等の充実も図りながら、計画的な取組を推進してまいりたいと考えております。

○城井委員

時間が参りました。終わります。

ありがとうございました。

衆議院議員 きいたかし 福岡10区